~アストラル・ライフ~『~天に召される瞬間、ガイコツ少女に異世界召喚されました~』   作:LUCIOLE

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第三十八話 『祭り、開会式』

 

 エリア達に割り当てられた街の西の広場に行くと早速開店準備を始めた。

 

 ララとエリアは竈に火を入れて米を炊く。

  

 リリルルはテーブルと椅子を並べ、のぼりを立てる。

 

 アフィは食器や調理台の準備だ。

 

 程なく、開店準備が終ると、アフィに結界魔法を掛けて貰って、全員で広場に行く事にした。

 

    

 中央通りの奥、街の庁舎の前に作られたステージの周りには既に街中の人が集まり人の絨毯と化してた。

 

 ステージの周りは規制されて、進入禁止となっているが周りの屋根の上にまで人々で溢れてる。

 

 「エリア~、リリ、ルル!」

 

 声を掛けられた方を見ると、冒険者のクロウラが手を振っていた。

 

 「クロウラ仕事?」

 

 リリは革鎧を着込んだクロウラを見て怪訝な顔をしている。

 

 「そうなんだよ~、今日から祭りなのに午後から仕事で街を出るんだよ~」

 

 リリに泣き付くクロウラだったが、その後ろに控えたルルとエリアの姿を見てにや付いた。

 

 「リリのかっこいい服とは違って、2人は随分可愛い服着てるじゃないか」

 

 「ぐ・・・」

 

 まだ、メイド服に抵抗が有るエリアと対照的に、ルルは「かわいいでしょ~♪」と、くるりと回って見せた。

 

 (だから危ないって)

 

 普段、男の子と間違われる事もあるので、素直に可愛いと言われて嬉しい様だ。  

 

 「おうおう、馬子にも衣装って・・・」

 

 其処まで言って、クロウラの時間は止まった。更に後ろにいたララの横に立つ人物を見てしまったのだ。

 

 「え!?アフィ・・・さん?」

 

 「そうよ、クロウラ久しぶり」

 

 ピシッ!という音が聞こえそうな程クロウラの顔が引き攣った。

 

 「あ・・・お、おはようございます!」

 

 ピシッと足を揃え接す時を伸ばし、姿勢を正すと勢い良く頭を下げる。綺麗な45度だ。

 

 「おはよう。折角のお祭りなのに貴方は仕事なのね?」

 

 「はい!幾つか美味しい依頼が入りまして、私達以外にも今日、明日から仕事に出る冒険者が居ます」 

 

 直立不動でハキハキと答える。

 

 「そう、偉いのね。気を付けていってらしゃい」  

 

 「ありがとうございます!」

 

 クロウラは深々と頭を下げると「失礼します!」と、駆け足で去っていった。

 

 「一体、クロウラに何したの?」

 

 普段のクロウラからは信じられない態度に驚き、怪しむ様に訊ねる。

 

 「彼女が冒険者の試験を受けた時って、丁度ギルドが忙しい時期でね、臨時で私が試験官をしたのよ」

 

 「ああ・・・」

 

 アフィに色々教えて貰って、先輩や師匠の様に思っているのか、と思ったら「多分エリアの思ってるのと違う」と、リリに否定された。

 

 「どういう事?」

 

 「10回以上試験で落されたって、クロウラ言ってたね」

 

 今度はルルがひょっこり顔を出して来た。

 

 「13回よ」

 

 「14回目で合格したんだ」

 

 推薦で冒険者になったエリアには分らないが流石に14回は多いのだろう。エリアは驚きアフィを見た。

 

 「あの子は確かに強かったけど、最初の8回はただ力を振り回すだけだったからね」

 

 ああ~、とエリアは始めて会った時の事を思い出す。

 

 「その後、やっと頭を使う様になったのよ」

 

 成る程とエリアは思った。恐らくクロウラは特に誰かに師事を受けた事の無かったのだろう。ケンカが強いから冒険者になったみたいなタイプなのだなと。

 

 「で、14回目でアフィの許しが出たと」

 

 「その後、筆記で11回落してやったわ。あのまま冒険者になっても、直ぐに死んでたでしょうからね」

 

 「なるほど、アフィが試験官だったクロウラは運が良かったんだね」 

 

 (そして、前もって修行して貰って、推薦まで貰った自分も)と心の中で呟きながら微笑んだ。

 

 「向こうはそうは思って無いでしょうけどね」

 

 恥ずかしそうにそっぽを向いたがアフィに「そんな事無いよ。ちゃんとアフィの優しさは伝わってるよ」と、エリアは感謝の気持ちも載せてアフィの頭を撫でた。

 

 「しかし、祭りの最中に仕事か~」

 

 「祭りの間は受注率が低いから、報酬の良い仕事が入るのよ」

 

 「ただ、そんなに多くないけどね~」

 

 皆が楽しみにしていたお祭りの間に外で仕事と言われると相当美味しい仕事でないと誰も受けない。まして女王が参加する程の大きな祭りだ。

 それなのに仕事とは、大変だなとエリアは思った。思ったが、翌々考えたら自分も3日間の祭りの内2日は仕事だと気が付いた。

 

 (まぁ、楽しんでやれるからいいんだけど)

 

 そうこうしていると周りがざわめき出した。

 

 

 ボン!ボボン!

