紅蓮竜隊と戦いを繰り広げる紫苑たち
そんな中、光牙との戦いに終止符を打つべく、紫苑は学館から持ち出した霊石を自らに取り込み
自然エネルギーを極限まで高めた姿へと変貌し、その凄まじい力を見せつけながら、光牙を圧倒し、ついに彼を撃破する
こうして紅蓮竜隊との勝負は月閃女学館の勝利に終わった
紅蓮竜隊との戦いで勝利を手にし、紫苑たちは学館に戻って来た
そんな中、紫苑は一人修行場に居た
「……」
じっと目を閉じその場に佇む
「はぁぁぁ!!……烈風のソナタ!!」
スュイイイイ!
「水伯の
ゴボボボ…ビシャァァァァ!!
「聖火の
ボォォォォォォ!!
「大地の
ゴゴゴ…ドドドドドォォォォ!!!
持てる力を出しきったあと、紫苑は自分の手を見つめた
「強くなってる…信じられない程に…これなら誰にも負けない、僕は強くなったのだから」
自身の力が高まったことに紫苑は幸福の喜びに包まれた
修行場を後にした紫苑は勝利を祝すべく王牌先生が茶会をセッティングしてくれたということで集まることになった
それに参加すべく廊下を紫苑は1人歩いていた
「(確かにこの力で強くなったのはいいけど、同時に僕の身体にも負担があるってことは雪泉たちから聞いて知った。やはり大きすぎる力にはそれなりの代償は付きまとう。だけど僕は悪のない世界を作るためならこの身を捨てても構わない)」
リスクを承知で紫苑はこの力を使い続ける決意を固める
「みんなはさ、今どんな気持ちなのかな?」
「(っ?)」
唐突に語りかける四季の質問に雪泉たちは困った顔をしていた
「ぶっちゃけさ、あたし、ちょっと迷ってきちゃった…あたしたちのしてることって本当に正しいのかなって」
「うん…みのりもそう思う」
柱の影から様子を伺いながら紫苑は四季と美野里の言ったことに驚く
それに、いつもは明るい彼女たちがいつになく暗い表情を浮かべていた
「こらこら2人とも何を言うんですか?」
「夜桜、すまぬが我も四季たちの気持ちわからなくもない」
「叢さん」
「お前とて思ったはずだ。あの戦い確かに我らは勝った…だが、その代償に我らは自分たちのしてきたことを思い返させられた。憎むべき…倒すべき存在である悪忍の中にも詠たちのような者たちがいる。それだけではない、蛇女の奴らもそうだ。正直、認めざる追えないほどの奴らだった」
叢は自分の胸に秘めていた思いを正直に話した
「やっぱむらっちもか、あたしもさ~、未来ちんの書いた小説を読ませてもらった時さ思ったんだよね。読者に読んでもらいたいって未来ちんのまっすぐな思いがしみじみまで伝わるほどいい出来でさ…こんなすごい小説を書いてる人が誰かを傷つけるような人なのかな…そんな風に思えちゃて」
未来から受け取った小説をまじまじと見ながら四季は悲しそうな顔でつぶやいた
「みのりもひかげちゃんと遊んでるのすごく楽しかった。みのりとあんなにいっぱい遊んでくれた。悪忍と遊べばくろかげおじいちゃんはかなしんじゃうってわかってるのに…でも」
激しいジレンマに襲われ、美野里はどうすべきなのかわからずだった
「…実はわしもです。あの春花って人と戦って、言われたんじゃ。「自由に生きることで見えるものがあるはず」だと。…わしは春花の自由な心に……惹かれました。そして自由に生きるとはどういうことなのか、それを知ってわしはどうすべきなのかと考えずにはいられませんでした」
夜桜もまた思いの内を打ち明けた
皆の本音に聞き耳を立てる紫苑にとっては驚きの連続だった
「雪泉ちんはどう思う?」
「わ、私ですか?」
四季が上の空だった雪泉に質問する
「さっきから難しそうな顔してたからさ」
