ユイのリイニシャリゼ・ア・ラ・モード   作:阿羅本景

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都電に乗って息抜きにクラフトビールを飲もう(3)

「今日行くところはどこも、その場でビールを醸造しているお店です」

 目白通りを先導して歩きながら、今日のコンセプトを説明する。学習院大学の横の、煉瓦の塀と緑の鮮やかな並木の歩道は、すっきりと清掃されていた。

 春先生が大学の敷地の方をしきりに気にしているようだった。

「そういえば、春河童先生は学習院に行かれたかったんですよね?」

「それはもう、皇族の通った伝統ある学習院は憧れましたぁ。学習院卒ってブランドは、名門お嬢様の証だなぁと」

 二人の話を聞いて、私は頷く。確かに学習院卒と聞くと成城や成蹊と同じくらい、お坊ちゃまお嬢ちゃま? と想像してしまう。

 そんな歴史のある学習院のほぼ目の前に、クラフトビールの醸造所とバーがあるのだ。

 最初、ここの場所を知った時は「なぜそんな恭しい場所にビアバーを作ったの?」と驚いたものだった。

「まずは一軒目」

 目黒警察署を抜けた先のビルの一階。昼なのに歩道に、ビールを誘う立て看板が立っている。

 ここは黒を基調としたスタイリッシュなスタンディングバーで、開け放たれたドアの向こうには、醸造所のステンレスタンクが見え隠れする。

 目白のInkhornBrewing。醸造所とビアバーを兼ねた、ブルーパブだ。

「これが! 都会のクラフトビール醸造所!」

 ドアをくぐった春先生は驚きの目で店内を見回している。

 私も最初に訪問した時、繁華街でもないこの地域に、こんな格好いいブルーパブが出来たことに驚いたものだった。

 店ごとに意外性があることも、ブルーパブ巡りの楽しみだ。

 きょろきょろする春先生と対照的に、テーブルに陣取って準備万端の大山さん。もしかして一度ここに来たことがあるとか?

 私はカウンターから振り返って、二人に呼びかける。

「このお店はキャッシュオンデリバリーなので、こちらで注文を」

 南国の鳥を模したウォールペインティングと、ステンレスのタップの並んだカウンター。その奥には若い店員さんが、こんな早い時間からきっちり控えている。

 提供されるビールのリストが印刷されたクリップボードを私は眺め、オーダーを告げる。

 ここは開業してから新しいビアバーなので、造るビールはウェストコーストIPAやヘイジーIPAのような新しいアメリカンクラフトなスタイルが得意だ。

 お勧めは……と春先生に言おうかと思ったが、止めておいた。

 初対面から先輩顔して差し出がましいのは、よろしくない。何を頼んで何を飲んでも、クラフトビールは時々に出会いと学びがある。

 目を細めてタップリストを眺める春先生が選んだのは、私と同じウェストコーストIPAだったので、安心した。 

 ……初手から9%あるインペリアルスタウトとか頼んだら、この先二軒あるんですよ!? とさすがに言わねばいけないところだ。

 大山さんもオーダーとグラスの受け取りを済ませ、スタンティングテーブルに並ぶ。

 ふと横を見ると春先生がハーフパイントグラスを掲げ、ビールの外見に好奇心の目を注いでいる。

「不透明な、オレンジ色のビール……!」

 ビールと言えば泡と透き通った黄金の液体。そのイメージと比較すれば、泡の少なく濁りすらある外見のビールは新鮮なのだろう。

 私はグラスを持ち上げ、呼びかける。

「では都電ビール巡り、一軒目スタートで!」

「「乾杯!!!」」

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