やはり俺の実力教室は間違っている   作:鳴撃ニド

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誰も傷つかない世界

今日はみんな何かが変だ。そう気づいたのは四時間目の授業が始まってからだった。

 

あんまり授業に集中してないみたいだし、なぜか時折比企谷君に怖い視線を向ける。そしてその比企谷君も、その視線を受けることが当たり前かのように授業を受けてる。

 

授業が終わると必ず比企谷君は席を立つし、神崎君は私の元まで話をしにやってくる。普段はそんなに喋らない神崎君が今日はやたらと饒舌に話題を振ってくる。

 

みんな、いつもと同じようでいて、どこか違ってる。その原因が何なのかはわからない。本当はこういう時、比企谷君に話を聞きに行きたいんだけど…いなくなってるからなぁ。次はお昼の時間だし、すぐに席を立って真っ先に比企谷君のところへ行けば大丈夫かな?

 

四時間目の授業が終わって、お昼のチャイムが鳴る。誰よりも早く席を立つ比企谷君。追いかけるために私も席を立つ。

 

「一之瀬。待ってくれ」

 

私が比企谷君を追いかけようとすると、後ろから神崎君が声をかけてきた。どうしよう。追いかけたいんだけど…

 

「一之瀬に話があるんだ」

 

「ごめん神崎君。後でもいいかな?ちょっと用事があって…」

 

やんわりと断りを入れる。でも神崎君は食い下がってきた。

 

「話はすぐに終わる。だが誰にも聞かれたくはない。少しついてきてくれないか」

 

「…わかったよ」

 

もう比企谷君の姿は見えない。昼休みに比企谷君に会うのは無理だと諦めて、私は神崎君の言う通りに後ろについていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩き、階段の踊り場まで来て、神崎君は足を止めた。そして私に振り返って、突拍子もない話をし始めた。

 

「一之瀬。仮にお前の家族、いや、友人でもいい。親しい間柄の人が困っていたら、お前はきっと助けるだろう。それで仮に自分が死ぬことになったとしても。違うか?」

 

「…そんなことはないと思うよ?でも、困ってる度合いに寄るかなぁ…?」

 

なんの話だろう。何かの比喩?そうじゃなかったとしても、そんなのよくわからないよ。

 

「あまりピンと来ていないようだな。じゃあたとえ話をしよう。お前の一番大切な人が崖に手をかけていて、今にも落ちそうな状況にある。しかし、一之瀬がそいつを崖から引きあげれば、そいつは助かる。ただ、その場合お前の足場が崩れて一之瀬が崖から落ちて死ぬ。一之瀬ならどうする?」

 

私は頭の中で妹が崖から落ちそうになっているところを想像する。そうなったなら、答えは一択だ。

 

「助けるよ。一番大切な人には生きてて欲しいからね」

 

「なら、次の場合はどうだ?お前の一番大切な人が崖につかまり今にも落ちそうだが、死にはしない。ある程度の怪我で済みそうだが、このままいけば間違いなくそいつは怪我を負う。しかし同様に一之瀬が引き上げればそいつは助かり、一之瀬は崖から落ちる。ただその場合、怪我の具合は落ちてみないと分からない。怪我の具合は崖から落ちるはずだった人物と同じかそれ以上であることは間違いなく、もしかしたら致命傷になるかもしれない。どうする?」

 

今度も頭の中で同じ状況を想像してみる。うん。だとしてもかな。

 

「助けるね。私が代わりになって、その人が怪我をしないで済むなら、それが一番だと思う」

 

「そうだろう。つまりそういうことだ」

 

神崎君の言いたいことはなんとなくわかった。私は多分、大切な人なら自分の怪我も顧みずに助けてしまう人間なんだろう。けれど、その話がどう重要なのかが全く理解できない。

 

「一之瀬。そういうことができる人間は多くない。普通人は我が身可愛さで、つらい思いをしてまで他人を助けることなんてそうそうしない。誇るべきことだ」

 

「あ、ありがとう」

 

「ただ一之瀬のような人間は、一之瀬だけではない。自己犠牲を顧みず、他人を救ってしまう人間は、お前だけじゃないことを知ってくれ。そしてお前はお前のような人間の理解者になってやる必要がある」

 

「…?何を言ってるの?」

 

「…ちゃんと見ておかないと、そういうやつは助けられない。特にひねくれている奴なんかはな」

 

