佐介が妖魔衆にやられたという事実を受けながら飛鳥たちは旅館で帰りを待っていた霧夜たちと再会する
再会してほどなくして飛鳥たちは旅館に返ってくる前に起こったことの一部始終を説明した
当然のごとくそれを聞いたチェルシーとレイナは悲しみに打ち震え、同じく霧夜も動揺を隠せなかった
その後、安否を調査するべく現場に向かうことになった霧夜の指示で飛鳥達は部屋で待機するようにと言い渡された
時間が刻一刻と過ぎる中、飛鳥が自分のふがいなさで佐介があんなことになったのだと自暴自棄になりかける
しかしそんな彼女を仲間たちが励まし合い、どうにかこの場は気持ちを落ち着かせることができた
そんな中、懸賞を終えて霧夜が返ってきたことに気づき、一同は現場の検証の結果がどうだったのかを尋ねると
霧夜はどこかやるせなさそうな顔を浮かべていたのだった
部屋に戻ってきた霧夜を全員が見つめる。結果はどうだったのかを聞きたいという逸る気持ちを抑えながらに
「先生、佐介くんは?…佐介くんはどうなったんですか!」
「飛鳥、少し落ち着け」
「そうだよ飛鳥ちゃん」
だが、佐介の所在を一刻も早く知りたい飛鳥は霧夜に掴み掛かり、結果を聞き出そうと揺すった
それを見て柳生と雲雀が慌てて霧夜から飛鳥を引き剥がした
「…みんな。今から出すものを見ても決して驚かないでほしい」
場が十分に落ち着いた頃合いを見計らい霧夜がようやく本題を切り出し、飛鳥たちに見せたいものがあると言い出した
全員が息を呑む中、霧夜がその見せたいものを飛鳥たちに見せた
「『っ!?』」
出されたものを見た瞬間、飛鳥たちは凍りつく
霧夜が出したのも。それは佐介が戦闘時に羽織っている背中に一騎当千の文字が刻まれた学ランだった
「…間違いありません、かすかですがにおいを感じます。まごうことなく佐介さんのものです」
「おい斑鳩?なんでにおいでわかるんだ?」
「そ、それは…五、今はそんなことは後回しですわ!?」アセアセ
斑鳩が学ランを受け取り、触ったり微かに感じる匂いをかいだ結果、佐介の学ランであることが証明された
最中、葛城になぜにおいでわかるのか問われた斑鳩は全力で話を濁した
「…先生、これをどこで?」
学ランを斑鳩から受け取った飛鳥が霧夜に恐る恐る訪ねた
「佐介が転落したという川から少ししたところに浮かんでいたのを見つけて持って帰ったのだ」
「そ…そんな」
例え学ランが見つかったとて肝心の持ち主は行方知れずでは意味がないと言うのが現状であった
「だがまだあきらめてはいかん、佐介が本当に死んだと決めつけるのはまだ早い。引き続き調査隊に佐介の行方を捜してもらう。だから…気をしっかり持て、いいな?」
そう言い残し、霧夜は佐介捜索の続行を調査隊に伝えるべく再び部屋を出て行くのだった
「……佐介くん」
霧夜から渡された佐介の学ランを飛鳥は悲しげにぎゅっと抱きしめる
「し、心配ねぇって飛鳥、大丈夫、佐介は絶対生きてるよ、霧夜先生も言ってたろ?捜索隊に再度捜索を行ってもらうって、だから時期に見つかるさ」
「…かつ姉」
この時、飛鳥は自分の肩を掴んでいる葛城の手が震えていることに気づいた
彼女…いや、彼女だけではない、斑鳩も柳生も雲雀もチェルシーもレイナも同じくらい佐介のことが心配なんだと言うこと改めて感じとった
自分だけじゃない、みんなも同じ気持ちなのに必死にこらえているんだ
なのに1人だけうじうじしてたらみっともないと飛鳥は気持ちをいったんリセットさせた
