閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

117 / 604
第二十七章  時を操りし者 

全ての希望を消しさり、世界を絶望に染め上げるかのように空を闇が包む

 

 

しかし、その闇をもかき消す程の眩く輝く白き光を纏いし救世主が今、立ち上がる

 

 

 

 

 

 

 

突如として現れ、蒼馬を吹き飛ばすとともに焔を救った光牙

 

 

その一部始終を見ていた道元は信じられないと言わんばかりの顔をする

 

 

「っ!おのれ~!光牙!!貴様、どこまでも私の邪魔をしおって!この死に損ないが!」

 

 

「道元、貴様は一度ならず二度までも生徒たちが学び愛するここ(蛇女)を戦場に変えた。…もう、これ以上は好きにはさせん。俺が今日ここで今度こそ貴様に引導を渡してくれる!」

 

 

道元を睨みつけながら光牙は高らかに宣言した

 

 

「こ、小僧が図に乗りおって!」

 

 

野望の達成まであと少しといったとこだというのにその行く手に立ちはだかる光牙を道元は憎々しく思いだった

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ…ドガァァァァァン!!

 

 

 

『っ!?』

 

 

すると地響きとともに光牙が吹き飛ばした方向から一つの影が飛び出し、光牙の前に降り立つ

 

 

【「……」】

 

 

光牙の前に再び蒼馬が立ちはだかる

 

 

「おお蒼馬!!よくぞ戻ってきた。蒼馬よ、今一度命令する!貴様の目の前にいる光牙を完膚なきまでにたたきのめせ!もう二度と私にでかい口が叩けなくなるほどにな!」

 

 

【「…わかり、ました…マスター……っ!!」】ゴォォォォォォォォォォ

 

 

命令を受け、蒼馬が全身から邪なる気を放ちながら光牙に相対する

 

 

「哀れだな。お前も道元に利用されてしまった者の一人だ。まってろ、すぐに解放してやる」キュイィィィィ

 

 

負けじと光牙も体から凄まじい力を溢れ出させる

 

 

それはまさに光と闇の対決のようだった

 

 

「行くぞ!!」

 

 

【「っ!!」】

 

 

光牙のその言葉を合図に戦闘が始まる

 

 

【「はあぁぁぁぁ!!!」】

 

 

 

ビュビュビュビュビュビュビュ!!

 

 

 

蒼馬が背中の4つの触手から一斉に光弾を放つ

 

 

「ふっ!!」

 

 

それに対し光牙は背中についている二対の翼で空へと舞いこれをよけていく

 

 

「っ!」スッ

 

 

攻撃が一旦止んだのを確認し光牙が前方に手をかざす

 

 

そして弓を展開し、反撃を開始する

 

 

「…ふぅ~っ」グィッ

 

 

空を飛び回りながら弓を構える

 

 

【「っ?」】

 

 

「はあっ!!」バシュン!

 

 

光牙が矢を放つ

 

 

【「ふっ!!」】バキュン!

 

 

それを見て蒼馬も光弾を放ち、この撃ち合いは引き分けに終わる

 

 

【「っ!」】グニュッ! バシュウゥゥゥン!

 

 

 

すかさず蒼馬が触手を1回り大きくさせるとともに飛んでいる光牙めがけて飛ばした

 

 

襲いかかる4つの触手の攻撃をかわしていく

 

 

「はあっ!!」スッ シャキーン!

 

 

そして弓についている刀身で触手を切っていく

 

 

【「ぬっ!?」】

 

 

「はああぁぁぁ!!!」

 

 

蒼馬が捉えるよりも素早く次々と触手に斬撃を浴びせていく

 

 

「秘伝忍法 輝迅・斬波!!」ジュゥゥゥン!!

 

 

そしてしめと言うかのように弓を大きく振りかぶり、そこから放たれた光りの斬撃波が4本の触手の先端を切り裂く

 

 

【「くうっ!」】シュルルル

 

 

「ふっ!!」

 

 

触手を切り落とすやいなや光牙は蒼馬めがけて急降下

 

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

 

【「っち!!」】

 

 

 

ジャキィィィィン! ジジジジジジジジ!

