赤球を飲み込み、更なる成長を遂げ、蓮と奈落とともに去っていったかぐらを追おうとする飛鳥だったが
彼女の前に風丸が立ちふさがり、それを妨害する
その時、光牙が風丸に攻撃を仕掛け、彼が秘めている全てをこの場で暴こうと戦いを挑んだ
光牙は風丸をねじ伏せるべく全力で挑んだ
だが、それでも弾丸の力で強化した風丸には歯が立たず、結果は光牙の完全敗北という結果となり
風丸はかぐらと蓮に手を出すなと警告し、その場を後にするのだった
あれからしばらくして飛鳥は一度、旅館に戻り、先に戻っていた斑鳩たちに事の顛末を教えた
「そうかですか、かぐらさんをとり逃がしてしまったんですね」
「……ごめんなさい」
「ううん。飛鳥ちゃんが気に病むことないよ!状況が状況だったんだから!」
落ち込む飛鳥をひばりが必死に慰めようとする
しかし、なおも俯く飛鳥の姿を見て皆、言葉を失い、部屋の中に沈黙が走った
「飛鳥…」
「なにかつ姉?」
そんな中、沈黙を破り葛城が飛鳥に声をかけてきた
「実はアタイと斑鳩さ、妖魔を退治してる中で日影達にあったんだけどよ。そん時にあいつらに言われちまったんだ」
「はい…「あなたたちの正義が身勝手、独善的」だ…と」
「…オレもだ。未来のやつはこう言ってきた「もしその道が間違ってたらどうするのか」ってな。あの時は自分が選んだ道だからと言ったが、今思うとやはりどこかで納得ができてないのかも知れないな…」
「っ……」
葛城のその言葉を聞いた飛鳥はここに帰る前、焔が自分に向かって吐き捨てた言葉を思い返した
それは風丸にやられた光牙をなんとか背負ってその場を去ろうとした時だった
『佐介くん…』
俯く飛鳥に焔が近づいてきた
『おい飛鳥、なぜあの女を斬ろうとする?』
『それは、それが上層部から私たちに与えられた忍務だからよ』
焔の問いに飛鳥はそう答えた
『なるほど…しかしな飛鳥、善忍の上層部の言ってることは本当に正しいのか?』
『えっ?』
『お前の言う上層部が言ってることが本当に正しいのかと聞いてるんだ』
そんな飛鳥に対して焔が新たな質問をし、その質問に飛鳥は返す言葉が出なかった
『飛鳥、お前はかぐら危険だと思っているのか?』
『そ、それは…まだわからないけど』
『わからない?そんな曖昧な思いで斬るのか?それがお前の言う正義なのか?』
『…そ、そうだよ!それが忍務だからだよ!』
飛鳥は必死にそう焔に言うも、焔はなおも冷たい視線を向けていた
『では佐介はどうだ?』
『っ!?』
佐介の名が出た瞬間、飛鳥は言葉を失ってしまう
『あいつは元々お前たちの仲間だったんだろうに…それでもお前はあいつを斬るというのか?忍務だからと一緒くたに纏めるのか?お前とあいつは辛いことも楽しいことも共に歩んできたんじゃないのか?……それでもお前はあいつを斬るんだな?忍務のためにと、裏切り者としてあいつを斬るのだとそういうんd『まれ…黙れ、黙れ!!』っ!』
シャキン!!
話し途中の焔に向かって飛鳥が小太刀を突き立てた
『焔ちゃんに……焔ちゃんに何がわかるって言うの!!』
それは今まで見たことがないくらいに怒りを孕んだ顔だった
『私たちがこの状況をうけてどんなに辛いか…佐介くんを倒さなきゃいけないということが何れ程辛いか焔ちゃんには分からないよ!!!』
『…あぁ、わからないさ!!』
カキイィィン!
『ぐっ、ぐうぅぅ!』グヌヌ
『ぬぅぅぅぅ!!』グヌヌ
光牙を背負いながらも片方の腕で3爪を繰り出し、飛鳥とのつばぜり合いに持ち込む
『今のお前のように自分の気持ちに迷いを見せ、中途半端に叫んでるだけのやつの言葉なんか全然わからないね!!』
ガキィィィィィン!!
『お前の目指していた忍ってのはこんなもんだったのかよ!!』
『ぬあっ!?』
焔の剣圧に押された飛鳥が吹き飛ばされ、尻餠をつく
『ぐうっ!』
シャキン!
