閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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第十九章 母との再会、そして覚醒

父の助言によって覇王光竜の力を制御するべく半蔵学院の面々の協力のもと、自らの意思で精神世界へと趣いた

 

 

そして光牙は覇王光竜と戦うべく彼女にかけられた封印を解いた

 

 

身体の自由を取り戻した覇王光竜は真なる自由を手に入れるため、光牙を葬りさらんと攻撃を仕掛け

 

 

負けじと光牙も奮闘する。しかしいいとこまで追い詰めた矢先に覇王光竜は自らの持つ最大の能力で時を逆巻き、逆に光牙を窮地に陥れた

 

 

光牙を自身の全体を使って拘束するとともについに自らの自由を手にするために光牙の体から生体エネルギーを引き抜こうとする

 

 

必死に取られまいとあがく光牙だが、引き抜かれそうになるたび言葉に表せないほどの苦しみが襲う

 

 

もはやこれまでかと思われた時、不思議なことが起きた。光牙の体から無数の鎖が飛び出してきた

 

 

不意を突かれてしまい、覇王光竜は抵抗むなしく鎖で動きを封じられた

 

 

当の光牙すらも予想だにしなかったこの現象とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

光牙が覇王光竜と激しい戦いを繰り広げている時、佐介たちの視点では大変なことが起きていた

 

 

「こ、これはいったい何が起こっているのでしょうか?」

 

 

「…わからぬ。じゃが唯一わかることは向こうで何かしらのことが起こったということじゃろうて」

 

 

唖然とする3人が見ていたもの、それは徐々に光牙の体を光が侵食して行き、既に右半身は光に包まれたとともにまさに竜のような姿に変身していた。背中には大きな翼を生やし、腕と足には鋭い爪、そして顔半分は竜になっていたのである

 

 

だが、佐介たちが驚いていたのはそれだけではなかった。というのもそんな光牙の変身が半身を飲み込んだ後は急にピタッと動きが止まってしまい、今に至っているのである

 

 

「何が…光牙くんに起こってるのでしょうか?」

 

 

「…この状況、どう見ますかな学園長?……学園長?」

 

 

「っ?あぁ…すまない半蔵殿。何でしょう?」

 

 

「……いや、何でもない」

 

 

半蔵が意見を聞こうと語りかけると学園長は光牙のほうに気を取られているのか上の空だった

 

 

それに何かを感じとったのかそれ以上の追求をしなかった

 

 

「……」

 

 

学園長は半蔵から再び光牙へと視線を戻す

 

 

今の光牙の状況に学園長は心当たりがあった

 

 

「(……やはりお前がやつを押さえつけてくれているのだな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「("華憐")」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、精神世界では

 

 

 

 

 

 

「ぐっ、ぐうっ!!??」グヌヌ

 

 

「い、いったいなにがおこったんだ?」

 

 

突如出現した鎖によって覇王光竜は縛られ、身動きがとれずにいた

 

 

そんな現状に光牙は驚きを隠せなかった。なぜ自分の体からあんなものが飛び出し、それがやつを拘束しているのかと

 

 

『うが…光牙』

 

 

「っ?」ハッ

 

 

光牙はその時、自分の頭に直接語りかける声に気づく

 

 

「誰?……いや、知ってる。俺はこの声が誰なのか、この声は……まさか!」

 

 

すると光牙と覇王光竜の間に眩しい光が発生する

 

 

光が収まり、ゆっくりと目を開けてみるとそこには

 

 

1人の女性が地面より少し宙に浮いていた

 

 

その顔を見た光牙は驚きを隠せず呆然としていた

 

 

そんな光牙を見て女性は優しげな笑みを浮かべる

 

 

『…大きくなったわね。光牙』

 

 

「--さん……母さん…」ジワ

 

 

目の前に死んだはずの母が現れ、頭が状況についていけなかった

 

 

「華憐!おのれ貴様!!」

 

 

『少し黙っててくれるかしら?…今は大きくなった息子に会えてとってもいい気分なんだから』

 

 

二人の会話を他所に光牙が身体を振るわせながらゆっくりと母の方へとすがり寄ってくる

 

 

「母さん…母さん!」バッ

 

 

スゥゥ~

 

 

「…えっ?」

 

 

母を抱きしめようとする光牙だったが掴もうとした彼の手がそのまますり抜けた

 

 

「……っ?」アセアセ

 

 

『…ごめんね光牙。今、あなたの目の前にいる私は生前の私があなたに施した封印に組み込んでいた力の一部でしかない、だからあなたと話しをすることはできても…』スゥゥ

 

 

「あっ…」

 

 

『こうしてあなたに触れることもあなたの肌のぬくもりを感じることもできないの…それにあなたとこうして話しができる時間さえ限られてるの』

 

 

今度は自分から手を伸ばし、光牙に自分が触ることもぬくもりを感じられないということを出来ないのだと改めて教えた

 

 

