閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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立ち上がれ、佐介と光牙 

増援として駆け付けた半蔵学院組と紅蓮竜隊の仲間たちだったが

 

 

強大な力を得た道元の前に皆が次々と敗れていき

 

 

起死回生の一手も撃破には至らず、彼の怒りのこもった攻撃によってあえなく倒されてしまう

 

 

その後、佐介は精神世界の深淵へと沈んでいく

 

 

最中、そんな佐介の前に消えたはずの自身の転生前の存在である蓮が現れる

 

 

未だに諦めようとしない佐介に自分が生前に味わった絶望を教えることでこの世界には敵わないこともあることを諭そうとした

 

 

しかし、それを聞いても尚、佐介は折れるどころかさらに戦う意思を奮い立たせる

 

 

蓮は自身がかつて切り捨ててしまったものを捨てない佐介の芯の強さを目の当たりにし

 

 

佐介に自分が見つけ出し、見いだすことができなかった可能性の未来に希望を見いだし

 

 

彼の進む未来を見届けることを告げ、自分の手と佐介の手を触れ合わせる

 

 

互いの手が触れ合った瞬間、漆黒の暗闇に包まれていた世界に眩き光が差し込んでいったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うっ、うぅ…?」

 

 

精神世界で蓮と遭遇し、彼に思いを託されたと同時に光に飲み込まれてすぐに佐介は意識を取り戻す

 

 

「(っ、少しだけど体が軽い?)」

 

 

気を失ってからどれほどの時が過ぎたのかは定かではない

 

 

さっきまで指一本動かすことすらままならないほどに消耗しきっていたのにと佐介は不思議そうに顔を浮かべる

 

 

「あっ…」

 

 

【「ふははは!!あははは!!」】

 

 

だがすぐに目線を移すとそこにはまだ道元があることが確認できた

 

 

未だに勝利の愉悦に浸っているかのように高らかに笑い声をあげていた

 

 

「道元…っ」

 

 

故にまだ奴はこの場をさっていない。

 

 

これは道元を倒せるかもしれない最後のラストチャンスとも言えるものだった

 

 

「っ…なんとしてもここで道元を止めて見せる。たとえこの身がどうなることになろうとも、それがここまで戦い抜いてくれたみんなの思いに報いられることだから」

 

 

「そうだ、よく言った。それでこそだ佐介」

 

 

「…光牙くん」

 

 

すると後ろから声が聞こえ、振り返るとそこにぼろぼろな体ながら歩み寄ってきた光牙がいた

 

 

「大丈夫ですか光牙くん、随分ボロボロのようですが?」

 

 

「それはお互い様だろうに…しかしながら俺もこれ以上指を加えて見てるわけにもいかないんでな…例え無謀だといわれようとも、これ以上あいつらを傷つけさせるわけにはいかん、たとえここで刺し違えることになろうとも奴を倒す」

 

 

「光牙くん……そうですね。僕も同じ気持ちです!」

 

 

互いに死ぬ覚悟はできている

 

 

大切な仲間たちのためなら命など惜しくはないと

 

 

2人はこの戦いに臨む覚悟だった

 

 

【「っ?…おや?これはこれは、まだ立ち上がってくるとは相変わらずしぶとい…だが、もはやお前たちでは戦う気力すら残ってはいないだろうに」】

 

 

「「ぐぅ…っ!」」

 

 

図星を突かれて悔しむ表情を佐介と光牙は浮かべる

 

 

しかし事実である以上は言い返せないことが歯がゆかった

 

 

【「馬鹿な奴らだ。大人しくそこに這いつくばっていればこの場は助かったかもしれんというのにな?…まぁいい、立ちあがってくるというのならそれもよかろう、ならば今度こそ永久に立てなくしてやる。私のこの手で貴様らを永遠の眠りへと誘ってくれるわ!」】

 

 

立ち上り、自分に歯向かおうとしている佐介と光牙を今度こそ消し去ると道元は宣告する

 

 

打つ手を持たぬ佐介と光牙はどうすべきかと主案をめぐらせるも早々に思いつくものですらなかった

 