『っ!?』
『……』
立ち上がろうとする飛鳥に向けて焔が3爪を突き立てる
『っ…!』
『……もういい』
『っ?』
すると焔が3爪を下げた
『私とて暇を持て余す時間はない、一刻も早く光牙を手当しなきゃならんからな』
そう言うと焔は光牙を抱えてその場を去ろうとする
だが、ふと立ち止まり、ちらっと飛鳥を見据える
『…これだけは言わせてもらうぞ、私の知っているお前はそんなことで悩むようなやつじゃなかったぞ、私に仲間の大切さを教えてくれたお前が仲間のことで悩むなんて皮肉な話だな』
焔はそう言い残して今度こそその場を去って行くのだった
『…じゃあ、私は、私はどうすればいいのよ!うわぁぁん!!うわぁぁあーん!』
悔しさと哀しみの涙を流しながら飛鳥はその場に這いつくばり、地面を何度も何度も叩きつけた
「(…まいったな。これじゃ私のほうが悪忍で、焔ちゃんのほうが善忍みたいだよ…)」
焔の言葉を思い返しながら飛鳥は内心そう呟くのだった
そんな時だった
ボォォォン!!
「みんな揃っているか?」
「き、霧夜先生」
突然、煙が発生し、中から霧夜が現れた
「全員揃っているな?…ではお前たち、忍務の結果を報告しろ」
現れて早々に霧夜が飛鳥たちに忍務の経過報告を要求した
「ごめんなさい霧夜先生、かぐらちゃんには逃げられてしまいました」
「そうか、まぁ仕方がない、今回は予想外な出来事が多すぎた」
佐介が記憶を失い獅子丸と名乗り、かぐらのもとについていたこと。どういう経緯かは不明だが、風丸という男がかぐら討伐の障害となっていること、そしてなによりかぐらが新たな成長を遂げたこと
皆、飛鳥たちにとっては予想外のなにものでもないことが度重なっていった
「ともかく、忍務はこのまま継続する。引き続き忍務にあたってくれ」
報告を聞き、霧夜は次に備えて忍務を継続するよう飛鳥たちに言い渡す
「どうしてひばりたちはかぐらちゃんたちを倒さなきゃいけないんですか?…それに佐介くんのことも、理由もわからないままじゃひばりたちもやりづらいです!」
「甘えるな!忍の忍務をなんだと思っている!」
異議申し立てるひばりに霧夜が一喝をいれた
「忍の忍務とは常に心に重荷を背負うものだ。闇に紛れ、影に隠れ仕事をこなすという意味では我々も悪忍も大差はない、綺麗事だけでどうしようもできないこともある。それがお前たちが目指す「忍」という道なのだ」
忍を目指すためにはそうするしかない、その言葉が彼女たちの心にグサリと刺さった
「で、でもよ…」
「佐介さんを倒すなんて…」
仲間である佐介を倒すことにはやはり抵抗はあった。口では言わないがそれは霧夜とてそれは同じだった
「…大丈夫、まだ望みはあるよ」
『っ?』
「どういうことだ飛鳥?」
飛鳥のその言葉を聞いた霧夜が尋ねる
「あの時、佐介くんは私に止めを刺そうとして刺せなかった。恐らく、心の奥にはまだ佐介くん本来の意志が残ってるんだと思うんです」
「本来の意志?」
「うん。記憶を失っても私たちとの絆はまだ心に残ってる。だから必死に訴え続ければきっと佐介くんは戻ってきてくれると思うんです」
拳をギュッと握り締めながら飛鳥は訴えた
「…その根拠はあるのか?」
「いいえ…でも私は信じてます。佐介くんのことを。だから私は何が何でも諦めません。必ず佐介くんを取り戻してみせます!」
強い信念を込めた瞳で飛鳥は霧夜に言い放った
「……わかった。ならば俺も上に掛け合って、佐介の件に関しては何とかしてもらうよう交渉をしてみよう」
「霧夜先生!」
「…俺にとってもあいつは大事な教え子だからな。ともかく、今は休んでおけ、皆先の戦いで消耗した体をしっかりと万全にしておけ」
『はい!』
霧夜はそう言い残すと部屋を後にした
「やったな飛鳥」
「うん。……必ず連れ戻すからね。待っててね佐介くん」
飛鳥と斑鳩たちの思いが1つになり、佐介を取り戻すことを誓ったのだった