閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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心に従え、奈楽の決断 

疾風を駆けつけてきた大道寺と凛に任せて、飛鳥と焔、そしてかぐらが向かった方へと佐介と光牙が向かう

 

 

道中で拾ったバイクで駆け抜け、妖魔の妨害をも掻い潜り、ようやく目的地に到着した

 

 

そうして目的地にたどり着いた先で佐介と光牙が遭遇したのは奈楽だった

 

 

奈楽は佐介たちが加勢するとかぐらが不利になると察知したのか彼らを止めようとする

 

 

受けて立つ構えを取ろうとする光牙だったが、それよりも先に佐介が前に出ると共に彼女に話し合いを持ちかけた

 

 

佐介はその話し合いの中で奈落が本当は自分たちと同じくかぐらがこのまま消えてしまうことを良しと思っていないのではないかと指摘する

 

 

これにより動揺する奈楽だったが、それを否定するかのように攻撃を仕掛け、これを佐介は全力で受け続けた

 

 

やがて拉致が開かないと感じた奈楽が秘伝忍法で仕留めにかかったが、これすらも佐介は絶えぬき

 

 

死ぬかもしれないほどのダメージを受けながらも奈楽に必死に問いかけ続けた

 

 

その言葉に奈楽の脳裏に過去の出来事が蘇る

 

 

かつての幼き日の自分の記憶を…当時、思っていたことを……

 

 

 

 

 

 

時は数年前に遡る

 

 

町はずれの山奥にかぐらを代々守護してきた守人の一族の一つ「護神の民」の村が存在した

 

 

そんな里全体におぎゃーおぎゃー大きな鳴き声が木霊する

 

 

ここ数百年の間にこの護神の民一族の殆どが病いや寿命によって亡くなったり

 

 

さらには一族を離れていく者たちもいたりと

 

 

残りわずかとなってしまった護神の民の一族の家計に奈楽は生まれた

 

 

なぜ彼女が誕生したことに村の全員が歓喜の声を上げるのか?

 

 

それ奇跡か偶然か彼女が一族にとって重要な日とされる「護神の日」に誕生したからだ

 

 

彼女の誕生を目の当たりにした一族はこの日を盛大に祝ったという

 

 

やがて月日は経ち、物心をつけるようになった奈楽は

 

 

親や一族たちによって幼少期から教育に教育を施され

 

 

自分の一族がどのような使命を持っていたのか

 

 

これから自身が何をなさなければならないのかなどを徹底的に教え込まれた

 

 

奈楽本人も親の期待に応えるために日々精進を重ねていった

 

 

月日は流れ奈楽が小学生くらいにまで成長していったある日、親たちから重大な役目を与えられた

 

 

「いいか、お前は今日よりこの玉を見守るのじゃ」

 

 

この日、奈楽は長老に連れられ、とある部屋にやってきた

 

 

決して広くはないその部屋の中心に重要そうに飾られた球が置いてあった

 

 

それはかぐらが眠るとされる不思議な玉、「転生の玉」を見守ることだった

 

 

転生の玉を見守る使命を与えられた奈楽はそれから毎日毎日

 

 

365日という一年の年をいくつも過ごして行った

 

 

この間に奈楽は食事以外のほぼ全ての時間を転生の玉を見守ることに費やしていった

 

 

転生の玉は近くに人の気配を感じないとその力を減少させてしまうという特性があることが理由の一つである

 

 

当然、それによって学校にも行ったことのなければまして友達という存在すら彼女にはいなかった

 

 

しかし、そんな状況でも奈楽は根をあげることをせず、その使命をこなしていった

 

 

何より奈楽はこの間に楽しみを抱いていたのだ

 

 

かぐらが眠るとされる転生の玉

 

 

透明で透き通るガラスのように綺麗に輝くその玉にかぐらという人物が眠っているというのだから

 

 

「(かぐらさま、いったいどんな人なんだろう?話しが合うかな?気難しい人じゃないといいな。私のこと気に入ってくれるかな?)」

 

 

玉を覗き込みながらかぐらがどんな人物なのだろうと期待に胸を膨らませる

 

 

「(それで……それで……お友達になれるかな?私の初めての友達に……)」

 

 

奈楽はいつか訪れると言われる転生の時を心待ちにしながら

 

 

まだ何も起こらない玉に笑みを浮かべていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻り、奈楽は佐介と光牙に自分のこれまでの経緯を語った

 

 

彼女の話しを聞いた2人は彼女の思いを知って複雑な心境を浮かべる

 

 

「お前の言う通りだ。私はあの時、かぐらさまが目を覚まして共にいられる日が来たら…友達になってくれるかと淡い思いと期待を抱いていた」

 

 

「…っ」

 

 

「だがそれは所詮叶わぬ夢だとすぐに思い知った。私が役目を与えられてから数年が立ったある日、ついにかぐらさまが目覚められた。そして目覚められたかぐらさまが私に微笑んでくださった。あの時私はこの思いが通じてくれたのかと思えてこの上ない嬉しさを感じたんだ」

 

 

かぐらとの出会いを思い返した奈楽はとても幸せそうな顔を浮かべる

 

