まだ君のことを愛してる   作:桜霧島

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輝く真珠星と南極老人

 

 

▼20A2年4月1日 アドマイヤグルーヴ

 

 

「ようこそ、スピカへ! チーム体験、していきませんか!?」

 

 眼の前にはかの有名な日本総大将・スペシャルウィーク先輩がいる。

 

 この世代はまさに群雄割拠の時代だった。

ジュニア王者・キングヘイロー、黄金世代クラシック覇者・セイウンスカイ、日本総大将・スペシャルウィーク、グランプリウマ娘・グラスワンダー、クラシック級でジャパンカップを勝ち、凱旋門賞2着という偉業を達成したエルコンドルパサー―――などなど。

 出てくる名前が全員レジェンド級。短距離やダートを走った人たちもアホみたいな戦績を残している。

 

 チラシを持って勧誘しているのか、私達二人にも話しかけてきた。

 

「……あのー、見ていくだけでも如何でしょうか? 何なら私のニンジンを一本、いや半分あげますので」

「えぇっ!? 本当にニンジンをくれるんですかぁ!?」

 

 嫌に下手に出てくる先輩だ。そしてニンジンを対価にするな。エサにするなら減らすな。

 そしてリン、食いつくんじゃない!

 

「くっ……」

 

 まるで敵に捕らえられた女騎士のように断腸の思いという言葉を顔中で表現しながら、スペシャルウィーク先輩はリンと私にニンジンを一本差し出した。半分こしろということだろうか。

 こちらが悪いことをしている気分になるので正直止めてほしい。

 

 しかしニンジンってそんなに価値高いの? 私、おかしい?

 まぁいいわ。話を進めよう。

 

「いえ、私はサイレンススズカ先輩の知り合いで、入学のご挨拶に「スズカさんのお知り合いですか!? さあ、早くスズカさんのところへ行きましょー!」

「あ、あの……ニンジン……」

 

 サイレンススズカさんの名前に食いついてきた食いしん坊先輩は、ニンジンを引っ込めながら私達の手を取りターフへ駆け出していく。リンはニンジンを引っ込められたことにショックを受けている。バカなの?

 

「スズカさぁん!」

「どうしたの、スペちゃん……あら、あなたは」

 

 サイレンススズカ先輩もまたチラシを片手に勧誘をしていた。

 

「スズカ先輩、お久しぶりです」

「お久しぶりね、アドマイヤグルーヴ。合格おめでとう。隣の子は?」

「あ、同室で従姉のリン……リンカーンといいます」

「あ、あの、リンカーンです! よろしくお願いします!」

「……よろしくね。エアグルーヴのところへは行ったの?」

「いえ、これから伺うところです」

「今なら生徒会室にいると思うわ。でももう少ししたらリギルの方へ合流するかも。そう言えばあなた達、もう入るチームは決まってるの?」

「いえ、私は。リンは?」

「チーム? 特には考えてないかなぁ……」

「スズカ先輩方の勧誘の成果は如何でしょうか?」

「あぁ、それなら……」

 

 そう言うと遠い目をしてターフの方を見遣る。埋められた、恐らく男性トレーナーをブルマを履いたウマ娘2人が掘り起こそうとしている。

 

「スズカ先輩、ちなみにあの人は何を?」

「―――新入生の脚を勝手に触ったみたいで、ゴールドシップが……」

「ギルティ」

 

 どうやら碌でもない男が制裁を加えられただけのようだ。よし、もうこの場から離れよう。

 

「じゃあリン、次のところへ行くわよ。スズカ先輩、今後ともよろしくお願いします」

「ええ、あなたも栗東寮なのでしょう? これからよろしくね」

「お邪魔しましたぁ」

「えぇっ!? 帰っちゃうんですかぁ!? スズカさぁん、これだと一人も捕まりせんよう! この上は……」

「ダメよ、スペちゃん。彼女達には彼女達の意思があるんだから」

 

 ティルと共に挨拶をして場を離れる。スペ先輩は何故か麻袋と目出し帽を脇に抱えている。まさか拉致でもするつもりだったのだろうか。それにしても目出し帽は意味が分からないけど。

 

 ……帰ろう。

 

 

 

 

・・・・・・Ω・・・・・・Ω・・・・・・

 

 

 

 

「マイちゃん、次はどこ行くの?」

「うぅん……とりあえずリギルの部室の方へ行ってみようと思う」

「リギル」

「うん。この学園でも最強と呼ばれるチームのうちの一つ。何せクラシック三冠バが二人もいて、その他のメンバーも国内外での実績豊富。しかもチームに加入する条件は毎年春の選抜レースで優秀な成績を収めること。紛うこと無き一流の集まりよ」

