閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

153 / 606
新・蛇女子学園編 第十四章 舞い戻りし蒼、生まれし赤

自信を蒼馬ではなく相馬と主張し、鈴音の静止を振り切った彼は

 

 

おぼつかない足取りでどうにか自分の住んでいた地域にたどり着く

 

 

そこで彼はこの数年の間、会うことも出来なかった幼馴染の楓と再会した

 

 

家を失った相馬は途方に暮れ彼に楓が助け舟をだした

 

 

両親が仕事で家にいないこともあり、少しの間、家に泊まってもいいと言ってくれたのである

 

 

彼女の家に着き、ようやく落ち着けたかに見えたが、再び追手が現れ、逃げ出そうとするもすでに周囲は包囲される

 

 

そこに鈴音が駆けつけ、彼らが捜索隊を襲撃し、成り代わった者たちであることが発覚

 

 

秘密がバレたことにより口封じ及び相馬を連行すべく攻撃を仕掛けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

「ヒァッハァァァァ~~!!!」

 

 

「っ!!」カキン!

 

 

襲いかかる隊員たちの攻撃を鈴音は手裏剣と技を駆使して防いでいく

 

 

「どっせぇぇぇい!!」

 

 

ドスゥゥゥゥン!

 

 

「ひひひ…ぺしゃんこにしてや…おりょ?」

 

 

「動きが見え見えだぞ!」

 

 

「ぶぎゃっ!」

 

 

ドデカい金槌でたたきつぶそうとする隊員の攻撃をかわすとともにかかと落としで地面に叩き伏せる

 

 

「貴様らはこれで終わりだ。秘伝忍法・燐光万華鏡!!」

 

 

『ギャアァァァァ!!!』

 

 

鈴音が手にしている手裏剣を回転させ、周囲の敵に一斉ダメージを与えた

 

 

「す、すげぇ…」

 

 

「なんて可憐なの」

 

 

そんな鈴音の戦いを見ていた相馬たちはその華麗な戦いっぷりに見惚れた

 

 

「つ、つぇぇ」グヌヌ

 

 

「これが蛇女子最強の教師の力か」グヌヌ

 

 

隊員たちは彼女を敵に回す恐ろしさを改めて思い知らされる

 

 

「だが、俺たちもここで引き下がるわけにはいかないんだよね」

 

 

「ではどうすると言うんだ?今ので貴様らでは私に勝つことは不可能だということはわかったはずだが?」

 

 

「確かにあんたとまともに戦えば勝ち目はねえ…まともにならな」

 

 

「っ?」

 

 

邪な笑みを浮かべる部隊長に一瞬ぞっとする

 

 

「危ない!後ろだ!」

 

 

「っ?」

 

 

ガシッ!

 

 

「なに!?」

 

 

相馬の呼びかけと同時に背後から気配を感じたが反応が間に合わず先ほどかかと落としで叩き伏せたはずの巨漢の男に拘束されてしまった

 

 

「油断したな。こいつの自慢はやられてもやられても立ち上がるタフさなんだよ」

 

 

「ゲヘヘヘ~」

 

 

「くっ、不覚!」

 

 

倒したと思い込んでいた相手に拘束されて鈴音は自分の未熟さを悔いた

 

 

「さて、さっきからよくもやってくれたな。今度はこっちの番だ。…おい野郎ども!」

 

 

『おー!!』

 

 

「っ!?」

 

 

隊長の掛け声とともに隊員たちが拘束している鈴音の衣服をズタズタにする

 

 

「ヒヒヒ、無様な格好だね~?」

 

 

「…ほざけ」

 

 

「しっかし、まじかに見るとやっぱいい体してんなあんたも…この触り心地、じつにそそるぜ」

 

 

「あん///…こ、この…下郎が!」

 

 

動けないことをいいことに鈴音の身体を弄ぶ

 

 

「ど、どうしよう相馬!このままじゃあの人が!…相馬?」

 

 