 

 

 

勢いよく振り下ろした弓の斬撃を両腕の甲殻で防ぐも、このぶつかり合いは光牙のほうが優勢だった

 

 

蒼馬がどんどんと押されていく

 

 

【「っ!」】シャキン!

 

 

分が悪いと判断した蒼馬が切られた触手の穴から刃物を展開させ、光牙を串刺しにせんとそれを突きつける

 

 

「ふっ!」

 

 

光牙は咄嗟に回避するとともに距離をあける

 

 

その際に矢を数発放つも蒼馬が触手を盾にしてそれを防ぐのだった

 

 

 

 

 

 

 

「(ど、どういうことだ!あの蒼馬が、こんなにも押されるだなどと!?)」

 

 

最強の兵士を完成させたと自負していた道元にとってこの状況は信じられないことの連続だった

 

 

「(くそっ!このままではまずい、何か……そうか、その手があったな)」

 

 

ふと目線を向けた道元がニヤリと不敵な笑みを浮かべる

 

 

「蒼馬!小娘どもを人質にしろ!光牙の抵抗力を削ぐのだ!」

 

 

【「はい、マスター!」】

 

 

「っ!?」

 

 

「きゃあっ!」

 

 

「詠!!」

 

 

道元の命令を聞いた蒼馬が標的を変更し、自分たちの戦いを眺めていた焔たちに襲いかかる

 

 

その中で蒼馬は詠を捕まえ人質にした

 

 

「詠お姉ちゃんを離せ!」

 

 

【「っ!」】

 

 

「ぎにゃぁっ!」

 

 

「未来!」

 

 

捕まった詠を助けようと飛びかかる未来を軽くあしらうとともに蹴り飛ばした

 

 

「うっ…ううっ!」

 

 

「くうっ!詠を離せ!」

 

 

詠の苦しむ声を聞いた焔が離すようにと怒鳴りつけるもそれを無視し、道元は光牙のほうに視線を向ける

 

 

「どうだ光牙、仲間が人質になってしまっては手も足も出まい、あはははははは」

 

 

「…」ギロ

 

 

「やはり貴様はあまい、仲間だの友情だのとくだらんものに執着するから、このようにいざという時に手も足も出せなくなるのだ。本当に愚かだな~あははははははははは!!!」

 

 

「くぅ~、外道が!!」

 

 

人質を取ったばかりか自分たちの思いや全てを侮辱する道元の侮辱の焔は声を荒らげ、他のみんなも口にこそ出さないがまったくの同意見だった

 

 

「……ふふっ」

 

 

「な、なにを笑っている貴様!この状況を理解できてないのか!」

 

 

「いいや、あまいのも理解できていないのも貴様のほうだ道元」

 

 

「ど、どういう意味だ?」

 

 

光牙の言っていることの意味が理解できず道元はキョトンとなり、焔たちもなんのことだかわからなかった

 

 

「あまり今の俺の力を見くびらないほうがいい。見せてやるよ俺の力を!」

 

 

そう言うと光牙は左手の籠手に装着されている不思議な形をした時計の針が刻み込まれたの奇っ怪なものを見せつける

 

 

「ふん、それがなんだというのだ!」

 

 

「…今、見せてやるさ」

 

 

企んでいるかのような笑みを浮かべながら光牙は右手の起動ボタンを叩く

 

 

すると時計の針が回りだす

 

 

「時空忍法・タイム・ストリーム!」

 

 

時計が動き出した瞬間、光牙の体を纏うアーマー部分が次々とスライドする

 

 

技が発動したその刹那

 

 

 

 

ギュイイィィィィン! ビュォォォォォォ!!

 

 

 

ジャキィィィィン!バゴン!

 

 

 

 

【「ーーーっなっ!?」】ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォン!!!

