閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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月閃女学館編 第十八章 暴走する力

長きに渡る戦いにけりをつけるべく紫苑たちは因縁の相手たちが待つ半蔵学院へとやってきた

 

 

戦いの場に赴こうとした時、雪泉たちが紫苑に光牙との戦いで使ったあの力を使わぬようにと言ってきた

 

 

それはその力の強大さとそれに伴う危険性を感じていたからだであった

 

 

だが、紫苑はその申し出を断るとともに

 

 

今尚自分たちの行いが正しかったのかと迷っている雪泉たちに冷たい視線を向け

 

 

不可思議な言葉を吐きながら佐介が待っているであろう戦場に向かってしまったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち受ける好敵手のもとへ参るべく紫苑は学院の屋上にへとやってきた

 

 

「来ましたね紫苑さん。待ってましたよ」

 

 

そこには既に到着していた佐介が自分を今か今かと待ちわびていたかのように立ち尽くしていた

 

 

「あの時はしてやられてしまいましたけど、僕たちだって強くなったってところをこの戦いで証明してみせます!」

 

 

佐介はそう言うとすかさず構えをとる

 

 

「それは無理な話ですよ佐介くん。何故なら君はここで敗北するからだ!」

 

 

負けじと紫苑も全身から気を湧き立たせる

 

 

「(紫苑さん、すごい気迫だ。とてつもないくらいに)」

 

 

紫苑から放たれるプレッシャーに佐介は息を飲む

 

 

「さぁ、はじめましょうか佐介くん。僕らと君ら、どちらの正義が正しいか雌雄を決する戦いを!」

 

 

「望むとこです!」

 

 

刹那、二人のいる屋上が一瞬にして忍結界が作り上げる別の空間へと変わった

 

 

闇夜を照らす美しく、それでいて綺麗な月と

 

 

その下の元、風に靡く周囲を覆い尽くすほどのえのころ草に囲まれた地に二人は立ち尽くしていた

 

 

「佐介くん。この戦い出し惜しみはしません。始めから全力で行かせてもらう!……はぁぁぁ!!」ゴォォォォ

 

 

精神を集中させると胸のマテリアが輝き出した

 

 

直後、紫苑の体に文様が点滅を繰り返しながらも浮かび上がる

 

 

これには佐介も驚きを隠せなかった

 

 

「はぁぁ…はぁぁぁぁぁぁ!!」ヴゥゥゥゥン

 

 

紫苑の体に文様がはっきりと刻まれる

 

 

その刹那、月を覆い隠し、空を黒雲が包む

 

 

「…っ?」ピチャ

 

 

ふと佐介の頬に何かが落ちてきた

 

 

触って見てみるとそれは水滴

 

 

そして空から大量の雨が降ってきた

 

 

さらに周囲に熱風が舞い、地震が鳴り響く

 

 

「(これが…光牙くんを苦しめたと言う、紫苑さんの新たな力…話しには聞いてたけどこれほどの天変地異を起こす力を紫苑さんが身につけたなんて、予想以上に厄介だっ!?)」

 

 

信じ難くも実際に目の当たりにした光景に佐介は我が目を疑う

 

 

そんな佐介をよそに紫苑が身構える

 

 

「……吹き荒れろ!烈風のソナタ!!」

 

 

 

ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

 

 

周囲に吹き荒ぶ風を操り佐介に攻撃を仕掛ける

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

凄まじい風の勢いが佐介を大きく後方へと吹き飛ばした

 

 

「…斬時雨(きりしぐれ)!!」

 

 

そのまますかさず降りしきる雨の粒を武器に変え、佐介めがけてとばす

 

 

「っ!超・(ソウル)転身!!!!!」

 

 

自身の置かれた状況を理解した佐介は極限魂(オーバーソウル)へと転身し

 

 

スピードを生かした回避力を駆使し、次々と押し寄せる攻撃を回避していく

 

 

「っち!」

 

 

「今度はこちらの番です!!」

 

 

攻撃が止むと佐介は反撃にでた

 

 

狙いを定めさせぬようにジグザグに移動し、攪乱を誘う

 

 

「そう簡単には行かせない……はっ!!」

 

 

紫苑がピッ経てた人差し指と中指を横に払うと

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

辺り全体に激しい揺れが発生したその直後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカアァァァァァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい爆発が巻き起こり、結界内にとてつもない衝撃が起こる

 

 

「さすがの佐介くんでもこの爆発に巻き込まれれば無事では…っ?」

 

 

しかしここで紫苑はハッとなった

 

 

爆煙が徐々に渦を巻き始め、それとともに渦の中にいるであろう佐介の気がどんどんと膨れ上がっていることに

 

 

それは今の自分の力をはるかに上回るくらいであった

 

 

紫苑が驚いていると爆煙に変化が表れる

 

 

先ほどまで渦巻いていた爆煙が徐々に何かの形を象り始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

ガォォォォォォォォ!!!

