やはり俺の実力教室は間違っている   作:鳴撃ニド

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被害者ではなく、人生のヒロインでありなさい

ノーラ・エフロン

(1941~2012)


ようこそ真の実力至上主義の教室へ

5月最初の学校開始を告げる始業チャイムが鳴った。すぐさま、星之宮先生が手に何かのポスターをもってやってくる。

 

「は~い。じゃあこれから朝のホームルームを始めます。だけど、その前に。みんな質問したいことがあるんじゃない?聞きたいことがあるなら今のうちよ~?」

 

星之宮先生がクラスに呼び掛けると、スッと一人、手を挙げる者が現れる。一之瀬だ。

 

「先生。今日は生徒全員にプライベートポイントが支給される日ですよね?確かにポイントは支給されましたけど、10万プライベートポイントでないのはなぜなんですか?」

 

「それはね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。みんながこの一ヶ月でしてきた生活態度を考えた結果、みんなのプライベートポイントの支給額が下がっちゃったの。でも安心して。過去の先輩たちの成績と比べても、このクラスは優秀よ」

 

そういって星之宮先生は黒板に各クラスの名前とその横にそれぞれ数字を書き出した。

 

Aクラス、940。

Bクラス、630。

Cクラス、490。

Dクラス、0。

 

・・・・0?

 

「この数値をクラスポイントって言います。毎月のプライベートポイントの支給額は、このクラスポイントに100をかけた数値が振り込まれるの。だから、みんなに振り込まれたポイントは、6万3千ポイントになってるはずよ」

 

俺は自分の携帯を確認する。具体的な数値はあんまり覚えていないが、たしか6万9千ポイントくらいのこってたはず。今のポイントは・・・・13万2千ポイントか。まぁあってそうだ。

 

だがそれだとするとDクラスは哀れだな・・・今月支給ナシってことだろ?いくら無料商品や家賃とかがただとはいえ、無理じゃね?普通に考えて。

 

「ポイントを増やすことはできるんですか?」

 

「もちろんよ。一番近いのでいうと、次の中間試験かな?みんなの成績次第だけど、最大100のクラスポイントが得られるわ」

 

つまりみんなの成績が良ければ、最大で給料が1万増える。そうでなくとも、7~8千は稼ぐことができそうだ。

 

「質問があります」

 

今度は一之瀬ではなく神崎だ。やはりこのクラスの中心はこいつらなんだろうな。

 

「いいわよ~」

 

「今のところ、A、B、C、Dの順にクラスポイントが低くなっています。これは学校側が意図したものでしょうか?」

 

「その通りよ。この学校は優秀な生徒たちの順番にクラス分けがされているの。Aが一番優秀で、Dが一番できない。だからみんなはこの学校で二番目に優れてるって判断されたってことよ」

 

物は言いようだが、4クラス中上から二番って、半分より上ってだけじゃないの?

 

そして、俺ってそんなに評価されてんの?結構ギリギリで受かってたわけじゃないの?

 

「そして、気をつけなきゃいけないことが一つ。皆は今Bクラスだけど、もしもCやDクラスが630クラスポイントよりも多くのクラスポイントを得てしまった場合、みんなはCクラスに降格。CやDがBクラスになるわ。逆にみんながAクラスを抜けば、Aクラスに昇格できるの」

 

このクラスポイントの順位に応じて、俺達はクラスが分けられているというわけか。ややこしい。

 

「他に何か質問がある人はいる?」

 

今度は誰も手を挙げなかった。それを確認すると先生は手に持ったポスターを黒板に貼り付ける。

 

「じゃあ最後に、この間の小テストの結果を発表するわね~。みんなよくできました。赤点は誰もいなかったわ。すれすれは何人かいたけど・・・」

 

「ちょっと待ってください。赤点ってなんですか?この小テストは今後の参考用だって・・・」

 

クラスの端っこの方にいる女子から質問の声が上がる。確かに、赤点があるとは聞いていない。

 

「ああ、ごめんね。勘違いさせちゃって。今回のテストに赤点はないわ。でも、中間試験、期末試験でどれか一教科でも赤点を取ると、その時点で退学になっちゃうの。今回のテストで言えば、39点くらいかな?」

