▼20A2年4月1日 アドマイヤグルーヴ
従妹のリンと同室になり、コミュ障に片足を突っ込んでいる私としては上々の滑り出しとなった。初日はトイレを占拠されつつも、翌日以降は二人でふらふらと学園内外を散策したり見学したり―――そしてとうとう今日の入学式を迎えた。
日本ウマ娘トレーニングセンター学園。
在校者数は2000人を数え、生徒は皆『トゥインクルシリーズ』に出場し活躍する夢を追っている―――否、義務を負っている。
日本で格式のある“G1”に出れるのは、その内数%にも満たず、その対象をG3以上の重賞に広げても多くて1割といったところであろう。
その夢、あるいは義務を果たせなかった者について語られることは少ない。近年はサポートの間口が広がったとは言え、誘導バや指導員といったレースに携われるものは僅かで、大抵は民間企業へ就職したり、地方へ転校したり、
故に今、入学式で船を漕いでいる隣席の
脇に控えている緑の服を着た学園長秘書のたづなさんの笑顔が怖い。先程からこちらを―――リンのカクカクしている頭部の方をにっこりと見つめている。
ダメだ、あの人を決して怒らせてはならない。私の本能がビンビンと危機を訴えている。アレは本当にヒトなのか?
舟を漕いでいる阿呆の脇腹を肘で突っつきながら、私は冷汗をかいている額をハンカチで拭った。
なんだよあの化物は。私のセンサーが先ほどからずっとアラートを鳴らしている。非常ベルどころじゃなく、なんなら空襲警報くらい鳴っている。
「もう食べられないよぉ。むにゃぁ……」
こいつ、いつまで飯を食っているんだ……。それほどウマ娘基準では食べないくせに。
壇上では頭に猫を乗せた女児こと秋川理事長が「祝福!」とか「激熱!」など二次熟語を駆使しながらの演説を終えようとしている。あの扇子は一体いくつ常備しているのだろうか。
二字熟語理事長の次はあの
全てのウマ娘が幸福に、か―――。
否定する気はさらさら無いが、ひねくれた私としては「だったらさっさと卒業して政治家にでもなれば良いのに」と思ってしまう。
ヒトでさえ生まれながらにして平等では無いのだ。ましてやヒト社会の片隅で生きるウマ娘が平等に、幸福に生きていけるということが果たして可能なのだろうか。
そりゃあトレセン学園でしか出来ないことだってあるだろう。だが世の中はトレセン学園より広く、世の中には格差社会の中で救われなければならない人が多くいることは間違いない。
私たちだっていずれはこの学園を卒業し、そうした広い世界へ出て行かなければならない。だからこそ学園では幸せにあって欲しい―――まぁ、言いたいことはわかるけどね。
そうこう考えているうちに生徒会長の演説も終わった。この後は外で有志による新入生歓迎イベントが開かれるらしい。
「リン、終わったよ」
「ふぇ……?」
「いつまでも寝ぼけてないで、目を覚ましなさい。歓迎イベントには行かないの?」
「行く!」
まったく、手のかかる従姉殿だ。同い年だというのに、妹たちと同じように感じてしまう。
リンと講堂を出ると、暖かい春の光と散りかけの桜に迎えられ、自然と凝り固まった背筋が伸びるような気がした。
「外は気持ちいいね〜。何だか少し走りたくなってきたよぉ」
リンも寝起きで気持ち良かったのか、独特の間延びする声で春を謳歌している。
「同感だね。歓迎イベントを開くチームによっては先輩と走ったり、新入生同士で競ってそのままチームの入部試験にするところもあるみたいだ」
「へえ~。マイは良く知ってるね」
「昔から知っている先輩が何人かいるからね。私は先輩方にあいさつに回るつもりだけど、リンはどうする?」
「マイが良かったらついて行きたいんだけどぉ、いい?」
「わかったわ」
「わーい!」
やはり無邪気な従姉である。
1000を超える新入生に紛れながらリンと共に講堂を出ようとしたとき、私は一人の栗毛のウマ娘とぶつかった。
「―――!?」
さて、ウマ娘というのは非常に繊細な種族である。特に五感が鋭敏であり、大きな音や匂いの変化に敏感であるのが特徴だ。
大きな音や匂いの変化―――つまり生命の危機に対して非常にセンシティブということだ。優れたウマ娘の多くはそうした危機に敏感だという。
私は昔から『ヤバい雰囲気』というのに敏感だった。小学生向けの大会でも『ヤバい』と感じるウマ娘が何人か居たし、そんな時は大体負ける。ちなみにその内何人かは最近の重賞戦線でよく聞く名前になっている。
スズカ先輩とエアグルーヴ先輩の時など言うまでもなく、今だによく膀胱が耐えたものだと自分でも感心しているくらいだ。
つまり何が言いたいかというと、眼の前の栗毛のウマ娘は『ヤバい』ということである。
一見すると周囲に紛れるくらい存在感は薄く、実際、私もぶつかる寸前までは彼女に対して警戒心を抱かなかった。しかしよく見ると脚元はとてもよく鍛えられているし、何よりヤバいのは彼女のオーラ。尊敬するエアグルーヴ先輩に勝るとも劣らない雰囲気に私は飲まれかけてしまった。
