~アストラル・ライフ~『~天に召される瞬間、ガイコツ少女に異世界召喚されました~』   作:LUCIOLE

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第八話 『子爵家』

 

 葛城涼がこの世界に来て半月以上が過ぎていた。

 

 

 

 剣に魔法の訓練にこの世界の文字や常識を習って少しづつ理解を広めている。特に文字の習得は難しいと思っていたのだが、ホウさんの店に行った日を境に何と無く読める様になっていた。ただ全ての単語が理解出来ている訳ではなかったので、今日も朝の搾乳の仕事の後から猛勉強をしていたのだが今は昼休憩である。

 

 

 

 涼はエリアの体から出て、テーブルの上の小さなクッションの上で休んでいた。

 

 

 

 

 

 この世界に来て2日目の事、エリアの体から出ようとしたら抜け出せなくなった事が有った。リリに驚かされて抜け出せたのだがアフィ曰く、魂が体に馴染み過ぎたらしい。

 

 (あれは抜けたんじゃなくて、ショック死しただけじゃないだろうな・・・)

 

 魂の形が体に合い過ぎてかっちり填ってしまったのだろうと言う事だった。なので夜は必ず体から出る様にしているし、こうやって休む時に少し抜ける様にしているのだ。

 

 

 

 今後の事を考えつつ休んでいるとリリとルルが家から出てきた。普段着では無く完全武装状態、今日はこれから仕事なのだそうだ。

 

 

 

 「じゃあ、行って来るね~」

 

 

 

 ブンブンと大きく手を振るルル。

 

 

 

 「ん・・・」と、リリも軽く手を上げる。

 

 

 

 「ああ、2人共気を付けて~」

 

 

 

 涼も手を振って2人を見送った。手無いけど。

 

 

 

 ルルは明後日、リリは1週間程の予定らしい。

 

 

 

 実は昨日まではエリアの特訓に付き合う為に仕事を制限してくれたのだ。

 

 

 

 なんだかんだ言いながらも生活の面倒を見てくれているアフィ、身の回りの事やこの世界の常識、文字を教えてくれるララ、そして特訓に付き合ってくれるリリにルル、4人には感謝しかない。

 

 

 

 「何れ恩返ししないとな~」等とぼんやり考えていると「そんなの別に良いわよ」と後ろから声がした。

 

 

 

 驚いて振り向くとアフィが本を持って立っていた。一人だと思って声に出ていたらしい。   

 

 

 

 「私もあの娘達もそんなの期待してないし、私は呼び出した責任も有るしね」

 

 

 

 本をテーブルに置いて椅子に座るとペラペラとページをめくり本を読み始める。

 

 

 

 「あの娘達、特にリリとルルは貴方が来てから今まで以上に毎日楽しそうだし、それで十分よ」

 

 

 

 本から視線を外す事無く溜息を吐いた。その溜息は何?と思ったが、それ以上何も言わないので聞かない事にした。

 

 

 

 陽光の下で優雅に本を読むガイコツ・・・。

 

 

 

 涼もほっこりとした気分で空を見て「ありがとう」と、呟いた。

 

 

 

 

 

      ☆

 

 

 

 

 

 それから1週間経たずリリが帰って来た。

 

   

 

 「リリちゃんどうしたのそれ!?」

 

 

 

 ララの声に玄関に集まった全員がそのボロボロな姿に一様に驚かされた。 

 

 

 

 「大丈夫、治療は終ってる・・・」

 

 

 

 「取り合えず異常が無いか調べるからこっちに来て」リリの手を取ると有無を言わさずアフィが部屋の奥へと連れて行った。

 

 

 

 その途中、歩きながら装備や服を脱ぎ出すリリから目を逸らすエリア。

 

 

 

 バタンと扉の音がしたのを確認してから視線を戻す。

 

 

 

 そこではララがリリの脱ぎ捨てた装備と服を集めていた。

 

 

 

 「リリがあんなに怪我をするなんて」

 

 

 

 ルルが不安そうにエリアの腕を掴んだ。

 

 

 

 「アフィが診るんだ大丈夫」

 

 

 

