決戦の舞台、半蔵学院へとやってきた紫苑はそこで佐介と交戦
互いに因縁と負けられない理由を胸に抱きながらの対決は時間が経つたびに過激さを増していく
しかし、予想以上に強くなっていた佐介の猛威に次第に圧倒され、紫苑は大ダメージを負ってしまう
だが、紫苑のこの身を捧げても構わないという思いにマテリアが再び反応し、紫苑に更なる力を与えた
紫苑は自然のエネルギーをその身に吸収し、更なる力を得た
それを見た佐介は同時に彼の身に何かが起こりそうな予感を感じていたのだった
「ぐうぅっ!ぐぅぅぅぅ!!!!」ギュイィィン
「っ!?」
マテリアの力で更なる変身を果たした紫苑は全身からとてつもないほどの気を沸き上がらせる
「いくよ、佐介くん!!」
紫苑が手を突き出すと彼の前方に風の紋章が現れる
「秘伝忍法・颶風のソナタ!!」
ギュオオォォォォォ!!!
「があっ!?うあぁぁぁぁぁぁ!!」
紫苑の技である烈風のソナタが彼のパワーアップに伴い、烈風をも超える風圧を誇ると言われる颶風へと進化する
その勢いは同じくパワーアップした佐介を地面に叩きつけ、今にも押しつぶしてしまうかもしれないほどだった
「はぁ…はぁ…はぁ…」
なんとか立ち上がろうとする佐介だったが、その様子はとても平気そうには見えなかった
あまりのダメージによって体をぐらつかせていた
「すごい、すごい力だ。この力さえあれば…ふふふ」ギュイィィン
更なるパワーアップを果たした自らの力を見て紫苑は胸を高まらせるとともにいつもは見せないような不気味な笑みを浮かべる
紫苑は佐介を見下ろす
「はぁぁぁぁぁ……」
そしてすかさず次なる一手を出す
両手を胸の前に持っていき、力を注ぐ
パキキキキキキキキキキ!!
すると巨大な結晶の球体が紫苑の前に出現した
「結晶の
そして紫苑が出現した結晶を佐介めがけてとばす
「っ!?」
バアアアアァァァァァン
「うわああぁぁぁぁ!!!」
佐介は攻撃を受けた衝撃で吹き飛ぶ
「ぐぅぅぅぅぅぅ!!」ザザァァァァァ!
なんとか受けみをとるもその体には砕けた時に飛び散った結晶の破片がコベリついていた
「はぁ…はぁ…、こ、これが紫苑さんの力…以前とは比べ物にならない。でも……僕だって!!」ゴォォォォォ!
佐介が力むとともにどんどんと力を高めていく
「っ、やああぁぁぁぁぁぁ!!!」
そしてそのまま紫苑に向かって飛んでいく
「そうそう言い忘れていたが」
「っ?」
「その結晶は特殊でね。一定の大気に触れると爆発する。いわば時限爆弾なんだよ。もう分かりましたよね?自分がどういう状態になっているのか」
紫苑は徐に笑みを浮かべる
先ほど紫苑は言った。この結晶は爆発する危険性を持ったしろものだと
そして今、佐介の体にはその結晶が大量にこべりついている
パキッ…パキキキキキキキキキキ
「っ!?」
直後、結晶に異変が起こる
独りでに振動しはじめたとともにどんどんとひび割れていく
その刹那
バリィィィィィィィィィン!!
「ぐあっ!!」
結晶が爆発四散し、それにより佐介の攻撃は止められてしまった
「君では今の僕には勝てない…っ!!」
そう言うと紫苑が佐介めがけて飛んでいく
「これで、終わりだ……っ!!」バシュン!バシュゥゥゥゥゥン!
片脚を三日月をイメージするかのように振り上げて佐介を蹴り飛ばし、さらにそこからもう片方の脚で追撃の蹴りの二重奏を放った
ヒュゥゥゥゥ~~ドスゥゥゥゥゥゥン!
それによって佐介は学院の校庭まで吹き飛び、そのまま地面に真っ逆さまに落下した
紫苑がゆっくりと降り立ち、確認してみると佐介は完全にやられてしまっていた
「…さらばだ。佐介くん」ギュィィィィィィン!
すると紫苑は倒れる佐介に向けて手をかざし、さらに紋章を発動させる
「ここまでよく頑張ったと褒めてあげよう。……ゆっくり休むといい、そして空から見てるがいい。これから成す僕らが作り上げる悪のいない平和な世界の実現をね」
紫苑が佐介にとどめを放とうとしたその時だった
「紫苑!!」
「っ?」ハッ
突如の声に驚き、目を向けるとそこには雪泉たちがいた
雪泉たちは状況を見て唖然とする
「さっ、佐介くん!」
「紫苑、これはいったい?」
「…雪泉」
雪泉の呼びかけに反応した紫苑が発動しようとしていた術を止める
すかさず飛鳥たちが佐介のもとに駆け寄る
そして紫苑はゆっくりと雪泉達の前に降り立つ
「みんな、ほら見てよ。佐介くんは倒した…これで僕らの正義が、黒影さまが掲げる理想の世界こそがただしいのだと証明されたんだ。これで黒影さまもよろこんでくださるだr「…紫苑、もうやめてください」…えっ?」
理想を実現出来ると流行る紫苑だったが、雪泉からのその一言で紫苑の笑みは崩れた
「どうして?」
紫苑は雪泉の言葉の意味が理解できず困惑する
「…やはり、私たちは間違っていたようです」
「雪泉まだそんなことを」
「…悪忍と仲良くする飛鳥さんたちのその気持ち、少し前の私たちなら考えもしなかった。でも今は違います。私はこれまで蛇女や紅蓮竜隊の方々を見て悪の中にも私たちのような考えを持つ者もおり、この半蔵学院に来て飛鳥さんと善でも悪でもないただ1人の忍として自分なりの答えを見出すために全力で戦い。それらを飛鳥さんを通して深く知ることができました。……きっと今の私たちを見たらおじい様は嘆かれると思います…ですがそれでも私は後悔はしません。たとえ行くすえが変わらろうとも、私はおじい様の愛を胸に抱き、自分なりのやり方で忍の道を突き進むことを誓いました。これが私の導き出した答えです」
雪泉の想いに賛同するように他のみんなもうなづく
「……っ」
それを聞いた紫苑はただ呆然と立ち尽くしていた
「……そだ」
「っ?」
「…嘘だあぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!」
ゴォォォォォォォォォォ!!!
