閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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第十八章 たとえどんなことがあっても友達はずっと友達です

柳生との騒動があったあれからというものひばりは柳生と口も聞いてくれなかった

 

一方、柳生のほうは人形のことをみんなに話して聞かせた

 

「そんなことがあったなんて」

 

「不思議な出来事ですわね」

 

「なんかおっかねぇなその人形」

 

「おかしいですね。僕が直して上げた時にはそんなことなかったんですがね?」

 

柳生の話しを聞いたみんなは驚きを隠せずにいた

 

 

「(さてと、今日もお人形さんが待ってるから早く帰らないと)」

 

いつものように支度をして帰ろうとする雲雀だったが

 

「まてひばり」

 

「なんですか霧夜先生?」

 

突然、霧夜に呼び止められた

 

「最近成績が落ちてるぞ。それに授業中も考えごとしてばかりであまり関心はせんぞ?」

 

「あっ、あの…その…」

 

「精神のたるみは肉体にもたるみを与えるのだぞ?わかっているのか?」

 

最近のことで授業への集中がおろそかになっているせいで霧夜に説教をされてしまった

 

「(どうしよう、お人形さんが待ってるのに…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

結局あれから30分もかかってしまった

 

「遅くなっちゃった!お人形さんまってるよね!」

 

急いで寮へとかけていく雲雀は息を切らせながら帰ってきた

 

「おかえりなさいひばりちゃん。もうすぐご飯できますからね」

 

「あっ、うん…ありがとう」

 

出迎えてくれた佐介に挨拶をして雲雀は部屋にはいる

 

「ごめんねお人形さん…先生がなかなか返してくれなくて」

 

「……」

 

「…お人形さん?」

 

「…嘘つき」

 

人形が怒っているとわかった雲雀は罪悪感を感じた

 

「ごめんね人形さん。ひばりは…」

 

「ひばり、私、言ったよね?約束を破ったら許さないって」

 

「えっ、うっうん」

 

雲雀を問い詰めるかのように人形はつぶやき雲雀も頷く

 

「正直ね、ひばりが学校に行くのさえ嫌だったんだ~そう言ってまた私を置き去りにするつもりなんじゃないかって」

 

「そんな、ひばり、そんなことにしないよ!」

 

「そう、そう言ってくれると思った…それでね私考えたんだ。ひばりが私のそばにず~っといてくれるようにする方法を…」

 

すると人形は全身から怪しげなオーラをわきだたせる

 

 

 

 

 

「っ、ひばりちゃんの部屋から妖気が!?」

 

怪しげな気配を感じた佐介は調理の手を止め急いで雲雀の部屋に行った

 

 

「うふふふふ」

 

「(お人形さんどうして?…まさか柳生ちゃんの言ってたことは本当だったの!?)」

 

人形が手を雲雀にかざすと雲雀の身体が金縛りにあったかのように動かなくなる

 

「なっ、なに…これ!?」

 

「さぁ行きましょう。私たちだけの楽園に」

 

「いやぁぁぁぁ!?」

 

すると部屋にある鏡が光り出し人形が吸い寄せられるようにその中に入っていき

 

それにつられるように雲雀の身体も吸い寄せられていく

 

 

 

 

 

「はっ!あれは!?」

 

「佐介!!」

 

「柳生ちゃん!」

 

向かう途中で胸騒ぎがしたとのことで柳生も向かう最中だった

 

そして部屋に行ってみるとドアから光が漏れていた

 

「これはいったい?」

 

「ダメだ。鍵がかかってる」

 

「…仕方ない。ひばりちゃんごめんなさい。はぁぁぁぁ…はぁぁ!」

 

 

バキン!

 

 

ドアノブを壊して中に入るとそこには

 

「さっ、佐介くん…柳生ちゃん!助けて!!」

 

「「ひばり(ちゃん)!?」」

 

今にも鏡に吸い込まれる寸前になっていた雲雀の姿だった

 

「ひばり!!」

 

「やぎゅu…」

 

顔まで完全に飲み込まれ残すは手のみだった

 

「まずい!!」

 

「佐介!?」

 

佐介は雲雀の手が吸い込まれる前に鏡の中に飛び込んだ

 

そして雲雀の手が吸い込まれると鏡は光を失いただの鏡となった

 

柳生もなんとかして入ろうとするも無駄な努力だった

 

「くそっくそおぉぉ!!!…ひばり…佐介…無事でいてくれ」

 

二人の身を案じる柳生だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…ううん?…ここは?」

 

目を覚ますとそこはさながらおもちゃのまちのようだった

 

