紫苑との戦いで過去の記憶と自身を取り戻した相馬は自分の住んでいた地区にたどり着き、生き別れた幼馴染の楓と再会する
しかし、二人に再会を喜ぶ暇を与えないと言わんばかりに彼を追ってやってきた刺客たちが襲いかかる
その猛攻に絶対絶命にピンチに追いやられるも、それを相馬の所有権を貰い一時的に復活した蒼馬と駆けつけた鈴音が救う
撃退後、鈴音の話しを聞いた相馬は今後、自分と一緒にいては楓の身が危険にさらされるかもしれないと言う思いからそれを承諾し
楓としばしの別れを告げ、蛇女に行くことを決意したのだった
「おぉ…おぉっ……おぉぉぉ!!!!」キラキラ
「おい、うるさいぞ落ち着け」
「いやいや、せんせー!これが落ちついていられますかっての!だってさ、右を見れば女子!左を見れば女子!真ん前にも女子!そして俺の横にはお姉さん!俺は今、男なら一度は憧れるであろうエロゲ的シチュエーションの中にいるんすよ〜!!うぉぉ!生きてて良かった〜!!!」ヒャッホ~
高らかにアホらしいセリフを吐く相馬に鈴音は思いっきり頭を悩ませた
『おい』
「っ?」
その時、相馬の脳裏に声が聞こえる
彼が知る限りこんなことをできるのはただ一人
「(その声はお前か、なんだよ急に?)」
『さっきからなぜお前は女子たちを見て発狂しているんだ?』
「(はっ?えっ?……もしかしてお前、こんな楽園にいたってのに何も感じてなかったわけ?)」
『何をだ?』キョトン
もう1人の自分である蒼馬の反応におもわず白目をむいてしまった
「(いやいやいやいや!ま、マジかよ!?ちゃ~、なんてもったいないことを~、お前男として相当損な事してるぞ~?)」
『そうなのか?…俺にはあまり人間としての感情や性欲というものがないからな。そういった知識なども本などで記憶している程度しかないのでな』
「(へ~、お前って本読むの好きなんな)」
『別に読書好きというわけではない、鈴音から読むように命じられただけだ。俺は任務に従うのみだからな』
性欲の欠片もない蒼馬に唖然としていたが人間としての感情などがないということを聞いてすこし憐れみの感情もあった
それから数分後
「ここが忍部屋であり、お前の…もとい、お前の中にいるもう一人のお前の仲間たちがいる場所だ」
「ほうほう…さてさて、お仲間さんはどんなかわい子ちゃんがいるのやら、ふっふっふ〜♪」ニヤニヤ
「……とりあえず私の後に入ってこい」イライラ
「うぃ〜っす!」
そう言い終えると鈴音は忍部屋に入っていった
「お前たち、少し話がある」
鈴音の声に反応して選抜メンバーたちが集まってきた
「鈴音先生、何か私たちに用ですか?」
「実はな、何とか蒼馬を連れて帰ることができた」
「蒼馬が見つかったんですか!?」
「あぁ」
蒼馬が無事だと聞いた雅緋たちはなんだかんだ言いいつつも仲間が無事と知り安堵の表情を浮かべていた
そんな彼女が今の彼を目の当たりにしたらと鈴音は苦虫を噛むような思いだった
「それで鈴音先生、蒼馬は?」
「今呼ぶ……出てきていいぞ」
鈴音が外で待っているであろう相馬を呼ぶ
すると扉が開くとともに入ってきた時
「ちょり〜っす!選抜メンバーのみなさん、元気してますか〜!」
やたらハイテンションな挨拶をする相馬だったが
『…………誰!?』ガビ━━(´○д○`|||)━━ン
等の選抜メンバーたちは全員白眼をむいて同じ言葉を吐く
予想通りの展開に鈴音は頭を痛めた
「す、鈴音先生、誰ですかあのチャラい男は!?」アセアセ
「…な、何を言っているお前たち。もちろん蒼馬に決まってるだろ」棒
「いやいやいや!どう見たって顔以外似ても似つきませんよ!?」