 

「た、退学!?聞いてないですよ!」

 

「そ、そうだ!そんな説明受けてない!」

 

いま声を荒げて抗議している何人かのクラスメイトは、おそらく今回赤点すれすれの奴らだろう。正直言ってみっともない。第一、今回退学になるんじゃなくて、次から退学になるのだから、その時点でそんなに声を荒げる必要もないだろうに。

 

「そういわれてもね~。私にはどうにもできないから。でも大丈夫、テスト勉強頑張ればいいだけだから!みんな、頑張って!」

 

声を荒げていた奴らは、そういわれると反論することができずに静かに席に座った。そりゃそうだ。まさか学生が「勉強を頑張るなんて無理です!」なんて言えるはずもない。

 

そこからは普通のホームルームで、普通の授業だったが、いつもよりは雰囲気が暗くなっていたような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後。ホームルームが終わると同時に、誰が立つよりも早く、一之瀬が声を上げる。

 

「ごめん、みんなー!帰る前にちょっと話を聞いてほしいの!」

 

そういいながら、全員の視線を集めるように教壇の上に立つ。

 

「今日の朝、ポイントやテストについての話を先生から聞いたでしょ?それで、今後のクラスの方針を決めていきたいの」

 

一之瀬は黒板に「Bクラスの今後について」と大きく見出しを書く。

 

「帰るのは少し遅くなっちゃうと思うけど・・・協力してくれないかな?」

 

「さんせー!」

 

「委員長のいうことに従いまーす」

 

と、クラスメイトが次々に賛同の意を示す。流石は一之瀬。俺がやったら多分全員帰るだろう。

 

ちなみに、委員長とは一之瀬のことだ。なんか知らないうちに委員長になってた。っぽい。

 

俺が帰った後、放課後に残ってBクラスで勝手に委員会制度を作ってたらしい。そんで、一之瀬はこのBクラスをまとめる立場の委員長を拝命したんだと。

 

この間のカフェでそんな話を本人から直接聞いた。なお、他の役職の方は誰なのか、そもそも他の役職はあるのかは知らない。

 

「まず最初にポイントについてだけど、やっぱり増やしたいよね?」

 

いやそれ聞く?聞く意味ある?いや、ポイントいらないから楽したい、という意見でクラスがまとまっている可能性がないわけではない、か。いやないな。

 

「それはそうなんじゃない?問題はどうやって増やすかだよねー」

 

「中間で100ポイント近く稼げるって言っても、それ以降いつあるのかもわからないしな」

 

「とりあえずは勉強するしかないんじゃない?全員が100点近く取ればより多く稼げることは間違いないんだし」

 

さすがは上から二番目のクラスなだけある。積極的な意見交換に、的を射た的確な発言。会議は踊る、されど進まず、といった状況にはなりそうもないな。

 

全員が意見交換してる中で急に立ち上がって寮に帰るわけにもいかないし、俺は突っ伏して寝ることにした。

 

あれだから。俺が何か意見を出すと的外れなこと言っちゃったりして余計時間がかかるから、クラスのために俺は寝るのだ。分業ってやつ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・や・ん」

 

・・・・なんだ?

 

「・・・やくん・・・」

 

・・・・やくん?何か焼くの?焼いて美味しく食べちゃうの?

 

「ねぇ、起きて比企谷君」

 

起きてひきがや・・・・あっ。

 

「比企谷君起きて」

 

「あと十分(じゅうぶん)・・・・あと十二分(じゅうにぶん)に寝かせて・・・」

 

「もう散々寝たでしょ?意味わかんないこと言ってないで早く起きてよ~みんな帰っちゃったよ」

 

一之瀬は俺の体を揺らす勢いを強くする。しかたなく俺は眠い目をこすりながら上半身を起こし、ポケットに入れておいた携帯の電源をつける。げっ。もう6時半じゃねぇか。

 

「悪いな一之瀬。起こさせて。できれば次はもう少し優しく体を揺らしてもらえると助かる。体がバキバキだ」

 