ぬいぐるみや兵隊さんなどさまざまなものたちがいた

 

「ここは…あのお人形さんが作った世界ということですか?」

 

佐介はあたりを見渡しそう思っていた

 

「とにかくひばりちゃんを探さないと」

 

急いでひばりを探す佐介だった

 

 

 

 

 

 

「ここはどこなの?」

 

「ここは私の作った私たちだけの世界よ」

 

「お人形さん」

 

周りを見渡す雲雀の前に宙にふわりふわりと浮く人形の姿があった

 

「私たちだけの世界って?」

 

「苦しみも痛みもない、私とひばりだけの永遠の楽園よ」

 

「すごいけど…出口とかはないの?」

 

雲雀が問いかけると人形はムッとした表情でつぶやく

 

「出口なんてないわ、あなたは永遠に私と一緒なのよ」

 

「そっ、そんな…」

 

「どうしてそんな顔をするの?ここにいればもう家族のために頑張る必要もないし、あなたを馬鹿にする人もいないのよ」

 

「どっどうしてそれを?」

 

人形がいつの間にか自分が言っていないことを口に出していることに驚く

 

「この世界は元々あなたの心から作り出したの、それによりあなたの過去を知ったの…辛かったわよね。なんで自分がこんな目に合わなきゃいけないのかって心のどこかで思っていたのね」

 

雲雀の頬に手を差し伸べる

 

「でももう平気よ。ここには私がいる。私がずっとそばにいてあげる。あなたが私に言ってくれたように」

 

「お人形さんがそばに…お人形さんがそばに…」

 

「そう、そうよ…」

 

目を光らせて人形が囁くと雲雀の目がだんだんと虚ろになっていく

 

「お人形さんがそばに…「ひばりちゃあぁぁぁん」っ、この声は!?」

 

「バカな。この世界には私たちだけのはず!?」

 

雲雀は呼び声に正気を取り戻し、人形は驚きを隠せない

 

「ひばりちゃん!」

 

「佐介くん!」

 

「よかった。無事だったんだ」

 

ようやく雲雀を見つけて安心したように歩み寄る佐介の前に人形が立ちはだかる

 

「帰りなさい、ひばりは誰にも渡さないわ!」

 

人形は力を使い、おもちゃたちを呼び寄せた

 

「この世界にいていいのは私たちだけ、邪魔者は消えなさい!!」

 

「っ!?」

 

そう言うとおもちゃたちが佐介に襲いかかってきた

 

「佐介くん!?」

 

「くっ…!」

 

おもちゃたちの猛攻が続き佐介を追い詰める

 

「ふふふふ。いいざまだわ…もっとよもっと苦しめてあげる。私の味わった苦痛をあなたにも味あわせてやる!!」

 

「ぐあぁぁぁ!!」

 

おもちゃたちの容赦のない連撃が続く

 

「やめて!お人形さん。これ以上佐介くんを傷つけないで!!」

 

「…そう、わかったわ」

 

「お人形さん」

 

理解してくれたのだと雲雀は思っていたが人形から帰ってきた言葉はその思いを裏切るものだった

 

「あの男もあの眼帯の女の子同様にひばりをたぶらかす害虫だってことがね!」

 

「えっ!?」

 

そう言うとおもちゃたちの攻撃はさらに激しくなった

 

そしてとうとう倒れ込む

 

「佐介くん!」

 

「ここまでのようね。一応、あなたには感謝はしてる。私の身体を直してくれたからお礼として命だけは助けてあげる」

 

「っ。…はぁ…はぁ…はぁ……きっ、君はどうしてこんなことをするの?何が君をそうさせてしまったの?」

 

弱々しい声で人形に問いかける佐介を人形は睨みつける

 

「いいわ、教えてあげる。私はひばりに会う前はとある女の子の家にその子の誕生日プレゼントとしてやってきた。あの子はひばりのように私のことをとても大事にしてくれた。でもそんな私たちの楽しい日々を第なしにしたのがあの子の姉と兄だった。彼らは根っからの悪ガキで親からもらったおもちゃも乱暴に扱って壊し続けた。あげくあの子の手から私を奪い取って身体をバラバラにして最後は私をゴミ捨て場に捨てていった。許せなかった。私からあの子を奪ったあいつらを!!」

 

そう言うとさっきよりも濃いオーラを出す人形の過去に佐介たちは驚きを隠せない

 

「…そんな時ひばりと出会った。ひばりはあの子と同じ感じがした。だから今度こそ私のことを大事にしてくれる人を奪わせはしない。ひばりは永遠に私のものよ!!」

 

