閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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やっと月閃編を進められましたw


月閃女学館編 第十章 自分たちが信じるもの

学館からの任務によって紫苑たちは訪れた秘立蛇女学園に学炎祭を申し込んだ

 

 

戦いの火蓋が切られ、雪泉たちがそれぞれの相手と対峙する中

 

 

紫苑の前に現れたのは蛇女の特別転入生にして選抜メンバー、実質の筆頭である蒼馬だった

 

 

蒼馬の力は紫苑とほぼ互角、両者ともに激戦を繰り広げる

 

 

激闘の果てに紫苑は蒼馬を倒すことに成功する

 

 

しかし、蒼馬から受けたダメージがあまりにも大きすぎたため、紫苑は力尽きその場に倒れ込むのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇女との学炎祭を制してから数日の月日がたった

 

 

次の戦い前のつかの間の平穏ではあるが

 

 

みなそれぞれ次の戦いのために英気を養っていた

 

 

そんな中、紫苑は一人縁台に座りながら緑茶の入った茶碗を手に取ったままそのまま微動だにしていなかった

 

 

紫苑は蛇女での出来事を振り返っていた

 

 

一つ目は蛇女に訪れた紫苑たちの前に行方不明だった両備と両奈が現れたことだ

 

 

しかも二人は蛇女の生徒になっていた

 

 

なぜかと尋ねた自分たちに両備たちはこう返した

 

 

『両備たちには両備たちの目的がある。そしてそれを成すためには善より悪のほうが両備たちに合ってた。だから両備たちは蛇女に入った。それだけのこと』

 

 

悪に降った二人の行動が紫苑たちには理解できなかった

 

 

だが、そんな紫苑たちに両備はこう告げた

 

 

『あなたたちは口を開けば悪忍は悪だ、この世界の害悪だとか言ってるけど。はっきり言わせてもらうけど、あなたたちは悪忍のなにを知ってるというの?』

 

 

両備にそう問いただされた時、紫苑は一瞬言葉を失った

 

 

「…悪忍のなにを知ってる…か?」

 

 

今まで自分たちは悪忍は悪しき存在だと信じて疑わなかった

 

 

この世に蔓延る悪を根絶やしにすることが真の平和と信じていた自分にとって両備がいったこの言葉は衝撃的だった

 

 

さらに、自分が対峙した蒼馬も両備と同じようなことを言っていた

 

 

『俺から言わせれば貴様らの言ってることは、本の中身を見ずに表表紙のみで物事を語っているに過ぎない愚か者の戯言にしか聞こえん』

 

 

蒼馬の言葉もまた紫苑の心に突き刺さるものがあった

 

 

「僕らの正義は…間違っていたというのか」

 

 

考え込めば考え込むほど、紫苑の手が持っている茶碗を握り締める

 

 

「そんなわけない…僕たちが、黒影さまの掲げる正義が間違っているはずがない!…っ!?」パリィン! ポチャポチャ

 

 

感情のあまり持っていた茶碗を砕いてしまい、手にお茶が

 

 

「あつ、あつつつ!?」アタフタ

 

 

「紫苑?どうしました紫苑!?」タタタタタ

 

 

異変に気づいた雪泉が急いで紫苑のもとに駆けつける

 

 

「ゆ、ゆみぃ…」イタタ

 

 

「まぁ!?大変!?…じっとしていてくださいね紫苑!」コォォォ…

 

 

そういうと雪泉は紫苑の手を取るともう片方の手をその上に翳す

 

 

雪泉が力を込めると手のひらから微量の冷気を発生させ、腫れているところを冷やした

 

 

「…はい、これで大丈夫ですよ」

 

 

「あ、ありがとう雪泉」

 

 

「いえいえ、紫苑の綺麗な肌が赤くなってしまうのは忌々しき事態ですから」シジョーン

 

 

「ちょっとまって雪泉。今なんて言った?」ブルッ

 

 

火傷で腫れた手を冷気で冷やしてもらった紫苑は雪泉にお礼を述べたが

 

 

雪泉のおかしな発言に紫苑は少し悪感を感じるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、どうぞ」ソソッ

 

 

「あっ、ありがとう」

 

 

紫苑は雪泉から手当を受け、新茶を受け取った

 

 

しかし、紫苑は再び俯いた顔を浮かべる

 

 

「…紫苑、どうかしましたか?元気が無いようですが?」

 

 

「そ、それは……」

 

 

「……やはり、紫苑もあの戦いで何かを感じたのですか?」

 

 

雪泉が不安気な顔をしながら紫苑にそう尋ねる

 

 

図星と言わんばかりに言葉を失った

 

 

「…じつは私もなんです」

 

 

「っ?」

 

 

すると雪泉が唐突に紫苑に語りだした

 

 

「蛇女での戦いの時、私は雅非さんと戦いました。雅非さんは強くて私はどんどん押されてしまいました。それでもなんとか勝つことができました。…でも」

 

 

「でも?」

 

 

「私が止めを刺そうとした時、夜桜さんに破れたはずの忌夢さんが現れて私の前に立ちふさがりました。そしてボロボロになっているにも関わらず、雅非さんを逃がそうとしたんです」

 

 

「そんな…そんなことが」

 

 

雪泉の語った話しの内容に紫苑は驚きを隠せなかった

 

 

「雅非さんを守ろうとした忌夢さんの気持ち……果たしてあの気持ちを悪と呼べるのか?叢さんたちには言いませんでしたが、私もわからなくなってきたのです」ショボーン

 

 

不安そうな顔をしながら雪泉は紫苑の肩に頭をよせた

 

 

