光牙の父である学園長の頼みを聞き
蛇女子学園を乗っ取り、生徒たちを手駒にしている彼らの宿敵、道元の野望を阻止すべく
焔紅蓮竜隊は武装を整え蛇女へと乗り込んだ
校内を徘徊する怨櫓血の瘴気に侵され、暴徒化した生徒たちを掻い潜る光牙たちの前に次々と生徒たちよりもさらに怨櫓血の瘴気に侵され、刃を向ける選抜メンバーたち
自ら足止めを買って出た仲間たちのおかげで学園の中央にまでやってきた光牙と焔だったが、そんな2人を待ち受けていたのは選抜メンバーの筆頭であり、光牙の姉である雅緋だった
蛇女子学園の中央までやってきた2人の前に雅緋が立ちはだかる
光牙と焔は現選抜メンバー筆頭である彼女を前に息を飲む
「嬉しいよ光牙、お前の方から来てくれて…さぁ私の元に来るんだ」
優しげな顔を浮かべながら両手を広げ、光牙を招き入れようとする
だが、この時光牙は気づいていた。今自分に向けている雅緋の笑みが不安な何かを感じさせることに
それを感じとった光牙は雅緋の申し出に対し首を横に振る
「……どうして、どうしてそんな、なぜなんだ光牙!私のことが嫌いになったのか!」
「目を覚ましてくれ姉さん!今の姉さんは俺の知ってる姉さんじゃない!今の姉さんは怨櫓血の瘴気にやられておかしくなってるんだ!」
「何を言っているんだ、私は私、愛しいお前を連れ戻したいだけだ!」
すると雅緋は憎しみの目で光牙の隣に立つ焔を睨みつける
「……全部っ!」ゴォォォォォォォォォォ!
「「っ!?」」
「お前らのせいだぁぁぁぁぁぁ!!!!」】ブォォォォォォォォ
感情が爆発し、とうとう雅緋までもが怨櫓血の力に飲み込まれてしまった
そしてそのまま焔に向かって突進して来た
「光牙退がれ!」
迎え撃つべく焔が六爪を展開する
雅緋の攻撃を六爪で防いだ
「(くっ、なんて力だ!?)」グヌヌ
【「ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」】
しかし、怨櫓血の力によって憎しみや負の感情でパワーアップした雅緋にだんだんと押され始める
【「はぁぁぁぁぁ!!!」】ガキィン
「ぐあっ!」
力のかぎり黒刀を振りかぶった雅緋に押し負けた焔は吹き飛ばされるとともに後方の壁に激突した
「痛つつ…っ!?」
【「せぇぇぇぇい!!!」】
ドゴォォォォォォォォォン!
容赦のない追撃と衝撃が焔を襲った
「焔!くっ!」
この状況を不味いと判断した光牙が加勢に入ろうとする
「ダメだよ…光くん」ギュッ
「っ!?」
しかしその時、光牙は背後から気配を感じたとともにいつの間にか体の自由がきかなくなっていることに気づいた
「うふふふ…つかまえたよ光くん」ニマァ~
「む、紫!?」
その犯人は幼馴染である紫だった
紫は後ろから光牙を抱きしめるとともに生れながらにもつ禍根の力によって自身の髪の毛を操り
それらを手足に絡めつけることで光牙を拘束していたのである
「くんくん、くんくん、はぁ〜…この匂い、光くんの匂い」ハウアァ~
紫は花をひくつかせ、光牙の匂いを嗅ぎ、幸せに感じている様子だった
「…あれ~?でも、よくよく嗅いでみたら光くんからたくさんの女の人の匂いがする……どうしてかな?」ギュウッ
光牙から他の女性の匂いを嗅ぎとった紫が光牙を拘束する手を強める
「っ!?何をする紫!離せ、離してくれ!」アタフタ
必死に逃れようともがく
「…ダメだよ光くん。…あんな人たちと一緒にいたら光くんが腐っちゃうよ…光くんは私だけを見ていればいいんだよ。それが私たちにとって最善の幸せなんだよ」
甘い言葉で光牙を引き込もうとする
「違う…それは違う!!」ピカァァァァァァァァァン
「きゃっ!…めっ、目が!?」
力むとともに光牙の全身から光が放たれる
その眩しい光を直視してしまった紫は両手で顔を覆いながら後ずさりする
同時に自分の拘束が解けるや否や、急いで紫から距離をとる
しばらくして視力が回復した紫は光牙と対峙する
「なんで……どうして逃げるの光くん!」
「紫、目を覚ませ!今のお前は普通じゃない、怨櫓血の力に支配されてるんだ!」
光牙はなんとかすべく紫にも説得を試みる
「…嘘、そんなこと言って本当は私よりも雅緋さんにボコボコにされてるあの人のことが気になってしょうがないんでしょ?」
「紫…」
「あんな人!どうせ光くんのことなにもわかってなんだから!!」ボシュゥゥゥン!
「っ!!」バッ
突如、紫が怒りの声を上げるとともに禍根の力で作り上げた球体状のエネルギーを飛ばした
それを光牙はギリギリよけた
「光くんのことを一番理解してるのは私なの!あの人たちでも!ましてや雅緋さんでもない!」
「む、紫!」
「光くんが他の人と一緒にいることなんてもう耐えられない、取られるくらいなら……"殺してでも"手に入れるわ」
「っ!?」ゾクッ
紫のいうその一言に光牙は腹のそこから恐怖を感じた
「愛してるよ……光くうぅぅぅぅん!!!!」】ゴォォォォォォォォォォ
ついには紫も怨櫓血の力に支配されてしまった
「くっ!」
最悪の状況だった
とうとう忌夢だけでなく、姉である雅緋と幼馴染である紫の変わり果てた姿を見てしまった光牙は悲しみに打ち震えた
ドゴォォン!
「ぐぅぅぅ!!」ズザァァァ
「焔、大丈夫か?」
「あっ、あぁ…なんとかな」
服も体もボロボロの状態になってることから雅緋との戦いが苦戦していることがうかがい知れた
背中を合わせる2人の視線の先には雅緋と紫がそれぞれこちらに向かって歩みよって来ていた
「どうする光牙、このままでは先には進めないぞ?」
「かと言って一対一でもこれだ、下手に2人を相手にすれば返り討ちにあうのは目に見えている」
「だったら…考えることは1つだな」
「あぁ…そうだな」
軽い言葉をかわすだけで意思疎通をこなす2人は互いの目の前にいる相手に武器を構える
「見せてやろうぜ光牙!飛鳥たちのとこで修行した私たちの力を!」
「言われるまでもない」
「……行くぞ!」
「っ!!」
その言葉を合図に光牙と焔は真っ直ぐに突っ込んだ
ただ目の前にいる相手を目指して
「はぁぁぁぁぁ!!!」
「うりゃあぁぁぁぁぁ!!!」
【「「っ!?」」】
飛び込んだ勢いを乗せ、手にする武器を思いっきり振りかぶった
雅緋と紫は防御体制を取り、それを受け止めるも、あっという間に押されて行く
「「せいやあぁぁぁぁ!!!」」
【「「っ!」」】
2人の勢いに押し負けた雅緋と紫は先ほどの焔の時のように壁に強く激突する
「へっ、どうだ見たか、今の私たちはあの頃とは違うんだぜ」
「あまりなめてかかると痛い目を見るぜ」
「「さぁ、来るなら全力でかかってこい!」」
互いの相手に切っ先を突きつけながら2人は高らかに宣言する