佐介の怒涛の活躍によって妖魔衆十一座と十二座との戦いは見事勝利に終わった
だが、これを見越し、保険をかけていた道元によって
妖魔衆が全滅したことによって術が発動してしまうと同時にこの混乱に乗じた道元には逃げられてしまった
道元を逃がしてしまったこと。さらには術が発動してしまったことに佐介たちはどうすべきかと困惑する
しかし事態はここで終わるわけではなく、直後潜んでいたかぐらと奈楽が佐介たちの前に現れた
最中、奈楽が佐介たちが倒した十一座と十二座の亡骸の代わりに出現した赤球を回収し、それをかぐらに献上する
渡された赤球を呑み込んだことによってかぐらは更なる覚醒を果たし、その姿を佐介たちの前に知らしめた
想像をはるかに超えるかぐらの力の高まりに驚きを隠せずにいる中
突如として妖魔の声が聞こえた
それを感じ取ったかぐらは妖魔を滅すると宣告し、奈楽を連れて飛び去ってしまう
佐介の呼びかけに反応を示しながらも…
妖魔の反応を感じ取ったかぐらたちが去ってからしばしの数分の時が経過する
「大丈夫ですかみんな?」
「へっ、このくらいどうってことないって…っ!?」ズキッ
「焔ちゃん、あまり無理しちゃだめだよ」
佐介たちは十一座と十二座との戦闘のダメージが残っているため、まだその場から動けずにいた
「しかし道元の奴にもしてやられちまったが、よりにもよってこのタイミングでかぐらが覚醒しちまうなんてな?」
「あぁ、予想外なことばかり起きてしまったな」
体を休めながら佐介たちは先ほどまでの出来事を思い返していた
道元の計算ずくのシナリオにまんまと踊らされてしまい、上位妖魔を呼び寄せる引き金を引いてしまったこと
さらにはそれによって意図せずしてかぐらの覚醒を促してしまったことなど、勝負に勝ったが戦いは負けてしまった感が否めない運びになってしまっていた
「今頃他のみんなはどうしてるだろう?」
飛鳥は今も街のいたるところで戦いに身を投じているであろう仲間たちのことを思っていた
「あいつらもかぐらのことはともかく上位クラスの妖魔が現れたことには気づいているはずだ」
「とはいえあいつらの実力を信じてないわけではないがやはりそうぽんぽんと上位クラスの妖魔が現れてはな、しかも連戦が続いているこの現状だ。あいつらも相当疲弊しているに違いない。一刻も早く加勢に行ってやりたいが」
手傷を追っている今の自分たちではどうすることもできなかった
よい打開策を見いだせず、悩み悩んでいた時だった
「…っ、誰かくる?」
「「「っ!」」」
その時、気配を感じた佐介に光牙たちも反応する
シュタ!!
直後、彼らのもとに降り立つ人影が
「あ、あなたは!」
「無事かお前たち?」
「霧夜先生!」
佐介たちの前に現れた人影の正体、それは霧夜だった
一方、霧夜の視線が佐介に行き、驚いた顔を浮べる
「…やったんだな飛鳥?」
「はい、佐介くんを無事取り戻せました」
「そうか…そうか」
事情を聞いた霧夜はどこか安堵の表情を浮かべる
「霧夜先生」
「っ?」
「ご迷惑をおかけしました。僕のせいで…」
申し訳なさそうに佐介が霧夜に深々と頭を下げる
「…佐介、いいんだ。俺もお前が無事に戻ってきてくれたことをうれしく思うぞ」
「…霧夜、先生…はい」ウルッ
優しく頭をなで生徒として、また仲間として自分たちの元に戻ってきてくれたことへの感謝の言葉を霧夜が佐介に呟き
彼の言葉を聞いた佐介はその言葉のあまりの嬉しさに涙腺が崩壊しそうな思いをぎゅっとズボンを握り締めながら堪えていた
そんな佐介の想いを察してか飛鳥と霧夜は尊いと思うような感情を巡らせていたのだった
「こほん、取込み中にすまんがそろそろ質問させてもらってもいいか?」
「ん?…あぁ、すまんすまん。ついな」
とここで区切りをつけるところと判断した光牙が3人に語りかける
光牙に気づいた霧夜はハッと我に返ったように光牙と焔をそっちの毛にしてしまっていたことを詫びた
「ではまず最初に、なぜあんたがここに?」
どうしてこのタイミングで霧夜がここにやってきたのかがわからない様子の光牙がその理由を問うた
「俺が来た理由か、それはな…これをお前たちに届けるためだ」
霧夜が懐から取り出したのは小さい袋だった
袋を出してきた霧夜に佐介たちがキョトンとしている
「そらお前たちこれを食うんだ」
そう言って霧夜が袋から取り出した物を佐介たちに手渡す
「これって?」
「兵糧丸?」
手渡された物を見てみるとそれは兵糧丸だった
「霧夜、この兵糧丸はなんだ?」
「詳しい話しは後にしてとりあえずまずはこれを食え」
「はっ、はい…あむっ」カリッ
「「「……っ」」」ポリポリ
言われるがままに手渡された兵糧丸を口に運び、それを噛んでいく
口の中でポリポリと言う音が鳴って数回の後、4人はそれをゴクリと飲み込んだ
「「「「っ!?」」」」ピクッ
刹那、兵糧丸を飲み込んだ佐介たちが、体に異変が起こったことを感じ取った
「えっ?…嘘?」
「おいおいマジかよ?どうなってんだ?」
「痛みがひいてる?」
兵糧丸を食べた佐介たちは体から痛みがひいていることに気がついて驚きを隠せなかった
「…霧夜、この兵糧丸、ただの兵糧丸ではないな?」
「あぁそうだ。これは半蔵様が行方をくらます前に渡されていたものだ」
「じっちゃんから?」
この兵糧丸は半蔵からもらったものだと聞いて飛鳥は驚く
「この兵糧丸はな半蔵様が特別に調合したものらしくてな。食べれば体力を回復するだけでなくアドレナリン効果も合間ってしばらくの間痛みを忘れることができる。ただ後日になったら後遺症が発生することにはなってしまうがな」
「へっ、そんなもんへでもないぜ!なっ、飛鳥?」
「うん。そうだね焔ちゃん」
「どのみち今動けなければ同じようなものだ。後日のことは今はどうでもいい、ともかく助かった。これで向かうことができる」
兵糧丸のメリットとデメリットを説明する霧夜だがこの状況を打開できたことに皆喜びを感じているのかデメリットのことなど今は眼中にないようだった
「よし、そうとなればぐずぐずはしてられんな?」
「あぁ、早くみんなの応援に行かないとな」
体力が戻ったことで新たな戦場に赴く意を示す
「気を付けて行けよお前たち、俺はこのまま逃げ遅れた人がいないか救助捜索を行う」
「わかりました」
「…必ず戻ってこい。いいな?」
「「「「はい(あぁ)(おう)!」」」」
霧夜のその問いかけに佐介たちは一斉に答える
「行くぞ!」シュン!
「「「っ!」」」シュン!
光牙の後に続くように一同は戦場に駆け出して行ったのだった
「気を付けるんだぞ」
そんな彼らの後ろ姿を複雑な心境で見守る霧夜だった