ただ、半蔵編でのシリアスな部分とは異なり、少々ギャップを感じるかもです
月閃女学館編 第一章 威厳を取り戻す道のりはまだまだ先のようです
朝、死塾月閃女学館では生徒たちが出会い頭に挨拶をかわしていた
「ご機嫌よう」
「ご機嫌よう」
「うふふふ」
生徒たちは他愛のない話しをしながら学館への道を歩いていく
「あら?」
「どうかなさいました?」
「彼方にお見えになるあのお姿は…」
1人の生徒が見つけたものに他の子達も目を向けた瞬間、生徒たちはパァっと嬉しそうな顔をする
彼女たちが見据える先には美しい銀の長髪の髪をなびかせる
例えて言うならまさに女神と言っても過言ではないほどの美貌をもち、体から気品溢れるオーラを漂わせるこの月閃女学館の誰もが憧れる存在、紫苑が今まさに自分たちの方へ向かってくるのだから
「「「おはようございます。お姉さま!」」」
「ご機嫌ようみなさん。今日もまた清々しい1日が始まりそうですわね」
紫苑がにっこりと笑うと周りからは黄色い声援が聞こえる
「お姉さま!」
「はい。なんでしょう?」
「わっ、私、ずっとお姉さまを推したいしておりました!ですから、その…よければ私と付くあってください!」
突然1人の女子から告白を受けた
周りからは「ずるい」だの「抜け駆けなんて卑怯よ!」などと言う言葉が飛び交う
そして当の紫苑はというと少し驚いていたようだがすぐに冷静になり、告白してきた女子に声をかける
「お気持ちはとっても嬉しいわ…でも、あなたのような可憐な花に、わたくしは相応しくないわ。いずれきっとわたくしなどよりもあなたに相応しく素晴らしい方が現れるはず、その思いはその方のために取っておいて」
「そっ、そんなことありません!お姉さま以外の相手など私には想像つきません!」
紫苑の説得に納得がいかないのか女子は反論する
「今はわからなくても、きっと現れるわ。わたくしを信じてください」ニコ
「おっ、お姉さま…お姉さまはずるいですぅ…」シュン
「落ち込まないで綺麗は顔が台無しですわよ」
紫苑は落ち込む女子の頬を優しく撫でた
「さぁ、もうおゆきなさい。早くしないと授業に遅れてしまいますわよ」
「はっ、はい……っ!」
紫苑の言うとおりに女子生徒は学館に向かって走っていった
目元に涙を溜めながら
それに気づいていた紫苑は少し複雑な思いにかられながらも気を取り直して校内へと向かった
「御機嫌よう、お姉様」
「はい。御機嫌よう」
「御機嫌ようございますお姉様」
「えぇ、御機嫌よう」
忍部屋に到着すると
「………はぁぁ」
とてつもなく大きなため息を吐いた
「なになに〜?どったの紫苑ちん?ため息なんて吐いてたら幸せが逃げるよ〜?」
「誰のせいだと思ってるのさ誰の?もとわとは言えば、すべての元凶は全部四季、君のせいじゃないか」
怒りとともに紫苑が四季を指差す
「あたしの?」
「そうだよ…はぁ…本当悲しいよ。どうしてこんなことに…どうして"男"の僕がこんな目にあわなきゃいけないんだ」
「えっ?紫苑ちんって男だったっけ?」
「何を白々しい、ずっと一緒に暮らしてて知らないなんて言わせないよ?」
紫苑と四季は生まれは別でも育った場所は一緒なのである
「本来なら僕は今頃別の学校に行ってたはずなのに…」
しかしそれは四季を含めた仲間たちに手まわしをされ、挙句強制的にこの月閃女学館に入学する羽目になったのだ
「どうしてくれるのさ?」ジド目
「おっ落ち着きなってば〜」
「………もうこうなったら今からでも別の学校に転入するか、そうだ。それがいい」
「まっまって紫苑ちん!バカなことはやめて!早まらないで!」
四季が行動に移そうとする紫苑に抱きつきそれを阻止する
「ちょ、離してよ四季、僕は今からでも男としての威厳を取り戻すんだから」
「ダメーー!!!もったいない、もったいないよ紫苑ちん!せっかく可愛いんだからそれを捨てるなんてバカなこと考えちゃダメだよ!!紫苑ちんはこれからも女の子として生きるべきだよ!」
「なにを馬鹿なことをいってるの!?」
「このままじゃまずい!みっみんなーー!!!大変だよ〜!紫苑ちんが〜!!!」
四季が自分だけじゃ手に負えないと感じて助っ人を呼んだ
「どうしました四季さん?」シジョ~ン
「…なにごとだ?」
「なにかあったんですか?」
「なになに〜?どうしたの〜?」
呼ばれて他のメンバーたちが駆けつける
「みんな、紫苑ちんを止めるの手伝って〜!!」
「紫苑を止める?…いったいどう言うことですか?」
「どうも何も紫苑ちんが女の子としての自分を捨てて男の道に走るって言うんだよ〜!」
「誤解を招く言い方をやめてくれないか?違うでしょ?僕はもとの、男として本来の道を歩もうとしてるだけだよ」
四季のオーバーな発言に突っ込みを入れる紫苑だったが雪泉たちは四季の考えに賛同する派だった
「なんですって、紫苑!早まらないでください!」
「うむ。そうだぞ!」
「馬鹿なことを考えるな!」
「紫苑ちゃん捕まえた~♪」
