「じ、じっちゃん!」
「は、半蔵さま!?」
突如として自分たちの進む道を決めた飛鳥達のもとに半蔵が現れた
「じっちゃんもこっちに来てたんだ」
「そうじゃよ。わしもお前さん達と一緒に京都を楽しもうかと思っての」
ニッコリとした顔を浮かべながら半蔵はそう言った
だが、すぐに真剣な顔を見せた
「話しはだいたい聞かせてもらったぞ。しかし佐介がの~…お前さんたちにとっては辛いことじゃろうて?」
「うん。でも私たちは諦めないよ!ぜったい佐介くんに私たちのことを思い出してもらうんだ…だって、佐介くんは私達の大切な仲間だもん側にいてほしいと思える人だから…」
半蔵はそんな飛鳥や彼女に共感する斑鳩達を見てこれほどまでに愛されている佐介がなんだか羨ましく思えた
「張り切るのはいいが、問題はまだ他にもあるだろう?」
すると突然、光牙が会話に口を挟んできた
「他にもというと?」
「忘れたのか飛鳥?下手にかぐらと佐介にちょっかいをかけようとすればまた"疾風"のやつが邪魔をしに来るのがオチだぞ?」
「っ!?」
その時、半蔵が激しく反応した
「あっ、そうだった…」
「確かにあいつがいる限り迂闊に手が出せないな」
続いて焔が語ったその言葉を聞いて飛鳥たちは肝心なことが抜けていたと俯く
そんな時だった。光牙と焔は自分たちの方に歩み寄る半蔵に気が付く
「どうした半蔵?そんな面食らったような顔をして?」
「…ほ、焔わしの聞き間違いかもしれん。もう一度聞かせてくれ。誰がちょっかいを出すって?」
光牙と焔は半蔵の反応を不審に思ったが、隠すこともあるまいとこれまでの経緯を話した
自分たちが京都を訪れた際に声をかけてきたり、かぐらたちと遭遇中に度々現れては名のとおり風のように消えていくことなど、知っていることは全て伝えた
話しを終えると半蔵は難しそうな顔をしていた
「…まさかのう」アセアセ
「じっちゃん、もしかしてあの人のこと何か知ってるの?」
「っ…」
飛鳥の問いにまるで図星を突かれたかのような反応を示し、それを見た他の皆の視線が一気に半蔵に集中する
「光牙たちの話しを聞いた時からもしやとは思っておったんじゃがの……」ゴソゴソ
すると半蔵は懐から何かを取り出し、それを飛鳥に手渡した
「うわ~、これってもしかしてじっちゃんとばっちゃん?若いな~」
手渡されたのは半蔵の若かりしころの姿が写った写真だった
「これこれ、そこではない。写真の左側を見てみよ」
「左側?…っ!?」
『「っ!?」』
半蔵の言われた通りに写真を見た全員が驚きに包まれた
写真には3人写っていたのだ
真中には若かりし頃の飛鳥のばっちゃん。右側には若かりし頃の半蔵が写っていた
そして左側に写っていたのは………"疾風"だったのだから
「な、なんだよこれ!?なんであいつが半蔵と一緒に写ってんだよ?さっぱり状況が飲みこないぞ~!」アセアセ
「落ち着いて焔ちゃん。困惑してるのはみんな同じだから」
これを見て混乱する焔を春花が落ち着かせるのだった
「じっ、じっちゃん!なにこれ?どうして若い頃のじっちゃんとばっちゃんの写真にあの人が写ってるの!?」
飛鳥は必死に半蔵に説明を求めた
「そうだぞ、答えろ半蔵、あんたたちは奴とどういう関係なんだ?…それに、なにより気になるのは…この写真」
光牙は再び写真を見ながら最大の違和感を感じていた
それもその筈、自分たちが遭遇した疾風と写真に写る疾風。どちらも姿形が一致している普通なら絶対にありえないことである
「納得のいく説明をしてもらうぞ半蔵」
光牙は半蔵を睨みながら問い詰める
「ここに来る数分前、俺はあいつを見かけた」
「なんじゃと?」
「…佐介と一緒にな」
『っ!?』
さらに光牙の放った一言に飛鳥たちは衝撃を受けた
