道元が差し向ける最凶の刺客、十一座と十二座の猛威に苦しめられる光牙たち
しかし事態は芳しくなく、道元の精神攻撃によって心をやられてしまい、戦闘参加が望めなくなった佐介を飛鳥に逃がすよう促すも
十一座の手に焔が、さらには光牙も十一座と十二座の合体技の直撃を受けてしまい大ダメージを受ける羽目になってしまう
辛くも意識を保つことができた光牙ではあったものの、逃がそうとしていた佐介と飛鳥の元に十一座が向かい、襲い掛かってきた
佐介を守るために十一座に挑む飛鳥だったが、十一座には歯が立たず、苦しくもやられてしまった
そして邪魔を排除した十一座が道元の命令を受け、佐介を殺すべく動き出す
己の拳に妖力を込め、十分に溜めた力を引き絞ったその腕で佐介を仕留めるべく突き出し
直後、周囲に響き渡る怒号が木霊するのだった
ドゴォォォォォン!!!
十一座の妖力を込めた拳の一撃が凄まじいほどの衝撃を呼ぶ
風に舞う土煙が光牙たちのほうにまで吹き荒れる
「…っ?」
「飛鳥、佐介?」
その中で光牙と焔は2人のことを考える
2人はどうなってしまったのかという思いとともに最悪のイメージも浮かび上がる
やがて土煙が勢いを弱めていき、視界がはっきりとし始め、光牙と焔がその先を視界にとらえる
ビチャッ…ビチャッ…ビチャチャチャ~
「「…っ!?」」アセアセ
視界の先に見えた光景に光牙と焔はわが目を疑う
「……ぐふぁ!?」
ビチャチャチャ!
「あ、飛鳥!?」
焔が思わず叫んでしまったのも無理はなかった
2人が視界にとらえた光景
それは十一座の放った拳の一撃から間一髪のところで身を挺して庇った飛鳥の姿だった
だがそれによって飛鳥の左胸に十一座の拳があり、彼女の口からはかなり大量の血を噴き出していた
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
息を荒くし、目も虚ろになり、苦痛に悶えながら必死だった
「はぁ…はぁ…さ、さすけ…く、んは……やら、せ…ない…」
佐介を守るという思いが彼女を駆り立てていた
「…すか、…ちゃん?」
刹那、絶望に打ちひしがれる佐介の目が自分を守ろうとして十一座の一撃をうけた飛鳥に向けられる
無意識でいたせいで何もわからず呆気に取られている佐介のほうを飛鳥が振り向く
「…い、じょうぶ…だよ……さすけ、くん?」
「…あすか…ちゃん」アセアセ
「お、もい…なやま、ないで……わた、し、は…きにしてなんか……ないよ。わたし…たちは、きにしてなんか…ないんだよ?」
飛鳥は苦しさでしゃべることも苦しいだろうにそんな状態の中でも佐介に対して気にしていないと告げる
「でも…でも」アセアセ
されど未だ自分のことを非難する心に苛まれている佐介にはその言葉にどう答えていいのかがわからなかった
「…ねぇ、さすけ、くん?…きみはどうして、忍を目指したの?…強くなりたいと思ったの?」
不意に尋ねられた質問の内容に佐介は声を失う
「なんのために…そうしたかったの?…なんのために旅に、でたの?」
「…ぼくは、ぼくは…」
飛鳥のその言葉を聞いて佐介は考える
自分が今までなんのために戦ってきたのか、なんのために強くなりたいと思ったのかを
「きみは…人を傷つけるために、戦ってきたわけじゃないでしょ?……その力を持って大勢のみんなの今日を、明日を、未来を…作ってきたんじゃないの?…誰かの笑顔を守りたくて戦ってきたんでしょ?誰かの希望を守りたくて立ち上がってきたんでしょ!?…それができる人を私は知ってる……それは、佐介くん、君だけなんだよ!!」
「っ!?」
「だから…私、信じてるから」
「……っ」
佐介の心に飛鳥のその言葉が駆け巡る
そしてその言葉が絶望に染まろうとしていた佐介の心を浄化していくようだった
「……くだらん。とんだ茶番だ。十一座!いいからそいつをかたずけてしまえ」
【「…ッ!!」】ぐぽん
道元の命令を受けた十一座が飛鳥に対して今一度攻撃を仕掛ける
「飛鳥!?」
「っ!?」
この光景を見た焔と光牙が彼女がやられてしまうと感じ取る
「…~~っ!?」
飛鳥もまた迫りくる拳、そしてそこから来るであろう痛みの恐怖で思わず目をつぶる
ドゴォォォォォン!!
