閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

14 / 606
第十一章 一人で抱え込まないでください

斑鳩が村雨に襲われた次の日の朝

 

「ん…んん…ここは?」

 

意識を失っていた斑鳩が目を覚ます

 

「斑鳩先輩!…よかった…よかったです」

 

「気がついたか斑鳩?」

 

そこには佐介と霧夜が心配そうに自分を見ながら座っていた

 

「…きりやせんせい…?さすけさん…?」

 

「よかった…本当によかった」

 

「こいつら、部屋にお前がいないことに気づいて一晩中お前を探してな、神社で襲われていたお前を佐介が見つけてここまで連れてきたんだ」

 

「…そうですか…すしません佐介さんご迷惑をおかけして」

 

自分を助けてくれた感謝と迷惑をかけた謝罪の意味をこめ佐介に礼を言う斑鳩

 

そんな斑鳩の脳裏に昨日の出来事が蘇えった

 

「…霧夜先生!大変なんですお兄さまが!!」

 

「あぁわかっている。佐介がお前を見つけた際にお前の兄と交戦したと話しを聞いた」

 

「お兄さまは今どこに!?」

 

「今、お前の御両親と協力して行方を追っているところだ。なんにせよ非常にまずい自体だな。このまま野放しにしてしまえば妖刀を手にしたものは徐々にその精神を蝕まれ、最後にはただ殺戮を繰り返すだけの生ける屍となる。そうなれば罪もない市民に危険が及ぶ、急を告げる話だ」

 

霧夜は立ち上がり部屋を出ようとするが斑鳩は霧夜を呼び止める

 

「お待ちください霧夜先生!わたくしもお兄さまを探しに行きます!」

 

「…なに?」

 

「こんなことになったのも全てわたくしの責任、わたくしもお兄さまを探します!!」

 

「ダメだ。お前は昨日の戦闘での傷が完治してない、そんなお前を行かせたところで返り打ちにあうのがオチだ」

 

霧夜の言う事は最もだった

 

事実自分は兄にやられてこのざまなのだから

 

「今は大人しく体を休めろ、いいな?」

 

そう言うと今度こそ霧夜は部屋から去っていった

 

「お兄さま…」

 

悔しさで胸がいっぱいな斑鳩の表情は悲しみを含んでいた

 

佐介も斑鳩の悲しそうな顔を心配そうに見つめる

 

そして佐介は抱いていた疑問を斑鳩に尋ねることにした

 

「…どうしてあの人は斑鳩先輩にあんなひどいことを?あの人は斑鳩先輩のお兄さんなんですよね?」

 

「……」

 

佐介の問いに斑鳩は暗い顔をする

 

「あっ、ごめんなさい余計なことを聞いてしまって!」

 

「……実は」

 

「?」

 

さっきまで黙っていた斑鳩が口を開きだした

 

「わたくしはお兄さまの…いえ、お父様とお母様の本当の娘ではなく、養子として引き取られた女なのです」

 

「えっ?」

 

「本来ならば飛燕はわたくしにではなくお兄さまが継ぐべきものなんです」

 

飛燕を見せる斑鳩

 

「…でも、現に今飛燕を手にしているのは斑鳩先輩ですよね?それはどうして?」

 

「それは…お兄さまには飛燕を扱うことが出来なかったからです」

 

「えっ?」

 

「だからこそ、お父様たちは飛燕を扱うことのできたわたくしを養子に迎えたのです。でもそのせいでお兄さまはお父様たちから見放されたと誤認してしまい、お父様やお母様、そしてわたくしを憎むようになってしまわれたのです」

 

飛燕を持つ手が震えてることに佐介は気づく

 

「お兄さまは誤解なさっているだけなんです。誰もお兄さまをのけ者になどしてはいないのです…それにわたくしは、ただお兄さまにも家族として認めてもらいたいだけなんです」

 

言い続ける斑鳩の瞳からポロポロと涙が溢れる

 

「斑鳩…先輩」

 

「……お兄さま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…うう…」

 

妖刀を手にした村雨が苦しそうな顔をしながら木にもたれかかっていた

 

彼の体の周りを渦巻く黒い靄

 

『キャハキャハ…もうすぐだ。もうすぐその体はオレのものになる』

 

「グッ…まだダメだ。まだ俺の復讐は…終わってねぇ。それまで…この体くれてやるわけには行かねぇ」

 

『ケッ…あ~そうかよ。じゃあせいぜい頑張るんだな』

 

そう言うと靄は消え去った

 

「はぁ…はぁ…まっ、待ってろよ親父、お袋!」

 

村雨が歩き出そうとすると

 

「そこまでです村雨様!!」

 

「ん?」

 

自分を呼び止める声が聞こえ振り向いたさきには複数の忍がいた

 

「ふっ、親父の差金か」

 

「大人しく我らとともにお戻りください」

 

 

 

「どいつもこいつも…邪魔だあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

「斑鳩先輩、体の具合はどうですか?りんご剥いてきたのでよければたべてくださ…あっ!」

 