「―――ねえアナタ、大丈夫?」
黙り込んでしまった私を心配そうな顔で覗き込む栗毛のウマ娘。少し幼い顔立ちではあるが美人の類だ。目が大きくて羨ましい。
「あぁ、ごめん。ケガは無い?」
「うん、私は大丈夫だよ。じゃあね」
普通に見れば笑顔がとても眩しく、年齢の割に妙な色気のあるウマ娘だ。
彼女は私とリンを一瞥し、外へ出て行った。
「ほぇぇぇ。美人だったねぇ?」
「……そうね」
「あの子も強いのかなぁ」
「……そうね」
私の視線は彼女の背中が見えなくなるまで、彼女に釘付けになってしまった。何故かはわからないが、運命的な何かを彼女に感じたのだ。
これが私と終生のライバルとなる『彼女』との出会い。
・・・・・・Ω・・・・・・Ω・・・・・・
ウマ娘というのはカネがかかることでも有名だ。恐ろしい程の食費に加え、ウェア・シューズや蹄鉄を含むトレーニング費、ジュニアの大会に出るなら遠征費もかかる。あと普通の女の子でもあるから服に下着、アクセサリーなども買いたいという子は多いだろう。
だから許されるという訳では無いが、貧困家庭に生まれたウマ娘は食い扶持を減らすために施設に入れられたり、養子に出されたりすることもあって、何年かに一度は社会問題として提起されている。
低所得層向けの貸付金制度も自治体や金融機関によってはあるが、それとて単なる借金であり、いずれ
身体で払うと言ってもレースに出ることが出来なければそれすらかなわない。そしてレースに出るためにはチームに所属するか、自身のトレーナーを見つけなくてはならないのだ。
ちなみに私はどちらを選択すべきかまだ迷っている。
エアグルーヴ先輩のいるチーム・リギルに行きたい気持ちはあるけど、あそこはどうやら選抜制なので選ばれるかどうかは実力と運次第だ。
新入生を見た限り大半のウマ娘には勝てる気はしているものの、一部には化物のような気配を持った子もおり、彼女らと競合したらまず間違いなく負けるだろう。
私の隣でお上りさんのように辺りをキョロキョロとしながら、物珍しそうに周りのウマ娘を観察している従姉のリンカーンも一般的に見ればその化物の内の一人だろうが、それ以上にあそこでぼんやりと空を見上げている金髪のウマ娘とか、本を抱えた眼鏡のウマ娘とか。
ありゃ勝てない。少なくとも今は。
「マイ、あんまりキョロキョロしてると危ないよ」
「あんたに言われたくないわよ、リン」
「しかしウマ娘が多いねぇ。ねえ、チームってどれくらいあるのかな?」
「2,000人がこの学校にいて、その半分がチームに所属しているかトレーナーと契約しているかだから、10や20じゃきかないわ」
「ほええ……。ねえ、あの看板が立っている『スピカ』って、あの?」
「そうね、私の目的地の一つよ。あそこには小さい頃からお世話になってるスズカ先輩がいるから、後であいさつに行くわ」
「……入らないとダートに埋められちゃうの?」
「そんなワケ無いわよ」
「いや、でも、何が男性の足のようなものがレース場から生えているよ……?」
「……気の所為よ、多分。とっとと用事を済ませて離れましょう」
リンは不思議そうな顔をしてダートコースを見つめている。目線の先にはスラックスを履いた脚が土から生えている。
えぇ……?
戸惑う私。え? 私がおかしいの?
そんな私に声を掛ける人がいた。
「ようこそ、スピカへ! チーム体験、していきませんか!?」
○スティルインラブ
本作主人公の一人。可愛い。外見は朝比奈みくる的な感じだが、凹凸の少ない体型をしている。
※↑↑公式発表前に書いてたの。すごくない?w
アプリ風
アドマイヤグルーヴ★★★
成長率:スピード 10%、パワー 10%、根性 10%
適正:芝 A、ダート G
脚質:逃げ G、先行 A、差し A、追込 C
短距離 G、マイル B、中距離 A、長距離 F
固有スキル:???????
覚醒スキル:
レベル2 中距離直線
レベル3 乗り換え上手
レベル4 差し牽制
レベル5 気炎万丈
アドマイヤグルーヴのトレーナーは……
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ユタカさんでしょ
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おハナさんでしょ
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沖トレでしょ
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桐生院さんでしょ
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オリトレでしょ