閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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新・蛇女子学園編 第二十九章 赤と青の交差 

この事件にけりをつけるべく、本体がいると言われている評議会の間に到達した相馬たちはそこで議員たちを亡き者にしようとしていた道元と出くわす

 

 

道元によって呼び出された2体の妖魔人間を排除するよう命じてくる評議会に対して相馬は条件を提示してきた

 

 

他の議員たちが異を唱える中、ただ1人議長はそれを承諾し、約束してくれた

 

 

この戦い、絶対に負けられないと胸に秘めた相馬たちは妖魔人間たちとの戦いに望むのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

評議会の間を舞台に今、道元が召喚した妖魔人間と相馬たちの蛇女の運命をかけた戦いが始まろうとしていた

 

 

目の前にそびえるかのように立つ2体の妖魔人間を前に相馬は気合十分だった

 

 

『ほう、こんな状況だというのになかなか余裕そうじゃないか』

 

 

「へっ、当たり前だろ。確かに強そうなやつらだけど、相手は2体だけ、俺たちも分裂して戦えば余裕だぜ!」

 

 

『あっ、その…ソウ』アセアセ

 

 

なぜ相馬が余裕の顔を浮かべていたのかその理由を知った蒼馬は困ったように冷や汗をかく

 

 

「どうしたんだ相棒?そんな顔して?」

 

 

その様子に気づいた相馬が尋ねた

 

 

『……ソウ、非常に言いにくいことなのだが』

 

 

「うんうん」

 

 

『今、俺たちは分裂できないぞ』

 

 

「……ファッ!?」

 

 

蒼馬から聞かされたその言葉に思わず相馬は声をもらす

 

 

「いやいやいやいや!えっ?なんで!?」

 

 

『あれは一度使うと数時間は使用不可能になる代物みたいなんだ』

 

 

「…て、ていうことはつまり」アセアセ

 

 

『やつらとは2体1で戦うことになる』

 

 

この時、相馬は心の中で「もうだめだぁ…おしまいだぁ」状態になっていた

 

 

『気を引き締めていけ、奴らは俺たちから得たデータを元に作られたと道元は言っていた。並みの相手じゃないということだ』

 

 

並みの敵ではないやつを1人で2体も相手にするというこの状況に溜まっていた唾を飲み込む

 

 

「……やれ!」

 

 

【【っ!】】ドスン…ドスン

 

 

半端ない重量感を感じさせる足音を響かせながら2体の妖魔人間が相馬に向かって走り出す

 

 

「も、もうやるきゃねぇっ!!うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

意を決して負けじと相馬も走り出す

 

 

「うぉりああぁぁぁぁ!」

 

 

【っ!】

 

 

 

バゴォォォォン!! ジジジジジジジジ

 

 

 

相馬と妖魔人間の拳がぶつかり合う

 

 

「ぐっ、ぐううぅぅぅぅ!!」グヌヌ

 

 

【…っ!!】グイッ!

 

 

「ぬあっ!!」

 

 

だが、若干パワーは向こうが上らしく押し負けてしまい、後方へと下がらされた

 

 

「やろぉぉ!はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

負けじとヴァイザーのバンカーを突き出す

 

 

【ッ!!】ガシッ!

 

 

「…あっ!?」

 

 

しかし突き出した攻撃は直撃することなく人造妖魔人間に掴まれてしまう

 

 

【っ!!】ブォン

 

 

「っ!?」

 

 

 

ドスゥゥゥゥン!

 

 

 

「ぐあぁっ!!」

 

 

その隙きを突きもう1体の人造妖魔人間の豪腕をぶつけられ、壁の方まで吹き飛ばされてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎ、義長。本当に大丈夫なのでしょうか!?」

 

 

「今のうちにでも逃げる手立てを考えるべきかと!」

 

 

我が身第一な議員たちは早く逃げ去りたいという思い一心だった

 

 

そんな他の議員たちを他所に義長は黙ってこの戦いを見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…な、なんつう馬鹿力だよ。こんなのまともに喰らい続けてたら身が持たねぇぞ」

 

 

人造妖魔人間の力をその身で味わった相馬はそう呟いた

 

 

『ソウ、お前は少し休め』

 

 

「っ」

 

 

『お前は既にかなり消耗してる。ここは俺がなんとかする』

 

 

「す、すまねぇ』

 

 

『任せろ…大転身」

 

 

そして相馬は主導権を譲り、蒼馬が表にでるとともにヴァイザーを遠距離モードに変える

 

 

「ここからは俺が相手だ」

 

 

「ふん。切り替わったようですが、所詮はそれだけのこと…こいつらに勝てるわけがありませんよ」

 

 

【【】】ドスン…ドスン

 

 

蒼馬に向かってじりじりと妖魔人間が歩み寄ってくる

 

 

「戦いとは力だけで決するものではない。…それを証明してやるさ」

 

 

そういうこと蒼馬は身構える

 

 

【【っ!】】ドスンドスンドスンドスン!

 

 

妖魔人間が蒼馬に向かって走り出す

 

 

そしてその豪腕で蒼馬を叩き潰さんとすべく、それを突き出す

 

 

「はっ!」バッ

 

 

 

ドガアァァァァァァァン!

