その魔法師、YAMA育ちの剣士につき 作:ヘッポコ魔法師
*酔っ払った状態での執筆なので作者にこれを書いた記憶は(ほぼ)ありません
(はい天才、I am a genius, 俺 is God!)
舞い上がり散らかす勇。満面の笑みを浮かべてスキップする姿は、まさにご機嫌といった感じだ。だが、それもその筈。なんと、勇は祖父と交渉を行い、6年間もの自主鍛錬期間を勝ち取ったのだ。自主鍛錬、即ち祖父の目は無く、完全な自由である。
なぜそうなったかと言えば、それは魔法科高校に司波兄妹と同学年で入学することになったからだ。本来なら認められなかったろうが、いくつもの条件が重なり、勇はこれを勝ち取った。
祖父が国のお偉いさんや魔法協会からのアピールを鬱陶しく思っており、いっそのこと勇を送り込んで滅茶苦茶にしてやろうと思ったこと。十師族の一角たる四葉家、
祖父からすれば間が悪く、勇からすれば好機だった。
◇
──そして現在。
入学試験に関しては、実技はまず間違いなく大丈夫だと予測している。半分霊体、つまり精霊や神霊の類に近い仙人は、思うだけで魔法が使える。更に基礎スペックが通常の人間とは桁違いで、それは例えるなら、遊園地で親子仲良くゴーカートのレースをしているところに、マジモンのレーシングカーで乱入するようなもの。レギュレーション違反Lv100みたいな状態だ。
問題は、筆記試験。まさか四葉家への連絡先をこんな事に使うとは、四葉家の方々も思ってはいなかっただろう。そう、使ったのだ。そして実際に訪問、マヤ(真夜という字を書くと30年越しに判明した)とも再開し、達也に泣き付いて勉強を教えて貰うことにも成功した。
(え? いい歳した大人が中学生に泣き付くなんて恥ずかしくないのかって?
──黙れ小僧! 貴様に俺が救えるかッ!!)
真夜と色々ありつつ……本当に色々とありつつ、深雪の余りの可愛さに存在しない記憶が湧き出したり、深雪を妹にしようとして達也と喧嘩したりしながら、勇の学力は中の上くらいまで向上した。
(神から授かりしバチクソイケメンなフェイスとヴォイスは今この時の為にあったのだ……青春、するぞッ!!)
◇
──時は、勇が四葉家に連絡を取り、真夜と再会する所まで遡る。
勇は真夜の対面へ無言で腰を降ろした。
無言で……つまり、一般人からすれば天上の人である十師族の一角、その中でも有力で、
身体を背もたれに預けて言葉を待つ姿は、緊張や畏怖とは縁遠い、堂々たるものだった。
それを一瞥した真夜は、空になったカップを
「……話を始めても構いませんか?」
「そんなに慌てないで、一先ずお茶でも
「……わかった」
早く本題に入れと急かすように、勇は紅茶を一息に飲み干した。お茶派なので、味わおうとは思わなかった。
「
「こんな美人さんから出された物を断るなんて、俺には出来ないよ」
「あら、お上手ね」
仙人を殺せる毒を、仙人に気取られないよう仕込むなんて不可能だ……そんな本音を飲み込みつつ、勇は軽口を飛ばす。真夜もそれは理解していた筈だが、勇からは思いのほか嬉しそうに見えた。
「それより、俺に茶なんて出したら、取り巻きがうるさいんじゃないのか?」
「ふふっ……」
率直すぎる物言いに、真夜の口から笑みがこぼれる。
勇はこの部屋に来るまで、警戒や嫌悪といった負の感情を宿す視線しか受けた覚えがなかった。圧倒的な顔面偏差値のおかげで女性方に関しては誤差の範囲で、数十年の時を経て初めて転生特典を実感したと泣きそうになったが。
「正直は必ずしも美徳とは限らないのよ?」
「相手の為を思う
打てば響くような切り返し。真夜は遠慮のない相手とのやり取りを楽しんでいた。しかし──
「……こうして私達が向かい合うのが何年振りか、覚えていますか?」
「………」
今となっては、真夜は周囲が歪んで見えるような怒気を滲ませていた。勇はそれに気付いていたが、なぜ怒っているのかは検討も付かなかった。なので、慎重に返答する……したいのだが、修行漬けにされていた勇は時間の感覚が曖昧だった。
視たところ、真夜は仙術の一端に手をかけている。闘気の量からして、身体能力は人の域だし、魔法力もそこまで向上してはいないだろう。だが、闘気の運用が抜群に上手い。自分が治癒した時の力の流れから習得したのだと思われるが、紛れもない天才である。