恥ずかしめを受ける鈴音をなんとか助けてやることができないものかと相馬に語りかけるも相馬は何故かその場に固まっていた

 

 

そしてその目に映るわ鈴音の苦しみにもがく姿

 

 

「す…ずね」

 

 

固く閉じていた相馬の口から彼女の名がつぶやかれた

 

 

「隊長たちが楽しんでるうちにこちらも終わらせておきますか」

 

 

「っ!?」

 

 

そんな二人のもとに女隊員が歩み寄ってくる

 

 

「させない!」

 

 

「邪魔すんな!」

 

 

「きゃっ!」

 

 

そうはさせじと抵抗を試みるも軽くあしらわれ、失敗に終わる

 

 

「一緒に来てもらうわよ」

 

 

女隊員が相馬に手を伸ばそうとした時

 

 

刹那、彼女の顔面にパンチが迫り来る

 

 

「……へっ?」

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォン!!!

 

 

 

 

『っ!?』

 

 

一瞬誰もが何が起こったのか理解できずにいた

 

 

ただ分かっていることは女隊員がぶっ飛ばされ結界の壁にめり込んでいたことだった

 

 

「そう……ま?」

 

 

「っ!」

 

 

楓の声でハッと我に返った

 

 

そして自身の手を見てそれが自分のしたことだということに気づいた

 

 

「な、なんなんだよ…これ?」

 

 

これには相馬自身も驚いていた

 

 

『ふぅ…危ないとこだったが、何とか間に合った』

 

 

「っ!誰だ!?」

 

 

突然の声に相馬は辺りを見回すも誰もいない

 

 

「そ、相馬どうしたの?」

 

 

「楓には聞こえないのか?」

 

 

反応から察するにこの声が自分にしか聞こえないことを察する

 

 

『落ち着け。俺は今、直接お前の頭に語りかけている』

 

 

「(俺の…頭に?)」

 

 

相馬は声が自分の頭に直接語りかけていると聞かされまさかと思いつつも、声の主に話しかける

 

 

「(てか誰なんだよお前、何者なんだよ?声は聞こえるのに姿がねぇ…まっまさかお前幽霊とか!?)」

 

 

『俺の名は蒼馬……簡単に言えばもう1人のお前だ』

 

 

「(……はぁ!?)」

 

 

相馬は意味わからんと言う顔をする

 

 

『詳しいことは後でゆっくりと話す。だが今はこの状況を打開するのが先決だ。とはいうものの今の俺は前の戦いのダメージが残っているから力をフル活用できない、だからお前の協力が必要なんだ』

 

 

「(な、何言ってんだよお前?急に話しかけてきたと思ったら協力しろだ?わけわかんねぇよ!なんでお前みたいなやつの言うこと聞かなきゃいけないんだよ!)」

 

 

理解が及ばず相馬はその要求を拒む

 

 

『じゃあお前は今のままこの状況をどうにかできるのか?』

 

 

「(っ!…そ、それは…)」

 

 

『この状況で彼女と鈴音を助けるにはそれしかないんだ。お前に残されてる選択肢は二つだ。俺の提案に乗るかこのまま全員仲良くやられるかだ』

 

 

確かに彼の言い分はもっともだった。悔しいが今の状況で自分の力ではこの状況を変えることはできなかった

 

 

『…頼む、俺にとってあいつは…仲間、と言う存在なんだ』

 

 

誰かを守りたいと語るその言葉には嘘偽りない思いがこもっているようだった

 

 

「(お前の気持ちはわかったけど、でもどうすんだよ?戦うって言ったって俺格闘技の技術とかねぇぞ?)」

 

 

『心配はいらない。今からお前に俺の培って生きた戦闘技術のイメージを送る。そうすれば戦うことができるはずだ』

 

 

「わかった……やってくれ」

 

 

相馬は言われるがままにじっとその場に立ち尽くす

 

 

すると突如相馬の意識が薄れていく

 

 

『(しっかりやるんだぞ…任せたからな)』

 

 

「(あぁ……任せとけ!)」

 

