閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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焔紅蓮竜隊編の最終回となります。ではどうぞご覧下さい


第二十八章 ただ一つの道へ

戦いが終わり、蛇女の生徒たちは正気を取り戻し、学園長のもと、生徒たち一丸となり速やかなる学園の復旧作業が行われていた

 

 

正気を失っていたとは言え学園を滅茶苦茶にしてしまったことを悔いる生徒たちはなすべきことを為さんと一生懸命だった

 

 

力自慢の生徒たちは瓦礫の撤去やまだ救出されていない生徒たちを助けにいったり

 

 

そうでない人たちも出来る範囲のことをしていた

 

 

「ほらそこ、腰が足らんぞ!もっと気合をいれろ!」

 

 

『はいっす!』

 

 

復旧作業をおこなっているのは何も生徒たちだけではない

 

 

今でこそ抜忍ではあるものの、大事な母校を復旧させてあげたいという思いから焔たちもそれを手伝っていた

 

 

「行くわよ~…それ!」

 

 

 

グググ…ガタン!

 

 

 

「もう大丈夫よ。みんな手をかして」

 

 

『はい、春花さま!』

 

 

「…未来、そっちはどうかしら?」

 

 

「問題ありませんよ春花さま、物はちゃんとここに」

 

 

春花は人命救助を手伝い、未来はその手伝いとして医療キッドなどを持って来ていた

 

 

「は~い、みなさん慌てないでくださいね。順番に順番に~」

 

 

「そない急がんでも料理は逃げへんよ~」

 

 

別の場所では詠と日影が生徒たちに詠特製の野草スープを振舞っていいた

 

 

それぞれの役割のもと、学園に力を貸していた

 

 

 

 

「お前たちはあそこを、そっちは向こうにまわってくれ」

 

 

『はい!』

 

 

光牙は紅蓮竜隊の中で過ごす中で授かった知誠を駆使して生徒たちに適切な指示を与えていた

 

 

「…」

 

 

皆が一丸となって学園を立て直そうとする姿に光牙は感銘を受けていた

 

 

「見事なものだなお前の支持は」

 

 

「鈴音か」

 

 

そんな彼の元に鈴音がやってきた

 

 

「正直、自分が情けない」

 

 

「っ?」

 

 

「学園があんなになってしまったというのに私には何もできなかった。本当にお前たちには感謝している」

 

 

「…ふっ、お前に褒められるのは悪い気はしないが、だが、別にお礼を言われる必要はない、俺たちにとって蛇女は色々なことを教えてくれた大切な場所だからな。言われなくても自然と体が動いてしまうのさ」

 

 

光牙のその言葉に鈴音は感服するかのように笑みをこぼした

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして復旧作業もようやく一段落した

 

 

「いや~働いた働いた~」ンン~

 

 

「みんなも体力の消耗こそあったけどそこまで対したことは無かったしね」

 

 

「本当、みんなが無事でなによりだったね~」

 

 

母校や生徒たちを救うことができて光牙たちは満足気だった

 

 

「こ、光牙」

 

 

「っ?」

 

 

そんな時、自分たちを呼ぶ声が聞こえ振り返るとそこには雅緋たち選抜メンバーがいた

 

 

「姉さん、紫、忌夢……体の方はもう大丈夫なのか?」

 

 

「あぁ…」

 

 

光牙の自分たちの体を気づかう問いに雅緋はうなづくもそのまま少し黙り込んでいた

 

 

「…すまなかった!」ペコリ

 

 

「姉さん!」

 

 

雅緋が光牙達に対して深々と頭を下げた

 

 

「今回は私たちが油断したばかりに道元にまんまとしてやられ、危く忍として、人として許されないことをしてしまうところだった。それをお前たちが救ってくれた。本当にすまなかった!」

 

 

仲間たちの分まで自分のできる精一杯の謝罪を述べる雅緋の姿はとても潔く、立派にさえ思えるほどだった

 

 

「頭を上げろ雅緋、そう畏まるな。私たちは自分たちが望むがままに行動しただけだからな」

 

 

そんな雅緋に焔はそう告げた

 