勇からは真夜が年齢にして20程にしか見えなかったが、闘気の扱いの上手さからして、歳はもっと上だろう。だが、自分と祖父という2例しか仙術使いを知らない勇には、具体的な年齢の推察は不可能だった。
「……15年?」
「ふふっ、面白い冗談を言うのですね……
──30年振りです」
「スゥー」
真夜はキレていた。笑っているが、欠片も笑っていなかった。勇は天を仰ぎ両手で顔を覆ったが、仙人としての感覚が、昂り赤く染まる闘気の奔流を捉えていた。
「ええ……仙人たるあなたからすれば違うのでしょうけれど、矮小な人の身である私からは、とてもとても、それは長く感じました」
「いや、でも、別に連絡する義務なんて……」
「は?」
「すいませんでしたァ!!」
勇は迷わず土下座した。塚原の仙人たる矜恃は、真夜の憤怒に恐れをなして家出中である。
「お仕置です」
真夜がそう口にした瞬間、時が止まってしまったかのような緊迫感の中で、世界が夜に塗り潰された。
闇に、ではない。そこに浮かぶ、
星が光の線となって流れ、そして次の瞬間
──真っ二つに斬られ、室内を満たす夜は砕け散った。
勇はいつの間にやら立ち上がり、柄に手を置いていた。
「ふぅ……私を待ち惚けにした罪、これで
「……ありがとう」
「ですが! すまないと欠片でも思っているなら……今夜は付き合って貰います」
「はぁ……わかったよ」
どこからともなく酒瓶を飛び出した真夜の誘いを、未だ罪悪感が残留する勇が断れる筈も無く……その日は、四葉の邸宅で夜を過ごした。
「ふっ! ……あ"ぁ"」
勇はベッドから上半身を起こし、身体を伸ばす。なぜこんなにも身体がバキバキなのか疑問に思いつつ、寝ぼけ眼を擦りながらふと隣を見ると──
「は?」
そこには全裸の真夜がいた。
(?????)
勇は困惑による支配に抗いながら、必死に脳を回転させる。
(昨日は確か、真夜と高そうな酒を開けて……)
少しづつ蘇る記憶。だが、それは良いことばかりでは無かった。
『塚原さん、深雪と結婚するつもりはないかしら?』
『そんな畏まらなくても、勇でいいよ……てか、深雪ちゃんは嫌がるだろ。俺は実年齢おじいちゃんだぞ?』
『十師族として産まれた時点で、愛のある結婚なんて出来ないもの。会ったこともないような男とよりは、命の恩人である貴方と結婚できた方が、深雪も嬉しいでしょう』
『うーん。真夜ならいいけど、深雪ちゃんはなぁ……』
『ぶっ! ごほっ、ごほっ!?』
『大丈夫か?』
こいつ酔っ払ってんな? 仙人を酔わせる酒とは、また凄い物を用意したな……てかキッショ、キショいわ俺。イケメンにしか許されないムーブしてるわ。あっ、今はバチクソイケメンだからいいのか(笑)
『深雪"は"嫌がると言ったけれど、貴方は深雪と結婚するのに乗り気なのかしら?』
『俺だって人並みに可愛い女の子が好きなんだよ……真夜みたいな、ね』
『……っ?! あ、あら、酔っているのかしら?』
『ああ、君の魅力にね』
『ドン!(真夜が机に頭を打ち付けた音)』
おっと、嫌な予感がして来たぞ? ところで、なんで場所が寝室に移ってるんですかね?(震え)
『いい歳して、男を知らない純情気取りか?』
『……お、男を知らなくて、なにか悪いかしら。こっちは、貴方との再会を、ずっと待っていたのよ?
──ひゃ?!(顎クイ)』
『可愛いな、真夜……男を知りたいなら、俺が教えてやろうか?』
『ドン!(勇が鼻息を荒くする真夜に押し倒される音)』
『貴方が悪いのよ……そんなに私を誘って……』
『ふっ、威勢がいいのは口だけか? そっちこそ、やめてと泣き叫んでも俺は絶対に止まらないからな』
『ゴクッ……(恍惚とした表情の真夜が喉を鳴らした音)』
「ぐわああああああああ!!!」
勇者の聖剣に貫かれた魔王が如き断末魔をあげながら、勇は床を転がり回った。なんたって、自分のキショすぎるムーブもそうだが、この先を全く覚えていないのだ。
「ん?」
唐突に開かれる扉。執事──葉山はこちらを一瞥すると、ニッコリと微笑み、一言だけ残して退出した。
「ゆうべはお楽しみでしたな」
「あっ……(心停止)」
仙術使いにとって肉の身体は仮初の器であり、老化は常人より緩やかです。それは力ある者ほど顕著で、普通の仙術使いなら『えっ嘘、エグい若々しさ』くらいですが、覚醒した仙術使い……つまり仙人ともなれば、寿命は常人の10倍にもなります。仙人の中でも力ある存在である勇は、魂に肉体が引っ張られており。常に全盛の肉体が維持されています。