「紫苑、私たちの知る悪とはなんだったのでしょう?私たちは誤解をしていたのでしょうか?」

 

 

紫苑の袖を強く握り締め、涙ぐんだ目で自分を見つめる雪泉の顔を見て紫苑は戸惑う

 

 

そんな中、再び蒼馬の言っていた言葉が紫苑の脳裏に蘇る

 

 

 

『悪がすべて害だと思い込んでそいつのことをわかろうともしない貴様らでは平和な世界を作るなんて到底無理な話しだ……いずれお前たちはそれを知ることだろう……せいぜい、頑張る、ことだな……』

 

 

 

今、自分の目の前で悩み、苦しんでいる自分や

 

 

自分にその不安な気持ちを打ち明け戸惑っている雪泉の姿を見た紫苑は

 

 

蒼馬が言っていたことはこのことなのかと内心思っていた

 

 

 

「(雪泉たちがこんなにも悩んで苦しんでいる…どうして?どうしてなんだ!?悪をこの

世から無くすことが平和へと繋がる道のはずなんだ!)」グヌヌ

 

 

紫苑は自分たちの思っていた光景とは違うことに苦虫を噛むかのごとくにぎりこぶしを強めた

 

 

 

 

 

『それが本当に正しいことに繋がるのかな?』

 

 

 

 

 

 

「(黙れ…)」

 

 

 

 

 

 

『悪だからという理由だけで切り捨てようとするなんて間違ってます!』

 

 

 

 

 

 

「(黙れ…黙れ黙れ!認めない!悪忍にも僕らのような思いを持つ者がいるなんて!そんなのはただのまやかしだ!間違ってるのは君たちのほうだ!!僕らは間違ってなんかいないんだぁ!)」

 

 

 

 

 

 

自分を苦しめる佐介や蒼馬の残像を紫苑は無我夢中で消し飛ばした

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 

「し、紫苑、大丈夫ですか?すごい汗ですよ?」アタフタ

 

 

「っ!……ご、ごめん」アセアセ

 

 

雪泉の声で紫苑は我に帰った。そして雪泉は自分のハンカチで紫苑の汗を拭き取った

 

 

思い悩み、雪泉に心配をかけてしまったことに紫苑は申し訳なさを感じた

 

 

すると雪泉が紫苑の手に自分の手を重ねる

 

 

「…雪泉?」

 

 

「紫苑、ごめんなさい。私が悩んだせいであなたまで追い悩ませてしまいましたね…私はなんてひどい人なんでしょう」

 

 

「そ、そんなことはないよ!」

 

 

自分に申し訳なさそうに謝罪をする雪泉の言葉を紫苑は否定した

 

 

「君は何もなく彷徨っていた僕に居場所をくれたじゃないか!ひどい人なんかじゃない!雪泉は僕の大切な家族だ!」

 

 

「紫苑」

 

 

紫苑が自分をそんな風に思っていてくれていることが雪泉には嬉しく感じた

 

 

「嬉しいです紫苑…あなたがそう思ってくれているように私にとってもあなたは変え替えのない大切な家族ですよ」ニコ

 

 

「ゆ、雪泉………っ」

 

 

自分を家族だと言ってくれる雪泉の気持ち

 

 

そして彼女の天使のような微笑みを見た瞬間、少しの沈黙の後、自分が何のために戦うのかを再確認したかのような顔をするとともに

 

 

今度はこちらからそっと雪泉の手を手にとった

 

 

「紫苑?」

 

「ありがとう雪泉。今ここで僕は改めて誓うよ。たとえ半蔵や蛇女の人たちがなんと言おうとも、僕らが今まで歩んできた道を否定なんてさせない!平和な世界を作るという僕や雪泉やみんなと黒影さまの夢が間違いでないことを証明してみせる!この世界に正しい者たちが平和に暮らせる世界を作ることを必ず作り上げてみせることを!」

 

 

「…紫苑」ポワッ

 

 

「だから、僕に力を貸してほしい」ペコ

 

 

「…もちろんです。紫苑の夢は、私たちの夢でもあるのですから」ニコ

 

 

力を貸して欲しいと紫苑に頼まれ、雪泉は紫苑が自分を頼ってくれていることに嬉しさを感じながら紫苑の頼みを聞き入れた

 

 

「ありがとう。雪泉」

 

 

そして紫苑もまた自分を信じてくれた雪泉の想いに感謝するのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」ボトッ

 

 

皆がそれぞれの部屋に戻り、紫苑も自分の部屋に戻っていた

 

 

ベットの上で寝そびり、天井を眺めていた

 

 

しばらくすると紫苑は起き上がり、部屋にある本棚へと向かい、1冊の本を取り出した

 

 

中を開けるとそこには幼き日の雪泉と自分、そして黒影

 

 

さらには叢たちの写真まで貼ってあった

 

 

紫苑が手にしてるもの、それは黒影から預かっていたアルバムであった

 

 

アルバムの中の写真には雪泉や叢たち、そして黒影の笑顔が写っていた

 

 

「必ず、守ってみせる。そして雪泉たちがいつまでも笑顔でいられる世界を作り上げてみせる!」

 

 

そう紫苑が決意を込めるとともにアルバムを読み終わろうとした時

 

 

「っ?」

 

 

アルバムの最後のページになにかの封筒らしきものが貼ってあった

 

 

「なんだろうこれ?どうしてアルバムの中に?」

 

 

紫苑は不思議そうな顔をしながら封筒を剥がした

 

 

「こ、…これは」アセアセ

 

 

封筒に入っていたものに紫苑は驚きの表情を浮かべるのだった

 

 


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