 

「光牙くん!」

 

 

「っ?」

 

 

刹那、背後から自分を呼ぶ声に気づき、後ろを振り返る

 

 

するとその直後、何かがこちらに向かって飛んできていることに気づいたと同時に

 

 

光牙がそれを反射的にキャッチした

 

 

咄嗟に手にしたものを確認するとそれは試験管に入った何かの液体のようだった

 

 

そうしてそれを自分に投げてきた者が春花であることを知る

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…それを、使って」

 

 

「春花、お前」

 

 

「それ以上のことは言わなくていいわ。状態はあなたも私も変わらないでしょ?」

 

 

全身ボロボロで息も絶え絶えながらに春花は光牙に液体を渡した

 

 

自分の姿に何か言いたげな光牙に野暮はなしと釘を差しながら

 

 

「春花、こいつはいったい?」

 

 

「それを飲めばほぼ体力を戻せるわ」

 

 

「なんだと?」

 

 

春花が自分が渡したその液体を飲めば体力を回復させられると言ってきた

 

 

だがそれを聞かれると疑問も生まれる

 

 

「ならなぜ最初から俺たちにこれを渡さない?」

 

 

「そうですよ春花さん。これを飲んでいれば今頃は!」

 

 

この薬を飲めば体力を回復させられるというのであればはなっからこれを飲んでおけばいい

 

 

そうすれば今よりも状況は悪くならなかったのではないかと春花に問いただす

 

 

「ごめんなさい、でもこれには訳があったの」

 

 

「訳だと?」

 

 

最初から薬を渡さずあのような手間のかかることをしたのには訳があるのだと春花は言う

 

 

すると春花は懐から何かを取り出し2人に見せる

 

 

「そ、それは霧夜先生が僕たちに渡してくれた」

 

 

「半蔵が作ったという兵糧丸?」

 

 

春花が見せたのはここに来る前に霧夜が妖魔衆との戦いやらで披露していた佐介たちの体力回復に貢献した半蔵手製の兵糧丸だった

 

 

「私、ひばりがこれを使って体力を回復させたところを見て成分は何なのかを知るために服用しなかったの。それでこれを詳しく調べてみたらどうやら「アドレナリン」を活性化させる作用があるみたいなの、だからみんなこの薬を飲んだおかげで元気を取り戻せたのよ」

 

 

「そうなのか…しかしそれとこの薬を渡さなかったこととどう関係する?」

 

 

藩が作ったこの兵糧丸の成分を説明する春花だが

 

 

今の説明だけではまだ薬を渡さなかったことの説明にはつながってはいない

 

 

「…実はその薬も成分はアドレナリンが含まれてるの。つまり既に活性化させた肉体に再度アドレナリンを打つことになる。でもこれは本来は応急処置に過ぎない、これ以上投与して体をだましてでも戦えば最悪の場合…死ぬかもしれないの」

 

 

「「っ!?」」

 

 

既に兵糧丸によってアドレナリンが分泌されている体であるにも関わらず春花の薬を飲むということは過剰摂取ということにつながる

 

 

薬も過ぎれば毒となる

 

 

これ以上体に鞭を打たせて戦えば最悪2人が死ぬかもしれない

 

 

だから春花は直前まで躊躇っていた

 

 

しかしそれを渡したということは

 

 

「…あなたたちを信じてるわ」

 

 

止めても無駄なことは彼女自身も承知していることだ

 

 

なにより2人が死しても自分たちのために戦おうとしてくれている

 

 

そんな彼らに力を貸さずして躊躇ったら春花自身も後悔する

 

 

故に春花は2人の勝利と生還を信じて薬を託したのだ

 

 

「…すまない」

 

 

「ありがとうございます。春花さん」

 

 

春花から受け取った薬、これで再び戦うことができる、2人に希望が見える

 

 

【「お話し中のところ悪いが、それを聞いて大人しく見てるとでも思っているのかな!」】

 

 

「「っ!?」」

 

 

だが、その最中道元がそうはさせまいと2人に迫ってきたのだった

 

 


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