彼らがそこで見たのは別空間で蠢いているとされる巨大妖魔の存在だった
いつの日か自分たちの世界に現れるという危機が迫っていることを知って
忍の盆踊りを終わらせるために動こうとするもの
この事態を知っても尚、迷いを抱くものたちとで知らぬうちに溝ができ始めていた
そんなことなど知る由もなく、拠点に戻った蛇女は忌夢が皆に妖魔を撃つことを促そうとする
だが、そんな彼女とは真逆の考えを持つものたちの比率が多いことを知って驚愕する
挙句の果てには愛しの雅緋ですら悩みを抱えて
いると知り、忌夢は愕然とするのだった
やる気を見せない他の面々に困り果てて忌夢が頼みの綱である雅緋に助けを求めようとした
だがそんな思いに反して雅緋の反応は皆と同じであった
「み、雅緋、どうしちゃったのさ?やっぱりお母さんのことで悩んでいるのかい?」
雅緋がこうなっている原因について心当たりのあった忌夢がそれが彼女の母にあるのではと考えそれを問うてみた
「実はここ最近、今まで以上に感じるんだ。母さんの存在を…おそらく光牙も感じているだろう」
ここに来てからというもの雅緋はかすかに母親の気配を感じ取っていた
しかもそれは時がたてばたつほど感じ取れるようになっていったのだ
「だからお母さんに会うまでここにいるって言いたいのかい?」
「っ…」
忌夢のその問いに対して雅緋は何も言えず彼女から視線をそらした
「それじゃ、お母さんと会えなければ一生ここにいるつもりかい?忍の本文すら忘れて?」
「…忌夢の言っていることは正しい、それはわかってる…しかし…」
「みんなしっかりしてくれよ雅緋、蛇女の誇りはどこに行っちゃったのさ!?」
みんなの態度に我慢が出来ずに忌夢は問いただす
「そこまでにしとけよ忌夢さんよ?」
「なんだよ相馬?」
するとそんな忌夢に相馬が声をかけてきた
「さっきからお前ちょっと強引すぎやしねぇか?みんな困っちまってるだろうが?」
「そんなことを言ってる時じゃないだろう!いつあの妖魔がボクらの世界を襲いに来るかもわからないんだ。やつを倒すためにもボクらが千年祭を終わらせて元の世界に帰らなきゃ!」
「でもさ、それは何も俺らが絶対にそうしなきゃいけない訳でもないだろ?」
「な、なんだと?」アセアセ
蛇女として、忍として妖魔を倒すためにも忍の盆踊りを勝ち抜き
元の世界に戻るべきだと主張する忌夢に対して相馬のその一言は衝撃的だった
「相馬!なんだその言いぐさは!」
「だってよぉ、俺たちがやらなくてもいいじゃん、実際さっきのを見てた感じ佐介たちはやる気みたいだからさ、下手に俺らが動くより、あいつらなら誰かしらやっつけてくれるんじゃないかなってさ?」
小百合曰くこの世界から出れるのは勝者のみ
未だ気持ちに溝を残している自分たちよりも
いっそのこと明確にここから出ようとしている他の者たちに任せてもいいんじゃないかと相馬は言うのだ
「お、おま…ふざけるな!なんてことを言うんだお前は!こんな時までめんどくさがるのかこのぐうたら野郎!」
自分勝手すぎだと怒った忌夢が相馬にガツンと物申した
「カッチーン!…じゃあいうがよ、たいそうなこといろいろ言ってるけど他のそれでみんなは即決したか!お前の話しに賛同してくれたのか!」
「うっ…そ、それは…」アセアセ
しかしここでキレた相馬が仕返しとばかりにあくまでこの世界から抜け出す意思を押し付ける忌夢に皆がそれをよしとしてるのかどうかを問うた
それを言われてしまった忌夢は急に言葉に詰まってしまうのだった
「お前はいいかも知れないけどさ、両奈と両備はこの世界で死んだ姉ちゃんに会えたし、雅緋だって母ちゃんがこの世界にあるかも知れないんだろ?…もう会えないと思ってた人に会える機会なんてもうないかも知れない、だったらちょっとくらいここに残って過ごしたっていいんじゃねぇのかよ?」
「うぅ…っ」
いつもはいい負かされている相馬の言うことに今回ばかりは忌夢もぐうの音も出なくなってしまった
確かにそれを言われて理解できてない忌夢ではない、雅緋と光牙の母も両備と両奈の姉である両姫もあの日の出来事によって同時に奪われた
あの日に死んでしまった彼女たちにとってかけがえのない存在である2人がこの世界にいる
両備と両奈は両姫と再会できたがまだ雅緋は母と出会えては居ないのだから
「…っ」
「(雅緋…)」
ちらっと視線を向けてみるとそこには自分はどうしたらいいのか不安を抱いているであろう顔を浮かべている雅緋の姿が
「…わかったよ。確かにお前の言うことも分からないわけじゃないからな。だから…ボク一人で行ってくる!」
「「「「っ!?」」」」
「えっ?ちょ、おい忌夢!?」アセアセ
忌夢はしばし雅緋を見て思い立ったように決意の顔を浮かべるとともに
未だ戦いに償却的な彼らに変わって自分一人で戦うことを宣言してきた
これには全員が驚いた
「手始めに半蔵を攻める。ボク一人でもあいつらを倒してやる。あいつらのヤグラをは貸してやる!」
「お、おい忌夢まて!早まるな!?」
雅緋が必死に呼び止めようとしだが、その声に耳を傾けることもなく忌夢は半蔵学院のヤグラを破壊すべく単独で拠点に向かって行ってしまったのだった
「忌夢のやつ早まった真似しやがって」
『ソウ、忌夢一人で乗り込むなんてどう考えても無謀だ』
「わかってるよ。雅緋!」
「あぁ。こうしてはいられない、みんな、急いで忌夢を追うぞ!」
いくら忌夢が強いと知っていてもたった1人で挑むなんて無謀にも程があることは誰の目から見ても明らかだ
このまま彼女をほおって置くわけにもいかないと雅緋が忌夢を追うことを皆に告げる
そうして全員が忌夢の後を追おうとした時だった
ドガァァァァン!
「「「「「っ!?」」」」」
突然、近くから爆発が発生した
「なんだ?」
「あっちって両備たちのヤグラがあるほうよね?」
「うん、間違いないよ」
「まさか、こちらと同じようにどれかのチームが我々の拠点を攻め込んできたのか?」
だとしたらどこか、半蔵か、紅蓮竜隊か、月閃か、果ては千年祭執行部の連中か
いずれにしても突然起こった事態に相馬たちは困惑する
「おい、どうすんだよ雅緋?」
「…仕方ない。一先ずヤグラのほうに行くぞ!」
「「「「っ!!」」」」
忌夢のことが気掛かりではあるが、自分たちの拠点のヤグラを破壊されている以上
黙って見てはいられないと一同はヤグラのほうに向かう
「「「「「っ!?」」」」」
相馬たちが駆けつけた時には既に周囲のヤグラは完膚なきまでに破壊されていた
「ひどい」
「いったい誰がこんなことを?」
ヤグラを破壊したのは誰なのかと相馬たちが周囲を探す
「やっと来たわね。待ちくたびれたよ」
「「「「「っ!?」」」」」
声のする方に視線を向けると破壊されたヤグラの瓦礫の山からこちらを見下ろす5つの影があったのだった