閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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新・蛇女子編 第十八話 悪魔のささやき

自身の中に宿るもう一つの人格である蒼馬の誕生のきっかけは自分であることを知り相馬は驚く

 

 

蒼馬曰く研究所での地獄の日々から抜け出したい

 

 

自由になりたいという思いから無意識に切り取った負の記憶を受け継いだ存在こそ蒼馬なのであると

 

 

真実を知り、相馬は決意を固め、蒼馬を受け入れ共に生きることを誓った

 

 

そんな中、鈴音からの招集がかかり、向かった忍部屋にて上層部から次なる任務として

 

 

かつての生徒であり、今は抜忍となっている焔紅蓮竜隊の討伐がくだされた

 

 

しかし、それを聞いた瞬間、雅緋を含む数名が動揺を隠しきれない顔をしていることに相馬は何事かと思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅蓮竜隊の討伐と聞いた雅緋、紫、忌夢は明らかに動揺していた

 

 

なぜそんなことになっているのか相馬には理解できなかった

 

 

「ぐ、紅蓮竜隊を討伐…ということはつまり」

 

 

「無論……"光牙も"だ」

 

 

「光牙を…討つ」

 

 

念押しするかのように言った鈴音のその言葉を聞いて雅緋は絶望に染まったような顔を浮かべる

 

 

「…嫌です!」

 

 

するといつもは大人しくしている紫が声を大にするほどに反論する

 

 

「光くんを…殺すなんて…絶対に許さない!」

 

 

怒りとともに禍根の力が溢れ出す

 

 

「我々は忍だ。命令を受けたからには実行する、それが我々のなすべきことだ」

 

 

「…そんなの、関係ない…私は光くんを連れて帰る!」

 

 

断固として紫はその命令にそむこうとする

 

 

「……甘ったれるな!」

 

 

その時、鈴音の一喝に全員がドキッとなる

 

 

「貴様ら、それでも忍か!舐めるのも大概にしろよ!…もし光牙がそこまで腑抜けたお前たちを見たら光牙はきっと悲しむぞ…」

 

 

「っ!?」

 

 

「光くんが…」

 

 

「あいつは私も認める誇り高い忍だ。たとえ自身が撃たれることになったとしても、ましてその相手がお前たちならば倒されたとしても本望だというに違いない」

 

 

短い時間ではあったが、光牙や焔たちと紡いだ日々や思い出は雅緋たちのそれに勝るとも劣らないものだ

 

 

だからこそ鈴音はそう断言する。彼らのことを思えばこそだからである

 

 

「雅緋、紫、ボクも本当のことなら2人と同じ気持ちだ…でも、ボクには鈴音先生が言ってることも理科できるんだ」

 

 

「忌夢………ぐうっ!」

 

 

雅緋は忌夢のその言葉にぎゅっと握りこぶしをしめる

 

 

 

「(なぁアオ、知ってるならさ教えてくれよ。さっきから雅緋たちの話しにでてる光牙って誰なんだ?俺にはなんのことだかさっぱりなんだか?)」

 

 

『お前が知らないのは無理もないか、わかった。説明してやる』

 

 

事情を知らない相馬のために説明をする

 

 

『…この任務で俺たちが討伐する紅蓮竜隊というのは、この学園の元選抜メンバーたちだ』

 

 

「(えっ?元選抜メンバー?)」

 

 

『あぁ、そしてその選抜メンバーのリーダーこそが話しに出ていた光牙であり………雅緋の弟だそうだ』

 

 

「(み、雅緋の弟!?)」

 

 

説明を聞いた相馬は唖然とする

 

 

「(ちょ、ちょっと待てよ!じゃあ何か?お偉いさんたちは雅緋に実の弟を倒せって言ってんのか!?)」

 

 

『そうだ。雅緋たちがあんな態度をしていたのもそれが理由だ』

 

 

「(なんだってんだよ。実の姉弟で殺し合いをさせようってのかよ…んなアホな話しがあるかよ!)」

 

 

理由を聞いた相馬は鈴音に言い寄ろうとする

 

 

『待て、馬鹿なマネはよせ』

 

 

「(なんで止めるんだよ?)」

 

 

『立場を危くするつもりか?』

 

 

「……くそっ」グヌヌ

 

 