 

蒼馬の思いを受け取り、相馬は戦うことを決意する

 

 

 

 

 

 

 

相馬が女隊員を殴り飛ばしてからと言うもの、急に俯くと共にその場にピクリとも動かなかった

 

 

「そ、相馬どうしたの、返事して」

 

 

不安になった楓が彼を揺さぶる

 

 

「テメェ!捕獲対象だからって思って調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 

 

「覚悟しやがれ!!」

 

 

仲間の仇討ちと2人の隊員が襲いかかる

 

 

まずいと楓は焦った

 

 

「楓、俺の後ろにいろ」

 

 

「…えっ?」

 

 

沈黙を続けていた彼が突如口を開き、楓に語りかける

 

 

隊員たちが目前まで迫り来た時

 

 

「こうするんだったよな?忍…転身」

 

 

 

《TransFormation》

 

 

 

 

 

 

バキィィィィィン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「「ギャアァァァァ!!!!」」

 

 

一瞬のうちに隊員たちは瞬殺され、地面に倒れた

 

 

「…ふぅ~」

 

 

「えっ…えっ?」

 

 

楓は自分の目を疑った。相馬があっさりと敵を倒してしまったことに

 

 

「な、なんだよこれ!?」

 

 

部下が3人もこうもあっさりとやられてしまったことに隊長は驚きを隠せない

 

 

「…ふふふ」

 

 

「何がおかしいんだよ!?」

 

 

「どうやら、何かしらあったようだな。なぁ蒼馬、いや今は相馬と呼ぶべきかな?」

 

 

「……へっ、まぁそうとらえてくれて結構っすよ」

 

 

鈴音の呼びかけに答えるように俯いていた相馬が顔を上げる

 

 

それは鈴音が見知っている姿ではなかった。右半身を包む鎧のような赤き装甲と右目のバイザー、なによりその態度、蒼馬ではない、今目の前にいるのは紛れもなく、転身を果たした相馬だった

 

 

「ど、どういうことだ!?」

 

 

「理解する必要はねぇよ。なんたってお前らは今ここで俺にやられるんだからな!」

 

 

「随分と勝手なことを言ってくれんじゃん。こっちには人質がいるんだぞ?わかってんのか!」

 

 

隊長が鈴音を盾にする

 

 

「わかってないのはあんたらのほうだぜ?」

 

 

「なに?」

 

 

「今の俺は一味違うんだぜ」

 

 

相馬が言い放つとともに力を込める

 

 

「…はっ、どりゃぁぁ!」キーン!

 

 

「ふぎゅあぃ!?」アセアセ

 

 

「な、なに!?いつの間に!」

 

 

一瞬にして相馬が鈴音の方まで移動し、巨漢男の大事な部分に金的蹴りをかました

 

 

あまりの痛さに悶絶し手を離してしまう

 

 

「しまった!?」

 

 

「今だ!」

 

 

その一瞬を逃さず、形勢逆転といわんばかりに、鈴音との連携攻撃によって隊員たちを次々と撃破する

 

 

「お~、やる~。さすがっすね"先生"」

 

 

「お前もな。まだまだ甘いとこが多いようだがな」

 

 

「こらまた手厳しいこってw」

 

 

 

残ったのは隊長だけになった

 

 

「くそっ!舐めやがって!!」

 

 

隊長は最後のあがきと背後から相馬に攻撃を仕掛ける

 

 

「死ねぇぇぇぇ!!!!」

 

 

「相馬!?」

 

 

ナイフの刃先が相馬に迫り来る

 

 

「心配するな楓」

 

 

「っ?」

 

 

「今の俺はな」

 

 

 

《Freezing》

 

 

 

後ろを向いたまま相馬は秘伝忍法をを発動させながら巻物をセットした

 

 

「負ける気がしねぇ!!」

 

 

「なに!?ぐあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

ナイフが当たる寸前、蒼馬がそれをかわし、ヴァイザーによる突きの一撃をお見舞いした

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!!!」

 