 自分にも言い聞かせる様に言いながら、ルルの手を握った。  

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 アフィの処置も終わり、皆がテーブルに付いてリリから詳しい話を聞く事となった。  

 

 

 

 話の内容は簡単で護衛対象の何処かの貴族の三男を庇って怪我をしたらしい。

 

 

 

 「Eランクの依頼にDやCランク冒険者が付いたんでしょ?」

 

 

 

 「護衛対象がパニックを起こして逃げた。でも逃げた先にモンスターが現れて私以外に間に合う者は居なかった」

 

 

 

 で、その貴族を庇って代わりに怪我をしたという事らしい。

 

 

 

 問題はその後で、その貴族が怪我をしたリリを置いて目的地を目指すと言い出したそうだ。

 

 

 

 「壊れた道具ホムンクルスは置いていく。ホムンクルスとは一緒に居られないと言われた」

 

 

 

 そこで、全員がざわついた。ララはプンプンと怒り、ルルは「何だよそれーっ!」と憤慨している。

 

 

 

 エリアも平静ではいられなかった。

 

 

 

 「なんて酷い・・・」

 

 

 

 そんなエリアの肩に手を置いて「世の中にはこの娘達をそんな風に見る奴も居るって事よ・・・」と、寂しそうにアフィは目を伏せた。

 

 

 

 

 

 そんな事が有った数日後、アフィの家に訪問客が現れた。

 

 

 

 「どちら様ですか~」

 

 

 

 ララが接客をしてるのが聞こえる。

 

 

 

 「私はグロイド子爵様の使いでレドと言います。この度は大変ご迷惑をお掛けしましたリリ様にお詫びがしたいと当家の主人

 

ロウレン・グロイドが申しておりまして、つきましてはリリ様に当家まで御越し頂きたく・・・」だそうですがどうしますか?と、ララが使いの話をアフィに伝えている。

 

 

 

 「・・・私とそうねエリアが同行して良いならお伺いしますと伝えてくれる」

 

 

 

 ご主人様がこう申してますが、ララは一言一句違える事無く子爵の使いの者に伝えた所、それで構わないとの事だったので早速用意された馬車に乗り子爵家の屋敷に窺う流れとなった。

 

 

 

 

 

 子爵家へのお招きという事で、エリアとリリはドレスに身を包んでいる。当然エリアはドレスの着方が分らずララに手伝って貰う事になる。

 

 

 

 「私のお下がりですが、直せば着れそうですね」

 

 

 

 ウエストを少し締め、胸元を大きく絞り込んだ。因みにアフィは変身魔法で姿を変え白いローブを纏い、白いベールで顔を隠している。

 

 

 

 そして、失礼の無い様に身なりを整えた3人は使いの者が手綱を握る馬車で屋敷へと向かったのだった。

 

 

 

 地方都市ベルタに一度向かった馬車はベルタには入らず西へ続く街道へと進路を変える。そのまま馬車は街道を走り夕刻にはデリフォス法国との国境の街、アクフォロンへと着いた。

 

 

 

 他国との国境に有るこの街は要塞としての顔も持っており、ベルタよりも強固な城壁に守られていた。

 

 

 

 そのまま街中を走り貴族街へと進む馬車。そして、立派な門を構えた屋敷へと入っていく。

 

 

 

 大きな玄関の前に止まるとレドが馬車の扉を開いた。

 

 

 

「着きました。こちらがグロイド子爵様のお屋敷でございます」

 

 

 

 レドに代わり、家から出てきたメイドに案内された屋敷の中は立派な作りでとても綺麗だった。廊下を進み屋敷の奥、寝室へと通される3人。

 

 

 

 「旦那様、リリ様とご家族の方が参られました」

 

 

 

 「どうぞ」

 

 

 

 低く落ち着いた声が扉の向こうから返って来て、侍女が扉を開ける。

 

 

 

 リリが前、その後ろにアフィとエリアが付いて入る。

 

 

 

 「初めまして、私が当家の主ロウレン・グロイドです」

 

 

 

 少し弱っているのか少しやつれた印象の男性がベッドの上でエリア達を迎え入れる。

 

 

 

 「初めまして、リリ・アーハートと申します」

 

 

 

 スカートを摘み礼儀正しく挨拶をする。

 

 