 

 

 

しかしそれを蒼馬は当たる直前に身軽な身のこなしで回避する

 

 

攻撃を回避するとすかさずヴァイザーに巻物をセットし銃口をむける

 

 

「はあっ!」

 

 

そして片方の妖魔人間に向かって光弾を放つ

 

 

【っ……っ!?】ピヨピヨ

 

 

光弾の直撃後、混乱能力の効果が効いた片方の人造妖魔人間が混乱してしまった

 

 

【っ!】

 

 

もう片方の妖魔人間が蒼馬に向かって走り出す

 

 

「ふっ!」シュウゥゥゥゥゥ

 

 

それに合わせ、蒼馬は今度は透明化の能力の巻物をセットし、敵の視界から消えた

 

 

標的を見失い、あたりをキョロキョロと探す

 

 

 

バキッ!

 

 

 

【っ!?】

 

 

すると突然、膝に衝撃が走り、たまらずがくっと倒れ込む

 

 

「ここだ!」

 

 

透明化が解けると同時に膝まづいて倒れている妖魔人間の顔面にパンチと蹴りの応酬をかける

 

 

怒濤の連撃によって次々と攻撃をヒットさせていく

 

 

「はあぁぁぁぁ、そいやぁぁぁ!!」

 

 

最期はジャンプと同時に回転からの回し蹴りで元いた場所まで妖魔人間を吹き飛ばした

 

 

その先には混乱から解放されたもう一体の妖魔人間がおり、2体は激突した

 

 

「止めと行くか」

 

 

今こそ最大の好奇と蒼馬が秘伝忍法書をヴァイザーにセットしボタンを押す

 

 

『finish・attack』

 

 

【【っ!!】】

 

 

好きにはさせまいと2体の妖魔人間が走り出す

 

 

「はっ!!」シュウゥゥゥゥゥン!!

 

 

【っ!?】ドゴン

 

 

「せいっ!!」シュウゥゥゥゥゥン!!

 

 

【っ!?】バゴン

 

 

秘伝忍法で力をつけた蒼馬が妖魔人間の懐に素早く入り、片方にパンチを、片方に蹴りを喰らわせた

 

 

「決める。はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

蒼馬が左足に力を集中させていく

 

 

「はっ、やあっ!はっ!せいやぁぁ!!」バシン! バシコォォン!

 

 

目にも止まらぬ早業で2体に必殺の一撃を喰らわせた

 

 

妖魔人間たちは床をゴロゴロと転がっていき、動かなくなった

 

 

『おぉぉ!やったなアオ!』

 

 

「あぁ、なんとかな……さて、残るは」

 

 

蒼馬はすかさず標的を道元に移し替える

 

 

「道元、貴様の兵士たちは倒したぞ。いよいよ終わりの時が来たようだな」

 

 

「ふふふ、なにを勘違いしている?」

 

 

「っ?」

 

 

「まだ、終わってはおらんよ!」

 

 

すると先ほどまで動かなくなっていたはずの人造妖魔人間が起き上がった

 

 

2体は立ち上がると徐ろに自身の身にまとっているコートを脱ぎ捨てた

 

 

顕になった2体の体はコートを纏っていた時とは打って変わり、顔以外は人型になっていた肉体があまりにも人間とかけ離れたかのように強靭なものになり、2体の左右それぞれの手に巨大な爪が生えてきた

 

 

「こ、これは…」アセアセ

 

 

「正直、リミッターを外させざる追えないほどまでとは思ってもいませんでしたが、さすがは初期の実験で唯一生き残った適合者。褒めてあげましょう……ですが、こうなってしまったからにはもはやあなた達に勝ち目などありませんよ。さぁ、存分に暴れまくれ!」

 

 

【【グウォォォォォ!!!】】

 

 

道元のその言葉に反応するように今まで無口だった人造妖魔人間がまるで本物の妖魔のように唸り声をあげ、蒼馬を睨みつける

 

 

そして人造妖魔人間がゆっくりと蒼馬に向かって歩き出す

 

 

「っ!」

 

 

蒼馬は再び迎え撃つべく駆け出した

 

 

「はあぁぁぁぁ!」

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォン

 

 

 

ヴァイザー越しに蒼馬はありったけの力を込めて殴りつける

 

 

【……グルルル】

 

 

「……っ!?」

 

 

だが、そんな蒼馬の攻撃がまったく効いていなかった

 

 

まるでこそばゆいと言わんばかりにピンピンしていた

 

 

【グルッ!】

 

 

「っ!?」

 

 

 

バシィィィィン

 

 

ドゴォォォォォォォォォン!

 

 

 

「があっ!!」ドバッ

 

 

巨大な爪を備え付けた豪腕の一撃によって蒼馬は天井に叩きつけられ、そのまま地面に落下した

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 

【【グアァァァァァ!!】】

 

 

「っ!?」

 

 

倒れている暇すら与えられず、人造妖魔人間がどんどんと蒼馬を追い詰めていく

 

 

 

ブォン!

 

 

 

「ぐあぁ!!」

 

 

 

バシン!