 

 

 

それは一瞬の出来事、突然、光牙が消えたと思っていたら蒼馬があっという間に吹き飛ばされてしまった

 

 

焔たちがハッとなるとそこには詠を抱えた光牙がいた

 

 

「大丈夫か詠?」

 

 

「はっ、はい///」

 

 

詠は自分が突然、光牙に抱き抱えられてることが恥ずかしく顔を赤らめていた

 

 

 

 

 

 

 

「ば、馬鹿な…なにが、一体何をしたというのだ光牙!!」

 

 

先ほどから起こっている現象を見続けもはや処理が追いつけないところまで来ていた

 

 

「馬鹿め、そんなことを敵に教える義理がある訳無いだろう」

 

 

「ど、どうして?」

 

 

「っ?」

 

 

道元の問いかけを論破した光牙だったが、ふと周囲に目を向けてみると焔たちもどういうことなのかを知りたがっているような顔をしていた

 

 

「…はぁ~、しょうがない、ならば特別に教えてやる。俺は修行の結果ある能力を手に入れた。それは「時を操る」力だ」

 

 

「「「「「っ!」」」」」

 

 

「と、時を操る…だと?」

 

 

「ふっ」

 

 

 

 

 

 

 

『タイム・ストリーム』

 

 

 

ギュイイィィィィン!

 

 

 

『はっ!!』ジャキィィィィン!

 

 

時が止まったかのようにゆるりと動く世界を光牙が駆け抜ける

 

 

そしてその隙きに弓の斬撃で詠を捉えている触手を切り裂くとともにすかさず蹴りを叩き込んだ

 

 

これが先ほど起きた現象の一部始終であった

 

 

 

 

 

 

この衝撃的発動に一番驚いていたのは道元だった

 

 

時を操る忍など今まで自分が見てきた忍たちにはなかった技であるがゆえに

 

 

「じゃあさっき焔を助けたのも?」

 

 

「あぁ、時を逆巻き、焔が殺されるという未来を塗り替えたのさ」

 

 

「す、すごい…」

 

 

「それが光牙さんの新しい力なら、えらいチート能力やね」

 

 

光牙の得た新たな力の凄さに皆が感心していた

 

 

 

 

「ぐっ、たとえ時を操ろうとも私の野望は誰にも邪魔させん!蒼馬よ!今こそ全ての力を使って光牙を抹殺しろ!!」

 

 

【「はい…マスター」】グヌヌ

 

 

瓦礫の中から這い上がるように出てきた蒼馬が光牙たちの前に立つ

 

 

【「ふぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」】ギュオォォォォォォ

 

 

すると蒼馬が残った3本の触手を地面に突き刺し体を固定する

 

 

そして最大限まで力を高めるとともに邪念を集め始め、徐々にそれは球体状になっていく

 

 

邪念を集めれば集めるほど邪念を孕んだその玉は大きく巨大化していく

 

 

「な、なんだあれは!?」

 

 

「ふふふ、あれこそ蒼馬の究極の技、名づけて「邪念地獄玉」だ!」

 

 

高らかに道元が説明したと同時に邪念地獄玉が完成した

 

 

「さぁ蒼馬よ!その力で奴らをこの世から消し去ってしまえ!!」

 

 

 

 

 

 

【「はあぁぁぁぁ…ふああぁぁぁぁぁ!!!!」】バシュウゥゥゥン

 

 

 

 

 

 

道元の呼びかけに応えるように蒼馬が地獄玉を投げつける

 

 

 

 

ゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

 

 

まるでブラックホールのように周囲のものを飲み込みながら光牙たちのもとへと飛んでいく

 

 

「まずい!このままじゃ!」

 

 

「は、早く逃げなきゃ!」

 

 

「無理よ!あれだけの大きさのものから逃げ切るなんて!」

 

 

目の前に訪れた危機に焔たちは何もできずただあわてふためくしかできなかった

 

 

「ふはははははは!これで貴様らはおわりだ!!」

 

 

 

 

ゴォォォォォォォォォォ!!