 

その一撃で凄まじい勢いとともに隊長は吹き飛んで行った

 

 

「どんなもんだい」

 

 

「す、すごい」

 

 

「(…これがこいつの力か?)」

 

 

こうして隊長は部下もろとも相馬たちの前に叩き伏せられてしまうのだった

 

 

 

 

あれから隊長を含む部下全員を縛り上げたあと

 

 

鈴音はことの全てを相馬たちに聞かせた

 

 

自身の中にいる蒼馬が彼女が教師を勤める蛇女子の一生徒であることや選抜メンバーの一員であることなどを事細かに

 

 

「そんなことが…」

 

 

「本来なら信じられないとこだけど…もう信じるしかないわね」

 

 

あれだけのこと見てしまったあとではそうするしかなかった

 

 

「時に蒼…相馬、君はこれからどうするつもりだ?」

 

 

「えっ?」

 

 

「脅すつもりはないが、君が蛇女子に戻らない限り今後も上層部やこいつらのような奴らに狙われることは間違いないだろう」

 

 

「なっ!」

 

 

このままではいつまた新たな刺客が襲いかかるかわからないと言われ相馬は焦る

 

 

「過程はどうあれ今回の件でお前は追手に危害を加えた。今お前が蛇女子に戻らなければ上層部はお前を捕獲対象から駆除対象に変える。そうなればお前をかばったりする人たちにも危険が及んでしまうだろう」

 

 

「っ!?」

 

 

自分が学園に戻らなければ自分だけでなく楓にも危険が及ぶかも知れないと聞かされ困惑する

 

 

「わ、私は大丈夫です!どんなやつらが来たって!」

 

 

「気持ちは尊重しよう。だが、君の実力では返り打ちにあうのが関の山だ」

 

 

「っ…」

 

 

鈴音からの厳しい一言に楓は言葉を失った

 

 

そんな様子を見て相馬はどうすべきかと必死に考える

 

 

このままでは何の道自分だけでなく楓にも被害が及ぶのは必然

 

 

彼女は巻き込みたくないというのが彼の本心だった

 

 

『聞こえるか俺よ』

 

 

「この声は?」

 

 

『この話、俺は鈴音に従うべきだと思う。勘違いするな、別に俺は蛇女子に戻りたいから言ってるわけじゃない、だが彼女はお前の大切な存在なんだろう?そんな彼女を危険にさらすようなマネは得策ではないと俺は思う』

 

 

確かに蒼馬の言うとおりだ

 

 

『最終的に決めるのはお前だ。俺はお前の決めたことに従うことにする』

 

 

「…」

 

 

今までの話し、そして今後の状況、全てを考えた相馬は決断した

 

 

「鈴音さん。俺、蛇女子に戻ります」

 

 

「相馬!?」

 

 

「すまない楓、でも今の俺にはこうするしかないんだ」

 

 

相馬は楓に言い聞かせる

 

 

「…いいのか?」

 

 

「はい、大丈夫っす」

 

 

「わかった。ではすぐに蛇女子に戻る。支度しろ」

 

 

「了解です」

 

 

それを聞いた楓はやっと再会できた相馬が行ってしまうという事実にショックを受ける

 

 

「…楓、心配すんな。俺はまた戻ってくるよ」

 

 

「ど、どうやって?」

 

 

「それは向こうでおいおいかな?」

 

 

「…もう、呑気なんだから」

 

 

こんな状況でも無鉄砲な彼を見て楓はくすりと笑みを浮かべる

 

 

「わかったわ…でも、無理はしないでよね?」

 

 

「あぁ、必ずまたお前に会いに行くよ」

 

 

そう言うと握り締めた楓の手を離し、相馬は鈴音の方へ行く

 

 

「もういいのか?」

 

 

「はい、これからよろしくお願いします」

 

 

「そうか、では行くとするぞ」

 

 

「おう!」

 

 

こうして蒼馬と主人格である相馬は蛇女子での生活に復帰することになったのだった

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。