 

 「アフィ・アルパイア・アーハート、この娘の保護者です」

 

 

 

 「・・・」

 

 

 

 エリアは部屋に入った瞬間、違和感を感じた。その違和感に気を取られているとアフィに肘を突かれ慌てて「エリア・アーハートです」とリリを真似て挨拶をした。

 

 

 

 「この様な姿で申し訳ない。この度は我が愚息が大変失礼しました、本来ならこちらから出向いて謝罪するのが礼儀なのですが何せこの状態でありましてな、不躾ながらご足労願ったしだいです」

 

 

 

 床に伏せっているのだろう、初老の男性が上体だけを起こした姿勢で頭を下げた。

 

 

 

 周りを見回す。付き添って介護をしている侍女が1人。

 

 

 

 「ご子息はどちらに?」

 

 

 

 アフィが言うとロウレン氏は曇った表情のまま合図をすると隣室から大柄な魔人族に連れられて件の三男、ディレン・グロイドが現れた。

 

 

 

 「放せ!私は悪くない!放せー!」

 

 

 

 ディレンは魔人族の大男に首根っこを掴まれネコの様にリリ達の前まで連れて来られた。その後ろから更に2人の男女が現れる。と後から現れた男性がこっちを見て変な顔をした。

 

 

 

 その事を疑問に思っている横で、ディレイが頭を押さえ付けられている。

 

 

 

 「この度は弟が大変御迷惑をお掛けしてしまい申し訳有りません」

 

 

 

 魔人族の大男が頭を下げた。

 

 

 

 (この魔人族はお兄さんなのか、なら奥の二人も兄妹なのかな?)とエリアが見ているとロウレン氏が紹介を始めた。

 

 

 

 「私の妻は猪牙族と人のハーフでね、その大きいのが長男のガリィ、そして次男のダリウスと長女アリアス」

 

 

 

 なるほど、お兄さんは見たままだが、次男とお姉さんも前に突き出した牙や尻尾が有ったり、頭の上に耳が出てたりしている。

 

 で、最初、何故か次男のダリウスの表情に驚きの感情が微かに浮かんだ気がしたが、今はすっかり消えている。

 

 

 

 「そして、そこで喚いているのが・・・」

 

 

 

 申し訳なさそうに目を伏せる子爵。

 

 

 

 「貴方がディレンさんですね」

 

 

 

 アフィが見下ろす。

 

 

 

 「貴様、子爵家の私に対して無礼だぞ!」

 

 

 

 怒りに顔を歪め咆えるディレン。

 

 

 

 「お、おい・・・」

 

 

 

 ディレンを止め様とした次男、ダリウスをアフィが手で制止した。

 

 

 

 「私に対してその様な態度、父上!何故この無礼者を咎めないのです?」と、親にも食って掛かる勢いだ。

 

 

 

 「無礼なのはお前だディレン」

 

 

 

 「何を言うのです、身分も弁えず錬金術師風情が子爵家の私にこのような・・・」

 

 

 

 「おい!ディレンいい加減にしないか!」

 

 

 

 割って入ったガリィを一睨みでアフィが止めた。

 

 

 

 「確かに依頼主だった貴方にはリリに対して命令を下す権利が有ります」

 

 

 

 その言葉に、そうだろうと一瞬顔が明るくなるディレン。

 

 

 

 「しかし、差別的な態度や無慈悲な命令をしても良い訳じゃない」

 

 

 

 「リリも冒険者なのだから護衛対象を護る義務が有るし、実際に冒険者の指示に従わず勝手な行動をしたあなたを護った。そして怪我をした。そのリリに対して傷付いたからと治療もせず道具の様に捨てようとしたと聞いている」

 

 

 

 感情を抑えて話しているが、却ってそれが怖い。

 

 

 

 「そいつはホムンクルスだ、ホムンクルスは人間に使われる道具じゃないか!使えなくなった道具を捨てて何が悪い!」

 

 

 

 リリは何も言わず目を瞑ってエリアのドレスを掴んでいた。エリアもディレンの言い様に腹を立て拳を握るが先程から強くなった違和感の様な物がどうにも気になって仕方が無い。

 

 

 

