閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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京都編 第十六章 VS蓮(佐介)、飛鳥の哀しみ 

蓮が飛鳥を攻め立てる

 

 

「……はっ!!」

 

 

「くっ!?」

 

 

「たあっ!!」

 

 

「ううっ!?」

 

 

気の迷いによって生まれた隙を突かれ、飛鳥は蓮の猛攻を防ぐのがやっとだった

 

 

「佐介くんやめて!」

 

 

「しつこい!私は蓮だといっている!たあっ!!」

 

 

「きゃああぁぁぁぁ!!」

 

 

回し蹴りが炸裂し、飛鳥は大きく後方へと吹き飛ばされた

 

 

「てやあぁぁぁぁ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

さらにその頭上から勢いを乗せた突きを繰り出してきた

 

 

飛鳥は咄嗟に体を横に回転させ、それを避けることができた

 

 

「はぁ…はぁ……っ!?」

 

 

だが、すぐ目の前には蓮が自分を見下ろしていた

 

 

「たぁぁっ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

 

ドスン!

 

 

 

「くっぅっ!」

 

 

「せいっ!ふぉあっ!!」

 

 

「うっ!ぐうぅっ!!」

 

 

踏みつけをかわした飛鳥に追撃の蹴り込みが入り、吹き飛ばされるとともに地面を大きく削る

 

 

「はあぁぁぁぁ!!!」

 

 

「佐介…くん」

 

 

「せやっ!!」

 

 

「がはっ!?」

 

 

蹴りが脇にヒットし、再度地面に叩き伏せられた

 

 

「…ふぅ」

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

為すすべもなく飛鳥はその場に倒れ込むしかできなかった

 

 

「…これで、終わりだ!!」

 

 

蓮が止めの一撃を繰り出そうと構えた

 

 

「佐介…くん」

 

 

「っ……っ!?」ドックン!

 

 

「…っ?」

 

 

だがその時、傷ついた飛鳥の哀しみに満ちた顔を見た瞬間、蓮の動きがピタッと止まった

 

 

「な、なんだ?きゅ、急に体が?…手が、震えてる?」ピクピク

 

 

まるで自分の意志とは無関係のように突き出そうとしても手が言うことを聞かない

 

 

「な、何が起こっている!?」アセアセ

 

 

「佐介…くん?」

 

 

この時、飛鳥は感じ取った。彼の攻撃が止まったのは偶然じゃない

 

 

たとえ記憶を失っていてもどこかでまだ彼の中には元の自分がいるのだと

 

 

自分が仲間であることを覚えていてくれているのだと

 

 

それが今の彼の動きを封じ込めているのだろうと

 

 

「…っ!?」ズ゙キッ!

 

 

刹那、蓮が頭を抱えてその場に倒れる

 

 

「いっ、痛い…頭がズキズキする!…わからない。どうしてこんな!?」

 

 

頭の痛みを訴えだし、とても苦しそうにしている

 

 

「う、ううっ!?…な、なんなんだ?わ、わたしの、身に…なにが?」

 

 

「それは君の中で本当のあなたがそれを阻止しようとしてるからだよ!」

 

 

「本当の…わたし…な、なにをいって?」

 

 

「そうだよ……思い出して、本当の自分を…佐介くんとしての自分を!!」

 

 

ここぞとばかりに飛鳥が必死に呼びかける

 

 

「ぐっ、ぐぅぅ!」グヌヌ

 

 

「佐介くん!」

 

 

心が大きく揺れ動こうとしている蓮の元にゆっくりと飛鳥が近づこうとする

 

 

「…な、奈楽ちゃん!あの子を蓮に近づかせないで!」

 

 

「っ、…かぐらさまの仰せのままに」

 

 

それを見ていたかぐらが奈楽に飛鳥を蓮に近づかせないようにしろと命じ

 

 

あまり乗り気ではない様子であったが、かぐらの命令を受けた奈落が蓮を助けに向かう

 

 

「ふっ!」

 

 

「っ!?」

 

 

「はあぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォン

 

 

 

奈落が足についた鉄球を飛鳥に向かって飛ばし、飛鳥はそれによってせっかくあと少しまでだったのに蓮と距離を離されてしまった

 

 

「蓮!」

 

 

「っ!?」

 

 

「かぐらさまの前でなんという醜態を晒すつもりだ貴様!?」

 

 

「…な、奈落さん?」

 

 

奈落の一喝によって蓮は我に返り、同時に頭の痛みも消えていった

 

 

「ここからは自分も参加する。文句は言わせんぞ」

 

 

「…仕方ないですね」

 

 

「よし。ならばさっさと片付けるぞ」

 

 

そういうと奈落と蓮は構えた

 

 

飛鳥も小太刀を構えるが蓮と奈落、実力者を2人も前にし、今の自分に勝ち目はあるのかと飛鳥は内心思ってしまっていた

 

 

「行くぞ!」

 

 

「はっ、はい!」

 

 

「くっ!」

 

 

2人が一斉に仕掛け、飛鳥も決死の覚悟で迎え撃とうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後だった

 

 

 

 

 

 

ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン! ズシュ! ギュイィィィィ!!!