 

 

 

 

地獄玉がどんどんと迫り来る

 

 

「クソッ…ここまでこれたのに!」

 

 

「わたくしたちでは何も救えないんですの?」

 

 

「ここまで…なんか」

 

 

彼女たちの心が目の前に迫り来る絶望に押し負けようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……諦めるな」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 

だが、そんな彼女たちを守るかのように光牙が前に出る

 

 

「こ、光牙…」

 

 

「大丈夫。お前たちは俺が命をかけて守りぬく、約束する……俺が、"最後の希望"だ」

 

 

背を向けながら焔たちを勇気づけるように語りかける

 

 

そしてそれと同時に右手をピンと立てる

 

 

「今更何をしようと無駄だ!潔く散れぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

地獄玉が目前に迫ってきた

 

 

 

だが、先ほどとは打って変わり、焔たちは冷静だった

 

 

なぜなら彼女たちは信じているからだ

 

 

迫り来る絶望を自分たちを守るように立つ希望が打ち負かしてくれることを

 

 

「……見せてやる。再びこの手に宿ったいかなるものをも切り裂く、俺の剣を」

 

 

光牙が右腕を天に突き立てた瞬間、凄まじい光のエネルギーが光牙の右手を鋭い刃へと変える

 

 

その輝きに好悪するかのように彼の頭上の怪しげな雲にひと筋の光が差し込みだす

 

 

差し込んだ光が光牙を照らし出す

 

 

焔たちはその光景にただただ息を飲むだけだった

 

 

「秘伝忍法……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……光の剣(クレイブ・ソルシュ)」ブォン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまさに一瞬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光牙が手刀を振り下ろした瞬間、地獄玉の中枢に一筋の光の線が刻まれ

 

 

さらにその手刀は地獄玉だけでなく、それを放った蒼馬をも切り裂いていた

 

 

すると地獄玉にどんどんと亀裂が走り

 

 

 

 

ボバアァァァン!!!!

 

 

 

 

地獄玉は凄まじい爆発を起こし、消滅した

 

 

劇しい爆風があたりを埋め尽くす

 

 

やがて、爆風が晴れていく

 

 

すると光牙たちの目の前には蒼馬が佇んでいた

 

 

「……」

 

 

【「……うあぁっ」シュゥゥゥ

 

 

ゆっくりと体が地面に倒れていくとともに体から怨櫓血の力が抜け落ちた

 

 

「ば、馬鹿な…」アセアセ

 

 

蒼馬の敗北を目の当たりにし、道元は動揺していた

 

 

その時、蒼馬が倒れたことがトリガーとなり、学園の生徒たちを蝕む邪念が次々と消滅していき元の姿を取り戻していく

 

 

学園中から邪念が天に登っていくとともにその途中で次々と消えていった

 

 

「…ふぅ」

 

 

 

 

シュウゥゥゥゥゥ~

 

 

 

 

 

戦いが終わったことで光牙はゆっくりと一息つく、それとともに変身が解除された

 

 

「…時間切れか」

 

 

光牙は自身の変身が解けたことに気づくとぼそりと呟く

 

 

「くそっ!くそぉぉぉ!!よくも、よくもよくもよくも〜!!!」ダンダン!

 

 

その一部始終を見ていた道元が蒼馬の敗北により、悔しそうに地団駄を踏む

 

 

「光牙!よくも私の計画を邪魔してくれたな!覚えていろよ!次こそは必ず貴様に復讐してやるからな!」

 

 

「あっ、まて道元!!」

 

 

焔が逃すまいと追い掛けるも

 

 

「」シュン!

 

 

「っ!?」

 

 

間に合わず結局道元を逃がしてしまった

 

 

「くそっ!」グヌヌ

 

 

「すまない、時間切れにさえならなければやつを捉えられたのだが」

 

 

「いや、光牙のせいじゃない」

 

 

謝罪をする光牙を焔がなだめる

 

 

「とにかく、ことが終わったみたいだし今は学園長と合流しましょう」

 

 

「あぁ、そうだな」

 

 

春花の提案を受け。一同は学園長との合流に動き出す

 

 

そんな中、ふと光牙は後ろを振り返る

 

 

「(いつでもこい、何度来ようとも俺たちが必ず貴様の野望を打ち砕く)」

 

 

逃げ去った道元に対して光牙は布告を呟くのだった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。