ここは半蔵学院のメンバーたちが宿泊予約をしていた旅館
その旅館の入り口前で霧夜とチェルシーレイナが佐介を連れ戻しに向かっていった飛鳥達の帰りを今か今かと待っていた
「あっ、霧夜先生!」
「っ?」
チェルシーが指さした先には飛鳥達の姿、さらにはその彼女らに付き添うかのように紅蓮竜隊のメンバーたちもやってくる姿も見えた
「…戻ってきたか」
「おーい、みんなー!」
「おかえりなさい!」
みんなが帰ってきたと知るやチェルシーレイナ、その後を追うように霧夜が彼女たちの元へ
「なんだよみんな心配したじゃねぇかよ♪てか光牙達と一緒だったなんてこれまたびっくりだよ」
「でもなにより皆さんが無事でよかったです」
「っ……」
駆け寄るやすぐに2人が彼女たちに声をかける
だが、声をかけたのにみんなからの反応が返ってこなかった
「…あれ?お、おいどうしたんだよみんな?」
「みなさん?」
「…っ?」
それどころか全員がひどく脱力感が否めないといった顔を浮かべていることに気が付く
「…あれ?」
「どうしたのレイナ?」
最中、皆の態度を見た直後、レイナは思い返したように我に返るや彼女たちの周りを見回す
「あの、飛鳥先輩……佐介兄様はどちらに?」
「『っ!?』」
レイナがその名を口にした瞬間、全員が体をビクつかせる
中には体が震えそうなのをぎゅっと両手で抑える者や激しく握りこぶしを握りしめる者の姿も
これを見ていた霧夜がすぐにただごとではないことを察した
「ここではなんだ、ともかく先ずは中に入ろう。話しはそれからだ」
そして皆から話しを聞くべく旅館の中に招き入れるのだった
旅館の部屋の中に着いた一行は畳の床に座していた
皆が落ち着いた様子を見計らったところで霧夜はようやく話しを聞くことにした
「さて、では話しを聞かせてもらおう…何があったんだ?」
事の顛末を知るべく霧夜はチェルシーレイナを除く全員に説明を要求した
「…実は」
そんな彼の問いに答えるべくここに来るまでだんまりを続けていた飛鳥が口を開き、事の顛末を語りだした
飛鳥が事の顛末を語り終えるのはそこから数分も立たなかった
「そ…そんな」アセアセ
「おいおい、冗談だよな?」
「…」アセアセ
だが、その内容は事情を知らなかった3人が驚愕するには絶大な効果を持っていた
「うぅ…さ、佐介兄さまが、兄さま…」ウルウル
「だ、大丈夫だよレイナ、あの佐介だよ?絶対に大丈夫に決まってるさ、あははは……」
話しを聞き、悲しむレイナを元気付けようとするチェルシーだったが、彼女もまた佐介のことが気かりなのか悔しそうな顔を浮かべているのを見て
飛鳥達はそんな2人に慰めの言葉すらかけることができなかった
それからしばらくの時が過ぎた
あれから全員から話しを聞いた霧夜が佐介の安否を確認すべく現場に向かうことになり
皆に自分が戻るまで待機するよう言い残してその場を後にしていった
部屋の中には息が詰まりそうなほどにおもぐるしい空気が漂っていた
この場にいる全員が今朝のような京都観光だなどといって楽しさに期待に胸躍らせていた時の面影は微塵もなかった
あるのはただ後悔と虚しさだけ
ただ同行するだけでもなく皆、思いつめた顔を浮かべるのみであり
時間だけがいたずらに過ぎていく、そんな空間だった
「……私のせいだ」
「『っ?』」
その時、その沈黙を破るがごとく、飛鳥が言葉を漏らす
飛鳥のその言葉に反応した全員が彼女のほうに視線を向けた
「私がぼんくらじゃなければ……妖魔に足止めされる前に助け出すことさえできてれば今頃佐介くんは…ぐぅ」グヌヌ
悔しさのあまり飛鳥はスカートの丈をぐっと握りしめる
相当先のことを引きずっていることが誰の目からもうかがえた
そんな飛鳥を見かねた葛城が彼女の元に歩み寄る
「飛鳥……自分を責めんな。それはアタイ達だって同じことさ。お前は最善を尽くしたよ」
「かつ姉……う、うぅぅぅ」シクシク
葛城が優しく抱きしめ、慰めると飛鳥は彼女の胸で泣き崩れた
「そうですよ飛鳥さん、あなただけが責任を感じる必要はないのですよ」
「オレたちも気持ちは同じなんだ。あまり痕を詰めるな」
「…だからね飛鳥ちゃん、元気出して」
「…みんな」
さらに続けざまに他の面々も彼女を慰めようと語りかけてくれていた
そんな半蔵学院メンバーの様子を一緒に部屋に来ていた光牙たちは見ていた
「表向きは冷静さを保とうとしてるみたいだが…しかしなぁ」
「わかるわ。だって無理もないもの、自分たちの目の前で仲間である佐介くんがやられちゃったんだもの、相当ショックでしょうね」
「わたくし、半蔵の皆さんが不憫で仕方ありませんわ」
「それは私もです詠おねえちゃん」
春花は飛鳥たちの心境を察していた
詠と愛花に至っては彼女たちの心中を考えるとまるで自分のことのように悲しく思えた
「光牙……お前はどう思う?」
すると焔はおもむろに光牙に尋ねた
佐介は光牙にとって最もな好敵手。飛鳥のようにショックを受けてるのではと思ったのである
「別に、どうもしないさ」
「どうもしないって…おいおい、佐介はお前のライバルだろ?そんな言い方ないんじゃねぇのか?」
冷静な態度をとっている光牙に焔は驚きつつも彼に物申す
「勘違いするな焔、奴は俺が認めた男だ。あの程度の奴らにやられて死ぬようなタマじゃない。もしそうなら…俺は奴を一生恨み続けてやる。この俺の顔に泥を塗った大馬鹿野郎としてな」グゥッ
「光牙…」
よく見ると腕群でいる手の指先に僅かながらに力がこもっていることに気が付く
なんだかんだ言いつつ、要するに佐介は無事だから心配するだけ無駄だと言うことを言い聞かせてるものの
不安を消しきれてないことに焔はどこかほっとした思いを感じた
そんな時だった
ガラっという音とともに襖が開いた
「『っ?』」
「すまない、戻ってくるのに時間がかかってしまったかな?」
全員が視線を向けた先には佐介の安否を確認しに外に出ていた霧夜がいた
「霧夜先生!」
霧夜が帰ってくるなり、飛鳥たちは一斉に彼の元に集まった
「そ、それで、どうだったんですか霧夜先生?」
「佐介は無事なのか?」
「教えてください霧夜先生!」
飛鳥たちは必死に尋ねた。佐介が無事であることを信じて
「そのこと…なんだが」
「っ?」
どうにも思い悩んだような顔で言葉を返す霧夜を見て
ここにいる全員が息をのんだ
はたして霧夜は向かった先で何を見たのか?
そして佐介の安否はどうなっているのか?
飛鳥達に不安と焦りが感じ取れるのだった