妖魔を殲滅するべくかぐらと奈楽が行動を開始し、街に乗り込むとともに襲い掛かってきた妖魔たちを蹴散らしていった
そんな2人の前に突如としてしばらく行方を眩ませていった疾風が現れる
しばし記憶を取り戻したかぐらが彼とかつてのように他愛ない語り合いをするもそれはすぐに終わってしまう
疾風が蓮がいないことを問いかけ、かぐらからここまでの経緯を聞かされた
すべてを知り、己の使命を果たそうと再び歩みだそうとするかぐらたちを疾風は風の脳語句を作り閉じ込めるという行動に出る
彼女でも抜け出すことが困難なほどに防壁である結界に閉じ込められた2人はなぜこのようなことをしたのかを疾風に問うた
それに対して疾風は自分が街がどうなろうと何がどうなろうが構わないこと、自分がかぐらをその運命の呪縛から解き放つことが目的なのだと明かし、今までの自身の軌跡を告げる
その彼の想いを知ったかぐらは複雑な思いを抱くも、それでも尚己の宿命に従い妖魔たちを狩るべく結界をこじ開けようとするのだった
自分たちの行手を遮ろうとする風の結界をかぐらが力づくでこじ開けようと抵抗を見せる
「ぬうぅぅぅぅ!!!」
「かぐら様」
決死の覚悟で結界をこじ開けようとするかぐらの姿に奈楽はただただ息を飲むことしかできなかった
「無駄だかぐら、お前は確かに強い、だがそんなお前でもこの結界を破るなんてことはできねぇ。諦めろ」
無理にでも結界を破ろうともがくかぐらに疾風は無駄な事であると諦めることを促す
彼の言う通りやはり結界はそう簡単に突破できるようなものではなくかぐらも手を焼くほどだった
だがそれでもかぐらはやめようとしない
「(なんで…なんで?)」
そんな彼女の様子を見ていた疾風の顔から徐々に焦りが浮かびだす
「…なんでだかぐら!」
「っ?」
「なんでお前はそこまでする!?なんでお前ばかりががそんな重荷を背負う必要があるんだ!?」
「疾風…」
辛抱たまらず、耐えかねたように疾風が情に訴えかけに入った
「もうあのころとは違うんだ!お前にそんなことを強要させようとしていたあのジジィどもとっくにくたばった!お前は自由になる権利がある!なのになんでまた妖魔とともに滅ぼうとするんだ!そんなのあんまりじゃねぇか!」
「…私は」
「っ?」
「私は生まれながらにこの力を持って生まれ、それによって皆から祭り上げられるようにして生きてきた。みんな私を特別な存在だと持て余してばかりで”私”という存在を見ようとはしてくれなかった」
かぐらは思いを囁く、腫れ物のように扱われ、一度たりとも一人の人間として扱ってもらえなかったことが彼女にとってどれほど孤独だったかを
「孤独の中、自分の存在が何なのかわからくなりそうなそんな日々を過ごすだけの日々。だがそんな私を替えてくれたのは他でもなく連とお前だった」
「っ…」
「蓮とお前は他の奴らとは違った。お前たちは他の奴らのように私を腫れ物のように扱うことはせず、それどころか私を普通の人のように接してくれた。私はあの時、この上ないほどに嬉しかったんだ」
「…かぐら」
力を持って生まれたがゆえに他者の都合によって祭り上げられたことで孤独感を抱いていた自分に手を差し伸べ、共に笑ったり、泣いたり、怒ったりと自分を一人の人間として扱ってくれた蓮と疾風に壮大な感謝の想いを抱いていることを呟いた
「(…かぐら、さま)」
彼女のその言葉を聞いていた奈楽は内心複雑な心境を浮かべる
2人が互いを信じ、友だと思っているその様子を見るたびに奈楽は自分の胸の内に宿るもやもやに心を刺されるような思いに駆られたのだ
「お前たちは私に光を与えてくれた存在だ。感謝している。できることならお前たちともっと一緒にいたかった」
「な、なら」
「だが、そのせいで…使命を忘れかけてしまったせいであの日、あの時、突如としてやってきた妖魔たちに村は焼かれ、お前たちは傷ついてしまった。私が己の使命に疑問を持ったばかりに」
過去の出来事を思い返したかぐらは怒りと後悔の念を強めていく
「そして悟ったんだ。私は私の大切なものを傷つけた妖魔たちを一匹残らず滅する。例えそれがわが身を犠牲にすることだとしてもかまわない。お前たちを守ることができるなら私はっ!」
刹那、かぐらがそう発言したと同時に再び風の結界に向けて攻撃を仕掛けた
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「っ!?」
「かぐらさま!?」
今一度攻撃しだしたかぐらに疾風も奈楽も驚いた様子を浮かべる
しかしそれでも風の結界は早々破壊できるものではない
「無駄だといってるのがまだわからねぇのかかぐら!今のお前では俺の結界をぶち破るなんてことはできねぇんだぞ!?」
かぐらの行為を無駄な努力だと言い張る
だがそれでもかぐらはやめようとはしない、ひたすらにやめようとはしなかった
「くどいぞ!いくらお前でも俺の結界は…「奈楽、かがめ!」っ?」
「えっ?あっはい!」
いきなりのことで奈楽も訳が分からない様子だったがハッと我に返り彼女の言う通りに身を屈ませる
「ふぅぅぅっ!…ふぅぅん!!!」
結界に攻撃を仕掛けている中、もう片方に力を集約させていき、蓄積が完了したと同時にかぐらが「イザナギ」を放つ
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
至近距離で結界にイザナギを放ったかぐらが声を荒げながらそれを続ける
ブォッ…ブォォォォ!
「っ!?」
「け、結界が!」
二つの技のエネルギーを一か所に向けて放ったことにより結界が破れ始めていく
「う、嘘だろ?」
「…たあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ビュオォォォォォォォォ!!!
「「っ!?」」
刹那、かぐらの攻撃に限界点を迎えた結界が瞬く間に消滅してしまった
「~~…っ!?」
結界を消し飛ばされたことに驚きを隠せない疾風がすかさず前を向くもそこにはかぐらの姿がなく、一瞬どういうことか理解できなかったがその答えはすぐに判明する
なぜなら今まさに自分の後ろに気配を感じたから、そしてそれがかぐらなのだと理解した
いつの間にか背後を取っていたのだ
互いに背中を合わせながらの沈黙がしばし続いた
「…行くぞ奈楽」
「あっ…はい、かぐらさま」
かぐらはそのまま疾風には声をかけず奈楽に声をかけ
その声を聞いた彼女がかぐらのもとに駆け寄り、そのまま2人は行ってしまった
「…くそっ!」
一人取り残された疾風は悔しさに打ちひしがれるのだった