しかしながらこの勝利事態は決して褒められるようなものではなく
むしろ迷う心のせいで追い込まれながら紫苑が何とかごり押しするという何とも言えない結果だった
小百合がそれらを紫苑らに指摘し、そんな彼らの根性を叩き直すために召集をかけることを宣言した
その後、召集をかけられて集まった忍び学生たちに小百合が見せつけたのは巨大な妖魔の姿であった
さらにはその妖魔が今は別の次元にいるがいずれは必ず現実世界に出現する事を示唆する
唐突に語られたこれから訪れるであろう災厄の全貌を聞かされて忍学生たちは驚愕の顔を浮かべるのだった
空に移る巨大な妖魔がいずれ現実世界に現れると告げられて佐介たちに戦慄が走った
「おいおい冗談きついっての。あんな巨大な妖魔がいつの日か俺たちの世界に来るって?」アセアセ
想像の遥か上をいくこれから待ち受けているであろう未来を突きつけられ一同は困惑していた
「さて…ではあらためてお前さんたちの返答を聞かせてもらうぞ。この状況を知ってどう思う?あくまでこの世界に居座り、現実逃避する道を選ぶのか?それとも?」
小百合のとっておきは忍学生たちに効果的面であり
動揺を隠せない彼らに小百合は再び質問を投げかけた
この状況を知って尚、知らんぷりを決め込み、この世界に留まる道を選ぶのかと
「……小百合さま」
「なんじゃ佐介?」
「僕、この世界から出たいです!そしてあの妖魔を倒し、世界の平和を守るんです!」
誰よりも早く佐介は迷うことなくここから出ることを告げる
妖魔を倒して世界の平和を守ると大きく宣言する
「抜け駆けは許さんぞ佐介、俺も貴様と同意見だ。たとえどんなに大きかろうが妖魔はこの手で狩ってやる」
佐介に続くように光牙も妖魔を倒す気満々であり、それに対して皆も頷いている様子だった
「早く帰りたいのなら忍の盆踊りを一番に勝ち抜けることじゃな。元の世界に帰る権限を持てるのは勝ち残った1チームのみ、それ以外の負けた者たちには千年祭が終わるまでの間ここで惨めな気分を味わってもらう。さて、誰が妖魔と戦う権利を手にするかの?」
背を向けながら小百合が皆のプライドを刺激するような言い回しをしてきた
「愚問ですね、そんなもの決まってます。その権利を得るのは僕たち月閃女学館です。そのためにもこの勝負、負けるわけにはまいりません!」
ここで紫苑が他のチームに向けて高らかに勝利宣言を行う
「ほう、威勢がいいのは結構なことだが、果たしてそう上手くいけるかな?」
「…光牙さん、その言葉は聞き捨てなりませんね。いったい何を根拠にそのようなことを言うのですか?」
だが、ここで光牙が匂わせぶりな言葉を投げかけ、紫苑はそれにムッとなってその真意を問う
「根拠か、なら言うが仮にお前はともかくとしても連れのほうはどこか心ここに在らずといった顔をしているぞ?」
「っ…!?」
光牙の投げかけに紫苑は言葉を失う
確かに彼の言う通り自分を含む月閃のメンバーたちの表情はどこか冴えないといった顔を浮かべていた
先の戦いもこれがあったが故にあのような苦い勝利に終わってしまったのだから
「…確かにそうかも知れません。でも、それは光牙さんあなたも同じことではありませんか?」
「なんだと…?」
ここで紫苑が反論の言葉を投げかけた
「あなただけではない、他の方々にだって僕らと同じようなことを思ってる者はいるのではないですか?」
そう言うと紫苑は皆にも尋ねるかのように話した
何もこれは月閃だけのことではない
よくよく見てみれば他のチームの一部の者たちにもそのような雰囲気を醸し出しているような様子を見せている者がいた
「光牙さん、確かにあなたの言うことは的を射ています。でも迷いはあれど僕は忍の盆踊りを終わらせて必ず妖魔を叩き潰します!」
「ほう、ならみせてもらうとするか、せいぜい足掻いて見せろ、だがこれだけは言わせてもらう。この世界から出て妖魔を倒すのは俺たち焔紅蓮竜隊だ。そのためにもおお前たちのヤグラは根こそぎぶっ壊してやるからな?」
光牙と紫苑の論争は激しさを増していった
「待ってください、僕だって負けませんよ。妖魔を倒してみんなの笑顔を守るのは僕たちです!」
さらにそこに佐介も加わって論争はさらに熱を増す
3人はその気になれば今からでもドンパチを始めてしまいそうな勢いだった
「(ふふふ、いい塩梅になってきたね)」
荒技とはいえ、妖魔を見せたことで彼らの一部の者たちのやる気を引き出すことに成功させた小百合はよしよしと心の中でつぶやき、頷いた
「さて、お前さんたちもやる気を見せてくれたようじゃから一先ず話はこれで終わりにしよう。これからが真の忍の盆踊りの始まりじゃ、見せてもらうぞ。お前さんたちの覚悟を」
そういうと小百合はポンという煙の音とともに一瞬にしてその場から消え去ってしまうのだった
小百合が去ってからしばしの時が経った
各チームはそれぞれの拠点で今後のことに関して話し合いを設けていた
蛇女も例に漏れずこれからについての会合を開いていた
「よしみんな、さっそくどこかの拠点に攻め込もう!ボクたち蛇女が勝利を収めてさっさと元の世界に帰るんだ!そして妖魔を撃つんだ!」
拠点に戻ってから忌夢は早々に皆に半蔵、紅蓮竜隊、月閃のどこかに攻め込むことを提案する
千年祭を終わらせて元の世界に戻るためにも、待ち受けているであろう妖魔を倒すためにも行動に移すべきだと訴えた
「「「「「……」」」」」」
だが、そんな彼女の訴えを聞いても皆の反応はどこか薄かった
「ておい!なんだその薄いリアクションは!?」
「両奈ちゃんは妖魔よりも両姫お姉ちゃんかな?」
「はぁ?」
「帰りたくない……ここは、天然の引きこもり空間……外界から隔絶されたパラダイス…」
それに対して忌夢が問うと両奈に至っては姉の両姫のほうが大事であると
紫のほうは帰りたくないといいだしてきた
「紫、お前帰りたいんじゃなかったのか?」
ここにきてから帰りたい帰りたいと豪語していたはずの妹がいつの間にか180度顔店して真逆のことを言い出したことに忌夢は驚いた
「ごめんなさい、お姉ちゃん…案外、住めば都だったの…それにまだ光くんとの思い出作りも…まだ足りない」
しばらく滞在してみれば案外紫にとっては好待遇な場所であったがゆえに気持ちが変わってしまったのだという
さらには水上運動会の時に相馬に言われたこともまだあきらめていたわけでもなかった
光牙と思い出を作りたいという願いも達成するためにも帰れないと
「紫、気持ちはわからなくもないけど今は状況が違うんだぞ?…まったくみんなして、ねぇ雅緋、雅緋からもガツンと言ってやってよ~」
皆の反応に呆れた様子で忌夢は雅緋に助けを求めた
「…私は…」アセアセ
「み、雅緋!?」
だが、そんな忌夢の思いとは裏腹に雅緋もみなと同じ反応を示していることに驚く忌夢だった