紫苑と雪泉以外は叢の意見に賛同し、この世界に残る意を示す
その意の強さは凄まじく説得を試みようにも上手くいかず、あまつさえ戦闘にまで勃発してしまう
彼女たちを止めようにも数に圧倒され、防戦一方になってしまっていた紫苑たち
しかし紅蓮竜隊の介入によって事態は急変し、叢たちも標的を彼女たちに変え、新たな戦闘に発展する
中でも叢と詠の戦いは両者一歩も引かぬ激闘を見せる
だが、激闘の中で叢が一歩戦況をリードしていたことで
攻防による勝負の行方は叢に価値を与えた
詠を打ち負かしたことで優位に立った叢だったが
心理戦においては詠が上回っていたことにより隙を突かれてお面を奪われてしまう
そして再度説得を試みる詠だが、話しを聞かない叢に喝を入れるためお面を奪って逃げ帰ってしまうのだった
月閃女学館と紅蓮竜隊の激闘が行われてからしばらくの時が経ち、日も暗くなっていた
「さて、必要なものは揃えたし早くママしゃまのところに戻るとしよう♪」
蛇女の拠点にて雅緋が今一度母のいる場所へ向かおうと思い立つ
「…しかし光牙ときたらどういうつもりなんだろう?せっかくママしゃまと再会できたのにどこか態度が素っ気ないというか…う~む」
自分は母と再会できたことにこれほどまで喜びを感じているのに光牙はそうでもなさそうな態度だったなと思い返し
彼がどうしてそんな態度を取っているのかと雅緋は考えを巡らせていた
「ん?」
最中、不意に雅緋が視線を向ける
そのすぐ直後だった
「雅緋か」
「お、お前たちは!?」
雅緋が視界に捉えたのはいつの間にか拠点に侵入していたと思われる柳生と佐介だった
「どうも雅緋さん」
「柳生、それに佐介。お前たちがここにいるということは私たちのヤグラを壊しに来たという訳だな?」
よりにもよって他のメンバーが不在の為、この場には雅緋しかおらず、このままではヤグラを破壊されてしまう可能性があった
「だがそうはさせん、逆にお前たちを返り討ちにしてその勝利をママしゃまに捧げてやる!」
「…えっ?」
「ママしゃま?」
「か、母さんのことだ!言い間違えだ、気にするな///!?」
ヤグラを死守することを意気込むも、またも自然と口から出てしまったせいでキョトンとしている佐介たちを見て慌てて訂正をする
「…そうか、お前はこの世界で死別した母と会えたんだな?」
「えっ?本当ですか雅緋さん?」
「あぁ、そうだ。私と光牙はこの世界で母さんにまた会えたんだ」
雅緋の言動から柳生は彼女が母親と再会できたのだと察し、訪ねてみると正解であり、佐介もそのことに驚いていた
「なるほど、そうだったのか。死んだはずの身内が生き返る……さぞかし嬉しいことだろうな。今のうちにいっぱい甘えて置くといい、別れは必ず訪れるのだから」
「――っ?」
「柳生ちゃん…」
この時佐介は柳生のこの言動が自分自身にも言い聞かせているかのように感じた
幼い妹を失ってしまっている経験がある彼女だからこそいえる言葉なのだと
「何をバカなことを言っているんだ柳生、私はママしゃまのもとを離れるつもりはない!」
雅緋は断固とした意思のもと、自分の思いを伝える
「…それは元の世界に帰らないということか雅緋?」
柳生は雅緋のその発言を聞いて元の世界に戻る気はないのかと問うた
「べ、別にそういうわけではない!…そういうわけでは、ないが…」オドオド
問いかけに対していい答えを口に出せないまま言葉に詰まったかのような様子を雅緋はみせていた
言動や様子からしても雅緋自身も心の中ではまだどうしていいのかわかっていない様子だった
「雅緋さんがそう考えているということは光牙くんもそう考えているのでしょうか?」
姉の雅緋がそんな考えを起こしているのならば弟である光牙も母と再会したことで同じような考えを抱いているのかと佐介は疑問を抱いていた
「…雅緋、お前の言い分も分からなくはない。だが問題を先延ばしにして何になる?そんなことでは別れを迎えた時に感じる悲しみが余計に大きくなるだけだということは分かるだろう?」
諭すかのように柳生が雅緋に語り掛ける
「くっ…お前に、お前に何が分かる!」
しかしそれが彼女の癇に障ったのか我慢の限界を迎えたように雅緋が反論する
「全てとは言わん。だが少しならばお前のその気持ちもわかるとオレは思っている。それを踏まえて言わせてもらう、大切な人との別れは乗り越えられない」
「えっ?」
「乗り越えたようで、やはり、引きずっていて…そのことに気づいてまた乗り越えようとして…これはそんなことの繰り返しだ」
「柳生ちゃん…」
彼女は今でも妹を失ったことを心のどこかで引きずっているのだと言動からも理解できた
「だが、そんなことを繰り返していくうちにオレは気づけたんだ。「乗り越える必要などない」…とな」
「乗り越える必要がないだと?……ふざけるな!だったら、大切な人を失った悲しみはどうすればいい!」
「どうする必要はない、ただ受け入れればいい、その気持ちを抱いて前に進めばいいんだ」
「さっきから黙って聞いていればなんなんだお前は!知ったかぶりのような顔して分かったようなことをいうな!」
柳生の言葉が今の雅緋にとっては聞くに絶えないことばかりであり
これ以上の話しを聞きたくないという意思の元に雅緋が転身し、柳生に刃を向ける
「雅緋さん、何をしているんですか!?」
「うるさい!私をかどわかそうったってそうはいかないぞ柳生!」
最早戦いは避けられないと感じ、佐介が臨戦態勢に入ろうとする
「待て佐介」
「柳生ちゃん?」
「…ここはオレがいく」
「えっ?」
するとそれを見て柳生が佐介を静止し、そして雅緋とは自分がタイマンで戦うと宣言する
「今のあいつに言葉で何を言っても無駄だ。だからこそオレがこの戦いを通してそれをあいつに教えてやらなければならない」
「柳生ちゃん…わかりました。ならば僕は柳生ちゃんを信じて見守ることにします。頑張ってください」
「すまない、行ってくる」
柳生の意思を尊重し、彼女にこの場を任せて自分は見守ることにした
佐介に見守られながら柳生はゆっくりと雅緋の元へ歩いていった
「柳生、どういうつもりだ?たった一人で私とやろうというのか?」
「そうだ。お前の相手はこのオレだ」
「なめられたものだな、お前に私の相手が務まるとでも思ってるのか?なめるなよ!」
雅緋は完全に柳生のことを軽視している様子だった
彼女では自分の相手にならないと思い込んでいるようだった
「務まるか務まらないかはこれから見せてやる。忍、転身!」
そんな彼女に対して意気込みを見せながら柳生は忍装束を纏う
「来い、雅緋」
「望むところだ!覚悟しろ柳生!!」
誘いをかけるかのように柳生が挑発を仕掛け
売り言葉に買い言葉のようにその言葉に雅緋が言い返しながら突っ込んでいく
「やあぁぁぁぁぁぁ!!」
「っ!!」
刹那、雅緋の妖刀と柳生の仕込み傘がぶつかり合い、鍔迫り合いに持ち込まれる
その直後、互いに次に備えて距離を取る
「くぅっ!」
「っ…!」
互いに出方を伺いつつ、睨みを利かせながら相対する2人だった