「……すみません、確かに私も四季さんたちと同じ気持ちです。私は悪の中にも光を見てしまいました。そう思えてしまう人になってしまった。私たちはおじい様の教えに背いてしまったのだと」
とうとう雪泉も認めたことで自分を除く5人全員に変化が起きていたことを知ってしまった
「(み、みんな…どうして、どうしてそんなことを言うの?黒影さまの理想を叶えることが僕たちの夢だったじゃないか、なのに…なのに)」プルプル
雪泉や叢たちとともに黒影の理想を…悪のいない平和な世界を作ると誓い合ったはずなのに
いつの間にか彼女たちの心に迷いが生まれていたという現実を見て紫苑は激しいショックを受けた
「(…でも、確かにみんなが言ってること、僕にもなんとなくわかる気がする)」
だが、そんな紫苑もまた心のどこかで思うところがあった
佐介や蒼馬、そして光牙と戦い、彼らがどういう人なのか、彼らが志すものがなんなのか
戦いを通してわかったこともすくなからずあった
「(っ!?だ、ダメだ!どうしてそんなことを考えてしまうんだ僕は!…もし僕まで迷ってしまったらそれこそ黒影さまを裏切ってしまう!…そんなことをしたら僕を救ってくれた黒影さまに顔向け出来はしない!!)」
しかし、それでも紫苑は心に言い聞かせた
仮に彼らを認めてしまえば今までの自分たちのあり方を否定することになる
そんなことをしてしまえば恩師黒影の顔に泥を塗ってしまうと、そう何度も何度も
ドックン
「っ!?」
すると突然、紫苑の胸の奥が段々と熱くなるとともに眩しさを放ち出す
「(これは!?)」
急いで確認するべく制服のボタンを外し胸元を開くと霊石マテリアが胸元で点滅を繰り返す
ドックン…ドックン…ドックン…
胸元で光り輝くマテリアをまじまじと眺めていると
やがて何事もなかったかのようにマテリアの輝きが収まった
「…」
紫苑はただ呆然とし、胸に手を当てる
「あれれ?紫苑ちんここにいたんだ?」
「…四季」
「なんか光ったような気がしてきたんだけど?」
「…いや、なんでもないよ」
必死にごまかそうと紫苑はそう四季に言った
「ふ~ん、まぁいいや、それよりも早く来なよ。みんな待ってるよ」
「うん…わかった」
四季に引っ張られる感じで紫苑も茶会に顔を見せた
「紫苑、どうしたのですか浮かない顔をして」
「なんでもないよ」
心配そうに自分を見るみんなにそう言い聞かせる
「みんな揃ってるアル〜?」
「あっ、王牌先生」
そこに王牌が陽気な感じで現れる
「どうアルか、茶会のほうは〜?楽しんでるネ?」
王牌が尋ねると皆浮かない顔を浮かべる
それを予知していたかのように
「…悩んでいるみたいアルね。…それでイイね!」
『えっ?』
「お前たちも忍なら、自分の頭で考え、自分の体で行動すればイイね」
「偲びなら自分の頭で」
その言葉を聞いた紫苑たちは各々の頭でその言葉の意味を考える
「そしてその答えを見出すなら半蔵学院と戦うことがうってつけネ!」
「半蔵…学院」グヌヌ
再び半蔵学院に行くということは今一度、佐介とあいまみえるということになる
「紫苑」
「雪泉、どうしたの?」
「私は戦いの中、焔さんに言われました。もう一度彼女たちと戦えば何かが見えると、確かに悪忍の心に影響を与える彼女たちなら私たちが求める答えを知ってるかもしれません」
自分たちのこれまでの思いや考えを改めて確かめるためには半蔵学院と戦うべきだと雪泉はそう告げる
「お前たちが自分たちでたどり着いた結果なら、黒影も文句はないはずネ」
「…紫苑」
「……わかった。みんな長かった学炎祭も後一つ。…行こう。半蔵学院に」
『おー!!』
こうして紫苑たちは自分たちの答えを見つけるために半蔵学院と戦うことを誓い合った