「そんな……ぐぅぅ~!」

 

 

ずっと会いたいと願っていた母にようやく再会できたのに、すぐ目の前にいるというのに彼女は届かない場所にいる

 

 

それを知らされ光牙は悔しさで地面に拳を打ち付けた

 

 

『光牙、そんな顔をしないで、あなたは私にとって誇れる忍よ』

 

 

「違う…違うよ母さん…俺は無力だよ…母さんがいなくなって姉さんが記憶をなくして…俺は母さんの分まで姉さんを守るって誓ってたのに、結局それも中途半端で、おまけにあいつに精神を乗っ取られて仲間たちにひどいことをしてしまった……俺は、弱いんだ…」

 

 

大好きな母に恥る生き方をしてしまったと思い込む光牙は弱々しくそう呟く

 

 

『…確かにあなたも1人の人間。弱音を吐くときだってあるでしょう、でも、それでも私はあなたを誇りに思えるわ』

 

 

「どうして?どうしてなんだよ!…俺は、母さんが思ってるような強い人間じゃないんだよ?」

 

 

不甲斐ない自分を責める光牙に触れられないとわかっていても母は頬に手をあてる

 

 

『あなたを誇りに思えるのは何も力が強いからじゃないわ。そんなものよりも素敵なものをあなたは持っているのだから』

 

 

「素敵な…もの?」

 

 

『そう、あなたの持っている素敵なもの。それはその"優しさ"よ』

 

 

「やさ…しさ?」

 

 

『努力家でそのくせ不器用なとこもあるけど、心の中は優しさという慈愛の心に満ちている。だからこそ私はあなたを誇りに思えるの。…あなたは決して弱くなんかない。私が信じる立派な忍よ』

 

 

母からのその言葉に光牙の胸は貫かれた

 

 

すると徐々に母の体が今以上に透き通りはじめる

 

 

「母さん!?」

 

 

『光牙、私に見せてちょうだい…あなたが本当に強い忍だってところを……』シュゥゥ

 

 

「っ、母さん!!」

 

 

姿が消え、残った光のかけらが光牙の中に吸い込まれる

 

 

『私の残りの力をあなたに託すわ。さぁ、やつとのけりをつけるわよ』

 

 

「母さん。……あぁ!」

 

 

「ぐっ!!うぉぉぉぉ!!」バリィィィィン

 

 

痺れを切らした覇王光竜がようやく鎖を引きちぎった

 

 

「このわしをこけにするとは…許さんぞ!!」

 

 

怒りに満ちた叫び声をあげながら覇王光竜が光牙に向かって飛んでいく

 

 

「(母さん、俺強くなる。もっともっと、今以上に強くなってみせる。……だから)」

 

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

 

「…っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ジャキィィィィン!

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!?なに!?」

 

 

 

 

 

「っ…」

 

 

 

 

 

攻撃を仕掛けたはずの覇王光竜が逆に光牙からのカウンターによる反撃をうけてそのまま地面に倒れた

 

 

「お、おのれ!たかが小僧が調子にのるな!!」

 

 

覇王光竜が怒りに身を任せ弾幕を全力照射する

 

 

「俺は…負けない!!」

 

 

しかし光牙はあえて逃げず逆にその弾幕の中を駆け抜ける

 

 

弓で弾幕を弾きながらどんどんと迫っていく

 

 

「ま、まかさ!?」

 

 

思いにもよらぬ行動を目にし動揺を隠せなかったが、下よりそんな暇すら彼女にはなかった

 

 

何故ならあっと言う間に間合いに入られてしまったからである

 

 

「ばっ-!?」

 

 

「秘伝忍法!」

 

 

力を込めるとともに弓の刃の部分から高質量の粒子が放たれた

 

 

「螺旋光刃弓!!」

 

 

その弓と共に回転しながら弓の斬撃で覇王光竜に連続攻撃をする

 

 

「ぐああっ~っぐぅぅ~!おのれ~!」

 

 

大打撃を受け、覇王光竜は苦しむ

 

 

「コイツで決める!!」

 

 

勢いずいた光牙が弓をかまえ、矢で覇王光竜を射抜かんとする

 

 

「わしには時を逆巻く力があることを忘れたか!こいつでまた時を逆巻き、お前さまを蹴散らしてくれるわ!!」

 

 

覇王光竜が時を操ろうと身構える

 

 

『任せなさい!』

 

 

「母さん?」

 

 

その時、目には見えないが真由里が覇王光竜に向かって手を突き出したとともに

 

 

地面を突き破り、再び鎖が出現する

 

 

「なっ!?」

 

 

鎖が今まさにスライドしようとしていた覇王光竜の翼を縛り上げた

 

 

縛られてしまったがために能力が発動できない

 

 

「はあぁぁぁぁ!!!秘伝忍法・輝迅!!!」

 

 

 

 

ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

 

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブオオオオオオオォォォォォォ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

光の矢が触れるとともに炸裂する

 

 

 

 

「ぐううぅぅぅぅぅぅ!!!」ザザァァァァァ!