「それ私のせいじゃなくて机で寝たからだと思うけど・・・」

 

教室を見渡してみると、本当に俺と一之瀬以外誰もいない。それどころか、あまり人の気配すら感じられない。

 

「もしかして、会議が終わってからずっと待っててくれたのか?」

 

「ううん。会議が終わった後、職員室に行って、生徒会に入るための条件とかいろいろ聞いてて・・・・鞄取りに戻ったら比企谷君が寝てたから起こしただけ。っていうか、比企谷君あれからずっと寝てたの!?」

 

あ、そうですか。恥ず。いやそうだよね。普通俺なんか待たないよね。でも一之瀬ならやりかねないなーとか思っちゃって。はい。すいません。

 

「気が付いたら寝落ちしてたんだよ。昨日夜更かししたからな」

 

「ふーん・・・・。まぁいいや。もう下校時刻もとっくに過ぎてるし、一緒に帰ろうよ」

 

俺が適当についた嘘を信じ、一之瀬は下校を共にすることを提案する。いつもならこちらも適当な嘘をついて断るが、もうこの時間になっているとつける嘘もない。

 

「・・・・そうだな」

 

仕方なく俺はその提案に乗ることにした。みんな帰っていて誰とも出会わないことを祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あん?お前は・・・・Bの一之瀬か。手下なんか連れていいご身分だな。ああ、セフレっていう可能性もあるか。お前の男の趣味は悪いみたいだな」

 

昇降口を出て、しばらく寮に向かって歩いていると、前から男二人、女一人のヤンキー集団とエンカウントしてしまった。

 

神はいなかった。もう祈るのやめよう。もはや祈ったことで悪化してるまである。

 

ていうか男の一人身長たかっ。グラサンもかけてるし、まるでボディーガードだな。

 

「そんなのじゃないよ。大切なクラスメイトのことを悪く言わないでほしいかなー」

 

「はっ。どうだかな。上っ面だけいい顔して、内心では他人を見下してるやつなんざいくらでもいるんだぜ?」

 

大いに共感できる。が、こいつと仲良くするのは多分無理だ。俺の脳内コンピュータがエマージェンシーと危険信号を発令している。今すぐ逃げよう。そうしよう。

 

「私は比企谷君のことを見下したことなんてないよ?」

 

おい。固有名詞を出すな。そこはクラスメイトでいいんだよ。目つけられたらどうすんだ。

 

「ちょっと龍園。さっさとやんないと不味いんでしょ。こっちだって早く帰りたいんだけど」

 

「なんだ伊吹。俺にかまって欲しいのか?」

 

「うっさい死ね」

 

ヤンキー(女)がヤンキー(男)に文句を垂れ、足蹴りをかます。余裕の表情で足蹴りを躱すヤンキー(男)は龍園という名前らしい。そして(女)は伊吹。危険人物リストに入れておこう。

 

「まぁいい。この学校のシステムはお前も朝聞いただろう?上に上がるには他のクラスの奴を蹴落とすしかない。つまり今の俺達Cの敵はお前らってことになる。首洗って待っておけ」

 

「そうだね。でも、私たちも上に行かなきゃいけないの。私たちも全力でやるだけだから」

 

なんだかどっちも視線合わせて火花散らしてるけど、やめてくんないかなー。仲よくしてほしいなー。なんて。いややっぱ仲良くしないほうがいいか。ヤンキーの仲間になんてなりたくないしな。

 

「ククク。楽しみにしておくんだな。Bの奴ら全員潰して俺の目の前で地べたをなめさせてやる」

 

「絶対にそんなことさせないから。負けるつもりもないし、もし負けてもみんなにそんなことさせない!」

 

「ふん。なるほどな。周りの馬鹿どもが、お前は優しさの塊だとかほざいてやがったが、あながち間違いでもなさそうだ」

 

一之瀬は冷静に返しているようだが、それでも龍園のあおりにすこし頭に血が上っていそうだ。普段出さないような大きな声を出し始めたあたり、そろそろ切り上げないと不味いかもしれない。

 

「おい一之瀬、そろそろ・・・」

 