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

「ま、眩い!?」

 

 

「こ、これは!?」

 

 

どこからともなく光りの矢が飛んできて地面に刺さるとともに一気に破裂し、視界を遮るほどの光があたりに広がった

 

 

そしてようやく光りの勢いが弱まり、目を開けてみると

 

 

「…おい、なんだこの状況は?」グググ

 

 

「…えっ?こ、光牙さん?」

 

 

いつのまにか飛鳥の前には光牙が立っていた

 

 

「飛鳥」

 

 

「ほ、焔ちゃん!」

 

 

さらにその横には焔が立っていた

 

 

「ど、どうしてここに?」

 

 

「今はそんなことどうでもいいだろ。それよりもなんでお前と佐介が戦っているんだよ?あの鉄球女と戦っているのならわかるが、いったいなにがどうなってんだ?」

 

 

駆けつけてきた2人がこのカオス地味た光景を飛鳥に問いただす

 

 

「おい佐介、貴様、なぜそいつらと一緒にいる?なぜ飛鳥に手を出している?」

 

 

光牙が問いただす

 

 

「またか、君たちも奴らの仲間か!?」

 

 

「っ、なに?」

 

 

「な、何を言ってんだあいつ?」

 

 

光牙はどうにも先ほどの佐介の言葉が理解できなかった

 

 

「おい飛鳥、どういうことだ?あいつは光牙をよく知ってるはずだろ?なのになんであいつあんなことを?」

 

 

「……佐介くんは今、記憶を無くしてるの」

 

 

「…なんだと?」

 

 

その飛鳥の一言を聞いた光牙は驚いた表情で蓮を見た

 

 

「私たちのことはもちろんのこと、本当の自分すら忘れてしまってて、今は蓮って名乗ってて奈落ちゃん同様かぐらちゃんを守る者になってしまったの」

 

 

「な、記憶を?」

 

 

焔もその話に驚きを隠せないようだった

 

 

「…本当なのか、佐介?」

 

 

「来やすく呼ばないでもらおう、それに私は佐介ではない!かぐらさまを守護する者、蓮だ!」

 

 

「…どうやら話しは全て本当のことのようだな」

 

 

半信半疑だったが、本人の態度や口ぶりから事実であることを悟った

 

 

「まったく、お前ともあろう者が、なんて座間だ」

 

 

好敵手の変わり果てた姿に少々がっかりした様子を見せていた

 

 

「でも佐介くんの心は完全に失われてないと思うの」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「さっき私に止めを刺そうとした時、一瞬動きが止まって体も言うことを聞かなかったみたいで、もしかしたら記憶を失ってても佐介くん本来の意思は未だに体に残ってるんだと思うの。何とかして記憶を呼び戻すことができれば佐介くんはきっと私たちのことを思い出してくれるはず!」

 

 

「なるほど。そういうことか…」

 

 

光牙はそれを聞くと再び蓮たちのほうを向く

 

 

「では、俺があいつの記憶を呼び覚ますのを手伝ってやろう」

 

 

「えっ?本当に?」

 

 

その光牙の申し出に飛鳥は思わず声をあげた

 

 

「やつとの決着はまだ付いてはおらんからな。このままではそれも出来やしない。だからこそやつには早く思い出してもらわなければならん、俺との決着がまだついてなんだぞとな」

 

 

「…ありがとう、光牙さん」

 

 

「おいおい、私もいることを忘れるなよ」

 

 

「焔ちゃん」

 

 

蓮から彼自身の佐介としての記憶を取り戻させるべく、飛鳥とともに光牙と焔も戦う意志をみせた

 

 

「ふん。いくら束になろうと自分がいる限りかぐらさまには指一本触れさせん。やるぞ佐介、今度はしくじるなよ?」

 

 

「わかっていますよそんなこと」

 

 

「自分はあの2人を叩く!」

 

 

「で、では私はあの者を!」

 

 

そういうと蓮と奈落が飛鳥たちに向かって駆け出す

 

 

「私たちも行くよ!」

 

 

「あぁ!!」

 

 

「ふん」

 

 

同時に飛鳥たちも駆け出し、両者共々、激しくぶつかり合うのだった

 

 


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