閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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第八章 苦手の克服をお手伝いします!

帰宅中のトラブルにあったものの佐介たちは寮へと戻り夕食を終え、それぞれ明日のためにすやすやと眠りについていた

 

そんな時、飛鳥は一人猫のパジャマを着て、ベットに横になりがら動物雑誌を読んでいた

 

「来てくれるか…佐介くんや斑鳩さんはそう言ってたけど。やっぱりなにか具体的な動物のイメージとかないと…」

 

飛鳥は本を閉じ、横になった体を起こす

 

「…こんなんじゃダメなのに」

 

自分の不甲斐なさに飛鳥はため息をつく

 

「こんなんじゃ一人前の忍にはなれない…それに佐介くんにも追いつけない」

 

確かに飛鳥にとって一人前の忍になるのは大きな夢だった

 

祖父である半蔵のような偉大な忍になりたいと彼女は思い修行を積んだ

 

だが強くなろうとしたのはそれだけではなかった

 

もう一つの理由、それは佐介に追いつくことだった

 

「この5年の間に佐介くんはすごく強くなってた。忍術や体術も私とは天と地ほどの差」

 

彼が修行の旅に出て自分もこの5年、必死に修行した。強くなって少しでも佐介に追いつきたかったから

 

なにより自分は佐介のことが幼き頃から好きだったから

 

以前、飛鳥にはある出来事があった

 

 

 

それはまだ佐介がくる2ヶ月前のことだった

 

その日、飛鳥は日の光に元気をもらいながらパンをくわえ、鼻歌を歌いながら学園の裏門

 

「あ、あの!」

 

ふと門をすぎたところで後ろから飛鳥は声をかけられた

 

声の主は野球部のユニフォームを着た丸坊主で背が高く日焼けで肌が焼けたいかにも体育系男子がいた

 

「な、なに?」

 

突然呼び止められたことに驚く飛鳥

 

「えーっと」

 

男子は次の言葉を考えてなかったのかおどおどする

 

「私、急いでるんで」

 

こんなところに長居したくない飛鳥はここから去ろうとすると

 

「すっ、好きです!!」

 

男子のその一言に飛鳥は目を丸くする

 

「へっ?」

 

「好きです。付き合ってください!!」

 

男子は頭を下げてもう一度そう言った

 

飛鳥は少しだまりながら男子を見つめるも

 

「…ごめんなさい、私あなたとは付き合えません!!」

 

申し訳なさそうに飛鳥も頭をさげる

 

男子はガーンっと言う感じにショックを受けていた

 

「どっ。どうしてですか?」

 

「私、他に好きな人がいるんです!!」

 

恐る恐る訪ねた男子に飛鳥はそうつげ

 

その後、男子は悔しそうに涙を流しながら朝日に向けて全力疾走していった

 

「…私の気持ちはあの日から決まってるから。佐介くんに負けないくらい強くなって思いを告げるって」

 

彼女はその思いを胸に頑張っていた

 

 

しかし現実はどうだ?

 

 

佐介との組手、はては武器を使用した試合ですら彼に勝つことはおろか決定打すら当てられず完敗

 

追いつくなんて、肩を並べるなんてとてもじゃない

 

飛鳥はそれを思うと心が張り裂けそうな感じになった

 

「…少し喉乾いたな」

 

飛鳥はこの気持ちから抜け出したい思いと喉を潤すため台所に向かう

 

暗い通路を歩き続けると

 

「あれ?」

 

台所に明かりがついていることに気づいた

 

飛鳥は恐る恐る中を覗くとそこにはコップに注いだお水をごくごくと飲みほしている佐介がいた

 

「佐介くん?」

 

「あれ、飛鳥ちゃん?飛鳥ちゃんも起きてたんだ」

 

佐介も飛鳥に気づいた

 

「うん。ちょっと喉が乾いて、そう言う佐介くんは?」

 

「僕?…僕も同じ理由かな」

 

頬をぽりぽりかきながら佐介は答えた

 

 

二人は場所をリビングに移す

 

「はい、ホットミルクだよ」

 

「ありがとう」

 

佐介に差し出されたホットミルクをすすると飛鳥の体は徐々に少しづつ温まっていく

 

「…ねぇ飛鳥ちゃん」

 

「ん、なに?」

 

不意に佐介が声をかけ飛鳥は首をかしげる

 

「やっぱり今朝のこと気にしてるの?」

 

「えっ!?」

 

佐介の口からそう聞いた飛鳥は驚く

 

「どっ、どうして!?」

 

「ふふ、わかるよ。子供の頃からずっと一緒にいたんだから。飛鳥ちゃんは思いつめるとすぐ俯く癖がある、だからわかったんだ」

 

全てお見通し、そう言わざる負えない、彼には隠し通せなかった

 

観念し、飛鳥は自分の思いを口にする

 

「私、佐介くんが羨ましい」

 

「僕が?」

 

「うん。この五年で佐介くんは成長してた。佐介くんはそうでもないって言ってたけど。私、一緒に過ごすようになって佐介くんがいかに強くなったかよくわかった」

 

飛鳥はコップを握り締める力を少しづつ強くしていく

 

