閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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託された思いを胸に

精神世界にて蓮と遭遇し、意識を取り戻した佐介は

 

 

同じく意識を取り戻した光牙とともに道元を倒す意思を固める

 

 

春花より回復手段を受け取ったもののそれを良しとしない道元が妨害をしてきた

 

 

だが、そんなピンチの佐介たちを飛鳥、焔、さらには疾風も加わった3人が援護に入った

 

 

皆の協力を得て無事に回復を果たした佐介と光牙

 

 

しかし回復できたはいいがそれは所詮今の状況を軌道に戻したにすぎず

 

 

全開で戦うにしても疾風にすら2人がかりで苦戦してしまった佐介と光牙が

 

 

その疾風やほかの者たちを倒した道元を倒すことはほぼ不可能に近しいことである現実を突きつけられてしまう

 

 

途方に暮れかかる佐介と光牙だが、直後、心に響く声とともに蓮が佐介たちの前に姿を現す

 

 

道元を倒す術を与えるために自らの消滅を大化とすることを蓮が宣告する

 

 

力を与えるために消滅を選ぶ蓮に佐介は悲しみを抱き

 

 

自身の消滅に際して悲しみを抱いてくれた佐介に礼を述べ

 

 

蓮は佐介と光牙に最後の希望を託すべく力を譲渡すべく光り輝くのだった

 

 

 

 

 

 

キュイィィィィィン!!

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

『さぁ、私の力を…受け取ってくれ』

 

 

眩い光に驚く佐介たちに向けて蓮がそうささやく

 

 

「「っ?」」

 

 

刹那、佐介と光牙の懐が光り輝く

 

 

確認すると光っているものは自分たちの持つ巻物だった

 

 

「ま、巻物が」

 

 

「光り輝いている?」

 

 

自分たちの巻物が輝きを放っていることに驚いているのも束の間

 

 

さらにはその輝きを放っている自分たちの巻物が一人でに浮かび上がり宙を舞う

 

 

佐介と光牙の巻物は宙で交差を描くとともにやがてぶつかり合い

 

 

そしてそこから発生した一筋の光のすぐ様に中から一本の巻物が現れ、佐介の手に渡る

 

 

「なんだと?」

 

 

「僕たちの巻物が一つに?」

 

 

2人は自分たちの持っていた巻物が一つの巻物に変わる瞬間を目の当たりにして驚きを隠せない様子だった

 

 

「れ、蓮!?」

 

 

「「っ?」」

 

 

しかしその直後、疾風の慌てたような声を聴いて瞬時にそちらに視線を向けると

 

 

視線の先には蓮が消滅仕掛けている様子だった

 

 

先ほど彼が言った通りの状況になっているのだとすぐに理解できた

 

 

「蓮…しっかりしろ、蓮」

 

 

『…疾風、済まなかったね。最後の最後まで私の我儘に君を巻き込んでしまって』

 

 

「何水臭いこと言ってんだよ?お前が俺を巻き込むことなんてしょっちゅうだっただろうがよ」

 

 

『あははは…そうだったね』

 

 

じわりじわりと消滅していく蓮は疾風に対して今まで迷惑をかけたことを謝罪する

 

 

対して疾風はそんなこと今に始まったことではないと笑みを浮かべる

 

 

だがその笑みは友の消滅を前にあふれ出そうになる悲しみを必死にこらえているような顔にしか見えなかった

 

 

「…蓮、すまねぇ…俺は…俺は…」

 

 

『分かってるよ。君の気持ちには感謝してもしきれないよ。君のおかげで長き時の果てにこうしてまた君と言葉を交わせることができたし、かぐら様にもう一度会えたんだからね』

 

 

疾風が何を言おうとしているのかを察した蓮はそんな彼に心から感謝の言葉を贈る

 

 

『でももういいんだ。所詮私は一度死んだ身。どう取り繕っても死者がいつまでもこの世にいるべきではないんだ』

 

 

かぐらのように転生の力を持つわけでもなければ疾風のように長寿の命を持つわけでもなく

 

 

本来であれば蓮はあの時代でとうに終わっているはずの存在

 

 

だが疾風が魂を封じ込め、佐介の肉体という仮初めを使って魂を目覚めさせたおかげで

 

 

今という時代に再び意思を取り戻しただけの存在なのだから

 

 

『ましてやこれ以上我が親愛なる友である君の人生を振り回すことなどあってはならない……だから、これでいいんだ』

 

 

死者はあるべき場所へ戻らなければならない、それが今この時なのだと

 

 

『うぅ…』グラッ

 

 

「っ、蓮!」

 

 

刹那、それを現実と成すが如く

 

 

蓮は自分の意識がまたさらに薄れていくのを感じていた

 

 

『…どうやらそろそろ永遠の別れの時が来たようだ。残念ながらね』

 