壮絶な音が響き渡る
皆も唖然とした表情を浮かべる
…だがそれは自分たちの想像とは全く別のものだった
「……っ?」
一方飛鳥はいつまでも痛みがやってこないことと何か体を掴まれている感覚を覚え、不審に思って恐る恐る目を開いてみると
「っ!?」
視界の先に見える光景にわが目を疑った
「…飛鳥ちゃん。大丈夫?」
「さすけ…くん?」
「うん」
そこにはいつの間にか十一座の攻撃から自分を守ってくれている佐介の姿があった
「ば、馬鹿な!?」
【「ッツ~~!!??」】
「ちょっと…おとなしくしなさい!」ゴキッ!
【「ッツ~~!?」】
掴まれた拳を抜き出そうとする十一座だったが佐介によって握りつぶされたことで慌てて後退する
「佐介、お前、大丈夫なのか!?」
「はい。光牙くん、焔さん、ご心配をおかけしましたね」
「…っ」
ここまででいくつものやり取りが一瞬に起きたせいもあって状況が飲み込めない様子の焔が思わず佐介に尋ねてきた
不安そうな焔に対し佐介は優しげな笑みを浮かべて答える
その光景を見ていた光牙はすぐさま確信した
「(ようやく戻ったか佐介)」
今目の前にいる彼はこれまでのことのせいで弱気になってしまっていた気弱な存在ではなく
幾度となく死闘を繰り広げ、どんなことがあろうとも仲間を守るために最善を尽くそうとする自分が好敵手と認める"真の佐介"が返ってきたのだと
決して口には出さなかったが心の声で光牙は嬉しそうにつぶやいた
「おのれ!まさかこの土壇場で立ち直りを見せるだなどと…計算がいも甚だしいぞ!?」
予想を超える想定外すぎる光景を見て道元は激しく困惑している様子だった
「…道元」
「っ?」
「今まで散々やってくれましたね?僕もあなたの話術にかかってしまったせいでみんなに多大な迷惑をかけてしまった。まったく、最低ですよ」
「…佐介くん?」
道元の話術による術中によって先ほどまで何もできずにいた自分の不甲斐なさを悔やむかのように握りこぶしを作っていた
「でも、飛鳥ちゃんのおかげで思い出せたんです。僕はおっちょこちょいだけど、カグラを目指して努力する。忍だってね!」
「…さすけくん」
「「っ…」」
「くぅ!?」
佐介のその言葉に飛鳥たちは歓喜の表情を浮かべ、逆に悔しげな顔を道元が浮かべる
「佐介くん」
「っ?」
「…これを」
飛鳥はそういってあるものを渡す
彼女に渡されたもの、それは佐介の転身に使う巻物だった
「ありがとう、飛鳥ちゃん」
「うん♪」
「さぁ、行くとしましょう!…はっ!」
意を決して飛鳥から巻物を受け取った佐介はそれを空に向かって投げると巻物がらせん状に広がり佐介を包む
「…転身!!」
巻物の渦の中で構えを取り、転身の二文字を叫んだ瞬間
渦巻く巻物が佐介の体を包み込み、一瞬にして消える
そしてその直後に現れたのは飛鳥たちにとっては見慣れた背に「一騎当千」の文字を刻んだ長ランを身に着けた姿をした彼が立っていた
「いざ、正義のために…舞忍ます!」
掛け声を上げるとともにここに佐介が完全な復活を遂げたのだった