再び結界が発動し、妖魔が次々と出現していると報告を受けた飛鳥たちはそれぞれ別れて妖魔を倒していた
キイィィィィン!!
【グェ…グェェ~!】
「やあああ!!!」
ザシュン!
【ギャァァァア!!】ドサッ
「はぁ…はぁ…ここにもこんなに妖魔が、みんなはうまくやってるかな?」
妖魔出現に伴い、一般人を避難させているであろう仲間達のことを飛鳥は考えていた
キィィン!
【グエ…グエェ〜】
「またっ!」
【キュアァァァァァ!!!】
「きりが無い。でも…てやあぁぁぁぁぁ!!!」
すると新手の妖魔が出現し、飛鳥は小刀を再び握りしめそれらを迎え撃つのだった
【ギュッ……ギャハ】ドサッ
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
大幅に体力を消耗したがなんとか妖魔を倒すことに成功する
「…こんなに妖魔が出現するなんてやっぱり、かぐらちゃんに引き寄せられているのかな?」
この異常な事態を飛鳥はそう解釈するのだった
そんな時だった
ドゴォォォォォォォォォン!!
「今のは!?」
近くのほうでものすごい音が鳴り響く
気になった飛鳥が音のする方へと急いで駆けつけた
飛鳥が音のする方にたどり着いた
「あっ、あれは!」
その先で飛鳥が見たもの
【グァァ~】ドサン
「…ふぅ、かぐらさま、おけがはありませんか?」
「うん。ありがとうね奈落ちゃん♪」
「いえ、これが自分の務めですから」
襲いかかってきた妖魔を蹴散らす奈落と、その彼女に守られているかぐらの姿だった
飛鳥は意を決して彼女たちの元に飛んで行く
「かぐらちゃん!奈落ちゃん!」
「っ!」
「貴様は!」
自分たにの目の前に現れた飛鳥を見た奈落がかぐらを守るべく、前に出る
「…見つけたよ」
「何の用だ?」
「っ……忍務を果たしに来たんだよ」
飛鳥はそっと目を閉じ、少し前に霧夜が言ったことを思い返していた
それは霧夜が飛鳥たちから話しを聞き、それを上層部に報告に行ってからしばらくのことであった
戻ってきた霧夜が飛鳥たちを呼び出した
集まるとともに全員その場に静かに正座し、目の前にいる霧夜の言葉を待っていた
『みんな待たせたな。…先ほど上から新たな忍務が下された』
霧夜からのその言葉に全員が息を飲んでいた
『そ、それで霧夜先生、新たな忍務とは?』
恐る恐る斑鳩は訪ねた
『新たな忍務、それは……』
霧夜の放ったその一言に飛鳥たちは驚愕の表情を浮かべる
「…忍務のために私たちはあなた達を倒さなければならないの!」
「なるほど、捕獲が無理と考えて自分たちを消しに来ということか。だが残念だったな。貴様らがどんな作を講じようともかぐらさまはやらせはせんぞ!」スッ
かぐらを狙っているとわかるや奈落が即座に身構える
飛鳥もそれに対し、小太刀を抜く
「ふっ!!」
勢いよく駆け出し一気に間合いを詰めていく
「てやぁぁぁぁぁ!!」
そして十分に距離を詰めた飛鳥が切りかかろうとした時だった
シュン!カキィィン!