突然、紫苑は発狂し衝撃が走る
「し、紫苑!!??」
「僕は…信じてたのに…今は気持ちがバラバラでも最後にはみんなわかってくれると信じていたのに!」ゴォォォォォォォォォォ!
怒りとともにその表情は悲しみに満ちていた
「紫苑、話しを聞いてください!」
「嘘だ…嘘だ…」
今の紫苑には雪泉たちの声は届かない
ギュイィィン!
さらにその時、紫苑の胸に寄生しているマテリアが光りだす
光が弱まると紫苑が俯き、ぴたりと動かなくなってしまった
雪泉たちは不安そうにしていると
「………あぁそうか、そう言うことなんだね」
「えっ?」
「こいつらだね。こいつらのせいなんだね、こいつらが唆したから雪泉たちがそんなことを言うようになったんだ……許さない」
突然、紫苑は飛鳥たちを睨みつけながら、ゆっくりと彼女たちの方に向かっていく
「雪泉たちにタチの悪い病原菌を植え付けようとするお前たちという存在が僕にとって邪魔なものでしかない、今この場で消してやる!」ゴォォォォォォォォォォ
そう言うと紫苑は力を高める
「やめて!やめてください紫苑!」
「みんなで紫苑を止めるんじゃ!」
危険な香りを漂わせる紫苑を止めるべく夜桜の指示のもと、叢、四季、美野里が紫苑にしがみつき動きを止めようとする
「邪魔をするなぁぁぁぁ!!!」ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!
『きゃああぁぁ!!!』
しかし紫苑が衝撃波を放ち、雪泉たちを吹き飛ばす
「…そこで大人しく見ていてるがいい、これから僕がやることを…」
すると紫苑が右手を天に翳す
ギュイィィン!
紫苑が集中すると紋様の光りが紫苑の胸元に集まり
胸元にマテリアが浮かび上がる
「し、紫苑、なにを!?」
「…これよりこの世界中に蔓延るゴミを一掃する」
『っ!?』
静かに、かつ想像を絶するほどの恐ろしいことを告げられ、雪泉たちは驚きを隠せなかった
「いったい紫苑はなにをするつもりですか」
「たっ、大変だよ雪泉ちん!」
「どうしたの四季ちゃん?」
明らかに慌てふためく四季の様子に雪泉たちは何事かという顔をする
「みんなこれ見てよ!」アセアセ
そういうと四季が携帯の画面を見せる
画面に記載されていた画像や文書を見た瞬間、全員が凍りつく
「せっ、世界各地で謎の異常気象が発生、それによる被害は甚大なものとなっている……ということは!」
そう、この異常気象を引き起こしているのは他でもなく紫苑だった
「この世界にはびこる悪を1つ残らず消してやる。そして雪泉たちにも思い出させてあげるんだ。黒影さまの描いた世界こそが全てなのだと!」
異常気象が意味するもの、それは世界中の悪忍へ向けての紫苑からの攻撃である
しかし、当然ながらこの被害、悪忍も善忍も、ましてや一般人までも巻き込むのは目に見えている
「紫苑!やめてください!このままでは多くの人達が犠牲に!」
「……それが何か?」
「えっ…?」
「悪のない理想の世界を作る為なら多少の犠牲はやむなしだ」
明らかに今の紫苑は狂ってしまっている
いつもの彼ならこんな恐ろしいことをするはずがない
犠牲を伴う正義なんてあってはならないことだ
「今の紫苑はどう考えてもおかしすぎです」
すると雪泉の目に紫苑の胸元のマテリアが映る
「みなさん!私達の手で紫苑の胸のあの石を破壊しましょう!きっとあれが紫苑をおかしくしている原因です!なんとかして紫苑の目を覚まさせるんです!」
この状況を食い止めるべく雪泉は紫苑を止めることを決意し、それに他のみんなも賛同する
「雪泉ちゃん、私達も手伝うよ!」
「飛鳥さん、ありがとうございます……紫苑、待っててください、必ずあなたを元の優しいあなたに戻してみせます!忍・転身!」
雪泉が忍転身するとともに他のみんなも忍転身する
「紫苑、今私たちが助けます!いざ、鎮魂の夢に舞います!」
そして雪泉たちは一斉に身構え、紫苑を止めるべく戦いを仕掛けるのだった