思い悩んだ様子の彼女が気になった2人は声をかけ、話しを聞くことに
両姫とのことで思い悩んでいることに飛鳥は両備が抱いている感情は反抗期のそれではないかと指摘をする
自分も中学の頃にそういった経験があって母親に当たってしまったと体験談を話す
だが、それが両備の感に触った様であり、飛鳥に対して当たり散らしてしまった
そして気分を悪くしたようにその場から去っていってしまうのだった
佐介と飛鳥の2人と両備とのやり取りが行われている頃、蛇女の拠点では…
「はぁ…雅緋~」
元気のないため息をつきながらテーブルの上にもたれかかっていたのは忌夢だった
ここ最近というもの愛しの雅緋は母親の元に入り浸る日々を送っているせいもあってかこちらにいることが減ってしまっている
必然的に忌夢にとって雅緋と一緒にいられるという最高の時間が減ってしまっているのだ
それを考えるだけでも忌夢の口からはまたため息がこぼれ落ちていく
忌夢が落ち込身に暮れている、そんな時だった
シュタッという着地音とともにこの場に降り立つ影が
「やぁ、忌夢さん。また戦いにきたで」
「…日影っ」
現れた者の正体は紅蓮竜隊の日影だった
「ん?どないしたん?なんや元気ないみたいやけど?」
「いや、別に…」
「…わしでよければ話聞くで、今の忌夢さんなんやほっとけん気がするしな」
「日影…まったく、お前は妙なところでお節介なんだから」
元気のない忌夢の様子に気づいた日影が声をかけた
自分が話を聞くと言ってくれたことに忌夢は嬉しさを感じながらも皮肉交じりな回答を寄こすのだった
「…雅緋はお母さんとこの世界で一緒に暮らしたいらしいんだ…赤ちゃん言葉の雅緋は魅力的だけど、この世界にずっといるっていうのは…」
そうして忌夢は悩んでいる理由を話した
この世界に来てから蛇女のチームワークが乱れつつあり、何とも言えないジレンマが忌夢の心をモヤモヤさせているようだった
「なるほど、そういや光牙さんも雅緋さんと一緒におふくろさんと会ったらしいな?」
「うん、ボクもそう聞いてる。やっぱり光牙も雅緋と同じくこの世界でお母さんと暮らしたそうにしているのかい?」
双子の弟である光牙も一緒に再会を果たしているのを知っていた忌夢は
雅緋があの態度になっているということは光牙もまたそんな感じなのかと疑問を浮かべていた
「う~む、そこら辺はようわからんわ、でも忌夢さんの話しを聞く限りでは光牙さんが雅緋さんと同じ考えって言う訳やないと思うで」
「えっ?」
「だって光牙さん、おふくろさんに会ってからも時折通う程度でそのほかはいつもと変わらん様子やったし」
母親に会って以降の光牙を度々目にしてはいた
だが雅緋のように頻繁に母の元に行くこともなければ普段と変わらない様子を見せていた
「そうか、光牙はそうなんだ……でも、光牙はさておいても雅緋の願いはボクの願いでもある。だから雅緋がここに残るっていうならボクもここに残る」
「ほな、蛇女の再建はどうするんや?それに外の世界にいる妖魔のことも放っておくんか?」
「それが雅緋の望むことならボクは…」
どこか煮え切らないと言いたげな顔を浮かべつつも雅緋がこの世界で母の元で暮らすというのなら自分もそれに乗ろうというのだ
「ほんとにそれでええんか?今すべきことよりも、死んでしまった人を選ぶ、それが本当に正しいことなんか?」
しかしそれを聞いてはいそうですかと納得できるほど人間出来ていないというかのように日影は忌夢に問いただす
「分かった風なこと言うなよ!日影に雅緋の気持ちが分かるっていうのか!感情のない日影に!」
日影の言葉にムッとなった忌夢が反論する
感情がない奴に雅緋の気持ちが分かるのかと
忌夢からの反論を聞いた日影は一瞬目を丸くするとそのことについてを考え出す
「…そやね、わしは本当に大切な人を亡くした時も、ほんの少ししか涙を流すことしかできんかった…わしにとってとても大切な人やったのにな…」
感情がないと常に豪語している日影が悲し気な顔を見せる
脳裏に浮かぶのは自分を孤独から抜け出させてくれた自分にとっては恩人であり、友人であり、姉のような存在だった人のことだった
「わしにちゃんと感情があったなら、あの人のために1週間でも二週間でも泣き続けられたと思うんや、それくらい冷たい奴なんやわしは…だから雅緋さんの気持ちはわからん。でも、忌夢さんならわかるんやないか?」
「…っ」
「雅緋さんは母親に会っただけですべてを忘れてしまう人なんか?」
「ち、違う。今、雅緋はちょっと混乱しているだけなんだ。大好きなお母さんに会えて」
自分は気持ちがわからないが忌夢ならわかるのではないかと日影に尋ねられ
それに対して忌夢は今、雅緋は会えなくなってしまっていた母と会えたことでいろいろと混乱しているんだと考えを告げる
「それやったら雅緋さんの目を覚まさせてやるべきやろ、それができるんは幼馴染で仲良しな忌夢さんか、もしくは弟である光牙さんのどちらかしかおらんやろな?」
「ボクか…光牙が…」
「せや、雅緋さんのことを誰よりもわかっている2人やからこそそれ以外の適任者はおらんとわしは思うで?」
幼い時より、光牙は血を分けた姉弟として、忌夢は友人として互いに雅緋を支えてきた
だからこそ雅緋の目を覚ませるとしたらこれ以上の役者はいないと断言できるほどに
「…まったく、いつもいやがらせしていたお前にこんな励ましの言葉をもらう羽目になるなんてな…ありがとう日影、おかげで目が覚めたよ。雅緋の目はボクが覚ましてみせる。光牙に後れを取るわけにはいかないからね」
「そうか、そんなら良かったわ」
日影からの励ましの言葉を受けた忌夢はようやく目が覚めたように今自分が為すべきことは雅緋の目を覚ましてあげることだと再確認する
それが今の自分が雅緋にしてあげられる最善の選択なのだと
光牙よりも先に雅緋に気づいてもらうんだという意気込みを秘めた忌夢の瞳はさっきまでとは比べ物にならないくらい決意が込められた瞳であった
「ということで日影、一つ頼みがある」
「ん?なんや?」
「ボクと戦ってほしいんだ」
「ほう?」
決意を決めたと思ったら今度は手合わせを所望してきたことに驚いた
「雅緋の目を覚ます以上、下手をしたらボクは雅緋と戦うかもしれない。だからボクはもっと強くならなきゃならないんだ」
「なるほどな、まぁええで、わしとしてもはなっからそのつもりやったし。せやけど本気で行くで、そのせいでうっかりヤグラ壊されても知らんで?」
「言ってろ、ボクはこうと決めたら強いんだ。行くぞ日影ぇぇぇ!!」
「それはこっちのセリフや!!」
迷いを振り切り、忌夢のこの世界での使命が定まった瞬間だった