 

「かぐらさまが目覚めたことを知ったみんなが村総出でそれを祝福した。私もとても嬉しかった…だが、その喜びもつかの間のことでしかなかった」

 

 

すると突然奈楽は生気の抜けた者のようにうつむきながらにそういった

 

 

「それはどういうことだ?」

 

 

「…かぐらさまが目覚めてすぐ私はかぐらさまの従者としての役目を担うために修行をつけられることになった。それによって私はかぐらさまと離れさせられ、修行中の間一切の接触を禁じられた」

 

 

「っ!?」

 

 

奈楽が語るその出来事を聞いた佐介は信じられないと言いたげな顔を浮かべる

 

 

「でも、どうしても思いを抑えられなかった私はみんなの目を盗んでかぐらさまと面会した。かぐらさまは私を見るなりまるで無垢な赤子のように私の手を取って初めて会った時のように微笑んでくれたんだ」

 

 

思い返すたびにかぐらに手を握ってもらった時の温もりが蘇るような気持ちを覚えた

 

 

「奈楽さん…」

 

 

「しかし、その幸せも里のみんなによって壊された。私は再びかぐらさまと離れさせられ、より一層修行の日々を送らされた。そしてかぐらさまと友達になりたいことを知った里のみんなが2度とそんな考えを起こさないように徹底的に立場を教えこまれたんだ」

 

 

自分はかぐらを守るべくして生まれた従者であり、それ以外の何者でもないこと

 

 

それが自分の存在意義なのだと

 

 

「…ひどい」

 

 

「里のおきて…いや、この場合はエゴか?どちらにしても胸糞悪い話しだな」

 

 

奈楽がどんな状況下に置かれたのかを知って佐介は心を傷ませ

 

 

光牙はそんなことを強要する里の者たちに嫌悪感を抱いた

 

 

「だから、かぐらさまと対等な友達になろうだなんておこがましいことでしかないんだ。私は自身の使命を受け入れて今まで尽くしてきた私が今更どの面を下げろっていうんだ…うっ、ううぅ……」

 

 

堪えきれなくなった奈楽はその瞳からぽろぽろと涙を流していた

 

 

今まで堪えていた溜まりに溜まっていたものがこれ見よがしに溢れ出した

 

 

押し込んでいた感情が涙となって彼女の瞳から溢れ出ていった

 

 

悲しそうになく奈楽に佐介がゆっくり歩み寄ると共にへたり込んでいる彼女と目線を合わせる

 

 

「…奈楽さん」

 

 

「っ?」

 

 

佐介の呼びかけに奈楽が俯く顔をあげた瞬間

 

 

ギュッ…

 

 

「……えっ?」

 

 

「……っ」

 

 

一瞬何が起こったのかわからないまま奈楽が我に返ったのは自分を佐介が優しく抱きしめていると言うことだった

 

 

温かな温もりが彼女の全身を包み込んでくれるような思いだった

 

 

「な、なにを…?」

 

 

「辛かったですね。ただかぐらちゃんと仲良くなりたかっただけなのに誰もそれを許してくれない日々の中、自分の思いに葛藤しながらもかぐらちゃんを守るために頑張ってきたんですね……でももういいんです。あなたを縛るものはここにはない。あなたは自由なんです。だから他人のことなんて気にしないで、自分の気持ちを伝えてみたらいいと思います。きっとかぐらちゃんも受け入れてくれるはずです」

 

 

「かぐらさまが私を……」

 

 

佐介の言葉と優しく頭を撫でられる感覚に奈楽の心はどこかぽかぽかするようだった

 

 

「……いいんだろうか?」

 

 

「っ?」

 

 

「従者である私がかぐらさまと…」

 

 

「そんなことは関係ないと言いました。従者だどうだなんて関係ないんです。大事なのはあなたの心だ。奈楽さんはなにを望んでいるんですか?」

 

 

奈楽はその佐介の問いにはっと我に帰り、佐介の顔をじっと見た

 

 

「……私は、かぐらさまと…かぐらと友達になりたい!かぐらが消えるなんて嫌なんだ!」

 

 

優しさと温もりが凍り付いた奈楽の心を溶かし

 

 

ついに奈楽は自分の本音を打ち明けた

 

 

「その言葉をまってました…」

 

 

彼女の本心を聞いた佐介はすかさず手を取る

 

 

「では行きましょう」

 

 

「えっ?」

 

 

「あなたの本音をかぐらちゃんに伝えるために」

 

 

そういうと佐介は飛鳥たちと戦っているかぐらに視線を向ける

 

 

「……そうだな。じっとしていてもなにも変わらないからな!」

 

 

「はい。行きますよ奈楽さん!」

 

 

「あぁ!」

 

 

手を繋いだままに佐介は彼女をかぐらの元に届けるために走りだした

 

 

「全く、相変わらずお人好しだな」

 

 

その様子を見て光牙はくすりと笑う

 

 

「光牙くーん!なにをしてるんです?早く来てください!」

 

 

「…わかってるさ」

 

 

佐介の呼びかけに応えるように光牙もまた駆け出していくのだった

 

 

 

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