そんな中、雅緋は突如聞こえてきた母の声を耳にする
さらに同時刻に紅蓮竜隊の拠点にて光牙も同じく母の声を聞いた
2人は声に導かれるがままに森の中を進んでいく最中に合流する形となった
やがて2人は森の奥にあった泉に到着するとそこで自分たちをここに呼び寄せた声の主である母との再会を果たす
いてもたってもいられなくなった雅緋は再会早々に母に抱き着き、甘えだし
光牙に至っては嬉しい気持ちもあるが雅緋とは売ってかわり複雑な心境を浮かべている様子だった
懐かしさに浸る中、母があの日に2人に食べさせることのできなかった親子丼を作ることを告げると
母の作る親子丼を食べるべく雅緋は足りない材料を取ってくると言ってその場から離れた
そうして2人きりになると母は光牙の腹部に手を当て彼の中にいる光の竜にへと話しかけるのだった
雅緋が去って母が術を発動し、単独で彼の精神世界の中に入り、光の竜と会話を始める
その間、精神世界の外にいる光牙はこの状況に何が起こるのかと少しドギマギしていた
「まさかこうしてあなたとお話しする機会がくるとは思いもしなかったわ」
「カッカ、それはこちらのセリフというものじゃ。よもやわしもこうしてお前と話しをする日がこようとはな、長生きすると何が起こるかわからないものじゃの~?」
「うふふ、確かにそうね」
2人は再び合いまみえることとなったこの瞬間にどこか皮肉を込めながらも嬉しそうな声を上げていた
「それにしてもあなた、少し見ない間に変わったんじゃないかしら?」
「ん?見た目のことか?」
「ぷふっ…違う違う、あの頃のあなたはまさに荒れ狂う獣のように鋭い眼光を光らせていたのに今のあなたからは以前のようなそういう感じがしない、むしろ今のほうが好印象持てるくらいね」
「ふん、ぬかしおる。わしは変わってなどおらんぞ、今も貴様には恨み辛みを抱いておるんじゃからな」
母のその一言に光の竜は面を食らうもすぐにいつもの調子でネチネチと嫌味ったらしい言葉を告げる
「気取って見せても駄目よ。今のあなたがそんなこと思ってないことくらいわかるわ。きっとこの子との間で何かがあった…そうじゃないかしら?」
「っ…」
その問いかけの際、光の竜の脳裏に”あの時“の光景が浮かび上がる
あの時、光牙が自分に対しても投げかけていた言葉の数々が鮮明に蘇る
「…ちっ、相変わらず食えぬ女よ///」
恥ずかしい気持ちを蒸し返させた母の言葉に光の竜はばつの悪そうな顔を浮かべていた
「…ごめんなさい」
「っ?」
刹那、唐突につぶやかれた謝罪の言葉を聞き、光の竜は驚きの顔を浮かべる
「な、なんじゃ突然、いきなり謝るなど」アセアセ
「今なら、こうして二人っきりになれている今だからこそ心から言えるの、本当なら私もあの子のようにあなたに歩み寄るべきだった。そうすればもっと早くあなたとこうして語り合うことができたでしょうに、でもあの頃の私にはそれができなかった」
「…っ」
母は柵を挟んで向かい合う光の竜に申し訳なさそうな顔を浮かべながら言った
「大人たちからの教えだけを信じ、一方的にあなたを悪と決めつけてしまっていた。故にこの子たちが生まれた日、あなたが光牙の身に移ってしまったことに最初は憎悪と後悔におぼれ、光牙を守るためにあなたを消滅させようとすら画策していたわ。でも今は違う、こうしてあなたと腹を割って会話できるのも光牙のおかげだって思えるようになれたのだから」
今の光牙と光の竜の関係に憎しみも嫌悪も感じられない自分が為し得ることのできなかった可能性なのだと信じて疑わなかった
「さて、名残惜しい気もするけどそろそろいくわね。これ以上長居しては光牙を不安にさせちゃうもの、それに雅緋も待ってるしね」
「…そうか」
「それじゃあね、お話しできて嬉しかったわ」
別れの言葉を告げながら母は光の竜に背を向ける
その後ろ姿にを前に光の竜は少し複雑そうな顔を浮かべる
「…最後に一ついいかしら?」
「なんじゃ?」
すると言い忘れがあったと母は軽く振り返りながら言った
「…あの子を、信じてあげてほしい。あの子なら絶対にあなたを悪いようにはしないから」
「っ…」
その言葉を聞いた光の竜は面を食らったような顔を浮かべる
数秒間思考が停止しているのか何も言えなかった
「ふ、ふん。嫌じゃな、わしは指図を受けるつもりなぞないわ」
「指図なんかじゃないわ。こういうのもおこがましいかもしれないけど…元相方からの最後のお願いよ」
最後の願いと母は光の竜に心から頼み込んでいる様子だった
「…約束はせんぞ」
「ふふっ…そう、でも私は信じてるわ。あなたと光牙が共に手を取り合う時がくるって」しゅ~…
照れくさそうな顔で放ったその言葉を聞いて母はどこか安心した様子で再び歩き出し、やがて精神世界から姿を消した
「……本当に食えぬ女じゃな」
母の去った後、残された光の竜は再び皮肉をつぶやくのだった
その頃、現実世界で光牙が未だ自分の腹部に手を当ててから動かない母のことを心配していた
「…っ」ピクッ
「…母さん大丈夫?」
刹那、晴れている母の手がピクリとしたのに気づいた光牙が恐る恐る声をかける
「…ふぅ、大丈夫、心配ないわ」
「……そうか」
すると意識を取り戻したように顔を上げ、笑顔を見せる母に光牙は安心した様子で一息ついた
「ありがとう光牙、あなたのおかげで有意義な時間を過ごすことができたわ」
「別にお礼を言われることはしてないさ…ところで母さんはあいつと何を話していたんだ?」
素朴な疑問を母に尋ねる
「ふふっ、内緒よ♪」
「内緒って…はぁ~」
しかし帰ってきた母の一言に光牙はガクッとなった
「…ねぇ光牙」
「なんだ?」
「彼女のこと、あなたはどう思ってるの?」
「……どう思っている、か…」
母のその問いに光牙は考える
自分にとって彼女、光の竜とはどんな存在なのかを
「最初のころ、俺の中にこいつがいることを知った時には恐れや恐怖を抱いたさ、それにあの時、こいつと精神世界で初めて対面した時は心底驚いたさ、挙句の果てに学炎祭で紫苑と死闘を繰り広げたことで消耗した俺の身体を乗っ取り復活仕掛けた時は絶句した。あの時、焔たちが助けてくれなければ今頃俺は…」
あの時のことを思いだすと未だに震えを覚えた
「素敵な仲間に巡りあえたのね」
「…そうだな。あぁ、そうだ」
「それで、今はどうなの?」
「俺は…」
今の自分は光の竜をどう思っているのかを尋ねる
「正直まだわからない…でも、少なくとも俺はあいつの想いを知った。あいつの心の内に秘めるものを知った。俺は俺にできる限りをあいつにしてやろうと思っているんだ」
「…それがあなたの考えね、わかったわ、どんな結果になろうとも私はあなたを信じているわ」
「母さん…ありがとう」
損得関係なく自分に無償の信頼を抱いてくれる
母の優しさに光牙は心打たれる
「ママしゃま~!」
「「っ?」」
「ママしゃま、光牙、ただいま♪」
「うふふ、おかえりなさい雅緋」
そうして会話をしている最中、雅緋が戻って来るや母に甘えだしてきたので、母は彼女を優しく抱きしめるのだった