 

「私たちは道元のやつにここを好き放題されるのが気に食わなかっただけだ。お前がそこまでする義理はない」

 

 

「…しかし」

 

 

「いいんだ姉さん。……もう、いいんだ」

 

 

「光牙…」

 

 

光牙にも宥められ、雅緋はようやく顔を上げた

 

 

「…光牙、それに紅蓮竜隊のみんな。蛇女に戻る気はないか?」

 

 

すると雅緋は光牙たちに蛇女へ戻ってこないかと持ちかけてきた

 

 

「道元の野望が明らかになった今。お前たちが抜忍でいる必要はないはずだろう?…どうだ?」

 

 

この提案を聞いた紅蓮竜隊は少し沈黙した

 

 

だが、すぐにその答えを告げる

 

 

「すまない姉さん。嬉しい言葉だが、気持ちだけ受け取らせてもらうよ」

 

 

「こ、光くん」アセアセ

 

 

光牙の答えを聞いた紫が過剰に反応した

 

 

「……俺は覚悟を決めて抜忍の道を選んだ…そしてこいつらはそれを承知で俺についてきてくれた。もしここでその提案を受け入れてしまったら俺は自分の意思やこいつらの思いを踏みにじってしまう……そんなことはできない」

 

 

「…光牙」

 

 

彼の意思を聞いた紅蓮竜隊の面々はその決意に感服した

 

 

「それに俺の使命はまだ終わってはいない」

 

 

「使命?」

 

 

「…俺はカグラとなる。そしてこの世に蔓延る妖魔をすべて駆逐する。もう姉さんや母さんのような被害者を出さないために。それが俺の選んだ道だ」

 

 

光牙ははっきりと自分の意思を雅緋たちに告げた

 

 

「なるほど。…やはり私たちは姉弟なんだなと、それを実感したよ」

 

 

「っ?」

 

 

「光牙、お前がカグラを目指そうとしてるように私もカグラを目指している」

 

 

「お前もカグラを目指すのか。まぁ、当然私も目指しているがな」

 

 

共に目指すものがカグラであることを3人は打ち明ける

 

 

「ふっ、ならばその時はともに妖魔を戦おう」

 

 

「わかった約束だ」

 

 

「姉さんとともに戦える日を待っているぞ」

 

 

そして光牙たちはここに約束をかわした

 

 

「光くん」

 

 

「紫」

 

 

ふと気づくと紫が近くまで歩み寄ってきていた

 

 

「ど、どうしても戻る気はないの?」

 

 

「…すまない、これは俺の覚悟なんだ」

 

 

「そ…そんな」ショボーン

 

 

紫はその答えを聞いてとても残念そうな顔を浮かべる

 

 

それを見た光牙は彼女の頭を優しく撫でた

 

 

「そんな顔をするな。別にこれが一生の分れというわけじゃない、会いたいと思えばまたいつでも会えるさ」

 

 

「…光くん」

 

 

心配をかけまいと光牙が紫の頭をそっとナデナデする

 

 

この時、紅蓮竜隊のみんなが羨ましそうな顔をしていたのはNA✩I✩SYO

 

 

「俺のこと、信じてくれるか?」

 

 

「…うん、光くんの言うことなら信じる」

 

 

「そうか。そう言ってもらえると助かる」

 

 

「……でもね光くん」

 

 

すると紫が急に抱きつき、そっと耳元顔をよせる

 

 

「浮気は……許さないからね」ボソッ

 

 

「…えっ?」ゾワリ

 

 

それを言い残すと紫は離れたが

 

 

この時、光牙は紫の囁いた一言に背筋が凍った

 

 

「こ、光牙、大丈夫か?浮かない顔をしてるが?」

 

 

「っ!?な、何でもない!と、ところで姉さん…あいつのほうは大丈夫なのか?」

 

 

「あいつ?…あぁ、あいつか」

 

 

光牙の言うあいつとはとどのつまり蒼馬の事である

 

 

今回の事件の一番の被害者は彼だったため、少し気になっていたのである

 

 