「お人形さん!聞いて!確かに世の中にはひどい人もいる。でも佐介くんや柳生ちゃんたちはひばりみたいにお人形さんのことを大事にしてくれる!だから」

 

「そんなの信じないし、そんなやつらはいらない私にはひばりさえいればいいのよ!!この男を追い出したら外の世界との繋がりを消し去る。そうすればひばりは私だけのものよ。アハハハ…うっ!?」

 

高らかに笑う人形だがそれと同時に人形に異変が起きるオーラがどんどん大きくなるとその闇から声が聞こえ始める

 

『それは困る。これからも貴様には我らの分まで恨みを晴らしてもらわねえば』

 

「なっ、なんですって…!」

 

『もう十分だろう。これからは我らの指示で動いてもらい人間どもに恐怖と絶望を与えるんだ』

 

「そんな!…私はただひばりと!」

 

人形が苦しむ様子を見た雲雀は

 

「あのモヤモヤがお人形さんを操って悪い子にしてるんだ…お人形さんはひばりが助ける!忍転身!」

 

忍装束に転身すると人形に向かっていく

 

「やあぁぁ!!」

 

『ぬっ、まずい!今しばらく貴様の肉体貸してもらうぞ!!』

 

「ああぁぁあぁぁ!!」

 

黒いモヤが人形の体内にはいる

 

「っ!逆らうな!!」

 

「きゃあぁぁ!!」

 

雲雀は吹き飛ばされた

 

そして先程までの人形の綺麗な声は恐ろしい邪悪な声に変わり

 

姿も悪魔のような姿へと変わった

 

それと同時に世界がガラリと変わりおもちゃのまちは荒れ果ておもちゃも無残な姿へと変わった

 

「ひどい…」

 

「ふははははは。素晴らしいなこんなにも力が漲ってくるとは予想以上だ!この力があればこやつ同様我らを捨てた人間どもに復讐できるぞ」

 

「我らも?…もしかしてあの悪魔は人形さん同様捨てられたおもちゃたちの魂なの?」

 

「その通り、我らはかつて愚かな人間どもに捨てられたおもちゃたちの魂だ!」

 

つまり、今まで感じたあの黒いオーラは人形に宿ったほかのおもちゃたちの恨みのオーラだったのだ

 

「お人形さん…」

 

「しかしやつも愚かよのう、我らのように最初から人間どもに復讐すれば良いものを、それをまた人間なんぞと戯れおって…おかげで力を溜めるのに時間がかかったわ。のろまなやつめ」

 

その言葉に雲雀はもちろんのこと佐介もキレた

 

「あなたに…」

 

「うん?」

 

「お人形さんの気持ちの何がわかるって言うんです!」

 

「なんだと?」

 

佐介の言葉に驚く悪魔人形

 

「お人形さんはひばりと遊んでいた時、心から喜んでた。その人形さんの思いを踏みにじる悪魔さんのほうがよっぽど愚かだよ!」

 

「貴様ら!言わせておけば!」

 

雲雀もまた意思のこもった声をあげる

 

「お人形さんを侮辱するあなたを」

 

「お人形さんの思いを利用する悪魔さんを」

 

「「絶対許さない!!」」

 

二人の意思が通じ合ったその刹那

 

 

ピカァァァァン!

 

 

「なっなに?」

 

「これは!」

 

その光は雲雀の秘伝忍法書のものだった

 

雲雀の秘伝忍法書が佐介の秘伝忍法書に光を与えると秘伝忍法書が黄色く輝く

 

「ひばりちゃん。これでお人形さんを救うよ」

 

「佐介くん!」

 

 

 

 

佐介はゆっくりと目を閉じると目の前に雲雀の秘伝忍法動物の兎が現れた

 

 

 

ピョンピョ~ン

 

 

佐介に向かって飛んでいく

 

 

慌てて佐介がキャッチすると新たなイメージを浮かびあがらせた

 

 

目を開き巻物を突き出し、佐介は高らかに叫ぶ

 

 

 

 

「忍…(ソウル)転身!!」

 

 

 

すると佐介の上空に雷雲が発生し、雷が佐介に直撃する

 

 

「佐介くん!?」

 

 

驚く雲雀だったがすぐその後に雷の中から佐介の声が聞こえる

 

 

「ハアアァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

そして…

 

 

「ハアァァ!!!」

 

勢いよく雷を払い、そこに現れたのは

 

「純心なる雷 佐介・(ソウル)雲雀!!」

 

