力の限り荒ぶり、皆を苦しめる道元の暴挙を止めるため
戦闘不能になった疾風たちの代わりにこの戦場に到着した仲間たち
春花が佐介たちを治癒するまでの時間を稼ぐために道元と交戦を開始する
だが、いざ戦闘を開始するも調子のよかったのは最初だけであり
すぐに道元の力の前に劣勢に立たされてしまう
柳生と雲雀が早々に脱落し、未来も瀕死の重傷
戦闘が長引くことによってほかの皆も消耗し始めていく
起死回生の一手として全員の絶・秘伝忍法を繰り出し道元に挑む
さらにこれを好機ととらえた未来が繰り出した一撃で勝機への活路が生み出され
そこを葛城が攻め、技のぶつかり合いによる大爆発に発展するも
葛城が無事なことに安堵する
しかし、未来を襲う一発の光弾がすべてを変えてしまい
直後に現れた道元の怒りによって仲間たちが次々と倒され、それを食い止めようとした葛城もあえなく撃沈
〆に道元がまだ回復しきれていない佐介たちにもその牙をむき
全員が彼の前に敗れ去ってしまうのだった
道元が繰り出した弾幕の雨が止むとともにそこに写っていたのはやられた佐介たちが地べたに転がる姿
【「終わりだ。これで何もかもが終わりだ。そしてこれより私の理想の世界が誕生するのだ。あーはっはっはっはっは!あっはっはっは!」】
そんな彼らの姿に道元は勝ち誇ったように勝利の笑い声をあげていた
「….うっ、うぅ…」
最中、佐介の体がぴくぴくと動く
朦朧とだが、意識が戻ったのだ
佐介はすぐにでもまた飛んでしまいそうな意識の中、その目で道元を見る
自分たちを倒したことで有頂天になったように耳障りともとれるその笑い声を上げている
さらに視線をずらして周りを見ればそこには自分と同じように彼によって倒されてしまった仲間たちの哀れな姿が
「(負けてしまうのぼくたち…せっかくここまで来れたのに?)」
かぐらを消滅から救い、同時に奈楽の心も救い、万事解決するはずだったのに
道元のせいでこの惨状と化してしまった
かぐらの力を奪い取り、彼女と奈楽の新たなる道筋を閉ざそうとしている
彼女たちのみならず自分たちからも全てを目の前の男は奪い去ろうとしているのだ
私利私欲、傲慢の限りを尽くし、ありとあらゆるものを人から奪い取り、それによって絶望する者たちをせせら笑う
このままでは自身のエゴのために平気で他者を見下すようなあの下賤なまさに人の皮を被った悪魔に全てが無駄にされてしまうのだ
「(そんなこと…許すわけには行かない、行かないのに…体に、力が…入らない…)」
先の道元の攻撃を食らったことによって佐介はもはや立つ気力も残されてはいなかった
「(うっ……だ、ダメだ。これ以上…意識を保てない……くそぉっ…)」
佐介は自分の不甲斐なさを呪うも、そんな彼の思いとは関係なく意識が完全に飛んでしまったのだった
ごぼごぼっ…ごぼぼぼぼっ…
「(…ここは、どこ…だろう?)」
意識を失ってしまった佐介がうっすらと目を開くとどういうわけかただひたすらに食らい水の中にいた
「(くらい…さむい…)」
ゆっくり、ゆっくりと暗闇の底へと佐介は真っ逆さまに落ちていく
「(…ダメだ。からだ…うごかない)」
どうにか降下を止めようとしようとしてみる佐介の意思で肉体を動かすことができなかった
なんの手も出せないまま、どこが果てかもわからないような光すら届かないと思えるほどの深い底へと沈んでいく
「(…もう、ダメなの?…なにをしてもむだなの?)」
暗い水の底の影響からか佐介の心が徐々に絶望感へと染まりつつあった
しかし、その最中、佐介の脳裏に飛鳥たちの顔が浮かび上がる
「(……いや、ダメだ。こんなところで諦めたらみんなの思いが無駄になってしまう。それだけはダメだ!みんなのためにもこんなところで僕は!)」
仲間たちのためにも諦めるわけにはいかない
佐介はその思いを抱きながらももはや暗闇で何も見えない先のほうに手を伸ばし続けた
『まだ抗おうというのかい?』
「(っ?)」
刹那、突如として聞こえる声を聞いて佐介はパッと目を開く
誰の声だろうと考えていると
暗闇に染まっているこの水の中底の方から一筋の光が見えて来た
そしてその光によって逆さまになっていた佐介の体が反転し、ふわりと向きを変える
向きが変わった佐介はこちらに向かってくる光と目が合う
「(これは?)」
自分の前に現れたこの光はなんなのかと考えていると光がさらにその勢いを増す
同時に徐々に徐々にと光が人の形をなしていく
呆気に取られながらも佐介はその光景に目を奪われる
やがて光が完全なる人の形へと変化する
「……えっ?」
その時、佐介は光が形を成した目の前に現れた人物に驚く
「あ、あなたはもしや…….蓮さん?」
『「まさかこのような形でまた君と相対するとは思わなかったよ」』
光が形を成して現れたのは佐介の前世であり
疾風の手によって彼の意識を乗っ取る形でこの世に再び舞い戻った蓮であった
佐介を取り戻すために立ちはだかった光牙、飛鳥、焔の3人を相手に
壮絶な戦いを繰り広げ、彼らを圧倒していった
だが、激闘の末、最後は飛鳥の繰り出した「意心伝心の波動」によって
精神世界から佐介の心を救った飛鳥の活躍によって消滅したと思われていた
そんな彼が今こうして自分の目の前に現れたのだ
「どうして…どうしてあなたがここに?」
当然の疑問を抱くと共にそのことを尋ねる
『「私は消えたわけではない、ただ存在を保つのが精一杯だっただけだ……そして私はこの姿になってからずっと君を見ていた」』
「僕を?」
『「そうだ。君を見ていたんだ」』
蓮は存在としては曖昧なようなものになりながらも佐介の心の中に居続け
その傍らでずっと佐介のことを見てきたのだと語る
『「正直、私は驚いたよ」』
「えっ?」
『「君はここに来るまでの道のりで数多の戦いを繰り広げていった。妖魔衆ならまだしもあの疾風とやりあって、あそこまでされたのにも関わらず君は何度も何度も立ち上がった…おまけにかぐら様や奈落殿に何度拒絶されようとも決して諦めなかった…どうしてそこまでできたのか私にはわからないんだ」』
「…蓮、さん?」
彼の顔はとても悲しみと喪失感を思わせるようだと佐介は感じた
『「かつて私が私として生きていたころ、疾風と共にかぐら様を見守り続けた。どんな時もかぐら様に付き添い、同じ時を過ごした。誰に対しても分け隔てなく優しさをふるまうかぐら様を皆も慕っていると思っていた。だが、あの日、数多の妖魔が現れたあの日。私は二つの絶望を味わうことになったんだ」』
「二つの…絶望?」
蓮の口から語られるその単語に佐介は絶句するのだった