ワームホールに吸い込まれ、その先で意識を取り戻した佐介は
道中で遭遇した飛鳥たちと合流を果たし、周囲の調査に乗り出す
移動を開始した佐介と飛鳥たちはその先で
自分たち同様にこの場所に飛ばされた光牙たちと出会う
まだ状況が掴めていない光牙たちに事の経緯を説明している最中
佐介たちの元にこの事態の元凶である小百合が姿を現す
小百合との思わぬ再会を果たした飛鳥は自分たちをここに呼び寄せた経緯を小百合に問いただすと同時に
今まで胸の内にしまっていた寂しさを告げる
思いを聞いて彼女を優しく慰める小百合によって飛鳥は落ち着きを取り戻し
そのタイミングを見計らって佐介が先んじて飛ばされたと思われる両備と両奈のことを尋ねようとした時
狙ったかのように相馬にダイブする形で両奈が現れ
後に続くように両備が現れる。その横に自分たちの”姉“を引き連れて…
行方が不明だった両備と両奈が現れたと思ったのもつかの間、彼女たちが連れてきたのは
死んだはずの彼女たちの姉、両姫の姿だった
「みなさん、こんにちは。私の名前は両姫。ここにいる両備ちゃんと両奈ちゃんのお姉ちゃんです。よろしくお願いしますね」
「あっ、はい、こちらこそ」ペコペコ
両姫の自己紹介を受けて佐介はあたふたしながらもペコリと頭を下げる
「…っ」ソワソワ
「あら、そこにいるのは雅緋ちゃんね?久しぶりね」
「…あっ、あぁ」
「っ?」
雅緋の存在に気づいた両姫が話しかけてきた
対して雅緋はどこか気まずそうな顔を浮かべており
その様子を見て光牙は2人の関係についての疑問を浮かべている
「…正直佐介たちから事情を聴いた時には驚いたぞ、なぜならお前は私の目の前で…死んだんだからな」
「っ!?」ピクッ
刹那、雅緋のその言葉を聞いた光牙は瞬時に理解し、先ほど抱えていた疑問が晴れた
今、目の間にいるこの両姫があの事件の唯一の被害者だったということに
「気にすることはないわ。あの時はああする他なかったんだもの、私はあなたを恨んでなんかないわ」
「…そうか、その慈悲深い心に感謝以外ないな」
今も尚、心の傷としてしまっていた思いが両姫のその言葉を聞いて少しだけ和らいだ気がした
「はいはい、暗い話しはおしまい、そんなことよりみんなちゅ〜も〜く!なんとなんと両奈ちゃんたちのお姉ちゃんがこの度帰ってきました〜♪」
両奈がそう宣告するとどこからともなく歓声が聞こえたのはまた別の話し…
「両姫さん、お久しぶりですね。よもやこのような形であなたと会うことになるとは思いませんでしたよ」
「あら紫苑ちゃん。久しぶりね?しばらく見ない間にまた綺麗になったんじゃないかしら?」
「うぇっ!?」
紫苑が声をかけると両姫は先の雅緋の時のように懐かしそうな顔を浮かべながら一段と増した紫苑の煌びやかさを賞賛する
これに対して紫苑は褒められることの嬉しさもあるがどこか素直に喜べないところがあった
「騙されちゃだめよお姉ちゃん。こいつ、こう見えて実は男だったのよ!両備もそれを聞かされた時は心底驚いたんだから」
「あら、そうだったの紫苑ちゃん?」
「えぇ、その…いろいろありましてはい」
我ながら心底情けないことだと言いたげな表情で紫苑は答える
「なるほどね。確かに普段からのあなたを見てるととてもそうは見えなかったわね。でも別にいいんじゃないかしら?人間誰しもいえなう秘密の一つや二つあるものだもの」
「ちょ、お姉ちゃん」アセアセ
「…ほ、慰めの言葉痛み入ります」アセアセ
そんな紫苑に対して両姫は気にする必要はないと笑顔で慰めの言葉を送る
だがそれに関しても紫苑的にはどこか複雑な心境ではあった
「ところで両奈ちゃん。先ほどからその人と随分と仲良しなようだけれどどなたなのかしら?」
「この人は相馬くんって言っていって両奈ちゃんのご主人様だよ~♪」
「あら、そうなの?それは良かったわね♪」
「いやいやお姉さん、そこふつう違くない?」
両奈が相馬を紹介し、主従関係だということを告げると両姫は
特にどうということもなく聞いており、相馬がそこにツッコミを入れるのだった
思わぬ展開に和やかな雰囲気があたりを包んでいた
「さて、お前さんたち。話しに花を咲かせるのは一先ずそこまでとさせてもらうよ」
『「っ?」』
するとその最中、しばらく佐介たちの様子を見守っていた小百合が会話の中に入り、その流れを変えた
「いろいろあったがこれで舞台に役者はそろった。さぁ、これより祭りの始まりじゃ!」
「祭り?」
「どういうことですか?」
「今見せてやる。……はっ!」
祭りを始めるという意味深な言葉を浮かべる小百合に一同がどういうことなのかとそわそわしていると
小百合が印を結び、その手を砂地にたたきつける
ギュィィィン!!
その瞬間、佐介たちのいるこの場所の空間に変化が起こる
やがて先程まで海岸にいたはずの自分たちが気が付いた頃には祭りの会場らしきところに転移していた
「こ、これは空間転移の術!?」
「しかも自分を含めてこの人数を一度で飛ばすだなんて!?…やはり“元カグラ”の偉業は健在ということですね?」
この場にいる全員を海岸から祭りの場に転移させてしまうほどの小百合の技量に皆が驚いた
「…なぁ、空間変異の術ってなんだっけ?」
『「…えぇ~」』アセアセ
…約一名を除いて
「ん?えっ?な、なんだよみんな?そんな残念なものを見るような感じで俺を見て?」
「はぁ~…お前は、
「えぇっ!?」
あきれてものも言えないというかのような顔を浮かべている雅緋の様子に相馬は困惑する
≪「転移の術とはだな。簡単に言えば忍結界の応用という感じだ。結界の中にいる際に使える術であり、術者の操作で他者の作った結界、または複数の場所を生成ている際にそこに転移できるという術なんだが、この術は会得の難易度が高いうえに使えるようになったとしてもせいぜい自身、もう少しよくて他一名を同時に移動させれる程度が限界と記されていたが、これはそれを遥かに超えているな?」≫
「なるほどな……あのばあちゃん相当すげえな?さすが飛鳥のばあちゃんなだけあるってことか?」
理解ができていない相馬にもう一つの人格である「蒼馬」が砕いた感じで説明をしてくれたことで
なんとなくだが事を理解でき、こんなことを可能にした小百合の技量に遅れながらに驚愕をするのだった