だが、なぜか蒼馬の話題が出た瞬間、雅緋たち全員が目を泳がせ、苦笑いしていた

 

 

「どうしたんだ姉さん?」

 

 

「い、いや~…うん。あいつなら元気なんじゃないかな~」シラ~

 

 

「っ?」

 

 

どうにも歯切れの悪い言いまわしをする雅緋に小首をかしげていると

 

 

「なんだなんだ~?誰か俺の事呼んでんのか~?」

 

 

するとどこから声が聞こえ、その声を聞いた雅緋たちはあからさまに面倒な顔をしていた

 

 

「あっ!みんなあそこ!」

 

 

未来が指さすほうを見てみるとそこには

 

 

「ふ~~ん」バーン!

 

 

なぜかジョジョ立ちをしながらこちらを見据える男が

 

 

 

「「「「「「……誰~?」」」」」」

 

 

この時、紅蓮竜隊の考えは1つであり、全員が一斉に声を漏らした

 

 

「いやいやいや、何言ってんだよお前ら?さっきから俺の話題してたじゃんかよ?」

 

 

「…姉さん。まさかとは思うが?」

 

 

「あぁ……そのまさかだ」

 

 

徐ろに光牙が尋ねてみると雅緋は困った顔を手で隠しながら頷く

 

 

そして確信を得た光牙はあからさまに嫌な顔をした

 

 

「おいおい、なんだよお前ら人のことじっと見るなりなんでそんな顔すんだよ?」

 

 

「…すまん、あまりにもギャップが違いすぎたもんでな」

 

 

「そうか~?まぁ、ともかくいろいろ迷惑かけちまったけどほんと助かったぜ。ありがとな!あはははww」

 

 

光牙は強引に肩を組まれ、ギャップが違いすぎだと新底心で呟き、同時にそれはこの場の全員が思ったことであろうことであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かな森の中で光牙は1人佇み、周囲の気配を感じていた

 

 

聞こえてくるのは木々のざわめきのみ、鳥や動物の声すら聞こえない

 

 

 

ペキペキッ

 

 

 

そんな静かな空間が前方から聞こえる枯れ木の折れる音とともに崩れ去る

 

 

「……お出ましか」

 

 

光牙は全神経を研ぎ澄ませる。これより始まるは命懸けのこと、一瞬の隙も許されないことである

 

 

手に持つ弓を今一度、強く握り締める

 

 

すると前方から獣のような唸り声が聞こえるとともにそれはゆっくりとこちらに向かってきた

 

 

そして現れたのは顔に8つの目をつけた狼の姿をした異形の存在だった

 

 

「現れたなはぐれ妖魔!」

 

 

【ガウガウ!!】

 

 

自分の姿を見るやいなや一目散に飛びかかる

 

 

「はあっ!!」

 

 

【ガウッ!?】

 

 

だが、それよりも早く光牙が動くとともに妖魔に傷を入れる

 

 

「今だ!!」

 

 

「「「「「おー!!」」」」」

 

 

その合図を聞いた瞬間、周囲に身を潜めていた焔たちが一斉に仕掛ける

 

 

妖魔は焔たちの連携攻撃を受け、絶命した

 

 

「ふぅ~。危なかったですね」

 

 

「まさか修行中に出くわすとはな」

 

 

「でも、たった一匹に多勢は少しやりすぎたかもね」

 

 

「何言ってるの春花さま!こいつらは血も涙もない妖魔よ!遠慮は無用、情けも無用なんだから!」

 

 

修行の真っ最中に妖魔と出くわすというアクシデントに見舞われながらもチームワークで切り抜けたと浮かれていると

 

 

「…っ!」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 

しかし、和やかな空気が一気に張り詰める

 

 

光牙たちはすかさず臨戦態勢に移行する

 

 

すると周囲を不気味な気配を漂わせ、周りにはこちらを睨みつける無数の目が

 

 

「っち、仲間がいたのか」

 

 

「どうする?」

 

 

「どないもなにもやることは一つやろ」

 

 

「そうだな。よしみんな行くぞ!!」

 

 

