強敵疾風との決着をつけるべく禁術によって己の限界のリミッターを最大限まで高めた佐介はその力で彼に挑む
負けじと応戦する疾風との壮絶な戦闘が繰り広げられていき、互いに凄まじい応酬をかける
そして拳と拳のぶつかり合いによる衝撃によって距離を取った2人は
この戦いを終わらせるべく最後の大技に全てをかけ、全身全霊を込めてそれを放ち
結果は起点を欠かせた佐介の一撃によって疾風が吹き飛ばされた
この攻撃によってもはや限界量を遥かに超えたダメージを受けた疾風にとどめを刺そうとした佐介だったが
あと一歩と言うタイミングで禁術の反動がその身に襲いかかり、佐介はそれによって動かなくなってしました
最後の最後で佐介たちに不運が、疾風には幸運が舞い降りてしまったのだ
動かなくなった佐介を連れて行こうとする疾風を止めようにも光牙もエネルギー不足で手が出せず
万事休すと言うまさにその時
突如この場に新たな乱入者が現れ、その正体は佐介の敬愛する師匠大道寺だったのである
佐介と疾風との戦いが終息に向かいつつある戦場の場に新たなる来訪者の出現と言う事態が起こり、事態は思わぬ展開に向かっていった
「し、師匠!?」
「なんとか間に合ったようだな?」
突如として現れた大道寺の出現に皆が驚く
「な、何故大道寺がここに?」
「大道寺だけではないぞ」
「っ?」
光牙もまた大道寺が現れたことに驚いていると別の声が聞こえた
そして自分のすぐ目の前に降り立つ人影が
「お前は…….凛!?」
「あぁ、大丈夫か光牙?」
人影の状態はなんと鈴音こと凛だった
「凛…まさか、大道寺だけでなくあんたまで来るとはな?」
「まぁな、間に合ってよかったぞ」
凛は光牙と数回言葉を交わしながら彼の安否を確認できて安堵の表情を浮かべていた
「…師匠」
自分の目の前に立つ大道寺がいるのか佐介は不思議でならなかった
「我がなぜここに来たかに関しては今は捨て置け、それよりも佐介、我との契りを破ったな?」
「っ!?」
質問を質問で返され、大導寺が佐介をにらみつけるように凝視する
「いわずともわかる。その様子、明らかにあの術を使った何よりの証拠ぞ」
さすが術を禁じさせた本人、一目見て佐介が獅死奮靭を使ったことを見抜いていた
「す、すみません師匠、ですが!」
「みなまで言うな、お前のことだ。使った理由は理解できている。我は別に契りを破ったことに対してなにも思ってはおらん。お前はただなすべきことのために行動した。そんなお前を我は責めぬ」
「師匠……もったいないお言葉です」
大道寺の寛大な言葉に佐介は思わずうるっときた
「……さて」
佐介との語りを終えた大道寺は疾風の方に視線を向ける
それとともに凛が大道寺のところに歩み寄り、2人並んで佇んだ
佇む2人の前には疾風の姿があった
「これはこれは、いきなり現れたからどんなやつかと思ったらまた随分とビューティフルな乱入者じゃねえかよ?」
現れた2人に対して疾風はふざけ半分な言葉を投げかける
「…油断するな大道寺、奴は半蔵さまが警戒するよう促していたほどの手練れだ。油断するなよ?」
にらみ合いを続ける中で凜は疾風のただならぬ気配を感じ取り、警戒する佐介と光牙との戦いで消耗しているにもかかわらずその体からは未だに大きなプレッシャーのようなものを放っている
以前半蔵から疾風のことを教えてもらっていたこともあり、本人を目の前にしてそのことをある程度理解することができた
奴はただ者ではないのだと感じることができた
「確かにあ奴からあふれ出ているものは我らの想像以上といったところ、されどそれごときで臆する我ではないわ!相手が強者となれば尚更、我の血が騒ぐというものぞ!」
そんな凜とは対照的に強者と巡り会えたことに大道寺は高揚感を抱くと告げる
「まったく相変わらずねあなたは…でもそれでこそ私の知る大道寺だわ」
「ふん」
互いに軽く言葉を交わしながら今一度2人は疾風の方に視線を向ける
「光牙、お前はまだ動けるな?」
「あっ、あぁ」
「ならば佐介を連れてお前は先に行け。ここは私たちが後を引き継ぐ」
「「っ?」」
唐突な質問の意味が理解できずにいた光牙だったが、その後の凛の言葉を聞いて驚く
この場を自分たちに任せて先に向かうように凛が言ってきたのだから
「あんた達があいつを相手にするというのか?」
「そうだ。その間にお前たちはあいつらのところに行くんだ」
先んじて目的地に向かっていった飛鳥たちに合流しろと凛は2人を促す
「で、ですが凛さん、あの人は恐ろしい相手ですよ?」
「佐介との戦いで深手を負ってはいるが奴の脅威は計り知れない、あんたたちだけじゃ」
「聞き捨てならならんなその言葉?」
光牙が言い切るよりも先に大導寺が声を声を上げる
「確かにな、それは我々を愚弄しているように聞こえるぞ?」
「ぐ、愚弄だなんて、僕たちはただ!」
「黙れ佐介!」
「っ!?」
疾風の怖さがわかっているからこそ尚も異議申し立てしようとする佐介だったが
そんな佐介に対して大導寺が叱咤をかける
彼女のその叱咤の一言に佐介は思わず怖気づいてしまう
「お前たち、少し己の力に自惚れすぎてはいないか?」
「「っ!?」」
凛のその言葉に2人は思わず言葉を失う
「確かにお前たちの成長はすごいものだと思っている。そんなお前たちを見れて誇らしいとも思う…だが」
「さりとて我らとて多少力を上げた程度で自意識過剰になっているような青二才にやられるほど柔な鍛え方はしとらんぞ」
続けて大道寺もまた2人に物申す
佐介と光牙の成長は確かに2人の想像を超えるほどのものではある
だが、だからと言ってそれで簡単にやられてしまうような存在の2人ではないことを佐介と光牙に言い放つ
「なに、心配するな、私たちは霧夜先生の教え子でありお前たちの先輩でもあるんだ。可愛い後輩であるお前たちを先に行かせることもできないような脆弱な者ではないよ」
「左様、余計な心配はせずうぬらはうぬらの目的を果たせ」
「師匠…」
「凛」
2人の目には大道寺と凛の背中がとても大きく見えた
「…いきましょう光牙くん。ここはお2人に任せて」
「あぁ、そうだな」
大道寺と凛の意思を組むことも踏まえて佐介と光牙は先に向かって行った飛鳥たちのもとに…引いてはかぐらの元に向かうことにした
「佐介、つかまれ」
「恩に着ます」
まともに動くことができない佐介を光牙が背負った
そうして一瞬凛たちに視線を向けた直後、次の洗浄に向かっていった
「っ…!」
光牙が佐介を連れて行くのを見て疾風が阻止に動こうとする
「悪いが通行止めだ」
「っ!?」
しかしそんな疾風の行方を凜が阻む
「操らを追いたくば我らを倒していくのだな?」
その後ろで大導寺がそう宣告する
前門の虎後門の狼もとい、前門の蛇校門の虎であった
「…やれやれだ」
この状況に疾風は少々けだるさを感じるのだった