「こ、光牙くん!佐介くんは!?」
「残念だがその後かぐらたちがやってきてあいつはそのまま行ってしまった」
「…そ、そうなんだ」
せっかく接触できるチャンスだと思っていたがそれも叶わないことに飛鳥たちはがっかりした
「話しを戻すぞ。俺が見た感じやつは佐介にとても親しそうに語りかけていた。まるで佐介のことを昔から知っているかのようだった。…それにあいつはかぐら同様あいつを佐介ではなく蓮と呼んでいた」
「…っ」
そう説明した瞬間、半蔵は何かを察したような顔をしていた
「黙ってないで答えたらどうだ半蔵?」
痺れを切らした光牙が再び半蔵に説明を求める
「……あやつと会ったのはわしとばっちゃんがまだお前さんたちのように一人前の忍として修行に明け暮れていた時じゃった。そんなわしらの前にまるで風の如く現れたんじゃ」
語りながらに半蔵の脳裏に浮かび上がるのは疾風との初めて出会った時の光景だった
幼き自分たちの前の前にそよ風のごとく疾風は現れた
彼からはいろんなことを聞いた。自分が探し人を探すために今まで多くの地域を旅したことやそこで何をしていたかなどを
まだ世間知らずの半蔵達にとって疾風の語るもに半蔵たちは大いに好奇心をそそられた
「そしてあやつはわしらの住まうあの街に滞在する間、忍を目指すわしらに自分のもつ忍としての技術をいろいろ享受してくれた」
「ちょ、ちょっとまってじっちゃん!?…技術を教わったって?」
説明をする中で半蔵の口から出た言葉を聞いた飛鳥たちは驚く
「そのままの意味じゃよ。あやつは言うなればわしとばっちゃにとって師と呼べる存在じゃった。わしらが今や伝説の忍だなどと言われておるのはあやつのお陰といっても過言ではないんじゃよ」
「な、なんと…そのようなことが」
疾風が半蔵たちに忍とは何かを教えたと聞き、飛鳥たちは信じられなかった。もちろんこの話しを聞いていた霧夜も例外ではなかった
「わしやばっちゃんにとってあやつは忍の道を示してくれた恩人であり親しき友人じゃった」
どこか懐かしそうな顔を浮かべながら半蔵はそうつぶやいた
「じゃが、とうとうあやつは街を離れるとわしらに言ってきたんじゃ、「俺の人探しは終わってない、だから探しに行かなきゃな」っと。短い間だったとは言え親しい友人となったあやつとの別れは寂しさを感じさせられた。その時わしは別れ際に訪ねた。「どうしてそこまでして探す」のかと、するとあやつは笑いながらこう言った」
そういうと半蔵の脳裏に疾風との別れ際の光景が浮かび上がる
去ろうとする疾風が半蔵が問わると笑みを浮かべながら振り返る
『俺には果たさなきゃいけない約束があるんだ…』
『約束?』
『あぁ、大事なダチから託された約束がな……』
疾風はそういうとどこか切なそうな顔をしていた
『随分と親しい友人だったんだな』
『まぁな。あいつとは長い付き合いだったからな。言うなら腐れ縁ってやつさ』
『今その人はどうしてんだ?』
『死んじまったよ。俺に"あいつ"を託してな……まったく、こっちの気も知らねぇでな』
そう言いながら疾風は顔を帽子で隠した
『名前は?…あんたがダチっていうそいつ、名前はなんて言うんだ?』
『……"蓮"だ』
この時、疾風ははっきりと友の名を呟いたのだった
『っ…』
「そうしてあやつはわしらの前から消え去った。…あれからもう50年以上も会ってはおらんかったが、しかしあやつがかぐらを守ろうとしたり、佐介のことを蓮と呼んでいたこと。…これは単なる偶然では片付けられないの~…いったいこの3人にどんな接点があるというのじゃ?」
旅館の窓から景色を眺めながら半蔵はボソッと呟く
「……佐介くん」
そんな中、飛鳥は佐介の名をつぶやき思いを募らせるのだった