佐介が部屋に戻って見るとそこに斑鳩の姿はなかった

 

「斑鳩先輩…探さないと!!」

 

佐介は急ぎ斑鳩を探しに出かけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタタタタタタタ

 

斑鳩は村雨を探すために走っていた

 

「(お兄さま…)」

 

だがしかし、焦っているのか斑鳩がしているのはあてのない闇雲な探索だった

 

そんな時だった

 

どこからか気配を感じ、立ち止まると

 

『キュイイイイイ』

 

空から機械の鳥が斑鳩の元に舞い降りてきた

 

斑鳩は驚きつつも手で着地場所を作ってやり、鳥はそこに着地する

 

『キュイ♪』

 

「これは?」

 

「探しましたよ斑鳩先輩!」

 

「!?」

 

そこへ佐介が駆けつけてきた

 

「さっ、佐介さん?…どうしてここに?」

 

「それはこの子たちのおかげです」

 

そう言うと佐介のもとに鳥と同じく機械でできた犬や蛇などが駆け寄ってきた

 

そして鳥が斑鳩から佐介の手に止まると形を変え元のディスクの姿へと変わった

 

「…斑鳩先輩、どうしてですか?」

 

黙って行った後ろめたさからか斑鳩は佐介から目をそらす

 

「これはわたくしの…いえ、わたくしたち家族の問題です。佐介さんたちを巻き込む訳にはいきません。これは…わたくしがやらねばならないんです」

 

「だけど、闇雲に探したところで見つかるわけではないことは斑鳩先輩もわかってるはずですよね?…今の斑鳩先輩には焦りが見えますよ」

 

「わかってます!」

 

斑鳩は怒鳴るように叫ぶ

 

「わかってますわそんなの!…でも、例えそうでもやっぱり黙って見てるだけなんてできない、お兄さまはわたくしの大切な家族なんです!わたくしが、わたくしがなんとかしなくては」

 

にぎりこぶしを作る斑鳩

 

「わたくしが…わたくしが…」

 

その刹那

 

佐介が焦る斑鳩を優しく抱き寄せる

 

「さ、すけ…さん?」

 

「斑鳩先輩…なんでも1人で抱え込もうとしないでください、辛いなら相談してください、苦しいなら言ってください…だって、僕たちは"仲間"なんですから」

 

「あ……」

 

「辛いなら…僕が側にいます。僕は先輩の味方です」

 

そう言うと抱きしめる力を少し強める

 

「ありがとう…ござ、います」ポロポロ

 

佐介の優しさと暖かさに斑鳩は心が安らいでいくようなそんな安心感を感じた

 

『キュイイイイイイ』

 

「「?」」

 

その時、さっきの鳥とは別の鳥が佐介たちのもとに降りた

 

「見つけたの?ありがとう」

 

「佐介さん?」

 

佐介の言っていることが理解できず小首を傾げる

 

「この子には先輩を見つけるのと別に先輩のお兄さんを探すようにお願いしてたんです」

 

「お兄さまの?」

 

「うん。うん。…えっ?それは本当!?」

 

驚きの表情を見せる佐介

 

「どっどうかしましたか?」

 

「……先輩のお兄さんと忍部隊が交戦中のようです」

 

「なんですって!?」

 

「急ぎましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はぁ…はぁ…はぁ…」」

 

鳥の案内で村雨がいるであろう場所へとたどり着いた二人

 

「「はっ!?」」

 

そこで彼らが目にしたのは

 

「きゃあぁ……!!」

 

ボロボロに痛めつけられた忍部隊とそこの中心に立つ村雨の姿だった

 

「お兄さま!」

 

「グッ…テメェ、まだ…生きてたのか…ぐぅぅ!」

 

しかし村雨の様子は明らかにおかしかった

 

苦しそうに胸を押さえているのだから

 

そして刀からは不気味な煙が出ていた

 

「お兄さま!その刀をお捨てください!!このままではお兄さまは!」

 

「だっ、黙れ!…やっと、やっと手にした復讐のための力だ!復讐を終えるまで…手放すわけねぇぇぇ!!!!」

 

「なっ!?」

 

村雨が斬りかかる

 

「ふっ!!」

 

ガキン!!

 

それを佐介が篭手で防ぐ

 

「佐介さん!」

 

「大丈夫ですか斑鳩先輩?」

 

「えぇ、大丈夫です」

 

「よかった…はあぁぁ!!」

 

斑鳩の無事を確認すると

 

村雨に蹴りをかます

 

「ぐっ!!」

 

村雨は距離をとりそれをかわす

 

「はぁぁぁ…はっ!」

 

構えをとり、次の攻撃に備える佐介

 

「一度ならず二度までも…もう怒ったまずはテメェから血祭りだ!あの時あの女を殺るのを邪魔しやがって!!!!」

 

村雨は叫びながら刀を手に佐介に襲いかかるのだった

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。