神崎君は、これで終わりだ。時間を取らせて悪かった、といい、教室へと戻っていった。

 

私も同じように教室へと戻り、食堂ではなく購買でお昼ご飯を買うために机にしまってあった端末を取り出す。

 

購買へと向かう間も、購買で商品を眺めている間も、どうにも神崎君の言っていた言葉が頭に残ってしまった。反芻している間にチャイムが鳴ってしまい、お昼ご飯が食べられなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

放課後になった。本来なら、これから千尋ちゃんを傷つけてしまう憂鬱なイベントが待ち構えていたけれど、それはもう朝までの話。お友達宣言をされた今となっては、一緒にカフェで仲良くおしゃべりをする幸せな時間へと変わっていた。

 

千尋ちゃんはやっぱりまだ感情の整理が上手くいってないみたいで、その、恋愛的に好きだって気持ちがひしひしと感じ取れた。でも本人の口から直接そういった話は出てこなくて、友達として向き合うことを頑張っているように思えた。

 

千尋ちゃんの思いには応えられないけど、友達として仲よくしたいという気持ちは変わってない。だから、気付いていても口には出さない。本人が何も言わないなら、それを私が口に出すのは違うと思ったから。

 

注文した紅茶とチーズケーキがなくなり、少し混雑してきたころになって、私たちはすでに一時間ほど談笑していることに気が付いた。これ以上長く居座ると他の利用客に迷惑がかかる。そう思って千尋ちゃんに声をかける。

 

「そろそろ出ようか」

 

千尋ちゃんはうん、とだけうなずいて鞄を持って席を立つ。会計をしている間、私たちが座っていた席に入れ替わりで女子生徒数人が座りに行った。あれは多分Dクラスの子たちだろう。そして、妙な会話をしているのを耳にした。

 

「そういやさ、朝も話題に出たけどやばくない?誰だったっけ?あの目つき悪い奴」

 

「確か比企谷でしょ?正直引く。私がそうだったとしても趣味悪すぎ」

 

「ほんとそれ。そういう人がいるのは知ってるけど、身近にいること考えるとマジで鳥肌立つんですけど」

 

どうやら比企谷君の悪口を言っているみたいだ。ちょっと話の続きが気になったけれど、会計も終わり、千尋ちゃんに「行こう」と手を引かれると、流石にこれ以上とどまるわけにはいかなかった。

 

なんだろう。比企谷君が何か悪いことしたのかな?というより、他のクラスの人が比企谷君のことを話題に出したことが気になる。

 

入学してから聞いたことないもん。比企谷君が他のクラスの女子の話題に上がってるところ。それどころかこっちが話を振っても、「比企谷?誰?」とか言われる始末。逆にすごいと思う。一切話題に上がらず名前も認知されてないなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

千尋ちゃんと一緒に寮に帰っていると、途中であまり会いたくない人物に出会った。龍園君たちだ。

 

龍園君は私たちを見つけると、ゆっくりとこちらに歩いてくる。どうやら、待ち伏せされていたみたい。

 

「よう一之瀬。楽しそうだな」

 

「そうだね。二人で仲良くカフェで楽しんできたところだよ。それで、何の用かな?」

 

「おいおい、何か用がなけりゃ話しかけちゃいけないのか?俺達は同じ学校に通うスクールメイトだろ?談笑に混ざって何が悪い」

 

「他の生徒に言われればそうかなって思うけど。龍園君のことだからね。何か用がないと話しかけてこないだろうと思って」

 

「まぁ、そうだな。用がなけりゃわざわざこんな時間までお前らを待ってる理由がない」

 

龍園君は、悪びれることなく私たちをここで待ち伏せていたことを明らかにする。私は少し気を引き締めて、龍園君との会話を続けた。

 

「それで、私たちを待ち伏せしてまでの用って何かな?」

 

「ああ、それはもう済んだ。これ以上お前らに用はない」

 

「え?」

 

龍園君は何か聞いても、何かしたわけでもないのに用は済んだ、と答えた。いったい何が目的なのか見当もつかない。

 

「ククク。そう睨むな。今の俺はただの野次馬だ。お前が何も知らずにのうのうと幸せそうな面をしてるのを見に来たんだよ」

 

「…どういう意味?」

 

「さぁな。知りたきゃ自分で気付くことだ」

 