彼女たちから見た相馬は変わり果ててしまった人物的に写っているようであった
「おいおい、なんか散々な言われようだな」
それを見ながら相馬は苦笑いしていた
「さて、ではそろそろお前たち、今日も忍としての訓練を受けてもらうぞ」
『はい!』
「えっ?もう始めるんすか!?」
唐突にこれから訓練を始めると聞かされた相馬は驚きの声をあげる
「そうだ。と言うことでみんな速やかに修行場に集合するように」
鈴音は修行場に集まるように雅緋たちに伝えると相馬を連れていち早く修行場に移動する
「そうそう、さっきは言い忘れていたが…蒼馬」
「あい?」
「お前じゃない」
呼んだ方と違うのが返事をしたので鈴音は思わず突っ込んだ
『何か用か鈴音?』
「……って言ってますけど?」
他者には聞こえないため、相馬が通訳として鈴音に返事を返す
「こらからやる修行についてだが、今回は相馬自身の技量を計りたい、故に具体的なサポートなどをすることは無しでお願いしたい」
『了解した』
「えっ!?ちょ!俺聞いてないよ!?」
「当然だ。今確認をとったばかりだからな」
今回の修行には手を出さないように釘を刺され、蒼馬はそれを承諾するも
もう一人の自分がまた戦闘の時には出てくれるだろうと思っていた相馬には予想外の展開になっていた
「で、でもよせんせー!俺ってば忍としての経験はおろか戦闘の経験は全くないんですけど?」
「ならば問う。仮にお前が自由になれたとして今のままでもし敵に襲われたりしたらどうするつもりだ?危なくなったら蒼馬に戦わせればいいとでも思ってたのか?それともあれか?またあの楓という少女に助けを請うのか?」
「っ!」
「戦いは他の人に任せて自分は高みの見物か…いいご身分だな」
鈴音の煽り文句が相馬の心をグサグサとさしていく
しかしそれに対して相馬は何も言わない、否、何も言えないのである
全て事実なのだから
「………俺は、嫌です」ボソッ
「何といった?よく聞き取れなかったが」
「俺!嫌です!今もこれからも誰かに守られてばかりでいるなんて!そんなのただの弱虫な卑怯者のすることだ!!」
今の今までおちゃらけてばかりいた相馬がここに来て初めて真剣な目をしていた
「…そう思うのであれば尚更この修行には意味がある。お前自身の身も心も強くするためにも成さねばならんことなんだ」
「俺自身がなさなきゃならない」
「そう、強くなればお前は守りたいものを守りぬくことができるだろう」
「…守りたいもの」
掌を見つめた先に楓の笑顔に満ちた顔が浮かび上がる
そしてその手をギュッと握り締めるとともに決意を込めた
「ではこれより今日の訓練を始める。準備はいいか?」
『はい!』
「よろしい、では各自速やかに開始せよ!」
鈴音の号令のもと、それぞれが修行を開始する
「(俺だって負けない!)」
駆け出す相馬に向かって傀儡の大群が迫り来る
「(たとえどんなにこんなんだろうと!!)」
数分後、傀儡たちをなんとか全滅させ、へとへとになり地べたに寝そべる
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…、ど、どうっすか?」ダラァ…
「ふむ。まぁまぁと言ったところか…では次に行くぞ」
「へぇ~?ま、まだ続くんっすか?」アセアセ
「当然だ。お前が倒れるまでとことん付き合ってやる。いいか覚えておけ、何事もノルマが終わってからが本盤なのだ」
鈴音はそう言い残し持ち場に戻る
「(そう…だよな。俺はこんなとこでへこたれるわけには行かねぇんだよな!)」
喝を入れられ、気合を入れ直し、再び修行へと挑む。今はただ強くなることを目指して
『……ふふっ』
そんな彼の後ろ姿に安堵の笑みを浮かべる蒼馬だった