 

 

 

 

 

 

 

それは獅子だった。獅子の顔を象った煙が紫苑に向けて高らかに咆哮をあげる

 

 

突然の事態に何事かと驚いていると

 

 

獅子を象っていた煙が晴れ、そこにいたのは燃え盛る赤き炎を身に纏い

 

 

爆発で穴があいた大地に唯一残った自分の立っている足場に佇む佐介の姿があった

 

 

「佐介くん…それはいったい?」

 

 

「これこそ僕が手にした新たな力…僕一人では到底たどり着くことの出来なかった境地。極限魂(オーバーソウル)V2です」

 

 

極限魂(オーバーソウル)V2だと?」アセアセ

 

 

「みんなが導いてくれたこの力で僕は必ずあなたに勝ってみせます!」

 

 

佐介の想いに好悪するかのように炎の勢いが増す

 

 

「くっ、いくらパワーアップしようとも!!」

 

 

紫苑が手を払うと再び斬時雨(きりしぐれ)を発動させる

 

 

「やああぁぁ!!」

 

 

降りしきる雨の刃が佐介に向かっていく

 

 

だが、佐介は逃げる素振りをみせず

 

 

逆にそれを迎え撃とうと右手の掌を顔の前に持っていき、力を集中する

 

 

水の刃が直前まで迫ってきた時

 

 

佐介は力を溜めた右手をその前方に突き出した

 

 

 

 

ガォォォォォォォォ!!

 

 

 

 

獅子を象ったエネルギーが咆哮を上げ、その威力によって刃とかした雨が一瞬にして消し飛んだ

 

 

「なっ、なに!?」

 

 

さらに咆哮の勢いはそれだけでは収まらず、そのまま紫苑をも巻き込んだ

 

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ!!!???」

 

 

凄まじい衝撃波が紫苑を襲った

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…こ、こんな馬鹿な…」

 

 

強化した自分の技をこうも軽く吹き飛ばすほどの威力、紫苑は驚きを隠せない

 

 

「行きますよ紫苑さん!!」

 

 

佐介が地面を勢い良く蹴り上げ、宙を舞う紫苑のめがけてジャンプする

 

 

「これ以上はやらせない!!はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

それを見た紫苑はこれを迎撃すべく両手を胸の前まで持っていき力を集中

 

 

両手から炎を生成し、それを突き出す

 

 

 

ボバババババババ!!

 

 

 

そこから放たれた無数の火の玉が一斉に佐介に向かっていく

 

 

「っ!!」

 

 

すると佐介は突然右手を突き出した

 

 

何をする気なのかと紫苑が見ていると

 

 

当たる寸前に佐介が突き出した右手に次々と吸収されていく

 

 

「な、なに!?」

 

 

「僕に炎は通じません!」

 

 

そして最後の火の玉も吸収し、尚も向かってくる

 

 

「これで決めます!」

 

 

すかさず佐介が右手を引き絞る。すると先ほど佐介が吸収した炎が右手を覆い尽くす

 

 

「灼熱!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天翔けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑が意識を取り戻した時には自身の身体は地面に横たわっていた

 

 

 

「う…うぅ…」

 

 

身体は佐介の攻撃によって受けた火傷と打撃のダメージによって身動きが取れない状況だった

 

 

段々とボヤけていく視界で捉えたのは勝利を確信し、静かにその場を去ろうとする佐介の姿が

 

 

「ま…待て…僕は…まだ…」グヌヌ

 

 

「紫苑さんもうやめてください。そんな体では戦うことは愚かまともに動くこともままなりません。これ以上の戦いは無意味です」

 

 

「い…いやだ…ぼくは……負けない…約束、したんだ……くろ、かげさまと…」グヌヌ

 

 

「っ、無茶を!」

 

 

佐介の忠告を無視し、紫苑は苦しみに耐えながら立ち上がる

 

 

もはや彼を立たせるものは体力ではない、己の中に宿る精神力からである

 

 

「くろ…かげさま…ぼくは…ぜったいに…あなたとの約束を果たしてみせます‥だから、見ていてください!僕の覚悟を!!」

 

 

その時、紫苑の内に秘められしマテリアが再び輝きを増す

 

 

「マテリアよ…もっと、もっと僕に力を貸して!この身と引き換えに、揺るぎなき力をこの僕に!!」

 

 

紫苑が叫ぶとそれに好悪するようにマテリアが今まで以上に光り輝く

 

 

「こ、これは!?」

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その刹那

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マテリアの力で紫苑の身体に自然エネルギーが集まっていく

 

 

直後、エネルギーが集まると紫苑の全身を結晶のようなものが包み込んだ

 

 

何事かと佐介が驚いているとすぐに結晶に異変が起こる

 

 

段々と結晶に亀裂が走り出した次の瞬間

 

 

 

 

 

 

バリイィィィィィィィン!!!!

 

 

 

 

 

 

結晶を突き破り、中に入っていた紫苑が現れた

 

 

その姿を目の当たりにした佐介は目を疑った

 

 

紫苑の忍装束が例えるのならおとぎばなしに出てくるような羽衣の天女のような姿をしており、紋様はよりくっきりとしたものに変わっていた

 

 

さらに異変は続く、降りしきる雨がさらに勢いを増し、豪雨となり、風は強風となり、大地には地響きが鳴り響いていた

 

 

「あぁ…あぁぁ…」アセアセ

 

 

想像を絶する光景を目の当たりにした佐介は唖然とした

 

 

 

 

 

 

「……」ギュイィィン

 

 

 

 

 

そして変化を果たした紫苑は眼光を向け、佐介を見下ろすのだった

 


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