その合図とともに紅蓮竜隊が一斉に妖魔に向かっていった

 

 

しかし、さっきとは逆に妖魔の数は圧倒的であり、長引くだけ体力が削られ、だんだんと押されていく

 

 

「「「「「きゃああぁぁ!!!」」」」」

 

 

「みんな!!」

 

 

ついに限界を迎え、焔たちが次々と倒されいく

 

 

【バウウウ!!】

 

 

「しまっ!うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

油断した隙きに光牙も妖魔の攻撃で吹き飛ばされる

 

 

「く、くそっ!」

 

 

倒れた自分の元に妖魔が近づくとともにその鋭く尖った爪を突きつける

 

 

「(ここまでなのか……カグラになると言っておきながらこんなところで終わるのか?)」

 

 

【バウウウ!!!】

 

 

とどめをささんと妖魔が爪を振り下ろした

 

 

 

ガキィィン!

 

 

 

しかし、妖魔の爪が光牙を切り裂くことはなかった

 

 

なぜなら、目の前には妖魔の攻撃を防ぐ見憶えのある人影があったからだ

 

 

「大丈夫ですか光牙くん?」

 

 

「佐介?」

 

 

そう、光牙のライバル。佐介だった

 

 

「はあっ!!」

 

 

【バウアー!?】

 

 

すかさず佐介が妖魔を殴り飛ばす

 

 

「どうしてお前が?」

 

 

「僕だけじゃありません」

 

 

佐介がそう呟いた瞬間

 

 

 

ビィィィィィィ!!! ボバアァァァン!!

 

 

 

上空から地面を切り裂くかのように放たれた光線と爆発によって妖魔たちが吹き飛んでいった

 

 

「ふぅ…危ないところでしたね」

 

 

「お前は…紫苑」

 

 

自分たちの前に降り立ったのは紫苑だった

 

 

「佐介ならずお前まで」

 

 

「俺もいるぞ」

 

 

すると後ろから声が聞こえ見てみるとそこには蒼馬が立っていた

 

 

「光牙、貴様には貸しがある。勝手ながら助太刀させてもらうぞ」

 

 

相変らずギャップが激しいなと言いたい気持ちもあったが今はどうでもいいことだった

 

 

「……ふっ、お人好しどもが随分と勝手なことを言ってくれるな」

 

 

軽く笑みをこぼすと光牙は再び立ち上がる

 

 

「俺の獲物を横取りしようだなどとはな」

 

 

「貴様の都合は関係ない、俺は妖魔を叩き潰すまでのこと」

 

 

「それにこういうのは早い者勝ちですよ」

 

 

「この世を蝕む悪しき存在は僕がこの手で消し去る」

 

 

四人がそれぞれの思いを口にした時だった

 

 

奥の茂みの方からドスン、ドスンという足音が聞こえ

 

 

そして現れたのは巨大な妖魔だった

 

 

巨大な妖魔が高らかに咆吼を上げる

 

 

「これはまたすごいのが出てきたな」

 

 

「ですが何の問題も無いでしょう」

 

 

「僕たちが力を合わせれば恐れるものなどありません!」

 

 

「ふっ、相変らずだな……だが、確かにな」

 

 

四人は横一列に揃うとともに一斉に武器を構える

 

 

忍として、友としての繋がりを持つ頼れる仲間たちがここに集った

 

 

「善と悪、2つの力を一つに重ね…」

 

 

「並み居る妖魔をなぎ倒す」

 

 

「仲間たちとの絆を胸に秘め…」

 

 

「守り続ける。みんなの明日を……みんなの笑顔を!!」

 

 

思いを武器に4人は走り出す。目の前に佇む巨大な妖魔へと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忍の誇りを胸に刻みながら…

 

 

 

 

 

 

 




緊急告知!


忍の生き様、トリロジー制作開始!


第一弾、エピソード相馬(蒼馬)!第二弾、エピソード紫苑、第三弾、エピソード光牙!


さらに、それらに伴い、本編とは別の新章も製作中


まだまだ忍の生き様は終わらない!


次なる物語を読者に届けるために、いざ、舞い忍ばん!

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