雪泉たちが紫苑を拘束する
「ちょ、ちょっと!?みんな離して~!?」
紫苑の叫びが学館中に響き渡るのだった
とりあえず紫苑を落ち着かせることには成功した雪泉
「はぁ…僕は悲しいよ」シクシク
しかし、紫苑の心は暗かった
「泣かないで紫苑。大丈夫ですよ」
悲しみに暮れる紫苑の両肩に雪泉が手を添え、優しく語りかける
「ゆっ、雪泉…」
「涙目を浮かべる紫苑もまたGJですから♪」シジョ~ン
「ゆ、雪泉のバカァァ~」ナキナキ
「あら?」
雪泉からの一言に紫苑は泣きながら彼女のもとから離れていった
「うぅぅ~。雪泉もひどいよ…僕の気持ちも知らないで。小さい頃はあんな感じじゃなかったのに四季の入れ知恵のせいで間違った方向に…」ショボーン
紫苑が嘆かわしいと言いたげに言葉を漏らしていると
「…?」
ふと、叢が何やら漫画を書いているのを見た
「…よし、あと少し。あと少しで完成する。これで続編ができあがるz「叢~?」ぬあぁぁぁぁぁぁ!しししししし、紫苑んんんん!!!!???なななななんだ急に!?びっくりするではないか!?」
「いや、こっちのほうがびっくりだよ?」
明らかに大げさと言わんばかりの慌てっぷりだった
「それ新しい漫画?どんなのか見てもいい?」
「だっ、ダメだ!断じて許さぬ!!」
そう言うと叢は先ほどまで書いていた漫画を紫苑に見せないように隠す
「ちょっとくらいいいでしょ?」ムスッ
「いっ、いや、これは…だな」
「見せてよ」
「やっやめるんだ!?」
漫画を見せてもらおうと手を伸ばしてきた紫苑に叢が抵抗する
するとその弾みで一枚の用紙がひらりひらりと紫苑の足元に落ちた
「なっ!?」
「叢の漫画、いったいどんな…んだ、ろう?」アセアセ
漫画用紙を手に取ってみてみるとそれは表紙のページだった
しかしそれに書かれたタイトルに紫苑は絶句した
「お姉さまとの禁断の恋…」アセアセ
タイトルにはそう書かれていて表紙からしてあっち系の作品なのだとわかった
しかし、今の紫苑にはタイトルはさほど問題ではなかった
問題なのはその表紙に書かれたお姉さまだった
そのお姉さまらしき人物が明らかに自分をそっくりそのまま表紙にしているのだから
「……む~ら~く~も~?」激怒
「あっ、あの…だな。これは…その…」アセアセ
「」ペシッ!
「にゅわ!?」ハズ
紫苑は叢からお面を叩き落とし、落としたお面を手にする
そしてお面が取れたことによって叢が顔を真っ赤にする
「いやぁぁぁぁぁ!!!なななな、なにをなさるんですか!おおおおおお願いですからお面を返して~!!」
真っ赤にしながら両手で顔を隠しながらお面を返すよう要求する
「ダメ、人に断りもなくこんなことをする叢は、罰としてしばらくそうするように」プンスカ
「そそそそそそ、そんな~~~!!!!????」アセアセ
叢にとってこれ以上の苦痛はなかった
「はぁ…叢もいい子だったのに…」ショボーン
またも落ち込む紫苑
そんな中、歩いていると
「おひめさまーがこんにちは♪森でトラさんとこんにちはー♪」
人形で遊んで遊ぶ美野里の姿が
「おひめさまいきなりハイキックー♪トラさんお空にぶっとんだー♪」
ロザンヒャクリュウハァァ!
トォ!、プリンセスキィィィック!
ヌワァァァァァァ!!
おひめさまとトラが言っていたような気がするが気のせいだ!
「楽しそうだね美野里」
紫苑は美野里に声をかけた
「あっ、紫苑ちゃん♪紫苑ちゃんもいっしょにあそぼーっ♪」
美野里が紫苑を遊びに誘う
「じゃあちょっとだけ」
座り込み人形たちを見つめる
「へぇ、よくできてるじゃ…ないか?」
おひめさまの人形を手にした紫苑の顔がまたも青ざめる
無理もなかった。そのおひめさまの人形が紫苑そっくりだったからだ
「いいでしょー♪夜桜ちゃんに作ってもらったの~♪」
「へぇ~…夜桜が……」
「こら、美野里。いつも言っているでしょう。ぬいぐるみを不用意に散らかすなと」プンプン
「あっ、夜桜ちゃんだー」
噂をすればなんとやらというかのように夜桜が現れた
「まったく美野里ときたら」
「…ねぇ夜桜?」
「はい、なんですか紫苑?」
「これ、なに?」黒ニコ
笑顔で尋ねるもその笑顔からはとてつもない恐怖を感じさせられる
「あっ…いや、あのじゃな…すまん、つい出来心じゃったんじゃ許してくれ~」アセアセ
必死にかつ心から土下座をする夜桜を見て紫苑は怒りを抑えた
「もういいよ。顔をあげて夜桜」
「ゆっ、許してくれるのか!?」
「今回だけだからね…も~う」プンスカ
頬を膨らませながらそう言う紫苑だった
みんな誰1人として自分を男性扱いする気がないことに紫苑は気を落とす
「はぁ…」
「諦めなって紫苑ちん。もう認めなよ~」
「いいや、僕は諦めないよ。いつか絶対に男としての威厳を取り戻してみせる!そのためにも僕は絶対に諦めない」
「まっ、無駄な努力だろうけどね」(笑)
めげずに今後も男と認められる努力をし続けることを誓う紫苑に
四季は気づかれないよう軽くツッコミを吐くのだった