そういって、龍園君は取り巻きの人たちを連れて通り過ぎて行った。本当にこれ以上用はないみたい。取り巻きの中にいた伊吹さんも、「そんなにすぐに終わるならわざわざ連れてくんな」と文句を垂らしていた。

 

「…なんだったんだろうね?」

 

私は千尋ちゃんに同意を求めて適当に話を振った。けれど、千尋ちゃんはそれに反応しなかった。

 

ちらりと千尋ちゃんの顔を確認してみると、少し顔色が悪い。怯えたような表情で、少し冷や汗をかき青ざめている。相当龍園君が怖かったみたいだ。

 

「大丈夫?千尋ちゃん」

 

「あ、う、うん。大丈夫」

 

「安心して。龍園君は見た目は怖いけど、公共の場でもめ事を起こすほど頭が回らないわけじゃないから。皆がいれば少なくとも暴力は振るってこない。私がさせない」

 

私は千尋ちゃんの肩を優しくつかんで、落ち着くようにゆったりとした声で話しかける。けれど、千尋ちゃんが気にしていたことは、龍園君ではなかったみたいだ。

 

「ち、違うの。龍園君が怖かったわけじゃないの。ちょっと、思い出しちゃって」

 

「何を?」

 

「それは…」

 

千尋ちゃんが視線をそらして話しづらそうな表情を向けてきたので、慌てて私は距離を取って明るく振舞う。

 

「あ、ご、ごめんね。無理して話さなくていいから。…えっと、帰ろっか」

 

私がそういうと、千尋ちゃんはこくんとうなずいた。それから私たちは一緒に帰ったけれど、その間にさっきまでの楽しい雰囲気が戻ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ってきてから、龍園君の言葉が頭にちらつく。何も知らずにのうのうと幸せそうにしている。どういう意味だったんだろう?

 

文字通りに受け取るなら、私は何かから目をそらしていて、自分が受けるべき罰を考えてもいないっていうような意味になる。

 

そう考えて、私は過去に自分が犯した過ちを思い出した。まさか…私の罪に、龍園君が気が付いている?

 

私はぶんぶんと頭を振り、その考えを払しょくする。それはない。だって今まで誰にも話したことはないし、調べようにもネットで調べたらすぐに出てくるようなものでもない。私のことを深く調べようと思わなければ絶対に知るはずもない。

 

それに、仮に龍園君がその事実を知ったなら、顔合わせだけで済むはずがない。そのことで強請ってきてもおかしくないし、違うにしても切り札としてもう少し私にちらつかせるはずだ。もしくは、大々的に公表して社会的に私を抹殺するとか。

 

クラスで出た話題で私に関するものはなかったはずだし…いや、もしかしたら、クラスの子が気を遣って口にしていないだけで、他のクラスでは有名なうわさ話になっているとか?

 

そんなことはないだろうと思いつつも、私は携帯から学内ネット掲示板にアクセスする。最近はみていなかったけれど、最近の話題や噂なんかを知るにはもってこいだ。それに、学年で別れていたり、クラスで別れていたりするから他のクラスでの話題なんかを拾うのにも都合がいい。

 

直近で覚えている掲示板のネタと言えば、かっこいい男子とか、可愛い女子とかに異名をつけるのが流行ってたっけ。私も「お姫様」なんてつけられて、知ったときは顔から火が出るかと思ったよ…。

 

普段はクラス内の掲示板しか確認しないけど、学年掲示板に飛んで最近の話題を確認する。

 

「……えっ」

 

私は、その掲示板に書かれている内容を目にして、つい携帯を落としてしまった。それほどまでに驚いてしまった。そして、なぜそんなことになってしまったのかを考え、すぐに気づいてしまった。

 

私が目をそらしていた事実。受けるべき罪。今日の違和感。神崎君のあの言葉。すべてがピタリとあてはまった。

 

「…なんで、どうして」

 

どうして、こんなになるまで気が付かなかったんだろう。どうして、気付いてあげられなかったんだろう。

 

どうして、理解者になってあげられなかったんだろう。

 

私は申し訳なさと、罪の意識と、不甲斐なさに涙を抑えきれなかった。その場で膝から崩れ落ち、目尻からぽたぽたとたれるそれが、携帯の画面を濡らしていた。

 

「…ごめん、なさい。わたしの、せい、だよね…ごめん…ごめんね…比企谷君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、放課後。

 

