閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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叩き込め、全力の一発 

疾風の猛威によって佐介と光牙は成すすべもなく防戦一方のままだった

 

 

さらには疾風の言葉に光牙が反論し、論破したことで彼から怒りを買ってしまい

 

 

口封じの一撃を与えられてしまい、戦闘の継続が不可能になってしまった

 

 

残されたのは佐介のみとなり、万事休すの状況に追い込まれる

 

 

しかし佐介は自分を信じて先に進んでいった飛鳥と焔

 

 

共に戦った光牙

 

 

別の場所で戦いに身を投じているであろう仲間たち

 

 

そして自身の消滅と引き換えに妖魔たちを殲滅せんとするかぐらを救うためにも諦めるわけにはいかない

 

 

託されたもの、微かな希望を掴むためにもここで立ち止まれないのだと

 

 

佐介はこの事態を打破するために禁断の術「獅死奮靭」を発動し

 

 

強化された己が肉体で疾風を圧倒していった

 

 

だが、それでも疾風は一筋縄ではいかず、佐介に反撃を繰り出した

 

 

防戦一方から攻防一体へと切り替わったこの戦いの行く末は?

 

 

 

 

 

白熱の戦いがなおも続く、街の残骸が広がる戦火の地

 

 

禁術によってリミッターを外した佐介と疾風との戦闘が続く

 

 

「……っ」

 

 

現在、戦う体力も残っておらず、傍観者になるしかできずにいる光牙はその現状を常にその二つの眼でとらえていた

 

 

獅死奮靭という禁術を発動させた最初のうちは疾風も抵抗もできぬまま一方的にやられていた

 

 

しかしこんな簡単にやられるような奴でもなくすぐに反撃を繰り出し、佐介に反撃の一手を与えたのである

 

 

今佐介は先に放った疾風の攻撃によってその先にあった瓦礫の山に激突していた

 

 

「ぐぅ…っ!」

 

 

「佐介、大丈夫か!?」

 

 

「…えぇ、なん、とか…」

 

 

瓦礫の中から自力で抜け出した佐介は跪きながら呼吸を整えている

 

 

「どうした?さっきより随分とバテてるみたいだが?」

 

 

 

そんな佐介に向けて疾風が煽りの言葉を送る

 

 

「ふぅ〜……っ!」

 

 

「っ…?」

 

 

佐介は立ち上がるとともにしっかりと呼吸を整えると同時に構えをとる

 

 

疾風もそれを見て警戒の目を向ける

 

 

「…っ!」バッ!

 

 

刹那、佐介が再び疾風に向かって超速度で駆け出す

 

 

「たぁぁぁっ!」

 

 

「しゃらくせぇ!」

 

 

佐介と疾風の腕と腕がぶつかり合う

 

 

「ふぅん!」

 

 

「っ!?」

 

 

最中、疾風が競り合いの中、追撃のチェーンによるなぎ払いを繰り出す

 

 

すんでの回避に成功するもその際に髪の毛の数本がひらひらと舞う

 

 

直撃していれば髪の毛のみならず自身の首も飛んでいたに違いないということだ

 

 

「せぇぇぇぇい!!」

 

 

「そんなもんで!!」

 

 

かわした直後、佐介がラッシュを仕掛ける

 

 

対して疾風もそれに応戦するかのようにラッシュする

 

 

凄まじい拳撃が繰り広げられる

 

 

「やああぁぁぁぁ!!!」

 

 

「おりゃぁぁぁぁ!!!」

 

 

刹那、ラッシュの締めを務める最後の一撃同士が激しくぶつかり合う

 

 

 

バシコォォォン!!

 

 

 

 

「「っ!?」」

 

 

ぶつかり合いにより発生した衝撃波が2人をそれぞれの後方へと吹き飛ばした

 

 

「~~…っ!!」ザザァァ!バッ!

 

 

ここで佐介は踏ん張りを見せ、そのまま疾風に再度アタックをかける

 

 

「何度やっても無駄なことだぜ!」

 

 

「っ!!」シュンシュンシュン!