相馬は自分の立場に歯がゆさを感じる

 

 

「………わかりました。これより我々は紅蓮竜隊の討伐任務に向かいます。忍として任務を全うします」

 

 

「そうか、ならばすぐ準備に取りかかれ」

 

 

「……くっ」

 

 

「お、おい、ちょっと待てよ雅緋!」

 

 

そして雅緋は去り際に舌打ちをするとともにそそくさと忍部屋を出き、相馬がそれを追いかけていった

 

 

「紫、やっぱりお前も」

 

 

「私は光くんを連れて帰る。邪魔をするならお姉ちゃんでも許さない」

 

 

「っ!」

 

 

その後に紫も部屋を後にした

 

 

「紫…」

 

 

止めることができない自分の歯がゆさに忌夢は悔しそうな顔を浮かべる

 

 

「まったく見てられないったらないわね。こう言った話しになるといつもああなんだから」

 

 

「あっ待って両備ちゃ〜ん」

 

 

雅緋たちの態度に呆れながら両備も部屋を去り、それを追って両奈も出て行った

 

 

 

 

 

 

 

蛇女の廊下を雅緋は早歩きで歩いていた

 

 

「おい雅緋、待てって!」

 

 

「なんださっきから!私はお前なんかに構ってる暇はないんだぞ!」

 

 

すごい剣幕で自分を呼び止める相馬を睨みつける

 

 

相馬は少しビビったがすぐに気を取り直す

 

 

「なぁ、お前本当に弟と戦うのか?」

 

 

「……」

 

 

「今まで必死にそうならないように頑張って来んだろ?…それなのに上からの命令ってだけで諦めちまうのかよ?」

 

 

「黙れ…黙れ黙れぇぇぇ!!!」

 

 

カッとなった雅緋は勢いよく相馬を怒鳴りつける

 

 

「貴様に何がわかると言うんだ!忍というのがどういうものかまともに知らないようなやつが知ったふうな口をったたくな!」ドン

 

 

「うわっ!」

 

 

力を込め、強めに手をつきだすとともに相馬を押し倒した

 

 

「忍たるもの上の命令には従わなければならない……例えそれが自分にとってどんなに辛かろうと…それが私たち忍だ。なにより蛇女の誇りを取り戻すためにもこれは成し遂げなければならない、それくらい重要なことなんだ!」

 

 

「雅緋」

 

 

「光牙だってきっとわかってくれる。あいつとていつでも死ぬ覚悟は出来てるんだろうからな」

 

 

そうはいうものの雅緋の顔はどこか悲しげだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選抜メンバーが部屋を後にしてから数分後のこと

 

 

 

「雅緋~!雅緋~!!……あれ?どこ行っちゃったんだろ?雅緋~!」

 

 

雅緋を探しに出た忌夢だったがどうにも雅緋の姿が見えず、必死に懸命に探していた

 

 

 

 

 

 

そんな中、相馬と別れた雅緋はというと一人で訓練所にいた

 

 

「くっ、くそぉっ!!」ボコッ

 

 

苦虫を噛み締めるがごとく演習用のかかしの顔面に拳をぶつけた

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 

かかしは一定時間ぷらぷらと揺れた後、元の位置に戻った

 

 

「忍として任務は果たさなければならない…でも」グヌヌ

 

 

やはり先ほどはああは言ったものの雅緋は光牙を討つと言う今回の任務、従う気にはなれなかった

 

 

「どうしたらいいんだ…」グヌヌ

 

 

必死にこの打開策を考える雅緋

 

 

そんな時だった

 

 

「っ?」チクッ

 

 

突然、項部分に針で刺されたかのような痛みが走った

 

 

「な、なんだ?」サスサス

 

 

違和感を覚えてはいるが痛みは一瞬であったため雅緋は小首をかしげるだけだった

 

 

しかし、そんな彼女を木の枝から一匹の蠅が覗いていた

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、外廊下を両備と両奈が歩いていた

 

 

 

「両奈、ちょっといい?」

 

 

「な~に両備ちゃ~ん?」

 

 

「…そろそろ頃合いだと思うの」

 

 

「っ!」ハッ

 

 

両備の顔を見て彼女がなにを言おうとしているのかを両奈は悟った

 

 