「忍術もすごいし体術だってすごい、おまけにあの秘伝忍法動物だって。なのに私は未だに忍術も体術も半人前だし秘伝忍法動物だって呼び出せない」

 

とうとう飛鳥の目からぽろぽろと雫が落ちる

 

「佐介くんが旅にでたこの五年、会えない気持ちを抑え頑張って修行して佐介くんに追いつこうとしたけど、佐介くんは私の一歩も二歩も先を行ってる…やっぱり私には無理なのかな。佐介くんに追いつくなんて」

 

涙を拭おうにも次から次と涙が溢れていく

 

その時だった

 

佐介が飛鳥を優しく抱きしめる

 

「さ…すけ、くん?」

 

「ごめんね飛鳥ちゃん。飛鳥ちゃんに寂しい思いをさせてそんなに悩やませてたなんて知らなかった」

 

飛鳥の気持ちに気づいてあげられなかった悔しさを噛み締める佐介

 

「僕、なんてひどいやつなんだ」

 

「そ、そんな。佐介くんは何も悪くないよ!?」

 

申し訳なさそうに言う佐介に反論する飛鳥

 

「ううん。飛鳥ちゃんの気持ちをわかってなかったんだ。最低だよ」

 

「佐介くん」

 

「飛鳥ちゃん、約束する。これからは寂しい思いはさせない。これからは僕がそばにいる。君の力になるから」

 

そう言って抱きしめる力を強める佐介

 

「…ありがとう。佐介くん」

 

彼のやさしさに包まれ飛鳥は心からあたたくなった

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

忍部屋に来ると寿司屋のカウンターらしきものが

 

これには全員驚いていたが飛鳥と佐介には見覚えがあった

 

「まさか?」

 

「これって…」

 

「ぬふふふふ~来たな~?」

 

「「この声!?」」

 

するとどこからか笑い声が聞こえ

 

カウンターの下から白い髭を生やした老人が現れた

 

「じっちゃん!!」

 

「半蔵様!!」

 

斑鳩たちは飛鳥の言ったじっちゃんと言ったことに驚く

 

彼こそこの世界の忍の中で伝説の忍と言われた飛鳥の祖父にして佐介を引き取ってくれた人物、半蔵である

 

飛鳥は半蔵に抱きつく

 

「これこれ飛鳥、よさぬか」

 

そういうが満更でもない半蔵

 

ふと飛鳥の隣にいる佐介に目を向ける

 

「お~誰かと思ったらその顔、お主佐介じゃろ?」

 

「おっお久しゅうございます半蔵様」

 

膝をつき礼をする佐介

 

「相変わらず語っ苦しいやっちゃの~、しかし戻っておったのなら顔くらい見せにこんか」

 

「は、何分いろいろここに慣れるのに忙しくて。近いうちに出向くつもりでしたがまさかこんなところで再会するとは」

 

「元気そうじゃの~…それに、お主この五年で相当鍛えられたようじゃの~強い気を感じる」

 

「恐縮です」

 

飛鳥と佐介が半蔵との再会に花を咲かせていると

 

「まっ、まさかあの半蔵様にお会いできるだなんて!?」

 

斑鳩たちが半蔵の登場に驚いていた

 

「孫たちが世話になっておる」

 

それに気づいた半蔵が軽く頭を下げた

 

 

「みんなに昼飯をご馳走してやろうと思っての~」

 

半蔵はそう言いながら寿司を作るために準備を始める

 

「やった~お寿司だお寿司だ~」

 

「わざわざお店まで作ったの?」

 

「お前らをびっくりさせたくての」

 

お茶目心を見せる半蔵

 

「しかしここまでするのは大変でしたでしょう?」

 

「あ~骨が折れたわい」

 

佐介と半蔵はけらけらと笑う

 

「しかしわたくしたちにこのようなことをされてご実家の方は大丈夫なのですか?」

 

「じっちゃんは隠居みたいなものでお店はお父さんとお母さんがやってますから」

 

「…そうですか。ご両親が」

 

飛鳥の言った両親と言う言葉に斑鳩が俯く

 

「斑鳩先輩?」

 

佐介は斑鳩の異変に気づいて声をかける

 

「なんでもありませんわ。いいですね家族というものは」

 

「はい」

 

飛鳥は嬉しそうに頷くが佐介はなおも俯く斑鳩をちらっと見つめていた

 

「へいおまち、伝説の忍の特性太巻だぞ」

 

太巻きがだされ佐介たちは嬉しそうにそれをほうばる

 

半蔵と飛鳥、佐介は他の4人とは離れた場所で食べていた

 

「ところで飛鳥、召喚がうまくいかないようじゃの?」

 

「ごめんねじっちゃん」

 

「いいんじゃよ。焦ればいいというわけでもない。しかしそうなってしまったか」

 

半蔵の反応に飛鳥は首を傾げる

 

「召喚獣は家計に影響する場合もあっての~特に代々忍を営んできた家計にはその傾向が強いんじゃよ」

 

「じゃあ家はなにを召喚してたの?」

 

「それは…ガマガエルじゃ!!」

 