 

 

「っ!?」

 

 

さらに佐介は接近の最中、左右をジグザグしながら移動する

 

 

「(佐介の奴、トリッキーな動きで疾風を攪乱させる気だな?)」

 

 

光牙はこれを見て佐介がそのように考えていると読んだ

 

 

「ふん、動きで俺を撹乱しようって簡単か。あまいんだよ!」

 

 

しかし、疾風もまた佐介の行動の先を読んだと言わんばかりに構えをとる

 

 

「っ…はぁぁぁぁ!!」

 

 

そして両手を左右に突き出すと同時に力を高める

 

 

疾風の構える両手にずんずん風とエネルギーが蓄積されていく

 

 

やがてエネルギーが十分にまで蓄積された

 

 

「さぁ、行くぜ!食らいな!エル・ウィンド・バスター!!」

 

 

刹那、疾風が声を張り上げるとともに左右に突き出していた両手を佐介目がけて突き出した

 

 

二つのエネルギーが同じ方向に向けて放たれることで相互し、一つの巨大なエネルギー波へと変わって佐介に向かって飛んでいった

 

 

「まずい!逃げろ佐介!」

 

 

とてつもない大技を目の当たりにして光牙は佐介に逃げるように指示をする

 

 

「無駄だ!超高速且高濃度に圧縮したこの技を避ける術もなんざねぇよ!」

 

 

疾風の言う通り巨大にも拘わらず凄まじいスピードで飛んでくるエネルギー波にかわす死角はどこにもなかった

 

 

「佐介!?」

 

 

これを見て光牙は慌てた様子を見せる。このままでは先ほどの二の舞になりかねないからだ

 

 

「…っ」キキィィ!

 

 

「なにっ!?」

 

 

「っ?」

 

 

しかしどうしたことか佐介は衝撃波が迫っているにも拘わらず、走るのをやめ、立ち止まってしまう

 

 

「な、なにをしているんだ佐介!?」

 

 

「はっ、避けられないとわかって観念したのか?…ならば是非もねぇ!こいつで逝っちまいな!」

 

 

光牙と疾風は佐介の行動が理解できずにいたが

 

 

一方は危険が迫ってきているその身を案じ

 

 

もう一方は無抵抗になった様子を見て諦めを悟ったかのようにそう吐き捨てる

 

 

最中、衝撃波が自分に向かってどんどんと迫りくる中

 

 

尚も変わらずに落ち着いた様子でゆっくりと拳を引き絞る

 

 

「っ?」

 

 

刹那、光牙は佐介が構えを取った瞬間、それがなんなのかに気づく

 

 

「あれは…獣波拳の構え?」

 

 

佐介が身構えたそれは彼の十八番ともとれる技、獣波拳だった

 

 

「はん、何をするのかと思ったら今更そんなもんで俺様の個の攻撃を防気れるとでも思ってんのか!?自惚れてんじゃねぇよ!」

 

 

獣波拳を放とうとしている描写を見て疾風はその程度で自身の攻撃を防げるわけがないという余裕の考えも抱いていた

 

 

「安心しろ、お前を消し飛ばしたりなんかしねぇ、お前はもう一度蓮を呼び戻すための大事な器だ。だから、器としてのテメェはここで終わりなんだよ!!」

 

 

この一撃で佐介を討ち取った暁には再び蓮への供物とすると疾風は宣言する

 

 

そしてそんな疾風の意思に好悪するかのようにエネルギー波がさらに加速と勢いを増して佐介に押し寄せてきた

 

 

「はっ!」

 

 

「「っ!?」」

 

 

だがその時、佐介は思いもよらぬ行動をとった

 

 

エネルギー波が接近した直後、跳躍とともに両手に溜めていた獣波拳のエネルギーを伝ってまるで滝登りをする魚の如くずんずんと上昇していく

 

 

「な、なんだと!?」

 

 

「〜〜〜〜っっ!!!」

 

 

自身のエネルギーを使ってこっちのエネルギー波を登りあがるという予想の斜め上をいく状況にただ驚くしかできなかった

 

 

「ふっ!」

 

 

「なっ!?」

 

 

そしてとうとう登りあがり続け、疾風と至近距離にまで到達した

 

 

佐介は今一度、最後の仕上げとして彼の目の前で力を溜める

 

 

エネルギー波の放射が継続している以上、疾風にこの攻撃をかわす手立ては皆無だった

 

 

「いけぇぇ!佐介ぇぇぇ!!」

 

 

勝機の時、来れり

 

 

「……はぁぁぁぁっ!」

 

 

万感の思いを込め、佐介が溜めに溜めたその力を一気に解き放った

 

 

放たれた獣波拳が疾風を直撃する

 

 

「うぅぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

「〜〜っ!?」

 

 

獣波拳の直撃によって疾風は瞬く間に光に飲み込まれていった

 

 

光牙もまたその光に視界を奪われ、目を開けることができなかった

 

 

しばしの沈黙ののち、ようやく光の勢いが収まりを見せたようで視界が開けていった

 

 

「……っ?」

 

 

恐る恐る光牙が戻った視界で状況を確認する

 

 

そうして彼の目に映ったのは

 

 

「………っ」

 

 

開けた視界の中心にたたずむ佐介の姿があった

 

 

「……流石だな」

 

 

たたずむ佐介の姿を見て光牙は思わず笑みを浮かべるのだった

 


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