紫苑たち月閃のメンバーたちは以前からこの世界にて感じていた気配のp発生源を突く止め
暗い森の道を突き進む
やがてその向こうである崖の先にたどり着いた紫苑たちはそこでついに見つけたのだ
雪泉にとっては肉親であり、紫苑たちにとっても親愛なる祖父のような存在である黒影と再会することができた
二度と会うことはかなわないと思っていた黒影とこうしてまた会えたことに感激を覚え
雪泉たちに至っては辛抱溜まらんというかのように黒影の元に集まり、ひたすらに甘えだしていた
皆の気持ちを優先していた紫苑だったが、それに気づいた彼女たちの後押しを受け
再会した黒影と会話をし、彼からの褒めの言葉を聞いて他の皆と同様に嬉しさの涙に顔を歪ませていた
そうして思いがけない再会に胸躍らせながら黒影とともに岩場に腰掛け。様々な話しに花を咲かせていくのだった
久方ぶりに再会した黒影と紫苑たちの会話が弾んでいた
「それでねその時の夜桜ちんたらねw」
「こ、こら四季!よりにもよって黒影様の前でその話しはやめてください///!?」
「あははwメンゴメンゴw」
「ふふふふ、そうかそうか」
皆、黒影に聞いてほしいこと、聞きたいこと、話題に事欠くことなく次々に話しは盛り上がっていく
皆が話しのネタを出し切るまでいったいどれほどの時間がかかったことか
しかしそれでも黒影はずっと笑みを浮かべ、紫苑たちとの会話を心の底から喜んでいるようだった
紫苑たちはこの場にいるだけで身体中が幸せに満ち溢れる感覚を覚えていた
この時間の一分一秒が彼らにとって至福とも言える時間だからだ
「…話しに夢中になってたから忘れてたけどもうこんな時間なんだ?」
やがて話すことも出尽くし、さらに時刻的に良い子の帰る時間帯になっていた
「……もう、帰りたくありません」
「…っ」
雪泉がぽつりと本音を漏らす
その言葉に誰もが頷く
…だが、その中で紫苑だけは何か少し違う様子を見せていたが雪泉たちはそれに気づいていなかった
「それはならん、お前たちは元の世界に戻らねばならん」
「「「「「「っ」」」」」ピクッ
帰りたくない意思を示す雪泉たちに対し、黒影はそれはいけないと告げる
黒影のことをよく紫苑はそういうダ老ことをわかっていた。
無論それは他の皆とて同じことでもあった
「で、ですが…せっかく会えたのにまたお別れをするなんて…」アセアセ
やっとのことで再会を果たせたというのにまた分かれることになってしまうことが受け入れるべきことであるのはわかっていても素直に納得することはできなかった
「…おまえたちはこんなところでのんびりするために忍になったのか?」
「そ、それは…」アセアセ
だが黒影の放ったその一言に全員が顔を見合わせる
自分たちが忍になったことの意味を問われ
思考を巡らせるも心との折り合いがついておらず、複雑な心境を抱いていた
最中、紫苑は”あの戦い”のことを思い返していた
「いいえ黒影様、僕は元の世界に戻るつもりです。ここでぐずぐずするつもりはありません」
「紫苑?」
「僕はこれからも精進し、あなたに誇りに思ってもらえるような忍となるつもりです。だからこそ僕は立ち止まってはいられません」
覚悟を露わにした凛とした顔で黒影に語り掛ける
「…そうか。お前にとってこの問いは愚問だったようだな?何より今のお前はとてもいい顔をしている」
皆が紫苑のこの発言に困惑する中、黒影はどこか内心嬉しそうな顔を浮かべていた
「黒影さま、見ていてください。僕らが目指す忍の道を」
「あぁ、しかと見せてもらうぞ」
紫苑と黒影は互いに言葉だけではなくどこか通じ合ったような雰囲気を醸し出す
「さて、もう夜も更ける。おまえたちは帰りなさい」
「お、おじい様」
「楽しみにしているぞ…っ!」シュン
「「「「「あっ!?」」」」」
帰れという黒影の言葉に異を唱えようとする雪泉たちだったが
その言葉を聞くことなく黒影はその場から去っていってしまった
黒影がいなくなってしまい、皆が落ち込みを見せる中、紫苑は握りこぶしを作りるとともに決意を込めた顔を浮かべる
「…みんな、行こう」
「行くって…どこに?」
「この戦いを終わらせるんだ。半蔵学院にも紅蓮竜隊にも蛇女にも負けない、勝利を手にするのは僕ら月閃だ」
本腰を上げ、カグラ千年祭に参加することを告げ、紫苑は歩き出した
雪泉たちは少々困惑をしつつも紫苑の後を追うのだった
♦
黒影と別れた紫苑たちがやってきたのはカグラ千年祭執行部の拠点だった
「夜分遅くに失礼します。カグラ千年祭執行部のみなさん、あなた方にヤグラをかけた勝負をしに来ました」
「あら紫苑ちゃん、それにみんなも?…その様子を見るに、忍の盆踊りをやる気になってくれたのね?」
拠点に到着した紫苑たちを出迎えたのは立場上執行部に身を寄せている両姫だった
「えぇ、この千年祭。勝利を手にするのは我々です」
「おぉ、すっごい自信のすね?でも、もう勝つ気でいるみたいっすけどウチらをそう簡単に倒せると思ってるんすか?」
「もちろんです。そうでなければ僕らは黒影さまに顔向けする資格がない」
あの時、黒影に告げた約束の言葉を噓偽りないものにするためにも必ず勝ち抜くと断言する
「ふん、口を開けばおじい様や黒影さまって、これまた立派なおじいちゃん子ね?もうオムツは取れたんでちゅか~?」
そんな紫苑に対し、華風流が小馬鹿にしたような言い方をし、煽りを誘う
「言いたいことはそれで終わりですか?ならばさっさと始めましょう。時間がもったいないですから…忍、転身」
しかし華風流の煽りは今の紫苑にはまるで効果はなく、まるで意に返さないように転身し、装束を纏った
「っ、何よこの気迫?とてもすごいものを感じる?これが月閃のリーダーの本気ってわけ?」
「僕らはただ黒影さまの思いに応えたい、ただそれだけです」
「うおおおぉぉ!な、なんだかすごい激熱な展開になってきたっすね!うちは今モーレツに感動してるっす!」
「華毘お姉ちゃん!敵に感動してどうするのよ!?」
華風流が気迫に押し負かれそうになるのを堪えつつも反論を述べているにもかかわらず敵である紫苑に感動したと申す華毘にツッコミを入れる
「お前らひとまず落ち着け、ほら、華毘、涙を拭きな。ついでに鼻水もね。服喪のがないんだったら私の服を使いな」
「やれやれ、蓮華、あまり人前で肌を晒すもんじゃないよ?恥じらいあってこその乙女さ」
「あっ、す、すみません」アセアセ
感動で涙ぐんでいる華毘に対して小百合がチリ紙の代わりと称して自身の服を差し出す様子に女子が肌を晒すものじゃないと叱咤をかけていた
「それにしても紫苑。黒影はお前たちをいい忍びに育て上げたようじゃの?」
「小百合様は黒影おじい様を知っておられるのですか?」
「当り前さ、あいつとは半蔵と同じ腐れ縁の関係だったからね」
小百合から黒影のことを聞いた雪泉は徐に尋ねる
「なるほど、それを知っては尚更全力を持ってこの勝負、望まなければなりませんね。さぁ、始めましょうか」
紫苑は小百合の話しを聞くやさらに闘志を燃やし、この勝負に挑むことを宣言するのだった