十一座と十二座を倒したのも束の間、これを見越していた道元の保険が発動し、上位妖魔を呼び寄せる術が発動してしまう
さらには十一座と十二座が倒されたことで出てきた赤球を食べたことでかぐらが更なる覚醒を果たしてしまう
そして妖魔が現れた気配を察知してか、かぐらは奈楽を連れて妖魔を滅するために動き出してしまった
妖魔のこともかぐらのこともなんとかしたいが先の戦闘によるダメージが抜け切れていないこの状況をどうすればと思いやなんでいた時
彼らのもとに霧夜が駆けつけてきた
霧夜は佐介たちと合流を果たすと彼らに半蔵が特別に調合したとされる兵糧丸を分け与え、それを食べた佐介たちは効果によって体力が回復してダメージによる痛みもなくなったことで再び活動できるようになった
元気と気力を取り戻した佐介たちは霧夜に礼を述べ、彼に見送られつつも新たな戦場にへと向かっていくのだった
兵糧丸の効力で体力を回復させた佐介たちが戦場に向かっている頃、彼らを置いて先に戦場に向かっていったかぐらと奈楽は
【「「「「ブシャァァァァ!!!」」」」】
「邪魔だ…滅せよ!」
【「「「「ギャァァァァ!?」」」」】
襲いかかる中級クラスの妖魔たちだったが、覚醒し、力をましたかぐらの前には指一本触れることすらできない
それよりも先に彼女の放った滅の波を浴びたことでみるみるうちに灰化、消滅していってしまった
「…ふん、他愛ないな」
消滅した妖魔たちに向けてそうかぐらは呟く
「お見事でございますかぐらさま」
かぐらが襲い掛かってきた妖魔を軽く消し去る様子を見て奈楽が敬意を示し会釈する
「この程度の雑魚、今の私にはどうということはない」
「さすがでございます」
あれしきは余裕なことだと語るかぐらに再び敬意の言葉を贈る
「っ?」
「いかがなさいましたかかぐらさま?…っ!」
不意に顔をそらすかぐらを見て奈楽が彼女の向くほうを見るとそこにはこちらに向かって来ようとしている伏兵の妖魔たちがいた
「新手か!」
「何体来ようと問題はない、私がすべて消し去ってくれる」
現れた伏兵たちに臆するどころかかぐらは迎え撃つ意を示す
【「「「ギュアアァァァァァァァァ!!」」」】
それに合わせるかのように妖魔たちが一斉に迫りくる
かぐらと奈楽はそれを迎え撃とうと身構えようとした
ヒュ~~…
「…っ?」
ビュオォォォォォォォォ!!!
「「っ!?」」
【「「「ギュアアァァァァ~~~!?」」」】
突如として巻き起こった突風がかぐらと奈楽に向かっていこうとしていた妖魔たちを吹き飛ばすと同時に粉みじんに切り刻んでしまった
「いったい何が…っ?」
奈楽が前方を見るといつの間にか自分たちの前に佇む人影があった
「よぉお二人さん♪」
「お前は!」
2人の前に現れた人物。それは温泉宿以降行方を眩ませていたはずの疾風だった
「なぜ貴様がここにいる!?」
「おいおい、そう睨みなさるなって、近くを通りかかったら妖魔と懐かしい気配を感じてきたらお前たちとばったり会ったって話さ」
ここに疾風がいることに驚いている奈楽がまくしたてるように問いただし、それをなだめるように疾風は言い聞かす
「…お前のその姿を見るのも何百年ぶりかな?…なぁ、かぐら?」
その合間に疾風は視線を奈楽からこちらを見るかぐらのほうに向け、語りかける
覚醒した彼女の姿に疾風は懐かしさがこみ上げてきそうなそんな思いに駆られるほどに
「…疾風」
「…ふっ、思い出したか俺のことも?」
かぐらが自分の名を呼ぶ様子から疾風は彼女が覚醒によって記憶を取り戻したのだと悟った
「あぁ、お前の名が疾風だということも、いつもそのおちゃらけた感じで私と蓮をひっかきまわしたりしたこと、そういえば私の着替えを覗き見したこともあったな?……それら全て今ははっきりと思い出せるぞ?」
「な…んだと!?」
覚醒によって失われていた過去の記憶が蘇ったのかかぐらが思い出を語るもその中にあった卑猥な出来事の内容を聞いた奈楽が思わず引きつった様子で声を上げる
「お、お前…そんなつまんねぇことは思い出さなくていいっての」
「お前にだけは言われたくないわ!」
「そうだぞ!恥を知れこの知れものが!」
「恥だって〜?生憎俺様の辞書にはそんな言葉は載ってねぇ〜よw」
かぐらと奈楽のツッコミに悪びれる様子もなく疾風はドヤ顔をしていた
その様子を見て2人は若干イラッとなっていた
「ところでよぉ〜」
「「っ?」」
「……蓮はどうした?」
さっきまでおちゃらけていた疾風がいきなりマジな顔になってきたことに奈楽は少し驚いた
「…蓮は今忍たちと一緒にいる」
「なんだと?…何があった?」
「実は…」
かぐらは洗いざらい自分が知りうることを疾風に語る
ここに来るまでに飛鳥たちが自分たちの元にやってきたこと
そこから戦闘に発展したが思いのほか妨害の手を払いのけられず、その間に蓮が飛鳥と光牙によって忍結界に飛ばされてしまったこと
やっと結界が解除されたと思ったらそこには蓮が2人に敗北したのだという現実が待っていたこと
蓮を取り戻したいという思いを胸に奈楽とともに妖魔を呼び寄せ街を破壊しようとしている道元の存在に気づくもそこに駆け付けた飛鳥たちと道元が繰り出す十一座と十二座との戦いを静観し
彼らが十一座と十二座を倒し、道元がこの場を去ったタイミングを見計らい赤球を回収し、好みに取り込んだこと
で今自分がこうしているのだということ
「…と、いうことだ」
すべてを疾風に話したかぐらだったがその直後に彼女はとても悔しそうに右手で左手をぎゅっと握りしめ、感情を押し殺そうと必死にこらえているのだということを疾風は察した
「(くそっ、なんてこった。まさか蓮が負けたなんて、おまけにまんまと抑え込んだはずの人格が蘇っただと?俺がちょっと離れていた間にそんなことがっ!)」
話しを聞いた疾風は自分にとって最悪な状況に事態が転んでしまっていることを悔やんだ
「疾風、私はこれから妖魔を狩りに行く。この街にはびこる妖魔どもを滅殺する。悪いがお前と話すのはこれまでだ。私は行かせてもらう、行くぞ奈楽」
「はっ」
そういってかぐらと奈楽が疾風の横を通り過ぎていく
「…っ!!」
ビュオォォォォォォォォ!!
「「っ!?」」
だがその直後疾風がかぐらたちに向けて技を放ってきたのだった