髪がまるで雷のごとく電気を帯び、背中は逆さまの兎から腰にかけて伸びる二本の耳が垂れ下がり

 

手にはどデカイハンマーを手にしていた

 

「佐介くんすごい!」

 

「ありがとねひばりちゃん。ひばりちゃんのおかげで僕、身体のそこから力が湧き出てくる"ぴょん"♪」

 

一人称は変わらないが語尾に『ぴょん』がついていた

 

「小賢しい!!」

 

「いくぴょん!!」

 

悪魔が襲いかかってきたが、佐介はなんと雷の速さで悪魔の背後を取った

 

「なに!?」

 

「ぴょ~~ん!ぴょん!!」

 

「ぐあぁぁぁぁ!!!」

 

勢いよくハンマーを振り下ろすと悪魔は地面に真っ逆さまに落ちた

 

「くっそぉぉぉぉ!!!」

 

「秘伝忍法!!」

 

佐介が叫ぶと小さい雷雲が飛んできて佐介はそれに乗りハンマーを構える

 

悪魔が手から魔性の光線を放つもそれをかわし

 

「雷兎でゴーン。だぴょん!!」

 

 

ゴォォォォォォン!

 

 

「ぐぉ…ぐあぁぁぁぁ!!!」

 

雷を帯びたハンマーの一撃が腹に決まる

 

「止めだぴょん!秘伝忍法!!」

 

「やっやめてくれ!」

 

命乞いをするも外道に容赦はいらず

 

「雷兎なメリーゴーランド。だっぴょん!!!」

 

佐介は勢いよく回転し全力の一撃を叩きつけた

 

 

 

「ぐあぁぁぁぁ!!!我らの怨みがぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

その断末魔を最後に悪魔は消滅した

 

 

「佐介くんかっこよかったよ!」

 

「えへへありがとだぴょん」

 

すると雲雀は試しに両手でうさぎの耳を作り片足上げのポーズを取る

 

「ひばりだよ♪」

 

「佐介だぴょん♪」

 

佐介も同じように真似をして二人で笑うと横たわる人形のもとに向かう

 

「お人形さん!」

 

「ひばり…ごめんなさい。私のせいであなたに迷惑を…」

 

「そんなことないよ悪いのは悪魔さんだもの!」

 

謝る人形を励ます雲雀に心から感謝する

 

すると人形は最後の力を振り絞りゲートを開く

 

「ひばり、ここを通れば帰れるわ」

 

「本当?」

 

「えぇ」

 

「よかった…今度は戻ったらみんなに紹介しなくちゃね。ひばりのお友達だって」

 

嬉しそうに雲雀は言うが人形は

 

「それは無理よ…」

 

とつぶやいた

 

「どっ、どうして?」

 

「元々。私が意思を持てたのも消えた彼らの力があったから…彼らが消えた今、私はもうすぐ物言わない人形に戻るのよ」

 

「そんな…」

 

人形が語った言葉に雲雀はショックを受ける

 

「ひばり、私の最後の頼みをきいてくれる?」

 

「うっうん!聞くよ!なに?」

 

「たとえ物を言わなくても動かなくても…これからも一緒にいてくれる?」

 

「もちろんだよお人形さん。ひばりとお人形さんはこれからも一緒だよ!」

 

それを聞くと安心したように静かに元の人形に戻った

 

「ひばりちゃん。早くしないとゲートが!」

 

「…うん!」

 

涙をこらえてひばりたちはゲートに飛び込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひばり…佐介…」

 

 

ピカァァァァン

 

 

「これは?」

 

 

柳生が二人の帰りを信じて待っていると鏡が光だし、そこから佐介と雲雀が飛び出てきた

 

「ひばり!佐介!!」

 

「柳生ちゃん…」

 

「心配をかけましたね」

 

自分たちの帰りを喜んでくれた柳生に感謝する二人だった

 

 

 

 

 

 

「よいっしょっと。準備OK」

 

「ひばり~そろそろいくぞ!」

 

「は~い!」

 

あれからひばりは人形が寂しがらないように自分の持っているぬいぐるみたちのそばに飾ったり定期的に佐介が作ってくれた洋服を着せ替えしてあげたりしている。そして何より

 

「それじゃいってくるね"ひなり"ちゃん」

 

名無しだった人形に自分の名前であるひばりの一文字違いのひなりという名前をつけてあげた

 

雲雀が部屋を出て行くともう意思をもたないはずのひなりがニッコリと笑ったのだった

 

そして雲雀は今日もまたみんなと一緒に学校へと向かうのだった

 


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