呼び出しを受けて、俺は校舎の中でも目立ちやすい第一校庭の端にあるベンチに腰掛け、すでに読んだ小説を開いて目を向けている。何の意味もなく座ってるんじゃなくて小説を読みたかったからこのベンチ占領してるだけだから。と誰に言うわけでもない言い訳を用意するためだ。

 

もうそろそろ夏に差し掛かろうという時期ではあるが、日が沈むと流石に寒い。普段は二十分前に来たりすることはあまりないのだが、今回は待たせたらまずいと思い早めに来たのが仇となったようだ。

 

それに部活動で残っている生徒を除いて、誰も校舎には残っていない時刻であるというのに、俺に向けられる視線で痛い。昨日とはうって変わって一躍時の人になってしまったらしい。

 

しばらく活字に目を向けていると、目の前を何人かが通り過ぎる。俺の様にあまり他人に興味がない一年生か、もしくは上級生だろう。ちらりと本から視線をずらして顔を窺うも、どいつもこいつも待ち人ではない。

 

約束の時刻を十分は過ぎ、とうに体の芯まで冷え切ったころ、ようやく念願の相手が現れた。

 

その男の名は龍園。現在Cクラスを仕切っているリーダーで、今回俺が呼びだした協力相手。

 

今回は誰も引き連れず、堂々たる様子でベンチに手をついて、本を読む俺の隣にドカッと座る。そのまま懐からタバコを取り出して火をつけるんじゃないかってくらいその様子が様になっている。

 

「気分はどうだ?」

 

遅れて悪い、とかいう謝罪はない。むしろ遅れるのが当たり前。遅れて何が悪い。くらいの態度だ。心意気は学びたいがどうにも俺にはできそうにもないな。

 

「正直あんまりよくない。だがまぁ思ってたよりはマシだった」

 

「ククク。もう少し痛めつけてやったほうがよかったか」

 

龍園と表面的な会話をしつつ、手に持っている小説を鞄にしまう。それから学生証端末を手に取り、ポイントを振り込む操作をする。

 

「今残りのポイントを振り込んだから確認してくれ。これ以降いちゃもん付けても取り合わないからな」

 

「そんなに事を急いでどうした?校内一の嫌われ者に予定なんてないだろうが」

 

「予定はないけどあんまりお前と長話したくないんだよ。お前も噂の餌食になるのは嫌だろ」

 

「ハッ。確かにな。‥‥オーケー。満額だ。ポイントに関しては問題ねぇ」

 

龍園は端末を操作し、ポイントが振り込まれているのを確認すると不敵に笑った。

 

「ポイントに関してはってなんだよ」

 

「安心しろ。お前はきちんと役割を果たした。ただ今回の契約、忘れたわけじゃないだろ?学校側から干渉があった場合は、お前の名を出し全てを暴露する」

 

「ああ。それに関しては別にいい。ただ、なかった場合には決して口外するなよ」

 

「俺は口が堅いからな。問題ない」

 

不安しかないんだよなぁ…と心の中で思いつつも、つつがなく龍園との取引は終わった。時間にして約数分のことであったが、そのためだけに三十分も待たされたのかと思うと憂鬱になる。

 

龍園と別れ、寮へと戻り自室にて引きこもる。

 

端末を取り出し、ネットにアクセス。学年掲示板に書かれているものを調査する。

 

 

 

 

『やっぱ比企谷ってホモだったんだね。ホモ谷じゃん』

 

『正確にはゲイって言うらしいけどね。どっちにしても気持ち悪いけど』

 

『こういう普通じゃないやつが犯罪とか犯すんだよねー。早く消えてほしい』

 

『わかるー。目とかもう犯罪者のそれだもん。よくこの学校はいれたよねー。つーか消えてほしい』

 

『Bの比企谷ってやつマジでキモイ。今日なんて食堂で平田君のこと舐めまわすような目で見てた』

 

『うわキッショ。お前なんかが平田君と釣り合うわけねーだろ』

 

『なんか変なところで闘争心燃やしてるw』

 

 

 

「…目の当たりにすると結構きついなこれ」

 

誹謗中傷の文字を見て、俺は心を痛めるとともに、安堵する。今回の計画が上手くいったことに。

 

今回の計画。それは俺が同性愛者、俗にいうゲイという噂を流すことだ。

 

LGBTQ。性的マイノリティーの総括を指す言葉であるが、彼らに対する見方は様々あるといえる。

 

性なんて体の一部でしかないのだし、体にとらわれず、自由に恋愛をすべき。個性の一種なんだから尊重するべきで、社会的に受け入れるべきだという意見。

 