「がっ、ガマガエル!?」

 

半蔵の言ったその一言に飛鳥は青ざめ震え上がる

 

「幼いうちからなじませなかったせいでまさかこうなってしまうとはな。はてさてどうしたもんか?」

 

「半蔵様、よければ飛鳥ちゃんのカエルの苦手意識の克服の手伝い僕にやらせてくれませんか?」

 

ここで佐介が名乗り出る

 

「ほう?」

 

「飛鳥ちゃんが苦手を克服できるまで僕が修行に付き合うつもりです」

 

半蔵はふむと腕を組み少し考えると

 

「うむ。わかった佐介、お主なら任せても良いじゃろ。飛鳥を頼んだぞ」

 

「御意」

 

今回の件を佐介に一任した

 

その時

 

ドロン!!!

 

煙玉が転がると爆発し、あたりに煙を撒き散らし、中から霧夜が現れた

 

「お久しぶりです半蔵様」

 

「げほっげほっ、変わらんなお前も!?」

 

霧夜は大事な話があるということで半蔵を連れて行ってしまった

 

 

 

 

 

「さて、飛鳥ちゃん」

 

「うっうん」

 

「これから苦手を克服するための修行を行うよ」

 

「うっ…うん」

 

今飛鳥のカエル克服訓練が開始されることになった

 

了承を得たところで

 

「みなさんにもサポートお願いしますね」

 

「「「「はーい(ほーい)(あぁ)」」」」

 

斑鳩たちも協力することになって

 

佐介は印を結び始める

 

「忍法、変幻の術!!」

 

ぼん!!

 

と煙が発生する

 

「さっ、佐介くん?」

 

煙が晴れるとさっきまで目の前にいた佐介の姿が消えていた

 

「佐介くんどこ?」

 

飛鳥はもちろん他の4人もキョロキョロ探す

 

「ここだよ」

 

「へっ?」

 

下から佐介の声が聞こえ見るとそこには

 

ガマガエルに変幻した佐介がいた

 

ちなみに佐介は律儀に小さくなったため飛鳥のパンツが見えそうになったので見ないよう位置を変えて話しだした

 

「さっ、佐介くんなの!?」

 

飛鳥の顔にはいつも佐介に向けてた笑顔はなく

 

ただ目の前のカエルを怖がっている表情しかなかった

 

「これも飛鳥ちゃんの苦手を治すため。いくよ飛鳥ちゃん!!」

 

「ふえ~~~!!?」

 

 

それから特訓が始り佐介は飛鳥に飛び移ったりするもカエル怖さからすぐ放りだされたり叩かれてしまったりしていた

 

その後もみんなにも協力してもらいいろいろ試した

 

「「はぁ…はぁ…」」

 

飛鳥は精神、佐介は体力がぼろぼろになっていた

 

「やっぱり無理だよ。私、一生召喚獣を呼べないかも」

 

「諦めちゃだめだよ。僕、信じてるよ飛鳥ちゃんはやれば出来るって!!」

 

「佐介くん…うっうん」

 

再び修行を再開しようとした時

 

「危ない!!!」

 

突然斑鳩の声が斑鳩が向く方には巨大な岩が落ちてきていた

 

「なっ!?」

 

普段ならなんともないがカエルに変幻してるうえにこの距離では解をしようにもできなかった

 

「佐介くん!!!!!」

 

飛鳥は佐介を庇うかのように抱きしめる

 

今の佐介は自分の苦手なカエルであるにも関わらず飛鳥は身をていしてそれを守ろうとする

 

その間にも岩が徐々に近づく

 

「佐介、飛鳥、そのまま伏せてろ。おりゃあぁぁぁ!!」

 

間一髪で葛城が岩を砕き二人の危機を救った

 

「大丈夫佐介くん飛鳥ちゃん!?」

 

みんなが駆け寄る

 

「うん。大丈夫。ありがとうかつ姉」

 

「いいっていいって」

 

「それよりも飛鳥、やったじゃないか佐介が変幻したのとは言えカエルに自分から触ったじゃないか」

 

「あっ、そういえば!!」

 

先ほどの自分のした行動を思い返す

 

佐介の変幻体とは言え先ほどまであんなに嫌な顔をしていた苦手だったカエルが今はなんとも思わなかった

 

「やったじゃねえか飛鳥!!」

 

「うん。これも佐介くんのおかげで…ってそういえば佐介くんは?」

 

その頃佐介は水面に仰向けになりながらぷかぷか鼻血を出していた

 

「「「「「さっ佐介(くん)(さん)!?」」」」」

 

どうしてこうなっているかというとさきほど飛鳥が抱きしめた時、佐介の顔は飛鳥の胸に埋まってしまい

 

理性がぶっ壊れそうになった佐介は意識が飛んでしまったのだった

 

その時、なぜか気絶してるにも関わらず先ほどと同じようにドロンと煙が発生し、煙が晴れると

 

佐介は元の人間の姿にはなっていた

 

鼻から大量の鼻血を出しながら…

 

その後、見事飛鳥の苦手を克服させることはできたが佐介はその間の記憶が飛んでしまっていたのだった


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