 

「そんな…蓮さん」

 

 

『…っ』

 

 

いよいよ完全なる消滅がまじかに迫っていることを告げる

 

 

佐介が何か言いたげな様子だったが蓮はそんな彼に首を振ってサインを送る

 

 

「…くっ」

 

 

親愛なる友が消える目前なことを知り、疾風は顔を背ける

 

 

『疾風、私の最後の頼みを聞いてくれないか?』

 

 

「…あぁ、言ってみろよ?何をしてほしいんだ?」

 

 

『この戦いに彼らが勝利した暁にはかぐらさま…いや、”かぐら”に伝えて欲しいんだ。私は…僕は、君の守人になれたことを誇りに思っていたと、僕も君のことを”愛して”いたと』

 

 

蓮ははっきりとかぐらを様付けせず呼び捨てで名前を呼んだこと

 

 

そしてかぐらが自分のことを好いていてくれたように蓮もまたかぐらを愛していたという言伝を疾風に託す

 

 

「…馬鹿野郎が、そういうのは、あいつの前で直接言えばよかったうに、まったく、嫌な役回りはいつも俺だな」

 

 

『本当にすまない…ありがとう』

 

 

愛していることを蓮の口から直接聞きたかったであろうかぐらのことを考えると疾風はとてもやるせない思いだった

 

 

損な役回りをさせてしまったがこうする以外の術を見いだせない蓮は何とも言えない顔を浮かべる

 

 

『…佐介』

 

 

「は、はい!」

 

 

『後のことは任せたよ。必ず勝ってくれ、勝ってそして……かぐらに本当の自由を与えてあげてくれ』

 

 

「わかりました。絶対に、絶対に守って見せますその約束!」

 

 

佐介は誓った。まもなく消える者の切なる願いを聞き

 

 

必ずやその約束を守り通すことを

 

 

『…ありがとう』しゅぅ~

 

 

「蓮?…蓮!?」

 

 

「…れん、さん」

 

 

「っ…」

 

 

約束を守ると断言してくれた佐介にこの上ない感謝を最後の言葉として蓮は笑顔を見せながらその魂の灯を消滅させるのだった

 

 

「くぅ…ぐぅぅ!?」

 

 

蓮が消滅したことで疾風はその場に崩れ落ちており、そんな彼の姿を見て同情の表情を佐介と光牙が向けていた

 

 

【「…ふっ、なんだかよくは知らんが3人そろって私と戦うという恐怖のあまり気が狂ったように誰も居もしないところに話しかけているとは滑稽なものだな?」】

 

 

一部始終を見ていた道元は蓮の姿が見えていた彼らのことをおかしくなったと勘違いして小ばかにしていた

 

 

「黙りなさい」

 

 

刹那、そんな道元の言葉に佐介が反論する

 

 

「人を利用することしか考えられないあなたには一生わかりませんよ。僕らは今託されたんです。自分の消滅と引き換えに僕らにすべての願いと希望を託してくれた蓮さんに…僕はその思いに応えなければならない、だから、そのためにもあなたを倒す!」

 

 

【「やれるものならやってみろ、今の貴様らに何ができる?」】

 

 

意気込む佐介に対してそれは無意識なことだというような言葉を道元が投げかける

 

 

「証明して見せます。蓮さんがくれたこの力で…はっ!」

 

 

万感の思いを込め、蓮が作り上げた巻物を空に投げる

 

 

巻物はしばらく宙を飛ぶと光を放ち、巻かれていた紙が渦巻きながら降りてくる

 

 

それを見て光牙が少し距離を取るために離れようとする

 

 

「…ん?」

 

 

「えっ?」

 

 

だが、そんな隙もなく一瞬にして佐介とともに巻物の紙の渦の中に閉じ込められた

 

 

「な、なんだこれは?お、おい、巻き込まれてるんだが?どうなっているだ!?」

 

 

「ぼ、僕にもさっぱり!?」

 

 

状況がまるで飲み込めない2人は困惑するもお構いなしに巻物が次なるステップに入るかのように光だした

 

 

「まてまて!?」

 

 

「ふぇっ!?」

 

 

 

シュルルルン!!

 

 

 

「「うわっ!?」」

 

 

「佐介くん!?」

 

 

「光牙!?」

 

 

しかしそんな言葉など意に返さない巻物が一瞬にして2人を閉じ込め、光り輝く

 

 

そしてその刹那

 

 

 

ビュイイィィィィン!

 

 

 

光が消え去ると同時に巻物が消滅する

 

 

「「えっ!?」」

 

 

だが、直後飛鳥たちは度肝を抜かされる

 

 

なぜなら現れたのは佐介と光牙ではなく

 

 

どことなく2人の容姿を合わせたような一人の忍が立っていたのだから


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