「そうだよね。ありがとうかつ姉!私、信じるよ!佐介くんはどこかで無事だって!だからみんな、絶対に探しだそうね!」
「飛鳥さん…」
「飛鳥ちゃん」
「…ふっ」
元気を取り戻した飛鳥を見て斑鳩たちも佐介を見つけてみせるという思いを1つに合わせるのだった
「しかし、どうにも腑に落ちんな?」
「何が腑に落ちないんだ光牙?」
そんな中、光牙が口を開いた
「俺が気になったことは3つ、1つ、妖魔衆の襲撃、2つ、あの男の行動目的、そして3つ、お前たちが上から与えられた忍務の内容。これらのことに共通するもの、それは全てあの娘…かぐらの存在だ」
光牙が全員にその3つを指摘した
「まず1つについて言えば、妖魔衆が総勢でかぐらを襲おうとしていたことだ。小さな少女相手にあれだけの数、何かあるのは明らかだ」
隙を見せた時、妖魔衆は自分たちにではなく、真っ先にかぐらに刃を向けていた
「2つめについてはあの男の行動は謎が多い、。あいつはここに来たのは人探しだと言っていた。そしてやつ妖魔衆達からかぐらを守ろうとした。やつとかぐらには何か関連があるのだろうか?」
「わたくしたちにも一瞬、敵意を示していましたしね」
「…そして3つめについては、お前たちに捕獲の忍務を与えたと言うことだ。おそらく上の奴らもかぐらを狙っていることは間違いはないだろう」
全ての接点はかぐら、これが意味するものはなんなのかと全員が頭を悩ませた
「いずれにしてもこの件、偶然とかたず蹴るにはとてもじゃないが無理がある。やはり全ての鍵を握っているのはかぐらであることは揺るぎない事実だ…春花、未来」
「なに?」
「なにかしら?」
すると光牙が春花と未来に話しかけた
「すまないが力を貸してくれ、どうにかしてかぐら、それと疾風の情報を掴んでおきたい」
「なるほど、そういう事」
「OK、了解したわ」
紅蓮竜隊の情報通の自分、未来、春花の総動員でかぐら達のことを調べることになった
そんな中、飛鳥は1人、空を眺めていた
「かぐらちゃん…君はいったい何者なの?」
窓際から空を見つめながら飛鳥はぼそりとそう呟くのだった
一方その頃、ここは京都内を流れる川の近く
そんな場所を疾風が訪れていた
しばし川沿いを歩いていた彼がピタッと足を止め、その視線の先をじっと見据えていた
「…ようやく見つけたぜ」
見下ろすものを見ながら疾風は嬉しそうな笑みを浮かべるとともに懐から銃らしきものを取り出し、銃口を向ける
「…この時をずっと待ってたぜ」
バキュゥゥゥゥゥン!!!
静かな音が流れる場に銃声が響き渡る
「…これで、"お膳立てはととのったな"」
疾風はどこか楽しみというかのように笑みを浮かべている
「〜〜ちゃん、こっちこっち!」
「〜さま、お待ちください!」
「っ!?」
近くから声が聞こえ、疾風は瞬時に風と共に消え失せる
「おーい!奈落ちゃーん!こっちだよ〜早く早く〜!」
「お待ちくださいかぐらさま!?先ほどの銃声、危険です!」
「大丈夫だよ!それより早くしないと置いてっちゃうよ〜!」
「まったく、‥お待ちください!」
先走るかぐらが奈落を置いてどんどんと先に進んでいった
「っ?」
そうして駆け付けたかぐらはあるものを見つけた
「な、奈落ちゃーん!」
「どうしましたかぐらさま!」
かぐらの呼びかけに応じ、急いで奈落が駆けつける
「ねぇ!あれ見て!」
「……あっあれは」
奈落がかぐらが指差す方へ目線を向けてみるとそこには
ザザァァ…ザザァァ…
川の近くにあった石の階段に打ち上げられて気を失っている佐介の姿があった