「なら提案だ一之瀬。お前は見てくれは悪くねぇし、性格も申し分ない。お前が今、俺の目の前で「俺の女になる」って言って土下座したら、今後一切Bに手出ししない。そういったらどうする?」

 

俺の言葉を遮って、龍園がとんでもないことを口に出す。

 

「仮に私がそれをしても、龍園君がその約束を守ってくれる保証はないでしょ?」

 

「おいおい心外だな。俺は意外と義理堅いんだぜ?お前ひとりが犠牲になれば、みんなを守ることができる。かもな」

 

「それは・・・でも・・・」

 

「・・・・みんなって誰だよ」

 

俺は言葉にしてしまってから、しまったと後悔する。口を出すつもりはなかったが、つい口を開いてしまった。これ以上続ければ、一之瀬なら、もしかしたら体を売ってしまうかもしれない、というありえない思考にたどり着いてしまったからだ。

 

そんなことは起こりえない。冷静に考えれば、この場でのみのただの挑発。いくら相手がヤンキーだからと言って、そんなことをするはずもない。

 

だが、万が一。万が一にも一之瀬ならやる。それくらい、彼女は優しかった。俺が知る彼女はそうだった。たかが一ヶ月の付き合いだというのに、知った気になるなと言われるかもしれないが、だからこそ、言ってしまった。

 

全員の視線が俺に集まる。恐怖と困惑を感じながらも、俺は一之瀬に視線で「黙ってろ」と伝え、次の言葉を紡ぐ。

 

「友達か?クラスメイトか?母ちゃんに「みんな持ってるよ」って物ねだるときにいう、みんなか?だれだよそいつら。友達いないからそんな言い訳使えたことねぇよ」

 

「あん?急に何言いだしやがる。モブはモブらしく、さっきまでのように一之瀬の後ろに隠れてガタガタ怯えてろよ」

 

「龍園っていったか?お前のことなんて知ったこっちゃないが、取り巻きがいるってことは、少なからずこの一ヶ月で何かしらの成果を出した実力者であることがわかる。物騒なことを勝手に口走ることができるくらいには、Cでのお前の立ち位置は高いんだろう。運動神経も悪くなさそうだし、女性にもモテていらっしゃる。さぞやCでいい暮らしをしてるんでしょうなぁ」

 

「・・・・何がいいたい」

 

「そんな色々持っているお前が、自分のクラスで飽き足らず、何も持ってない俺達Bクラスの委員長様に手を出そうなんて、強欲なんじゃないの?人として恥ずかしくないの?」

 

「喧嘩売ってるってことでいいのか?」

 

「いやいやそんなことするわけないじゃないですかー。喧嘩なんかしても勝負はわかりきってる。お前が勝って俺が負け。無抵抗でみっともない男子高校生をボコボコにして、お前が哀れな優越感に浸れるだけだ」

 

「・・・・アルベルト」

 

そういうと龍園の横で待機していた取り巻きのうちの一人、ボディーガードことアルベルトが龍園と俺の間に挟まって見下ろしてくる。近くで見るとすげぇデカいし筋肉とんでもないな。パンチ一発でノックアウトかも。

 

俺は一歩後じさる。ここは監視カメラもあるし、暴力は振るってこないだろうとは思うものの、ヤンキーの考えることはわからない。あとのことを考えずにボコボコにする可能性もあるかも。ミスった。超怖い。

 

アルベルトが一歩進むたびに、俺は一歩下がる。

 

そういや口挟んでおいてなんだが、口喧嘩でも勝てたことないんだよなぁ。それが普通の喧嘩になったらもっと勝てないわけで。一之瀬が見てるからと言って力が開花するとかそんなこともない。どうせ俺の評価はクラスでそこまで高くないのだ。いまさら見栄はったってしょうもないし。

 

とかなんとか色々考えながら、数歩後じさったところで、龍園がため息をつく。

 

「やめだ。どうやら本当に口だけの雑魚らしい。ここで遊んでやってもよかったが、つまらない説教じみた戯言聞かされたせいで興が冷めた。いくぞ」

 