「ほえぇ……」

「で、今から会いに行こうと思ってるエアグルーヴ先輩はその中の一人ってわけ。生徒会室に突撃するのは避けたいし、近くまで行って、居なさそうなら日を改めるわ」

「りょーかい」

 

 私達はグラウンドを横目で見ながら次の場所へ向かおうとするが、リンがグラウンドを見て足を止める。今はチーム・カノープスが練習している時間のはずだけど……

 

「リン、どうしたの、熱心に見つめて?」

「……いやぁ、ちょっと気になって」

 

 グラウンドでは青い髪のウマ娘が爆走している。

 なぜか鼻血を出して目をまわしている帽子のウマ娘。

 ホワイトボードを使って熱心に何か勉強している眼鏡のウマ娘が2人。

 その横にいるトレーナーと思しき男性は少し私の好みだ。腹黒そうなところが。

 

「アレが?」

「いや、まぁ、うん」

「確かに実績はあるチームだけど……」

 

 はっきり言ってイロモノだと思う。この世界で重賞を勝てるウマ娘がほんの一握りであることは重々承知している。あそこにいるのは上澄みも上澄みのメンバーなのだ。

 ツインターボ、マチカネタンホイザ、イクノディクタス、ロイスアンドロイス。あと一人足りない気がするが、誰もかれもがあのトウカイテイオーやミホノブルボンらと競い合った優駿だ。

 

 でもなぁ。

 

 いや、でもまぁ、どこか世間ズレ*1したこの子には合っているのかもしれない。

 カノープスは優秀で安定的な成績を残すウマ娘が所属することで有名なチームだし、リンカーンにとっても悪い事じゃないでしょ、多分。

 そういうことにしておこう。

 

 そんなことを頭の中で考えていると、後ろから声を掛けられた。

 

「おいっす~♪ うちの見学かな~?」

「……ナイスネイチャさん」

「おっ? 私の事、知ってくれてるんだ」

「そりゃ、まぁ……」

「うちに興味があるのはそっちの子の方かな?」

 

 ナチュラルに私が興味無いことを見抜かれてしまった。

 

「ほら、リン。自己紹介して」

「え? あ、ひゃい、リンカーンと言います!」

「行ってみる?」

「いいんですか!?」

「君……名前は?」

「アドマイヤグルーヴと言います」

「あぁ、あの……。で、アドマイヤグルーヴはどうするの?」

 

 どうしようか。確かにカノープスにはあまり興味が無いし、今日のところ私は特にチームに入ったりするつもりも無い。リンもまぁ、何とかなるでしょ。

 というか、『あの』というのが『アドマイヤ』を指すのか『グルーヴ』を指すのか、それとも私個人を指すのかが気になる。そんなに縁は無いはずなのにな。

 

「私は別用がありますので」

「そう。じゃ、この子は預かるわね」

 

 リンはいつの間にか現れたカノープスのメンバーとトレーナーに囲まれてワタワタしている。

 

 あれ……?

 

 ウマ娘はわかる。だけどこのトレーナー、さっきまでグラウンドの反対側に居たでしょ……?

 

「お前、見どころがあるな! ターボと勝負だ!」

「貴女からは運命的な何かを感じます。私たちのチームに所属するべきです」

「さぁ! ご唱和ください! えい、えい、むんっ!」

「うぇぇ……離してくださいよぉ」

 

 まぁいいか。

 

 不思議なことなど何一つないのですよ。この世界には。

 

 

 

 

 

 

 ―――しかし華やかなターフだ。

 

 このシーズン、ほとんど毎週末にG1を控えているし、クラシック期を走る子にとってはトライアルやリステッド競走もあり、当然のことながらこの場にはいないことが多い。つまり、ある意味"死に物狂い"の人間はこの場に居ないのだ。

 居ないと言うと語弊があるかもしれない。もしかしたら今週末のニュージーランドTや桜花賞に向けて調整しているウマ娘は居るかもしれないし、必死かもしれない。だけど彼女らは出場することが出来るのだ。

 その他大勢の、死に物狂いで未勝利戦や条件戦を戦う子たちは、おそらくこの場に居ない。

 

 だからこそ華やかなターフになるのだろう。

 

 ここに居るのは上澄みも上澄み。夜空に輝く一等星。

 

 果たして数年後、私とリンはこの場所に居るのだろうか。

 

 

*1
誤用





ドゥラメンテを出さない以上、アニメ3期の人たちは出てきません。
アニメ時空と史実時空をごちゃ混ぜです。

アドマイヤグルーヴのトレーナーは……

  • ユタカさんでしょ
  • おハナさんでしょ
  • 沖トレでしょ
  • 桐生院さんでしょ
  • オリトレでしょ
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