「っ!?」
攻撃を繰り出そうとした瞬間、どこからともなく佐介こと獅子丸が現れ、その攻撃を防いだ
「佐介くん!?」
「蓮!」
「……っ!」
蓮の登場に驚く飛鳥と感きわまるかぐら、そしてそれとは逆に奈落はどこか不愉快そうな顔を浮かべる
「奈楽さん。ここは私が相手をします。奈楽さんはかぐらさまを守ってください」
「…ふん、貴様に指図されずともそうするわ」
「もう奈落ちゃん、蓮は仲間なんだから仲良くしなきゃダメだって言ってるのに…頑張ってね蓮♪」
「お任せください、この身にかけて必ずやお守りいたします」
そう言うと蓮は目の前にいる飛鳥に向かい合う
「さ、佐介くん…」
「…まだ私のことをそう呼ぶんですか、私は佐介などではなくて蓮と言ったはずですよ?」
「違うよ!あなたは佐介くんだよ!私達の仲間なんだよ!」
「私を惑わそうとしてもそうはいかない…これ以上の会話は不要。あなたに恨みはありませんがかぐらさまに手を出すと言うのなら、私は全力であなたを倒すだけです!」
蓮は全身から気を高まらせる
その瞬間、飛鳥は全身が震え上がる
彼の実力を知る飛鳥だからこそその震えは凄まじいものであった
敵に回せばこれほどまで厄介な者はいないのだから
「行きます!」
「っ!?」
「はぁっ!」
「っ!」シャキン!
バキィィン! ザザァァァァ!!
飛びかかり、拳を振るう蓮の一撃に対しとっさに小太刀二本を盾にする
「ぐっ!うぅっ!?」グヌヌ
「ふぅぅぅん!!」グググ
蓮の強靭な腕から繰り出される一撃を受けた飛鳥は全身から力を込め、必死に堪える
「ふっ!」バッ シュタッ
勢いが弱まったと同時に蓮が一旦後方へと下がる
そして飛鳥が防御態勢を解除した瞬間
「うっ…」ヒリヒリ
気づいた。刀を持つ両手に激しい痺れが走った
「(…本気なんだ。今の佐介くんは本気で私を潰そうとしてるんだ)」アセアセ
蓮の一撃を受け、飛鳥は確信する
「(覚悟を……決めるしかないの?)」
飛鳥はボソリとつぶやくとともに霧夜から言われたことを思い出す
それはかぐらと奈落の処分を聴かされてすぐのことだった
『そ、そんな、彼女がなんなのかもわからないのに倒せだなんて』
いくら命令とはいえあんな幼い子を手にかけなければならないなどと飛鳥たちにとってその忍務は素直に納得できるものではなかった
『…それと、上からの忍務はもう一つある』
『もう一つ?』
『……佐介を裏切り者と断定し、かぐらともう1人共々処分せよ。これが上からのもう一つの指令だ』
『っ!?』
霧夜から語られたその内容を聞いた瞬間、飛鳥たちは驚愕した
『そ、そんな…』アセアセ
『先生の言っていたあの言葉が現実になってしまった……そう言うことですか?』
『あぁ、残念だがな……お前達も言いたいことはあるだろうが、上がそう決めてしまった以上、命令は絶対だ。善忍として生きたければ覚悟を決めろ。それ以外に道はない』
忍として生きるものとして上からの命令はそれだけ重要なのだと霧夜はそう語る
『霧夜先生はどう思ってんですか!いくら上の指示だからってそれで納得してんですか!?佐介はこれまでアタイ達と一緒に忍を学んできた大切な仲間なんですよ!?』
『そんなことは百も承知だ!俺とて納得してるわけがないだろ!あいつも俺にとってお前達同様大事な生徒であることに変わりはない……だが、こうなってしまったからには今の俺にはどうすることもできんのだ』
立場的にも、教師としても、自分が情けないと内心心が叫んでいるように拳を握りしめていた
霧夜も自分たちと同じ気持ちを抱いていることをこの時、飛鳥たちは感じ取っていた
『お前たちも覚悟を決めろ。今のあいつは俺たちの知る佐介ではない、中途半端な思いでいけば……死ぬぞ』
その言葉に飛鳥たちは凍りついたのであった
「(忍務のために佐介くんを倒なければいけないなんて、でも……私は)」
理屈ではわかっているがやはりそれを考えると手が震えてしまう
「どうしました?…来ないなら、こちらから行きますよ!」
「っ!?」
「はあぁぁぁぁ!!」
気の迷いによってできた隙を突き、蓮が飛鳥に攻撃を仕掛けるのだった