 

 突然花火が上がると皆の注目がステージに集まり、楽隊の演奏が始まると両脇に立てられたポールに旗が上がっていく。

 

 右に上がるのは、海洋都市国家エルトリア、クオリオン王国、デリフォス法国、グウェラル地下迷宮王国、古の森エルフの旗も有る。ただ、森のエルフは国を持た無いが故に当然国旗も無いので許可を取ってファニール王国で作った物だ。そして、反対側にはファニールの王都を除く10箇所の主要都市の旗が上がると会場にどよめきが湧き上がり、人々の歓声と拍手の嵐が巻き起こる中、特設ステージに複数の人影が現れた。

 

 ステージの両サイドに並ぶ人々。

 

 「あの人達は誰?」

 

 「あれはですね~」

 

 「右側に並んでるのはこの国の他の街の領主達よ」

 

 ララから解説を奪うアフィ。見れば、見知った顔が確かに有る。ベルタの領主、ゼリオス・ロローノとアクフォロンのロウレン・グロイド子爵だ。

 

 呪いで動かなかったロウレン子爵の足だったが、確りと歩き立っている姿を見てほっとする。

 

 「左側は隣国の使者の方達です」

 

 突然後ろから声を掛けられて、エリア達が振り向いて驚いた。

 

 「モウラ!?」 

 

 エリアは自分の格好を思い出して、赤くなって顔を隠す。

 

 「お久しぶりです。ってどうかしましたか?」

 

 「いや、なんでもない!」

 

 「かわいらしい御衣装ですね」

 

 エリアは羞恥心を振り払う様に、モウラに説明の続きを促した。

 

 「左手前が海洋都市国家エルトリアのデネバイトス外交官。その隣がクオリオン王国のバズラー大使。そして、デリフォス法国のヒュージ司教です。更にドワーフの地下迷宮王国グウェラルのドゥワス大公、エルフの森のエメロエ様も居ますね」

 

 「あれ?ラ・ギース王国からは誰も来てないの?」

 

 ルルが訊ねたラ・ギース王国はフェリオス山脈、龍の聖域の北に広がる大国だ。魔道具と呼ばれる道具(アーティファクト)の制作技術の優れた国である。

 

 「遅れてるそうですよ。最終日までには来るそうですがはっきりとは分りませんね」

 

 アフィの前だからか対応が硬い?

 

 そこで更に大きな歓声が上がり、ファニール王国女王、ミリアス・グリーム・フォル・リンドバインが壇上に現れたのだ。

 

 壇上に立つその姿を見て、エリアは驚いた!女王の姿にではなく、その周りを囲む子供達と後ろで女王のスカートの裾を持つアラクネにだ。

 

 「キラファ!?なんで?」

 

 驚くエリア達の横で、1人アフィが頭を抱えた。

 

 「モウラ、あれって?」

 

 「実は、女王様があの子達を馬車に招待した時にただで乗せて貰うのは悪いって言い出したので、仕事をして貰うって事で納得して貰ったんです」

 

 「な、なるほど・・・」

 

 壇上の女王を見れば、其処には正にこの国の王の姿が有った。アフィの仲間でも、ファムの母親でも無い、女王の姿が。

 

 「・・・私が戦乱の続くベリオース都市国家群にファニール王国を宣言して102年、各都市国家を吸収合併を繰り返し、このベルタを開放吸収したのが90年前の事でした・・・」

 

 風魔法が使われているのだろう街中に女王の声が流れた。

 

 女王、ミリアス・グリーム・フォル・リンドバイン。この国の王であり、象徴であり、試金石でもあるその姿に皆が尊敬と畏敬の眼差しを向けていた。

 

 「・・・この平和を、安らぎを、お互いに笑い会える日常を、未来に繋げて行きましょう」 

 

 来賓や各領主から拍手が起こり、市民からは歓声が沸き上がる。それに答える女王は手を振って答え、ベルタの街90周年を祝した開放祭の開催が告げられた。

 

 

 街の人の波に呑まれない様に、壇上から降りて姿を消しても尚、鳴り止まぬ歓声を聞きながらエリア達は一足先に自分達の店に戻るのだった。

 

 

 ベルタの街の西方、商店が並ぶ区画を超えて西門の手前に有る広場にエリア達の店が有る。その横では大きな見世物小屋が立ち、中から獣の鳴き声や匂いがする。この為、食事系の店を出すには向いていなかったのだが申請が遅かった為、ここしか場所が無かったのだ。

 

 もう場所が無かったのに無理して場所を確保してくれただけでも感謝だ。

 

 (こっちはカレーだ、匂いでは負けないだろう)

 

 エリアは早速炎の魔法で竈に火を入れ、大きなしゃもじでカレーを温める。

 

 流石に竈の前は熱く、このままだと汗で折角の衣装が台無しになるので、風の魔法で冷風を出して汗を抑える。この魔法をララと2人分発動させながらの調理だ。冷風を出す魔法の同時処理。まさか魔法の並列処理のがこんな形で役に立つとは。  

 ララにはご飯を炊いて貰っているし、リリルルはビラを配りに行っている。アフィはと云うと匂いを消す為の風の結界を張ってくれていた。

 

 「これで結界内に居る間は大丈夫でしょう」

 

 店のオープンまで後30分。未知の食べ物であるカレーが受け入れられるか心配だったが、その不安は杞憂に終った。

 

 カレーを温め出してから数分、人が集まり始めオープン10分前にはビラ配りから帰って来たリリルルが驚くほどだった。

 

 「ララさんご飯は炊けた?」

 

 「はい、炊けましたよ~」

 

 釜から木のお櫃にご飯を移し、直ぐ様次のご飯を炊き始めるララに礼を言って、パンパンと手を叩いた。

 

 「お客さんも既に待ってるし、少し早いですが店を開店させます!」

 

 「は~い!」

 

 「分った」

 

 リリルルの返事を聞いて、カレーハウス『アーハート』はオープンした。

 




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