 

 

 

「ぬうっ!」

 

 

先ほどとは逆に蒼馬はどんどんと追い詰められていった

 

 

「がはっ…はぁ…はぁ…」

 

 

『あ、アオ!しっかりしろよアオ!』

 

 

「ぐっ、ぐぅぅ」

 

 

蒼馬はあまりにもダメージを負いすぎて言葉もろくに話せないようだった

 

 

そんなことなどおかまいなしにと妖魔人間が近づく

 

 

『くそっ、こうなったら!…大、転身!」

 

 

このままではやられてしまうのは明らか、相馬は急いで蒼馬と精神を入れ替わった

 

 

「っ!」

 

 

主導権を取り戻した相馬はすぐに立ち上がる

 

 

「てめぇら、よくも好き勝手やりやがったな!許さねぇ!!」

 

 

敵討ちと相馬は突っ込む

 

 

「でやあぁぁぁぁ!!」

 

 

今もてる渾身の力を注ぎ込み、人造妖魔人間に殴りかかる

 

 

 

バキィィィィィン!

 

 

【】ゴキッ…ゴキッ…

 

 

「くっ、畜生め!」

 

 

だが、そんな相馬の一撃も妖魔人間にはまったく通じていなかった

 

 

「だったら、通用するまでとことんやるだけだ!」

 

 

意気込みをいれるとともに相馬は突っ込む

 

 

「やあぁぁぁっ!!」

 

 

【っ!】ガシッ

 

 

「なっ!なにっ!?」

 

 

しかし、仕掛けようと拳を突き出すも、その直後にもう一匹にその腕を掴まれ吊られてしまった

 

 

「は、離せ!離せよ!!」

 

 

足で何度も蹴りつけるも当然、びくともしない

 

 

【】スッ

 

 

「っ!?」

 

 

 

ドスゥゥゥゥン!

 

 

 

「がはっ!?」

 

 

片方が吊るしているうちにもう片方が相馬の腹部にパンチを浴びせる

 

 

そこから相馬がサンドバッグのように何発も何発も攻撃を受け続けた

 

 

全身は傷つき、いたるところから血が出ていた

 

 

やがて攻撃が止み、ボロクソになったかのようにぐったりした相馬をまるでゴミでも捨てるかのように床に投げ捨てた

 

 

「よくやったぞお前たち、さぁ次はいよいよあの老耄どもだ」

 

 

道元が議員たちを見据えると妖魔人間は議員たちのほうに向かってくる

 

 

「ぎ、義長!逃げましょう!」

 

 

「一刻も早く…ですな義長!?」

 

 

あわてふためく議員たちを他所にあくまで議長は冷静だった

 

 

「ふふふ。この状況においても逃げようとせぬとは、流石に評議会をまとめるだけありますね。ですがそれもここまで。これで私の復讐は完遂される。ふふふ、あ~はっはっはっは~!」

 

 

勝ち誇るかのように道元が笑い出す

 

 

「おやおや、もう勝った気でいるとはなんともおめでたいものじゃの~」

 

 

「…なんだと?」

 

 

「……後ろを見てみなさい」

 

 

「……っ!」

 

 

議長に言われるがままに後ろに目を向けるとそこにはもはや立ち上がることすらできないと思われていた相馬が立っていた

 

 

「き、貴様!まだ立ち上がる力が残っていたのか!」

 

 

「あ、当たり前だ…俺たちはこんなとこで負けられないんだよ」

 

 

『俺たちには負けられない理由があるから』

 

 

今、彼らの背中には蛇女やそこに生きる生徒たち。選抜メンバーのみんな、そして自分たちを信じて行かせてくれた鈴音の思いが詰まっている

 

 

ここで諦めてしまえばその思いを裏切ることにも、彼女たちの未来すらも奪ってしまうことになる

 

 

「だから…例えどんな強敵が相手になろうとも!」

 

 

『全力でなぎ倒す…それが』

 

 

『「俺たちの生き様だ!!」』

 

 

2人の思いが前よりもさらに強くシンクロしていく

 

 

すると胸から赤と青の二つの光が出てきた

 

 

光は相馬の前を数秒間ふわりふわりと浮くと、やがて一つに重なり合い、そこから赤と青が混ざり合った一本の巻きものが現れた

 

 

「アオ、これって…?」

 

 

『今の俺達がこの状況を逆転するにはこれにかけてみるしかあるまい』

 

 

「OK。なら行こうぜ!」

 

 

『あぁっ!』

 

 

巻物をヴァイザーに差し込んだと同時に相馬はポージングをとる

 

 

(スーパー)…大転身!」

 

 

そして高らかに叫ぶとともにボタンを押した瞬間、巻きものが光り出した

 

 

すると直後、相馬の身体が赤と青の二色混ざった炎の渦に飲み込まれた

 

 

そして炎が払いのけられた瞬間、そこには驚くべきものが

 

 

右半身には赤いラインと赤眼。左半身には青いラインと青眼という二色混合の姿になった相馬が立っていた

 

 

それはまさに相馬と蒼馬、2人の心と体が真に一心同体となったことを表しているようだった


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