目が覚めたら町が燃えて、しかも国が地図から消されたお話する? 作:Yuri_____
おれには親友と呼べる大切な存在がいた。
初めはお互い全く興味がなかったが、おれが面白半分でアイツに解剖したカエルを見せた途端急に話しかけてきて、それから距離が縮まり親友となった。
そんないつも一緒に居たアイツとの関係はあの日を境に壊された。
国中の国民に珀鉛病が発症し、周辺諸国のヤツらが伝染病と勘違いし、結果として国民を虐殺し始めた。
母様と父様が殺され、シスター達の所に向かえば皆死んでいた。
泣き叫びながら町を歩いていると、おれはアイツの事を思い出した。
ここ数日間、突然発症した熱でずっと寝込んでいた親友を。
「ラベル! どこだ、どこにいるんだ!!」
おれは最後の希望でラベルの家に入り、部屋に行くとそこはもぬけの殻だった。
部屋の様子を見たおれは最悪の未来が見えた。
多分ラベルは起き上がったあと、外の様子を見て外に出てそのまま────…
「あ…ぁ…あ”あ”あ”あ”!!!!」
後に戻った病院に火を放たれたことにより、ロッカーに隠していたラミも両親も失い、友人やシスター、そして親友までも一晩で失った。
あの時、シスターは「この世に絶望はない」と言った。
だが、あの状況を絶望以外になんと言えばいいのか。
そしておれは死体の山に紛れ込み、故郷であったフレバンスを出て本当に独りになってしまったと実感した。
それからはドンキーホーテ・ファミリーの一員となったり、後の恩人となるコラさんとも出会い、別れた。
今やスワロー島で出会ったベポ、ペンギン、シャチと共に海賊となり数年で仲間も徐々に増えて行った。
ここにアイツもいたら───なんて、夢にもないことを思っていた。
ある日、おれの船である潜水艦 ポーラタング号をずっと潜水させていては仲間達の気分や体調に差し支えすることにより一週間ぶりに浮上し、全員が太陽の日を浴びていた。
丁度その時、ニュース・クーが来てペンギンが新聞代を払い世界情勢について読んでいる。
「いやー…一週間も情報が遮断されてると分からなくなるものだな…ん? 手配書が入ってる」
「へー。どんなヤツ?」
「白ひげ海賊団の新しい船員らしい」
「白ひげ…ってあの四皇の!? マジかよ…なになに『死雨のラベル』懸賞金…2500万!? 初手でこんなに高額なのかよ」
「まあ、白ひげん所にいる訳だしめっちゃ強いんだろ」
「…ラベル?」
「あ、キャプテンも見ます?」
どうぞ、とペンギンに手配書を渡されてアイツと同じ名の賞金首がどんなヤツなのかと思っていると、おれは目を疑った。
「アリアンス…D…らべ、る」
「キャプテン?」
アリアンス・D・ラベル。
有り得ない、と脳内で何回も否定する。
だが、同姓同名でおれと同じく”D”という特殊なミドルネームに成長していても分かる容姿。
これを見て、否定しようがなかった。
「ラベルが………いぎてっ…あ”ぁっ」
「キャプテンどうしたの? お腹でもいた……たたたたた大変!! キャプテンが泣いてる!!」
「「はぁ!?」」
生きていた。
おれのたった一人の親友はまだこの世に存在していた。
その日、おれは柄にもなく仲間達の前で泣き叫んだ。
あんなに泣いたのはドフラミンゴにコラさんを撃ち殺された日以来だった。
「へぇー…じゃあ、この人が昔言ってたキャプテンの親友なんですね」
「ああ…間違いねェ」
「この人、キャプテンと同じ国出身なんですよね? でもそしたら…」
「そこはおれも気になっている」
どうしてアイツは生きているのか。
いや、生きているのは喜ばしいことだ。
だがどうやってフレバンスから出たのか、そして珀鉛病はどうしたのか。
アイツはただ熱で寝込んでいただけで、珀鉛病自体は発症していなかった。
いや、待て。
確かアイツは他国から移住してきたから珀鉛にならなかったのかもしれない。
思い出してみれば、アイツの親も珀鉛病を発症していなかった。
珀鉛病の発症は世代による遺伝の毒畜積。
アリアンス一家は五年ほどしかフレバンスに住んでいなかったからそこまで影響がなかったんだ。
そう考えればアイツはおれが家に行く前、または後に何らかの手段でフレバンスを脱出し白ひげ海賊団へ、と言ったところか。
白ひげ海賊団に入った経緯は知らないが。
「で、どうするんですか?」
「奪うに決まってんだろ」
「四皇相手に!?」
流石にそれは無謀すぎるし今のおれには実力的にも無理だ。
それにアイツはおれのことを死んでると思っているだろうし、もし仮に白ひげのところに行っても受け入れてくれるはずがない。
「いや、アイツの所までおれの名を轟かせる。まずはそこからだ」
「なるほど、知名度をアップさせてキャプテンが生きていることを知らせるんですね」
「そういう事だ。こんな所でゆったりしてる場合じゃねぇ。行くぞお前ら」
「「アイアイキャプテン!!」」
それからというもの、おれはラベルに生きていることを知らせるために懸賞金と”死の外科医”としての知名度を上げていき、今では”北の海”で知らぬ者はいないだろうし、”偉大なる航路”の方にも轟いているだろう。
おれ達もそろそろ”偉大なる航路”に───というところでアイツが、ラベルが今停泊している島に居るという情報をベポ伝手に知らされた。
ラベルが今、己の手が届く距離にいる。
推測ではあるが、自ら白ひげの船を降りたラベルは多分おれが生きていることを知ったことにより”北の海”に来たのだろう。
まさかあっちから来てくれるとは…これは絶好のチャンスだ。
逃す訳にはいかない。
「ベポ、少しの間空ける」
「あ…キャプテン!」
「あ?」
「すんません…」
「怒ってねぇよ。どうしたんだ、ベポ」
「見つけたら絶対に手、離しちゃダメだよ!」
「!……ああ、ありがとな」
おれはベポに礼を言い、自室から出て船を降りる。
絶対に離すものか。