「この任務を終えたら計画を実行に移すわよ」

 

 

「…いよいよ、なんだね」

 

 

「…なによその顔は?」

 

 

そんな中、両奈の浮かない顔に気づいた両備が彼女を睨みつける

 

 

「な、なんでもないよ」アセアセ

 

 

「あんた迷ってるんじゃないの?」

 

 

「っ!?」ビクッ

 

 

「あいつらと馴れ合ってるうちに忘れちゃったんじゃないでしょうね?両備たちの復讐を」

 

 

両奈の気の迷いに気づいた両備がじりじりといい責める

 

 

「そ、そんなこと…」アセアセ

 

 

「だったら!…っ?」チクッ

 

 

すると両備は何かに体を刺されたような感覚を覚えた

 

 

「ど、どうしたの両備ちゃん?」

 

 

「っ、何でもないわよ!!」

 

 

「あっ、待って両備ちゃん!」

 

 

心配する両奈の静止も聞かずそそくさと行ってしまった

 

 

そんな彼女たちの様子を天井に張り付きながら覗く蠅が一匹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに時を同じくして蛇女内に作った自分用の部屋で紫は1人アルバムを見ていた

 

 

そこには幼き頃、一緒に写った光牙の写真や隠し撮りした写真などの彼女のコレクションがずらりと載っていた

 

 

「…光くん」ペラリ

 

 

一枚一枚アルバムをめくる度に紫の光牙を思う気持ちは高まる

 

 

「…やっつけてやる。私から光くんを奪おうとするやつは全部…っ!」

 

 

殺気に満ち、いつもの彼女らしさは感じられなかったその時

 

 

「っ?」チクッ

 

 

雅緋、両備動揺、紫もまた突然針に刺されたような痛みを感じた

 

 

「…なに?」

 

 

何が起きたのか分からずきょどる紫

 

 

そんな彼女を部屋の壁から蠅が目を光らせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、みな集まったな」

 

 

規定時間となり選抜メンバー全員が再び集合した

 

 

だが、場の空気は先ほどと何ら変わらなかった

 

 

「(なんなんだよこの気まずい雰囲気?)」

 

 

これには相馬も困り果てる

 

 

「ではこれよりお前たちには抜忍集団、焔紅蓮竜隊討伐を開始してもらう!」

 

 

鈴音が全員に号令をだす

 

 

「各員、任務開始だ!いざ、禍炎の魂に舞い散れ!!」

 

 

合図を聞いた選抜メンバーたちは一斉に目的地に向かって移動を開始した

 

 

「…何事もなければいいが」

 

 

鈴音は生徒達の身を案じていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念ながらあなたの思いは無駄に終わりますよ」

 

 

「っ!?」

 

 

突然、背後から気配を感じた鈴音が直ぐ様距離をとる

 

 

「何者だ!」

 

 

手裏剣をかまえ背後に現れた者を睨みつける

 

 

「…ふっ」ニヤリ

 

 

「お、お前は!?」

 

 

「っ」スッ

 

 

 

ブ~~~ン!

 

 

 

謎の存在が鈴音に向けて蠅を飛ばす

 

 

「ふっ!せい!やあっ!!」

 

 

抵抗する鈴音だが、倒しても倒しても蠅は次から次へと溢れ出てくる

 

 

「ぐっ!しまった!?」

 

 

数の力に圧倒されるが如く、鈴音の体がまとわりつく蠅に飲み込まれていく

 

 

「き、貴様!」

 

 

「君にいられては少々面倒なのでね、悪いが大人しくしててもらいましょうかね」

 

 

「ふざける~~…」

 

 

言い終わる前に完全に蠅に全員が覆われてしまい、そのまままるで地面に沈んでいくかのように消えてしまった

 

 

 

ブ~ンプ~ン

 

 

 

すると、雅緋、両備、紫を監視していた蠅たちが謎の存在の元に飛んできた

 

 

「ご苦労様でした我が眷属たちよ」

 

 

蠅たちは謎の存在の掌にとまり、羽根を休めていた

 

 

「さて、邪魔者もいなくなり、仕込みも澄んだことですし、そろそろ始めるとしましょうかね」

 

 

不気味な笑みを浮かべながら謎の存在はすうっと闇の中に消えていってしまうのだった

 


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