一方で自分の性別と同じ人を好きになったり、自分の性別に対して違和感を覚えるなんてどうかしている。そんなの異常だし、気持ちが悪いから止めたほうがいいという意見。

 

俺はどっちかといえば前者…というかどっちでもない、が正確な表現かもしれない。LGBTQという存在。世界中の人々がそれを認知し、うまく付き合っていくこと。受け入れる必要はない。ただうまくやること。共存すればいい。…って平塚先生が言ってた。

 

これでも響かないなら、そうだな。それぞれの恋愛の形があるから、それで何か言うのはお門違いだ。とでも言えばいいだろうか。ともかくそうありたい人がそうであって、そうありたくない人がそうでなけりゃ別にどっちでもいい。なんか「受け入れろ!」みたいなスタンスじゃなければ問題ない。

 

今は社会的にそういう性的マイノリティーを受け入れつつある時代。しかし、気持ちが悪い、という意見が捨てきれないのも忘れてはいけない。むしろ、そっちのほうが多いかもしれない。

 

口を大にして言っていないだけで、言う機会があれば、皆気持ち悪いと罵るだろう。仕方がない。それはマイノリティーの宿命なのだから。

 

特に中学、高校なんかではそうだ。普通を良しとし、異常を規制する日本の教育形態では受け入れがたいものがある。そのくせちょっと世の中を知った気になって、自分が正しいとか思っているやつがいるのが腹立たしい。聞いてるか?お前だよ千堂。

 

さらにここ、高度育成高等学校は完全全寮制、かつ外界とのコネクションが一切ない。つまり、閉鎖された世界なのだ。ここでは生徒たちの意見が民意となる。

 

さてここで問題です。運動ができて勉強もできるイケメンがいました。しかしスクールカースト上位の女子に嫌われてしまい、「気持ちが悪い」といわれてしまいました。周りの正しい反応は?

 

正解はみんなで「気持ちが悪い」と罵る、です。だいたいこういうもんなんだ。学校じゃ発言力のある陽キャの発言にみんなが賛同する。でなきゃ異端とみなされ、次の標的とされるから。

 

俺は俺がゲイという噂を流し、龍園たちに死ぬほど誹謗中傷をネットで叩かせた。すると民意は「気持ちが悪い」で定着する。

 

一之瀬に告白するはずだった誰かわからなかった女の子(朝話してた感じ千尋ちゃんという子らしい)もその噂を耳にすることだろう。そして、叩かれている俺を見てこう思ったはずだ。

 

もしもバレたら、同じ目に合う。と。

 

案外気づいていないもんだ。皆受け入れてくれているわけじゃないって。ただ何も言っていないだけだってことに。バレても環境はほとんど変わらない。みんな優しいから大丈夫だって。

 

だから、その理想を砕いてやった。そうすれば、もう告白なんてリスクのある選択肢はとれない。

 

非常に回りくどい手だったが、一之瀬も、千尋ちゃんという子も幸せそうな顔をしていた。告白はできずとも、友人として付き合っていく分には問題がないから。

 

そう。一之瀬の願いをかなえるためには、俺にできるのはこの方法しかなかった。

 

ふと神崎の顔が浮かぶ。あいつに協力してもらうために計画の一部を話す必要があった。確かその時、こういってたっけ。

 

 

 

 

『…本当に、その方法しかないのか?』

 

『ああ。これなら条件を満たせるし、時間もない中で一番手っ取り早い。これしかないだろ』

 

『うまくいくはずがない。事はそう簡単にはいかないし、失敗したらデメリットしかないんだぞ?』

 

『だが、成功したら願いは叶う。不可能が可能になるんだ。ならやるしかないだろ』

 

『そんないいものじゃない…どう考えても告白の一つを解決するためにしていいことじゃない…』

 

『…なら、他に方法があるのか?あるなら別にそっちでもいい。別に嫌われ者になりたいわけじゃないしな』

 

『…比企谷。どうして、そんなやり方しか思い浮かばないんだ?』

 

 

 

 

 

「…案外簡単だったろ?神崎…」

 

備え付けのベッドに横たわり、天井の蛍光灯をぼーっと見つめて口からこぼす。

 

「誰も傷つかない世界の完成だ」




なんかLGBTQの人に言われそうで怖い…。

こういうお話ですからね?真に受けないでくださいね?
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