そういって龍園が俺と一之瀬の横を通り過ぎると、伊吹とアルベルトもそれに続く。伊吹はやっと終わる・・・とか小さい声で文句を言い、アルベルトはOK.Boss.と一言呟いていた。

 

龍園たちの姿が見えなくなるまで、俺達はその場に立ち尽くしていた。正直、まだ心臓がバクバクいってる。殴られるかと思ったわあぶねー。

 

「比企谷君、大丈夫?」

 

一之瀬は俺が危害を加えられてないか心配なようだ。

 

「ああ。別に暴力振るわれたわけじゃないしな。平気だ」

 

「・・・・助けてくれて、ありがとう比企谷君」

 

「助ける?別に助けたわけじゃない。むかついたから言いたいことを言って、そのせいで俺が怖い目にあった。自業自得だ」

 

「でも、助かったのは本当。あのまま龍園君が色々言ってきたら、もしかしたら、私一人が犠牲になるだけならって、乗っかっちゃってたかもだし」

 

あはは~と覇気のない声で笑う。本気でそう思ってるわけではないようだが、そこですぐに嫌だ、と発言できなかったところは指摘しておくべきだな。

 

「一之瀬。龍園が言っていた通り、お前はあくまでも、客観的に見て、普通の人間なら、美人だし可愛いし綺麗だと思う」

 

「え?あ、その、えっと・・・あ、ありがとう?」

 

「そしてお前は性格もいい。もしもBクラスが窮地に陥っているとき。今後龍園の様に、Bクラスを、もしくはお前自身を救ってやるから付き合わせろ、とか言われるかもしれない。そのとき、迷わず断るという選択肢を身につけろ」

 

「龍園君の誘いに乗るつもりはなかったよ?」

 

「あそこで悩むそぶりを見せた時点でアウトだ。いいか?Bクラスにとって、お前は価値が高い。情報も少ない、今後の展望も見通せない、リーダーシップを取ることのできる人材も少ない。そんな状況でお前を失うことは、船の舵を失うようなものだ。いずれクラスは崩壊する。お前の言うみんなを救いたいなら、そのためにまずお前を守れ」

 

「そう、だね・・・」

 

一之瀬はまだ踏ん切りがついていないようだ。というか自信がないのだろう。頭ではわかっていても、その時にならなければわからない、と言った感じだ。もう一押し必要かもな。

 

「だったらあれだ。クラスメイトを全員お前だと思え」

 

「・・・・?どういうこと?」

 

「もし標的がお前じゃなく、クラスの誰かだったらどうする?そいつ一人を犠牲にして、順風満帆な生活を送れるように変わったとして、お前は素直に喜べるか?」

 

「そんなの絶対ダメ!・・・・あ・・」

 

「そうだ。どうせほかのクラスメイトも似たようなこと考える。一ヶ月見てて分かったが、このクラスはお人よしが多過ぎる。自分より他人。困っていたなら救いの手を。皆で取り組めば怖くない。そういうクラスだ。お前が不幸せになることは、クラスが不幸せになることと同義だ。だから絶対にそういうことはするな」

 

「うん、うん・・・・うん。そうかも。みんな優しいもんね。私が困ってたら、きっと助けちゃう。だから、クラスのために、自分を守る。うん。大丈夫、比企谷君。もう迷わない」

 

一之瀬の目からは迷いの色は消えていた。これで、何かあっても大丈夫だろう。

 

似たようなことがあって、それでクラスが崩壊したら、きっと後悔するだろうからな。目覚めが悪くならないように先手を打っておくべきだろう。

 

「・・・・ねぇ比企谷君」

 

「なんだよ」

 

「私がまた悩むことがあったら、相談していいかな?」

 

「・・・・・暇だったらな」

 

この後は一之瀬と何もすることなく、二人で寮に帰っていった。今日は本当に疲れた。色々あって頭がパンクしそうになるくらいに。

 

この時は次の日の朝、クラスの男子から一之瀬と一緒に帰っていたことについて根掘り葉掘り聞かれ、今日以上につかれることになるとは思っていなかった。そりゃああんなに長いこと道の途中でギャーギャーやってたら気づかれるか。ちくしょう。

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