 

 

 

凄まじい衝撃によって覇王光竜は大きく後方へと吹き飛ばされた

 

 

 

「がはっ…ば、馬鹿な…このわしが?」アセアセ

 

 

 

自身がこれ程までに押されていることが信じられない顔をする覇王光竜

 

 

だが、舞い上がった水の壁を突き抜け光牙が接近する

 

 

「なに!?」

 

 

寸前に光牙が弓を右手に装着させる

 

 

「もうひと押しいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

そして光牙はそのまま弓を装着した右手を覇王光竜にぶつけた

 

 

刹那、二度目の衝撃によって覇王光竜は押しつぶされそうになる

 

 

「(こ、…この力はなんぞ!?…まさか、主さまにこれ程までの力があったとはっ!!!!!!??????)」

 

 

『っ!!』

 

 

さらにその隙に華憐が覇王光竜に腹部に鎖をつきつけた

 

 

『今よ光牙!!』

 

 

「あぁっ!吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

 

「ガガ…があぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

『やったわ!覇王光竜からチャクラを引きずりだしたわ!』

 

 

光牙の渾身の一撃によってついに覇王光竜は吹き飛ばされ、それと同時に先ほどの鎖に繋がれた覇王光竜のチャクラが光牙の中に入っていく

 

 

 

 

 

 

 

「……っ、こ、これは?」

 

 

次に光牙が目にしたのは自身の新たな力とその力がもたらした姿だった

 

 

「グウっ……お、お前さまぁぁっ!!」グヌヌ

 

 

「っ?」

 

 

「わしを怒らせおったなぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

自分の力を奪い取った光牙に怒り狂い、残っている力で再び光弾を放とうとする

 

 

「…」

 

 

それを見て光牙は驚く

 

 

しかし、エネルギーを溜めていく度に覇王光竜はそれに応じて苦しそうだった

 

 

「…お前はすごいやつだよ」

 

 

光牙はそうつぶやくとともに手を突き出す

 

 

するとともに空から光の剣が降ってきた

 

 

「こ、これは!?」

 

 

光の剣が覇王光竜の力と攻撃を封じた

 

 

それとともに再び門が閉じられ、鍵がしまった

 

 

「覚えておれよ……お前さまよ」スゥゥゥ

 

 

恨みの念を込めた一言をつぶやくと覇王光竜は門の中へと消えていった

 

 

「…安心しろ。決してお前を悪いようにはしなから」ボソッ

 

 

そんな彼女に光牙は静かに呟いたのだった

 

 

『やったわね光牙』

 

 

「ありがとう。…これも母さんのおかげだよ」

 

 

『…頑張ってね光牙、いつまでもそばで見守ってるから』スゥゥ

 

 

「……」

 

 

その言葉を最後に母からの声は聞こえなくなり、体から抜け出るとともに天に舞う光を見つめた

 

 

「ぜったいに後悔はさせない、だから、見ていてくれ母さん。俺の…生き様を!」

 

 

光牙は母に向けてそう誓ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っここは?」

 

 

「光牙くん!」

 

 

「佐介?それに父さんに半蔵…」

 

 

目を覚ました先には自分の帰還を喜ぶ佐介や父、半蔵の姿があった

 

 

「光牙くん良かったです!光牙くんに何かあったんじゃないかって心配で心配で!」

 

 

「お、おい佐介、ちょっとおちつけ」

 

 

嬉しさのあまり抱きつく佐介を光牙は引っペがそうとする

 

 

「…光牙」

 

 

「っ?」

 

 

「……よくやったな」

 

 

「…あぁ」

 

 

語りかける父の目には全てわかっているように感じられ、光牙もそれに気づき、静かにうなづく

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャン

 

 

 

 

『っ!!』

 

 

忍部屋に戻ってきた光牙たちを待っていたのは、焔紅蓮竜隊の面々と半蔵学院の選抜メンバー達だった

 

 

「こ、光牙…?」

 

 

沈黙を破り焔が声をかける

 

 

「みんな……心配をかけたな」

 

 

『……光牙(くん)(さん)!』

 

 

光牙が帰ってきたことに焔たちは喜ぶとともに彼のもとに駆け寄ってきた

 

 

「戻ってきたんだな…さすが光牙。それでこそだ!」

 

 

「良かった…良かったですわ」

 

 

「無事に帰って来てくれて、…なんやわしも心がホッとするわ」

 

 

「おかえり、おかえりなさい」

 

 

「やったわね。…ますます好きになったわよ」

 

 

嬉しさとともに涙を流していた焔たちを見て、帰ってきたことへの幸せを深く噛み締める

 

 

「あぁ……ただいま」

 

 

そんな彼女たちに今贈れる精一杯の気持ちをこの言葉に託す光牙だった

 

 


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