飛鳥たちが霧夜からかぐら討伐の忍務継続の指令を受けていた頃
風丸に敗れた光牙をつれて焔はどうにか宿屋に戻ってきた
そして今、焔たちは焔紅蓮竜隊の宿泊する宿の一部屋の中にいた
光牙は事情を知って慌てふためく詠たちの看護を受け、敷かれた布団に包まられ横なっていた
「すまないな焔、面倒をかけたな」
「なに、気にするな」
「お前たちもすまなかったな」
「いえいえ、たいしたことはしてません。無事でなによりです」
ここまでのことをしてくれたことに対し、光牙はお礼を述べ、詠たちは光牙が対して怪我をしていないことに安堵していた
「しかしあの風丸って男、本当になにものなんだ?」
「確かに気になるわよね」
「あの方はかぐらさんを知ってるみたいですけど、かぐらさんはそうでもない感じでしたね」
「あ~もうわけわかんなくなってくるよ」
ホッとした焔たちは次に風丸について話し合っていた
「それに…やつは気になることを言っていた」
「こ、光牙さん。まだ起き上がっては」
「問題ない、これくらいならな」
詠に支えられながらも光牙は上半身を起こしながらその話題に入ってきた
「気になることとは何かしら?」
春花が訪ねると光牙は説明を始めた
「飛鳥がかぐらたちを追おうとした時に言った言葉がどうにも引っかかってな……「かぐらと蓮に手を出すな」っと」
「蓮?蓮って誰のこと?」
「…佐介のことだ」
『えっ!?』
光牙がボソリとつぶやいたその一言に詠たちは驚く
「じょ、冗談でしょ?」
「いいや、本当のことだ。どういう経緯かは知らんがなぜか奴らと一緒に行動を共にしているみたいなんだ」
「にわかには信じ難い話だけど…どうやら本当のことみたいね」
半信半疑な詠達だったが、光牙と焔の嘘偽りない眼差しを見てそれが本当の事だということを察した
「で、でもでもどうして佐介はかぐらのもとに?」
「どうにもあの時のことが原因で一種の記憶喪失になっているらしいんだ」
「じゃあ獅子丸というのは?」
「かぐらたちがあいつをそう呼んでいたんだ。本人もすっかりその気になってたみたいだしな」
よくわからないといった顔を浮かべながら焔はそう説明する
「話しを戻すが、やつのあの口ぶりから察するにやつはかぐらだけでなく佐介…いや、今は蓮というべきか。あいつのことも知ってるようにみえる」
「……かぐら、風丸、そして蓮、彼女たちの接点っていったいなんなのかしら?」
検討もつかないかぐらたちの謎はますます深まるばかりだった
「……」
「っ?どうしたんや焔さん?浮かん顔してるで?」
光牙たちがかぐらについて考えてる中、日影が1人何かを考え込んでいる様子の焔に声をかけた
「あぁ、すまない。ちょっと考え事をしていたんだ。…私たちは忍としての姿勢を見失っているのではないのかと、曲がりながらにも忍務を全うしようとしていた飛鳥を見てるとどうしてもそう考えてしまうんだ」
飛鳥と戦う中で焔はそう感じていた
「あんまり深く考える事ないと思うで?…わしらは蛇女で道元に利用され、挙句裏切られた身やからな。もう忍務をバカみたいに信じることはできんからな」
「そうですわ焔さん。それにわたくしたちは抜忍です。今も忍務があるわけではありませんし」
「でも焔ちゃんの気持ちもわからなくはないわね。上の人間を信じて命をかけて与えられた忍務を全うする。それこそ忍ですものね。半蔵の子たちが少し羨ましいかも」
忍として一歩先を行かれたような気になり焔たちは暗い表情を浮かべる
「…らしくないぞ、そんな顔をするな前たち」
「こ、光牙?」
するとそんな彼女たちに光牙が焔たちに囁く
「お前たちは半蔵のやつらを羨む気持ちはわかる。だが、やつらにはやつらにしかない道があるように俺たちには俺たちにしか見いだせない忍の道があるだろう?」
「私たちにしか見いだせない忍の道?」
「昨日の自分より、今日の自分より強くなる。鍛え研き、その先にある道を突き進む。それが俺たちにしか見出すことができない忍の道ではないか?」
「…強くなった先にある私たちの道」
光牙の言葉に焔たちは胸を撃たれ、そのことを深々と感じた
「そうだな。その通りだな!くよくよするなんて私たちらしくないな、そんな暇があるのなら修行あるのみだ!私はやるぞ!バリバリ修行して今よりもっともっと強くなってやるぞ!そして見つけてみせる、私たちが目指す忍の道を!」
「ですね、わたくし、なんだか気持ちが楽になった気がしますし、体中からやる気が満ち溢れてきましたわ!」
「そやね。なんやわしもそんな気がしてきたわ」
先ほどまでのくよくよが嘘のように元気を取り戻した焔たちは張り切りを見せ、そんな彼女たちを見て光牙はどこかホッとしたように笑みを浮かべる
「しかし、問題はこれからどうするかだな。私たちが京都にいられる期間は限られている」
「はい、わたくしが当てた福引は2泊3日ですから」
「ぬぅ~、短いな」
短い滞在期間に焔は苦い顔を浮かべる
「ふふっ。安心して焔ちゃん。実はね、そんなみんなにとっておきさの朗報があるのよ~」
「朗報だとどういうことだ春花?」
すると春花が全員に朗報があると告げ、光牙たちは小首をかしげる
「実は私ね、この町のお偉いさんに営業を持ちかけに行ってたの。妖魔を1体倒すごとに500万、巨大妖魔は追加ボーナス付き、京都中の妖魔がいなくなるまでの間の宿の確保やその他もろもろね」
「なっ…」アセアセ
「はっ、春花…それはつまり…っ?」
「そう、妖魔狩りが私たち焔紅蓮竜隊の初忍務ってわけよ」
春花から聞かされたその内容に全員がまるで鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔を浮かべる
「…う、うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ご、ごごご、500万!?は、春花さん、それはなにかの間違いではなくて?5円の間違いなのでは!?」
「いやいや、5円の仕事なんてどんな仕事よ?そんなの相当ブラックじゃない」
報酬の金額が信じられなず、動揺しながら言う詠の一言に春花は若干呆れ気味につぶやく
「うおおぉぉ!感動だ!感動したぞ春花!私は猛烈に感動したぞ!抱きつかせてくれ~!」ギュッ
「あらあら、もう焔ちゃんたらw」
あまりの興奮からか焔は春花に抱きついた
「俺たちの知らぬ間に…お前の行動力の速さには驚かせれるな」
「褒言葉と受け取っておくわね。でもみんな、これからは忍務だから今以上に気合を入れておいてね」
「もちろんだ!よ~しみんな!焔紅蓮竜隊の全力をもって妖魔を狩って狩って狩りまくって大金getだ!」
『おー!!』
焔の掛け声に皆も声をあげる
「ふふっ、金に目がくらまなければいいがな」
「せやけどみんなの目に生気が戻ったみたいやな。やっぱりわしらはこうあるべきやね」
「あぁ。…その通りだな」
はしゃぐ焔たちの姿を見て、元の自分たちを取り戻したことに微笑ましそうな顔を浮かべる光牙だった