 「確かにリリは私が作ったホムンクルスよ、しかし私の家族なの。この娘はちゃんと心を持っている、ちゃんと生きているのよ。そんなリリを見殺しにしようとした」

 

 

 

 アフィの語気に怒りが滲み出る。

 

 

 

 「ふん!それがどうした?」

 

 

 

 このやり取りを回りの人間は何も言わず聞いていた。ただエリアだけはディレンを探る様に見詰めている。

 

 

 

 「はぁ、御当主ご子息は自分の罪を理解していない様ですが」

 

 

 

 これでは埒が明かないと呆れるアフィはロウレン子爵に話を振る。

 

 

 

 「真に申し訳ない。年老いてから出来た子で更にそれが5つの時に母親も亡くしてしまい、ついつい甘やかしてしまいました。それでも頼り無くても優しい子に育っていたのですが最近この様な調子で・・・全ては私の不徳の致す所、どうかご容赦を・・・」と、頭を下げた。

 

 

 

 「父上!?」

 

 

 

 下賎の者に頭を下げるなんて、と父に食って掛かる。

 

 

 

 「あなたの謝罪は結構です。あなたに幾ら謝って貰っても意味は有りません。それはこの期に及んでまだ彼を甘やかしてるのと同じです。彼がちゃんと罪を認めて心から過ちを詫びなければ意味が無いのです。そうで無ければ何れ彼自身や周りの者が不幸になります」

 

 

 

 アフィの言い様に腹を立てたディレンが怒りに顔を歪めて掴みかかった。

 

 

 

 「貴様!その無礼な態度許さん・・・」ぞ、と言う前にディレンは何かに吹き飛ばされ床を転がった。

 

 

 

 ガリィとダリウスは身構え、アリアスは最初狼狽えたが直ぐにディレンの元に駆け寄っている。

 

 

 

 姉のアリアスに抱き起こされるディレンが胸を押さえ、歯を剥き出しにしてアフィを睨み付ける。

 

 

 

 「この無礼者が!子爵家の者に手を出してただで済むと思うな!」

 

 

 

 ズボンの中、隠し持っていたナイフに手を掛け振り上げる。

 

 

 

 だが、また見えない何かがナイフを吹き飛ばし、更にディレンの顔を撃ち吹き飛ばす。

 

 

 

 「父親の顔に泥を塗っている者が何を言っている」

 

 

 

 床に転がるディレンを冷たく見下ろすアフィ。

 

 

 

 いや、流石に手を出すのは不味いんじゃ等と考えていたエリアは怒りに満ちるディレンの変化に気が付いた。ディレンが部屋に入って来てから感じていた違和感が、今はっきりと見えたのだ。ただそれはエリアにしか見えてない様でだれもその事を指摘しない。いやアフィは見えて無くても感じてるかも。

 

 

 

 その変化、怒りに顔の歪むディレンの体から黒い靄の様なものが溢れ出てきている。この感覚はザルザザに憑いていた物に似ていた。

 

 

 

 「アフィ待って!」

 

 

 

 襲い掛かるディレンに再び魔法を撃とうとしたアフィが手を止める。何?振り返るアフィの横をエリアは駆け抜けていた。

 

 

 

 ナイフを持ったディレンの右手首を掴み、胸ぐらを掴むと腰を入れて振り返り様に投げ飛ばしたのだ。

 

 

 

 受身も取れず背中から落ちたディレンの呼吸が一瞬止まる。床に倒れるディレンの胸ぐらを掴むとそこに蠢く黒い靄を引き剥がした。周りからは靄が見えないのでエリアが何をしているか分らない。ただ、アフィは察したのか何か見えたの?と尋ねてきた。

 

 

 

 振り向くとエリアは手にした靄を翳し「この靄が見える者は居ますか?」と聞いた。しかし、戸惑うばかりで何も答が出ない。

 

 

 

 「そう、誰も見えないんですね。今この手の中にはディレン君に憑いていた呪い・・・の様な物が有ります」

 

 

 

 「呪いだと!?そんなものがディレンに掛けられていたと言うのか?」

 

 

 

 ダリウスや他の者達もエリアの手元をもう一度見るがやはり何も見えず何も感じなかったのだ。




最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。

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