真なる覚醒を果たしたかぐらとの最終決戦に挑む飛鳥と焔
対抗すべく真影と紅蓮の力を持ってかぐらと戦う
戦況はかぐらに少々武があったが、それにもめげずに2人は挑み続ける
自分を助けたいという飛鳥たちに対し、自身がどれほどの過酷な運命を背負っているか
そしてそれが決して逃れられないものであることを身を挺して叩き込み、飛鳥と焔の心を折ろうとする
だが、決して折れぬ心で飛鳥と焔は立ち上がり続ける
戦いはいよいよ大詰めを迎えようとしており、飛鳥と焔、そしてかぐらはこの戦いに終止符を打つべく残る力の全てをこの最後の一撃に乗せることにした
飛鳥と焔は真影と紅蓮の力を最大に高めた最大の合体必殺技【真紅】を
対するかぐらは自身が今もてる全てのエネルギーを注ぎ込んだ最高火力の【イザナミ】を繰り出し
互いの大技と大技による衝突によって強力なエネルギーフィールドが発生し、辺りを光で包み込んでいった
やがて光の晴れた先には力の全てを出し切った飛鳥と焔、かぐらの3人がいた
もはや限界にも関わらずそれでも戦おうとするかぐらに打つ手をなくしてしまっていたその時
突如として静止の声とともに飛鳥たちの前に佐介と光牙、そして奈楽の3人が現れたのだった
かぐらとの壮絶な大技のぶつかり合いによって両者が消耗している最中
そんな彼女たちの元に奈楽を引き連れた佐介と光牙がやってきた
「…佐介くん。無事だったんだね!」
「うん。心配かけちゃったね」
「お前たちがここにいるってことは鈴音…凜と大導寺は間に合ったようだな?」
「あぁ、2人のおかげで俺たちもここに来ることができた。感謝しかない」
この場に来ることができたのも大導寺と凛が来てくれたからだ
でなければ今頃自分たちは疾風に今も足止め…最悪の場合やられていたかもしれない
2人が駆けつけて来てくれなければそういう可能性も考えられたのだと改めて痛感させられた
「奈楽、なぜおまえがそいつらと?」
「…それは」
かぐらが奈楽になぜ佐介たちと一緒にいるのかを問うた
そんな彼女の問いにまだ少し緊張が残っているのか言葉を出せないでいた
「かぐらちゃん、いや、今はかぐらさんと呼ぶべきなのでしょうか?…お願いします。もうこんなことはやめてください。妖魔を滅ぼすために自分を犠牲にしなきゃいけないなんて間違ってます!」
うまく伝える言葉を見いだせない奈楽に変わって佐介がかぐらを説得しようと試みる
「…蓮!」
「いいえ、僕は佐介です」
「……そう、だったな。蓮はもう」
目の前の佐介に対して一縷の望みを抱きながら愛し者の名を呼ぶも
佐介は現実を直視させるためにも自分が蓮ではないことを主張した
その言葉にかぐらは悲しげな表情を浮かべていた
かぐらは少し悲しそうにしていた
「…っ!」キリッ
しかしすぐに表情を元に戻し佐介たちのほうを向く
「たとえ蓮であろうとそうでなかろうと私は使命を全うする。邪魔をするな!」
「自分が消えてなくなってしまうんだぞ?同時に記憶も…お前は本当にそれでいいと思っているのか!」
「私は幾度となくこうして妖魔を滅してきたんだ。今更その運命にあらがったところで所詮は無駄なことなだ」
あくまでもそれしか道がないのだとかぐらはその姿勢を崩さなかった
「それに…私は自分がどうなったって構わない、妖魔をこの世界から一匹残らず消し去り、世に平和を齎す、それが私ができる唯一のことなんだ疾風ために…蓮のために…奈楽のために」
「っ!?」
この瞬間、奈楽は途轍もなく驚いた顔を浮かべる
かぐらが2人のみならず自分の名を口にし
妖魔を滅することを自分たちのためにといっていたことが衝撃的でならなかったのだ
そして佐介たちはかぐらは自分のせいで数多くの悲しみや重荷を背負わせてしまったことが彼女を宿命や運命に縛り付けている最大の枷になっているのだと知った
「…かぐらちゃん」
彼女の抱える思いの一端を知って皆が思い考えさせられた
「さぁ、戦え!私は…まだ!」
負けてない、そう言いかけながら飛鳥と焔に近づこうとしたその時だった
「もういい!!」
「…っ?」ピクッ
刹那、かぐらが大きな声が響いたことで歩みを止める
声に気づいたかぐらが恐る恐る視線を向けてみると
先ほどの声を放ったのは佐介の横にいる奈楽だった
「…奈楽?」
「かぐら様…いや、かぐら!もういい、もういいんだ!」
「奈楽っ…私の名を」
瞳に涙をためながら奈楽はかぐらを「様」とつけず
彼女を呼び捨てで呼んでいた
「かぐら!もうこれ以上自分を犠牲にするようなことはしないでくれ!私は…私は嫌なんだ!お前と離れることが、お前を失うことが怖くて怖くてたまらない!」
「っ…」
「本当ならずっと前からこういえばよかったのかもしれない、でも私もお前と同じだった。自分の立場を言い訳にしてお前とちゃんと向き合おうともしなかった…だけど、この男が私に思い出させてくれたんだ。自分が本当に大切にしているものが何なのかを」
「えっ?」
佐介はここで自分の名前が出てくることなど思ってもいなかったため驚いた様子を見せていた
「私が1番大切なもの…それはお前だ。お前なんだよかぐら!私の大切な…友達なんだ」
「……っ!」
奈楽が自分の大切なもの、友達と発言することにかぐらは言葉が出ない思いだった
「(よし、奈楽さんの思いがかぐらさんに届いてる。これならいける)」
かぐらの反応を見て好気ととらえた佐介はここで一気に畳み掛けることにした
「奈楽さん」
「っ?」
「参りましょうかぐらさんの元に、まだまだ伝えたらないことがあるのならこんな遠くからではなく直接のほうがいい」
「……あぁ、そうだな」
佐介は奈楽の思いをもっとはっきりとかぐらに伝えさせてあげたいと思い、かぐらのもとに手を引いて連れて行く
こちらに向かって歩み寄る光景をかぐらはただただ眺めているだけだった
やがて佐介に連れられ奈楽と顔を見合わせる距離まで近づいた
「…奈楽」
「…かぐら」
正面から向き合い、互いを見つめ合あう
「かぐら、もういいんだ。これ以上戦ないでくれ…傷ついたお前をこれ以上見たくない。お前の私にとって大切な友達なんだから」
「っ!」
遠くからでも響いた言葉が今度はすぐ傍で聞こえる
奈楽の言葉を聞いたかぐらの心が揺れ動く
果たして佐介たちはこのまま開きかけているかぐらの心を解き放つことができるのだろうか?